ビョウヤナギ

街の小公園の植え込みや、住宅地の庭木として植えられているビヨウヤナギの
黄金色の花が目立つ時期になりました。 我が家の庭でも咲き始めました。
黄金色の五枚の花びらよりも糸のように細くて長い雄蕊が作り出す曲線が自然の造
形の美しさを見せてくれる花です。 中国原産で日本には十七世紀の終から十八世
紀の初め頃に渡来したものといわれていますが、柳の葉に似た緑の葉の中から輝く
ばりの黄色の糸を放射線状に伸ばしているのは何とのいえないほど美しい花姿です。
そうした姿から金糸桃、金線海棠と雌蕊、雄蕊ともに金の糸で作った感じを現した
別名もあります。

 漢字では未央柳とか美容柳などと書かれていたり、園芸店の店先では美女柳
などとも表示されていますが、牧野植物図鑑では「日本名、未央柳の意味か、また
は美容柳の意味であるか、くわしくわからないが、いずれもその花が美しいことと葉
の細いことを柳になぞらえて名ずけたものである。」とさらっと記してあります。

 松田修氏の「花の文化史」では未央柳の名は、花が美しいので楊貴妃を評して
「太液の芙蓉、未央の柳」と称したことによると記してあります。この辺りのところ
を、白楽天の長恨歌を開いてみますと


        帰り来たれば  池苑みな旧に依る
        太液の芙蓉   未央の柳
        芙蓉は面の如く 柳は眉の如く
        此に対して   如何ぞ涙垂れざらん

で、玄宗皇帝が安緑山の乱後、かつて楊貴妃と共に過ごした宮殿を訪れて、池の
蓮の花に楊貴妃の容貌を、宮殿の柳にその眉をしのんだ情景なんですね。 そうした
ビヨウヤナギの繊細さを良く表した短歌がありました。

      嫋やけき葉こそ花こそうてなこそ
             未央の柳やさしかりけり      尾山篤二郎

 ご近所の公園など散歩の折りには、是非とも気にして見てください。 素晴ら
しい発見がありましょう。

                         うめだ よしはる

晩春から夏の花へ