<ひまわり通信13> 「ヤマアラシのジレンマ」 2019年10月5日

これはむかーし昔から言われている古典的なお話ですが、今もこのお話をすると
「あ〜そうなんですね。なるほど。腑に落ちました。」
と言ってくださる方が多いので、
この話を取り上げてみようと思います。

ヤマアラシというかわいいげっ歯類の動物はご存知ですか?
体の、特に背面と側面に、長いとげのようなものを持っているネズミに似たやつです。
このヤマアラシは寒いところに2匹以上でいると、お互いの体温が恋しくて、そっと寄り添おうとするらしいのです。
でも近づくと・・・ちくっ!と、お互いのとげとげでお互いを刺しあってしまうそうです。
ヤマアラシたちは、こりゃたまらん!痛いのは嫌だ、とお互いの距離を取り、いったんは離れますが・・・
でも離れると寒い。寒いのも嫌だ、と・・・
またお互いのぬくもりを求めて近づいてきます。
それでもまたちくっ!痛いとなり、離れる、でもまた近づく・・・
と何回かやっていると、適当な(ぬくもりを感じられて少し暖かいが痛くないという)程よい距離を見出して、
幸せそうに見えるようになる・・・、というお話です。

ショーペンハウアーという人の寓話がもとのようです。

いいお話ですよね。
私は好きです。

あんまり近づきすぎると、お互いがお互いを傷つけてしまうこともある。
でも離れると寂しい。
傷つけないように、それでもあたたかい気持ちになれるような距離感をお互いに見つけ出す、というのは時として、必要なのかもしれません。

特にクリニックでよくお話しするのは・・・
残念ながら?恋愛関係の方々ではありません。

親子関係が圧倒的に多いです。

優しくしてあげたいけど、親子だから…歯に衣着せぬ言い方でバンバン言う・・・
当然ケンカ状態になる・・・でも心配だし大事だし親子だし・・・
やはり近寄ってみる・・・
そして仲直りする・・・するとまたちょっとしたことでケンカする・・・
そこにいろんな人たち(配偶者やら親戚やら)が入り込んでくるとますますややこしい。

そんなことを繰り返しているときに
「あ、これ、もしかして、ヤマアラシのジレンマかも??」
と冷静になれると、
程よい距離感を保つようにすればいいんだ、と気づいて、
そこからきっと、もっと分かり合える良い関係になれるのではないかと思っています。

人間関係は、試行錯誤の連続かもしれません。

でも怖がらず、知識を持って、一歩踏み出すことも必要なのかもしれません。

ヤマアラシができることなら、人間にもきっとできるはず!!
そう思っています。
実際のヤマアラシたちは、とげの少ない顔と顔をくっつけていることも多いとか。
それもまた工夫ですよね。
かわいい。