ハボタン

 花の少ない冬の間、花壇や庭の一隅を飾るのは、なんといってもハボタンですね。
 ハボタンは Flowering cabbage の英名でも呼ばれていますので花キャベツでもお
かしくないですね。 しかし、キャベツか結球タイプなのたいしてハボタンの先祖は
非結球タイプのケールと称される野菜です。 そのために英名も Decorative Kale,
Flowering Kale, Ornamental Kale, Ornamental-leaved Kale 等とケールの名を
主にした名称が多いようです。 ケールは病害虫に強く家庭で青汁用に栽培するには、
比較的やさしい作物です。

 ハボタンは形からしてキャベツに似ているのですから、日本原産ということはあり
得ないものの、いつ頃に日本へ入って来たのかと遡ると江戸時代、1778年に渡来
したといわれています。 もっとも入って来た原型はケールと呼ばれる非結球型のキ
ャベツで、オランダナの名前で呼ばれたのですが、日本では野菜として利用されるの
では無く、鑑賞用の植物として利用されるようになり、ハボタンになったとされてい
ます。

 ハボタンの名は、葉が美しく牡丹を見るようだというところからこの名が付された
のしょうが、いろいろな本を見てもハボタンがヨーロッパで育種されたものか、日本
で渡来してから育種されたものかははっきりとしないようですが、育種してきたのは
日本だという説が有力だといわれています。

 東京ハボタンは江戸時代から続く200年の歴史があるとされています。 ケール
の中でも葉に変化のあるものが渡来し、選抜に選抜が重ねられて今日のハボタンの原
型になったものと考えて無理がないような気も致します。 名古屋付近で改良された
ものは、ちりめん葉で、葉の縁のひだが多く、これはケールのちぢれ葉の系統の品種
から作りだされたものと言われています。

 最近ではサンゴ系といわれる品種が市場に出回っていますが、これはロシアのケー
ルとの間で交雑して作出されたもので、葉の切れ込みは深く、耐寒性もあり人気のあ
るハボタンです。

 こうして、ハボタンの育種改良の足取りを追ってみると、日本人の観察の眼が、非
常に優れていて、ちょっとした変化を見落とさずに、改良の足掛りとし、選抜を重ね
た結果のものが現在の、ハボタンの源だということになります。 当時、メンデルの
法則の知識も無く、交配の技術も知らなかった日本では、観察力によって変化を示し
たものを選抜し、採種、播種、育成、選抜を繰り返してきたのでしょう。 ヨーロッ
パ生まれの植物なのに、世界で一番、多種多様なハボタンの品種が作出されているの
が日本だというのですから、面白いことです。

 いろいろの種類のハボタンが公園などで植えられて、淡紅色の葉や白緑色の葉を広
げ、お互いに美しさを競いあっていますが、来春には伸びた茎に葉を五重、七重の塔
のよう広げ、その先端に花茎を立てて黄色の花を咲かせるようになります。 ハボタ
ンは十字花(アブラナ)科の植物ですからナタネと同じで、沢山の実を付けます。

 東京ハボタン(上)と縮緬ハボタン(下)の画像を紹介しました。

                             うめだ よしはる

     表紙へ戻る

     晩秋から冬の花へ