最終の準備書面



平成元年(ワ)第七九八号  
              原告       A         男

              被告       世界基督教統一神霊協会
                               外一名
 平成九年一一月二八日
              原告代理人    嘉  松  喜 佐 夫

              同        河  田   英  正

              同        近  藤   幸  夫

              同        清  水   善  朗

              同        山  本   勝  敏

  岡山地方裁判所     御  中

          準 備 書 面

第一、 当事者
 一、 被告らの概要
  1、 被告統一協会は一九六四年東京都知事の認証を得て、同年七月一六
日付で宗教法人として設立登記をしている。被告久保木修己は同年に会長に就
任し、一九九一年九月までその会長職にあり、統一協会の業務全般を指揮監督
してきていたものである。なお、被告統一協会への霊感商法批判が高まるなか
以後次々と代表がほぼ一年ごとに交替してきている状況にある。
  2、 被告統一協会の違法な霊感商法の実態(甲第九九号証・同一〇一号
証)については日本弁護士連合会の意見書(甲第一五号証)にも明確に指摘さ
れている。そして、その被害は一九九一年には一年間で九二億円余の被害が発
生している(甲第三〇号証の一)などその大きさと深刻さウヘ甚大なものである。
さらに、これらの被害回復を求める訴訟は全国各地で提起され、被告統一協会
の責任を認容する判決(福岡地裁・高松地裁・奈良地裁・東京地裁)が次々と
なされていて、一九九七年九月一八日には最高裁も被告統一協会の責任を認め
る判決(甲第一一九号証)をだしている。
  3、 一方、資金稼ぎの重要な位置を占める合同結婚式が被告統一協会の
サタンと情交を持ったエバの原罪から救われるのは教祖との性交によってであ
るとする被告統一協会の教理との関わりをもってなされている。これらの婚姻
は両性の合意を持って婚姻とする日本の法秩序に明白に反し、これらの婚姻を
無効とする判決、審判が既に多数なされている。
 さらに、脱会をめぐる様々なトラブルを発生させ、日常的なインチキ募金、
珍味売り、欺瞞的署名等々社会に対して害悪を及ぼしていることは社会的に明
白な事実である。これらの事実は、被告らの活動が反社会的なものであって、
法的にも許容される限界を超えている存在であることを明確に示している。
 二、 原告A男の概要
  1、 原告A男は、一九六五年二月に香川県の農村地帯に生まれ、高校卒
業後公務員として就職して働いていた。高校時代は三年間テニス部に在籍して
いたスポーツマンであり、キャプテンも務めるなど誠実な人柄に他人からの信
用を集めていて人望もあった。実家の宗教は仏教であったが特に宗教に興味を
持ったことはなく、むしろ、宗教については嫌悪感を持っていた。
  2、 原告A男が被告統一協会と最初に関わりを持つようになったのは一
九八七年九月であった。そのころ原告A男は前記のとおり公務員の職にあり、
独身寮の個室に居住していた。勤務時間は午前八時三〇分から午後五時までで
あり、予算の編成期には午前零時ごろになることもあった。しかし、ゴルフ、
釣り、麻雀、囲碁等テニス以外にも興味を持つごく普通の若者であった。
  3、 一九八九年一月末に公務員を辞して献身しようとする直前に原告の
両親らによって保護され、冷静に自らの活動の経過をふりかえり、被告統一協
会の実態を認識するところとなった。被告統一協会に所属して貴重な青春の一
時期を被告の反社会的活動を担い、取り返しのつかない精神的損害を被り、経
済的にも多額の献金等を強いられるなど深刻な損害を被った。原告A男が被告
統一協会の一員として他の人を被告統一協会へと誘い、いまなお被告らと関わ
って反社会的行動を一心に行っているかもしれない重荷を感じながら生活をし
