ハキダメギク/何とも気の毒な名前


 路傍で今を盛りと、ずうたいに似合わないキクの花に似た小さな白い花を咲かせているハキダメギクが目立ちます。 住宅街では塀に沿った場所で、また、街を歩るくと街路樹の植えてある土面が露出した所には優占種としてはびこっています。 植物体の大きさ、葉の大きさに比べて米粒程の花しか咲かせないキク科の植物ですが、ほかのキク科の植物と違って人に愛されるとか、好まれるという草ではありませんがハキダメギク(掃溜菊)とは気の毒な名前をもらったものです。

日本帰化植物図鑑によると、「熱帯アメリカ原産の植物で大正年代には東京でまれに見られたが、現在では関東以西の各地に広がり、特に東京周辺では極めて普通の雑草となっている。」とあります。 先日購入した朝日選書「緑の侵入者たち」では、この草の命名についてのエピソードが紹介されています。 それは、「東京の渋谷で、初めて牧野富太郎先生によって気づかれ、その生えていた場所が塵捨て場だったので、このような名前が生まれた。」というのです。 牧野植物図鑑では命名については、あっさりとしたもので「掃溜菊の意で著者の命名。」とだけ記してあります。

名前は気の毒ですが、良く観察しますとキク科の植物ですから、中央部は黄色い筒状花があり舌状花は白く5枚の花びらから出来ています。 直径が5ミリ程度の小さい花ですから皆様のご関心を引くような花ではないかも知れませんが、でも東京の真中のほんの小さな土面が露出している場所でもけなげに咲いているのを見ると、頑張っているなという思いが致します。 すくいは、この植物とは別種だと言われているものの、別名に「コゴメギク」の名が与えられたり、マメギクの名が与えられてていることです。

    あらぐさとはかかるくさかもゆれうごく
           はきだめぎくのはかなきすがた     山川 菊子

    なよなよとはきだめぎくゆれ動く
           秋の花野のかそけきそよぎ       山田 由子

    路地裏やはきだめぎくのしおらしく          たかし

人に見捨てられているようでも、歌人の眼はちゃんと見てくれているのですね。 こうした短歌や俳句を捜し出すと嬉しくなります。
                           うめだ よしはる

晩春から夏の花へ

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