秋の花サフラン

我が家の周辺にまだ残る畑の片隅に三、四輪のサフランが花を広げているのを見
つけました。 サフランはクロッカスの仲間、しかし、秋空のもと紫色の花弁を
開く姿はなかなか可憐な花姿といえましょう。

サフランは花よりも、花柱(雌しべ)が薬用に、染料に、色素に、また、香辛料
などに利用されていますので、レストランなどでサフランの色素を加えた料理に
お目にかかることも多いことと思います。

サフランはヨーロッパ南部の原産といわれ、紀元前15世紀のクレタ島遺跡の壁
画にサフランの雌しべを採取している図が書かれているといわれますので、それ
以前から薬用や、染料や香辛料として用いられていたものと推定されます。

サフランはヨーロッパからインドにかけて盛んに栽培されていたようですが、日
本での最初の記録は平賀源内が薬用もしくは染料として渡来したものを1762
年に氏の著書に記載しています。文中に「此ノ物生草絶エテナシ」と記している
ことから、生きている植物ではなく、サフランの製品であったのでしょう。

日本人が本当に地に咲いているサフランを見たのは、文久末年(1863年)頃
と伝えられていますが、薬用の目的で輸入栽培されたのは明治18年(1855
年)のことで、翌年、神奈川県中郡国府町(現在の大磯町)の添田辰五郎によっ
たのが初めてだと伝えられています。

北原白秋も明治に入ってきたエキゾチックな花、サフランを

          ひび入りし珈琲碗に
          サフランの草を植ゑたり
          その花のひとつひらけば
          あわれや呼吸(いき)のをののく

と詩にうたっているとのことです。

サフランの雌しべの柱頭には、黄色い色素としてアルファークロシンを、また、
良い香りのサフラナールを含んでいることが解っています。クロシンは黄色いの
で、化粧品や食品の着色料として用いられていますし、サフラナールには鎮痛、
鎮静、通経などの作用があることから家庭薬の原料として用いられています。

花一つにも、ずいぶんと長い歴史と人とのかかわり合いがあるものですね。

                        うめだ よしはる

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