ている。
第二、 原告A男と被告らとの関わり
 一、 姿を隠し、偽りの接近 
  1、 一九八七年九月一五日の休日に被告統一協会に所属する木下慶一、
小野直美が原告の独身寮に訪れた。真の目的はビデオセンターに通わせるよう
にしてこれを契機に統一協会の信者にし、献金・物品購入を迫り、やがては献
身させて統一協会のために全てを投げうって働ける人をつくることであるにも
関わらず、アンケート(甲第九号証)への協力を依頼し、続いて「自分達が行
っている文化サークルへ来てみませんか」と単なる若者のまじめな集まりであ
るかのごとく装ってサークル活動への参加を勧誘した。単に宗教団体が最初の
接触をもちやすくするためにあえて宗教団体を名乗らなかったという程度を超
えた欺瞞的・反社会的なものであった。
  2、 原告は、単純に職場以外の友人ができるのもおもしろいかと考え軽
い気持ちでこの誘いに応じて被告統一協会の勧誘の最前線であったビデオセン
ターである「クリエイト」(甲第六号証の一、二、甲第二号証の一ないし一五、
甲第八号証)に行くことになった。ここでも統一協会であるとか、その後に用
意されているプログラムについては全く知らされないままアンケート調査、運
勢判断、原告の財産状態等のチェックがなされた。原告にとってはこれらが後
日原告を統一協会に引きこみさらには全ての財産を献金してしまうことになる
資料に使用されることになるなどとは夢にも思っていなかった。この場におい
て約四時間程説得を受け、結局ビデオ会員として三万五、〇〇〇円の入会金を
支払うこととなった。
  3、 原告は入会金として納付した費用分だけはビデオを見ることによっ
て元をとることができると考えていたが、ビデオセンターに行っても自由に選
択してビデオを見ることはできず、さらに青年サークルと行ってもビデオセン
ターのスタッフとしか接触がなく、広く友人関係を築きたいと考えていた原告
にとってはあまり興味を持てなかった。しかし、被告統一協会からの接触は前
記小野を通じ執拗になされてきていた。
 二、 ニセ占いによる霊界への恐怖
  1、 一九八八年四月一〇日、小野の誘いにより「占いの会」に誘われる。
これもあらかじめ原告らを信者に仕立てるために被告統一協会によって仕組ま
れていた催し物である。被告統一協会の霊感商法を遂行してきていた当時の統
一協会岡山県青年部団長鈴木光が原告に対して「あなたは今、転換期に来てい
る。人生について真剣に考えないといけない」と再びこの機会を通じてクリエ
イトに通うよう勧誘した。
  2、 これがきっかけでビデオセンターに毎日のように通うことになり、
あらかじめ一定の目的のためにつくられたプログラム通りにビデオを鑑賞した。
このビデオ鑑賞プログラムには統一協会の教えである原理講論が組み込まれて
いて順次見ていけば自然と罪の意識にさいなまされるようになり、そしてその
罪意識から逃れるためには文鮮明に帰依して霊感商法に邁進するしかないとい
う精神状態に陥っていった。原告は、霊界の恐怖に脅えるようになり、被告ら
の意のままに心を操作される状況になってきていた。
  3、 原告の家庭環境、財産状況、親族の状況、原告の関心事、原告の現
段階の心理状況(不安感・恐怖感等々)は被告ら側にアンケート調査、家系図
調査、担当スタッフによる綿密な観察によって正確に把握されていた。これら
の情報を完全につかみながら被告側は占い師を原告の前に登場させ、前述の鈴
木光に続いて四月一七日には「吉田」という占いの先生にビデオセンターで会
わされた。吉田は「あなたの母方の家系は女性ばかりですね、こういう家系は
途絶えてしまうんです」「あなたがしっかりしないといけません」「あなたの
祖先があなたの家族に霊界から何かを訴えているのでしょう」等々と述べて、
原告を、このままの状態が続けば原告の家族に不幸がくるのではないかとの恐
怖感に陥れた。
  4、 五月二二日、ビデオセンターで「全国でも五本の指に入る偉い先生
に占ってもらえる」といわれて花田雅弘の占いを受けることになった。この占
