形成外科Q&A (7)こぶ・腫瘍


Q1:リンパ管の腫瘍を生まれつき持っています。今まで、外科、内科、皮膚科、整形外科、形成外科に行きました。何処でも、原因は「不明」、対処法は、美意識の問題にたどり着くらしく、「気になるなら切る」という事でした。リンパ管の腫瘍をこれ以上転移(?)させないには、どうしたら良いでしょうか。

A1:リンパ管の腫瘍(リンパ管腫のことであると理解しました。)の増大を停止させるような良い方法は、今のところないといわれています。治療方法としては、これまで外科的摘除が最も有効な方法とされ、現在でも一般的な治療方針とされています。しかし、良性疾患であるリンパ管腫の場合、重要な臓器を犠牲にして機能的及び形態的な障害を残す手術は避けなければならないので、不完全な摘除にとどめる場合も起こります。ですのでそういった場合、残存したリンパ管腫が増大してきたときに再手術ということはある意味ではやむを得ないことなのです。手術以外の治療法としては、ブレオマイシンという抗ガン剤(リンパ管腫はガンではないが)注入による硬化療法の有用性を主張する先生もいます。しかしその硬化療法に関しての評価もまちまちであり、抗ガン剤による副作用も懸念されるところでもあります。

Q2:私の眼と眼の間に、4年ほど前から脂肪の固まりのようなこぶができてしまい、それがだんだん大きくなってしまい、いまでは2センチぐらいのこぶになってしまいました。ある程度動くもので比較的柔らかいです。これは何でしょうか。悪性でしょうか。

A2:ある程度動くもので比較的柔らかいということですのでその部位で考えられるものは粉瘤(類表皮嚢腫)、脂肪腫、皮様嚢腫
などでしょう。悪性の可能性は低いのではないかと思いますが、形成外科のある病院でまず診察を受けてください。

Q3:中学2年の息子のことでお尋ねします。半年ほど前、彼の顔を正面から見ると、顎の先少し右側が、左側よりもでていることに気がつきました。触ると、脂肪のようなしこりがあり、押してみると堅いものにあたりました。レントゲン、CTなどの検査の結果、骨の一部もでていることがわかり、去年の暮れに手術をしました。手術は、骨を少し削り、腫瘍と皮膚の一部を切り取るものでした。検査の結果は良性で「過誤腫」というものができ、それによって骨にも影響がでたのだろう ということでした。術後は良好でしたが、約3ヶ月たった今、縫ったあとの端のところが少しつまんだようにへこんでいます。縫った痕は、きれいな線になると聞いていたのでちょっと残念です。傷跡は、2.7cm位です。本人も少し気にしています。このような状態は、もう少し時間がたてば良くなるのでしょうか?また、再発という可能性は、どうでしょうか?よろしくお願いします。

A3:皮膚を円形に切除して、一線で縫って閉鎖するとその両端の皮膚は余り、中央の皮膚は逆に緊張します。そのため傷の端の部分が膨らんだり凹んだりすることが起こります。これは「ドッグ・イヤー」と呼ばれています。それをなるべく起こさないようにするのも形成外科の技術です。これは、数ヶ月の時間がたつとある程度は改善しますが、そのまま残ることもあります。気になれば、その部分だけ修正手術をすれば治ります。良性である過誤腫の場合、完全に切除されていればまず再発はないでしょう。

Q4:いちご状血管腫は5〜6才、遅くとも10才までには消滅するとは聞きますが、その 後皮膚がたるむとも聞きます。
私の娘の場合、かなり小さくなったとはいえ現在もかなりの盛り上がりが残っているので 自然消滅はしないかもしれないと感じています。 大きさは5×5センチ位です。将来的には外科的な手術を受けた方がいいのではと思っているのですが、それで皮膚のたるみなどはとれるのでしょうか。 顔面ですが傷跡は残りますか?入院はどれくらい必要なのでしょうか。

A4:もし手術となれば、皮膚のたるみを治すことも当然含んだ手術となるでしょう。傷痕は、大なり小なり残ります。それがどの程度目立つかどうかということが問題となります。しかしそれは、手術方法によっても変わってきますし、患者本人の持つ因子もあります。すなわち、同じことをやっても傷痕がきれいに治る人、目立つ人があるわけです。従って、どの程度目立つかと言うことはここではお答えできません。入院に関しては、手術を受ける病院の先生の考え方、病院の事情などにより異なります。数日で退院して良い場合もあるでしょうし、1週間、場合によっては2週間近く入院といわれる場合もあるかもしれません。それは、手術を受ける病院の先生に聞くべき内容です。

Q5:32歳、女性です。現在、左の耳たぶの粉瘤の治療で、総合病院の形成外科に通院しています。初めて粉瘤になったのは18歳の時で、そのあと何回か再発を繰り返し、今回、久しぶりに激しい痛みが出てきて 、診てもらったら粉瘤が2個できていて手術して取りました。しかし、抜糸したあとまた激しい痛みが続いたので診てもらうと、しこりのようなものができていて、「粉瘤の疑い」ということでまた手 術し、しこりと皮膚を検査に出してもらいました。検査結果は「にくげっしゅ」ということで、以前、手術した時に傷が広がらないように中に糸をつけたものがしこりになったということでした。「形成の手術では、よく行う方法なんですよ」と主治医の先生は言っていましたが、実際に糸をどのようにして中につけているのか、あと、糸がどのように変化してしこりになるのか教えていただければと思います。診察の時に、わからないことは、いろいろ先生に聞いたつもりなのですが、あとからまた知りたいことが出てきたのと、次回の診察までだいぶ日にちがあるのでメールを送りました。よろしくお願いします。 

