通勤の路に沿った家々の生け垣に植えられているドウダンツツジがスズランの様な可
憐な花を咲かせる季節になりました。
つい先日までは、過ぎし秋に美しい紅に染めた葉を落とし、細かく分かれた枝だけが
目立っていましたが、ここ二三日の暖かさで、新葉の伸びも著しく、葉影に白い釣鐘
状の花を多く釣り下げています。
植物名彙辞典を見ますと、ドウダンツツジの漢名として満天星の名が与えられていま
すが、これは、昔、中国の太上老君が仙宮で霊薬を練っているうち、誤ってこぼした
玉盤の霊水が、たまたまこの木の枝に降り注ぎ、かたまって壷状の玉になり、あたか
も満天の星のように輝いたからだといわれています。
満天星(ドウダン)の上枝(ほつえ)こまかき花むらに
さしとほす日のあやにしづけし 藤川 忠治
牧野植物図鑑では、ドウダンツツジは灯台ツツジの意味で、分枝の形が結び灯台の脚
に似ていることに由来したものであると記されています。 結び灯台とは木の枝や竹
を三本交叉させて結び合わせ、上端の三叉状の台架に灯明皿を置いた灯火台のことで
今でも神社などで見かける時があります。 ドウダンツツジの枝がよく分かれて、そ
の先端がこのような形をしていることからつけられたものなのでしょう。
春には花と新緑を愛で、秋には紅葉を愛でるドウダンツツジは生け垣に用いたり、庭
の片隅に円形に育てるには適した植物ですね。
もう10年以上も前になりましょうか、晩秋、小諸を訪ねた折に見た真紅に色づいた
ドウダンツツジの美しさは忘れられない光景の一つです。 庭に植えたベニバナドウ
ダンは薄緑の新葉を広げていますので、いまから、何時、薄紅色の壷状の花を咲かせ
てくれるのかが楽しみで、毎朝欠かさずに観察をしています。