いも決して原告の生きる道筋を占い、原告が人として意義ある人生を送ること
ができるようアドバイスをするという目的ではなく、原告を霊界の恐怖に完全
に陥れ、被告統一協会に全資産を献金させて統一協会員として霊感商法を遂行
していく人格をつくりあげることに目的があった。花田雅弘は、真実は占い師
などではなく当時統一協会岡山教会の岡山県本部長をしていたものであり、壺
・多宝塔を先祖の因縁を説いて恐怖に陥れて売るといういわゆる霊感商法の最
前線にあった岡一商会の社員であったもので、これに関してトラブルが発生し
た場合は弁護士とも示談交渉などを担当していた者である。
 花田は「君の祖先は武士だった。それも相当偉い位にいた」「殿様だったら
多くの人を殺し、多くの女性も泣かしてきただろう」「祖先が犯した女の恨み
によって君を堕落させようとしている」「よく、生きていられるな。こらあか
ん、こらあかん」などと原告を完全に霊界の恐怖に陥れた。これから原告はこ
れの恐怖感・不安感からまぬがれようとクリエイトに熱心に通うようになった。
つまり、統一協会への接着度が一段と高まった出来事であった。
 三、 脅しと恐怖の献金
  1、 五月二七日、原告は前記のとおり不安感を追い払うために寄るよう
になっていたビデオセンターに夕食もとらないまま寄った。原告としてはいつ
ものとおりという以上に特に変わった意味をもって寄ったわけではなかった。
しかし、被告統一協会側では、この日に原告から全財産の献金を迫るべく準備
されていたのであった。そのためのビデオが準備され、そのためにビデオセン
ターの久野所長が直接一対一の講義を設定し、深夜になっても原告に対応する
スタッフだけがビデオセンターに残ることになっていた。こうして翌日の午前
三時まで原告はビデオセンターに留まることとなった。
  2、 このようにして被告側にとっては用意万端整っている場所に原告が
全く無防備に何らの説明なくおかれたのであった。
 そして、「今日はビデオではなく久野所長がA男さんのために特別講義をし
てくださるので楽しみにして下さい」と他の部屋とは仕切られた畳の部屋に一
対一で話すこととなった。
  3、 「この講義内容は、「今まさにこの時代にメシアが現れている。戦
争等人と人が憎しみあわない世界が実現できるんだ。しかし、この時を逃せば
世界は滅びてしまう。」「A男君の肩に世界の平和・歴史がかかっている。世
界を救う使命があるんだよ。」「A男君は、ここへ偶然に来たと思っているか
もしれないが、神様に選ばれ、A男君の徳を積んだ祖先によって導かれてここ
へ来ることができたんだよ。」というものであった。
 講義が終わり、スタッフから神についてどう思っているかを聞かれ、「神様
は全知全能の神でありますが、悲しみの神様です。」と答えた。これまでのビ
デオ講座・スタッフとの会話などからこのように答えられるようになっていた。
この言葉を確認しスタッフは奥の部屋へ行き、しばらくして、一本のビデオを
持ってきて、九時過ぎからこのビデオを見ることになった。食事をとっていな
かったこともあり、緊張感と共にかなりの疲労感もあった。このビデオは「主
の路程」の巻であり、これによって統一協会及びメシアとしての文鮮明が初め
て原告に明かされた。「文鮮明ほど他人のために苦労し、無実の罪にもかかわ
らず弾圧された人はいない。」という内容で、原告は「この人が「メシア」な
ら納得できる。」と思うようになった。
 さらに、統一協会の活動を紹介した内容もあり、世界中で貧困で苦しむ人々
を食糧・医療援助等をして、多くの人々を助けている姿が紹介されていた。
  4、 ビデオが終わったときは既に午後一〇時近くになっていた。周りに
は久野、窪田、田辺以外は誰もいなくなっていた。そして、ついに全財産を献
金するという総献金の話になっていった。久野から「世界中の人々が幸せにな
るために統一協会へ献金してほしい。」と言われ、原告は「一〇万円位ならし
てもいい。」と答えた。この金額は当時原告の出し得る最大のものであった。
入会時のアンケートでは一〇〇〜二〇〇万円の所に印を付けていたが、その時