A5:真皮縫合といわれる縫い方があります。皮膚表面を縫う前に、皮膚の裏側の真皮といわれる所に(真皮も皮膚の一部ですが)糸をかけて、表面に糸が出ないように縫う方法のことです。その糸は溶けるを使う場合もありますし、溶けない糸を使う場合もあります。どういう糸であってもこの糸は通常は抜糸をしません。傷をきれいに仕上げるために使うテクニックの一つです。
ただその糸がまれに感染の原因となったり、表に顔を出したりすることもあります。糸もヒトにとっては異物には違いありませんので、それが感染源になってその周りに不良な肉芽が形成されたりすることもあります。それが、「(異物)肉芽腫」です。

Q6:主人(36歳)のことでご相談したいのです。気が付いたのは3週間ちょっと前で、主人の左足の腿の上部内側に3cmくらいの柔らかい動くこぶみたいなものが出来、昨日病院へ行きました。結果は聞かされておらず、2週間後にMRIで検査をし、4週間後にその結果を聞きに再度病院へ行く予定となったようです。主人としては、最初から針を刺すなどして組織検査をするつもりでいたらしく、いきなりMRIで検査をすると聞き、不安を感じているようです。「癌かな・・・」などと。。。 そこでご相談したいのですが、MRIにて検査をする目的とは何でしょうか?MRIで何がわかるのでしょうか?

A6:その腫瘍の形態、位置(深さ)、境界がはっきりしているかどうか、周囲組織との関連などを調べます。それにより良性か悪性かの(ある程度の)推測、手術する場合の麻酔方法、アプローチの方法などを検討します。結局、MRIは腫瘍の性質を把握する目的で行います。MRIを検査することになっているから、癌が疑われているとはすぐに言えません。仮にMRIで腫瘍がはっきり写った場合には、手術をしてその腫瘍を摘出することを奨められる可能性が高いと思いますが、その手術で摘出された腫瘍を病理組織検査に提出して最終診断が出ます。

Q7:26才の男性です。10年ほど前から尾てい骨の部分が出っ張ってコブのようになり悩んでいます。4年ほど前に何科に行っていいかわからず整形外科に行きましたが外科で診てもらってくださいと言われたきり勇気が出ず行けていません。自分では人より尾てい骨が出っ張っている感じがします。温泉などに行ってもおしりが気になり困っています。きれいに直すことは可能ですか?もし可能でしたらどれくらい入院し、費用はいくらくらいかかりますか?本当に悩んでいます。可能な範囲でけっこうですので御回答よろしくお願いいたします。

A7:coccygeal fat pad(適当な日本語がないですが、尾骨脂肪体とでも言うのでしょうか)という疾患がありますが、多分それなのだろうと思われます。今まで同様な患者さんの手術を経験しております。骨もいくらか突出しているのかもしれませんが、主には皮膚とその下の脂肪の膨らみだろうと思います。
治療方法としては手術で切除することになります。線状の傷痕が残りますが、まずまずきれいになります。
入院期間としては、1週間ぐらいです。費用については、診察を受ける病院でお尋ね頂くようにお願いいたします。

Q8:5歳になる息子がベイカー嚢腫とゆわれてひざの裏の水を病院で抜いたのですが明日からは、別に普通にしておいていいとのことでしたが、大人は、ひねったりとか原因があるらしいのですが、子供に関しては、原因不明とゆわれてるんですとゆわれましたが、原因も大事ですが、今後、また腫れた場合、痛くなったら連れていって、痛くなければ放っておいていいとのことだったのですが、本当にそれでいいのでしょうか?そもそも嚢腫とゆうぐらいですから腫瘍の一種なのかなっととても不安です。

A8:良性の腫瘍(嚢腫)で、わかりやすく言えば、水が入っている袋です。悪性ではありません。治療としては、膨らみが気になったり痛みがあれば、そのように注射で水を抜きます。頻繁にそれが起こる場合には、手術で摘出を行います。

Q9:昨年1月に左下眼瞼黄色腫の手術をしました。また白いものが手術した所の少し上に目尻の近くに見え出しました主治医の先生は1月の診察の時は、はっきり言って下さらなくゼロとは言えないとの答えでした。この前の診察のときは、奥に潜んでいるかもしれないと言われました。もう少し様子を診させてと言われました。手術の時期はこちらから言うので心配しなくていいと言われました。再発とは、はっきり言って下さらないのですが間違いないみたいです。こんな事てあるんですか。

A9:眼瞼黄色腫は、完全に切除しても再発することをしばしば経験します。本来は腫瘍ではなく、コレステロールの局所的沈着と考えられています。ですので、基本的にそういう性質のものだと理解する必要があります。
血中コレステロールが高値であるなど血液検査で脂質代謝異常がでる場合もありますが、必ずしも異常があるとも限りません。(むしろ異常がない場合の方が多いです。)内科的にその治療の必要性があるといわれた場合には、その先生の指導に従い治療をします。異常がない場合には、特に再発を防ぐ手段はないので、再発して気になるようであれば、再び切除を行うということが一般的です。