色づく果実/ピラカンサ

 家内から門横のピラカンサの新梢が伸びすぎ、色付き始めた球果が葉陰になる
ので剪定をしてもらえないかとの声がかかり、はしごの助けを借りて、この仕事
も済ませました。 剪定を終ってみると、色付き始めた球果がよく目立ち、さっ
ぱりとした光景になりました。

我が家のピラカンサは深紅色の球果を枝に一杯につけるものですが、住宅路を歩
くと、中には橙黄色に熟する種類もあり、家内からどう違うのかと聞かれること
があります。

ご存知の方も多いことと思いますが、深紅色の球果をつけるものはトキワサンザ
シと呼ばれ、橙黄色の実をつけるものはタチバナモドキと区別した和名が与えら
れています。いずれも、普通には区別することなくピラカンサとかピラカンサス
と呼ばれています。

学名では両種ははっきりと区別して

       トキワサンザシ    Pyracantha coccinea
       タチバナモドキ    Pyracantha angustifolia

と命名されています。

橙黄色の球果をつけるピラカンサは明治の中頃に、福羽逸人子爵がフランスから
持ち帰って新宿御苑に植え付け、その名称がわからないままに育っていたものを
、御苑に勤務していた牧野富太郎博士が調査して、タチバナモドキの和名を付し
たものとされています。

深紅色の果実をつけるトキワサンザシはヨーロッパ南部の原産で、イギリスやフ
ランスに導入されて庭に植えられ、春の花の美しさと共に、秋の実の美しさが鑑
賞されたようですが、赤い実を鳥が好んでついばむために秋のうちに食べ尽くさ
れてしまうのが常でした。そこへ、19世紀の末に中国からタチバナモドキ(橙
黄色の実)がイギリスの導入され、この実があまり鳥に好まれずに冬中、庭に色
を添えることから大変に喜ばれ、広く普及したといわれています。

赤い実をつけるトキワサンザシも明治には既に日本に導入されて栽培されていた
ようですが、戦後に鮮紅色の果実をつけ、実付も良く果実も大きい改良種が導入
されてからにわかに普及し、庭木や生け垣として広く利用されるようになりまし
た。今では、ピラカンサといえばトキワザンザシが殆どではないでしょうか。

ピラカンサには鋭い刺がありますので、剪定のときには丈夫な手袋をしてやりま
せんと手の甲がひっかき傷でみみず腫れになってしまいます。

                           うめだ よしはる
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