点では全ての財産(保険を含む)は七〇万円になっていた。原告にとっては一
〇万円でも非常に大きな金額であった。しかし、「全ての財産・資産でなけれ
ばだめだ。」と迫られ原告は霊界の恐怖もあって非常に苦しんだ。ところが、
スタッフ達は「A男君は口先だけの人間ではないよね。」「A男君のお金でア
ジア・アフリカで飢餓で苦しむ子ども達が何万人も助かるんだよ。」「A男君
の場合たかが七〇万円だろ、僕なんか二〇〇万円も出したよ。」「このことは
みんな乗り越えてきていることなんだよ。」「A男君の背後には神様が常につ
いているんだよ。」「交通事故でも起きたら七〇万円なんてすぐに無くなって
しまうよ。」「後は神様がみてくれるから保険もいらないよ。」といってさら
なる献金を迫ってきた。原告が決意しなければどうしても帰さないという意思
が強く原告に感じられた。
 続いて、こもごも「金持ちが天国に入るには、ラクダが針の穴を通るよりも
難しい。今は、神様がA男君に試練を与え、神様のことをどれだけ受け入れて
いるか試されているんだよ、」「一億円持っている人が七〇万円出しても神様
は喜ばないよ、でもA男君が神様のために全てを捧げたら神様は「この子こそ
我が子」と言って泣いて喜ぶよ。」「神様や霊界の祖先はA男君が今心の中で
考えていることが分かっているんだよ。」「A男君の背後には霊界で苦しむ祖
先が見守っているんだよ。」「A男君の決意の大きさによって地獄で苦しむA
男君の祖先が助かるんだよ。」「A男君が霊界へ行ったときは、何百何万の祖
先や家族が出迎えてくれ、よくやったと手を取り喜んでくれるよ。」「でもね
決意しなければ何万の祖先からボコボコに殴られるよ。」「地上で生きている
のは、たかが後五〇年そこそこだよ、でもね霊界は永遠だよ。地上で生きてい
た時に何をやったかによって、霊界の位置が決まるんだよ。僕なんか相当高い
位置にいるけど、A男君はまだまだ低く、このままだと地獄へ行ってしまうよ。
今は崖っぷちに立たされているんだよ。そのまま進むと海に落ちるだけ、それ
が、今、天からはしごが降りてきた。乗るか乗らないかはA男君自身で決める
ことだが、天国へ入るためには、サタン世界の汚れきった物を捨てないと入れ
ないんだよ。僕を信じてついてくればいいから。」「A男君は今日真理を知っ
てしまったんだよ、神様は今までは真理を知らなかったから大目に見てくれた
けど、これからはそうはいかなくなるよ。法を知って破る人と、つい知らずに
破ってしまった人とでは、罪の大きさは天と地ほどあるよ。」などと全ての財
産を提供するよう迫ってきた。しかし、今後の生活を考えると原告はどうして
も「全てを献金します。」とは言えなかった。
 時間は既に午前零時を過ぎていた。もうタクシー以外では原告は寮に帰る手
段もない時間となっていた。既にビデオセンターに来てから五時間が過ぎてお
り原告は疲労困ぱいであった。それでもなお決心のつかない原告は頭を机に引
っ付け悩み苦しんだ。しかし、一〇万円で許して帰らせてくれる雰囲気では無
く、七〇万円を出すことをついに了承した。原告が決心を伝えるとスタッフか
ら原告に「お金は魔が入りやすい(気持ちが変わりやすい)ので必ず明日納め
て下さい。」と言われ、その日会社を早退して保険の解約手続をしてビデオセ
ンターにお金を届けた。結局全財産を換価しても六〇万円にしかならなかった。
なお、献金を決意して寮に帰ったのは,午前三時であった。
 四、 マインドコントロールの深化
  1、 一九八八年六月一五日から「スリーディズ」に原告は参加した。「
スリーディズ」とは、広島県可部にある統一協会の施設に泊まりこんで行われ
る修練会である。睡眠時間までコントロールされる厳しいスケジュールで行わ
れ、二日目の夜は明かりを全て消されて、講師の朗読がはじまるなど組織的に
演出されたなかで(甲第三九号証)統一協会員として献身を決断するようにな
る。全てを献金し、スリーディズのプログラムを経て、宗教を否定していた原
告はいつのまにか統一協会員として生きていくことを決断するに至っていた。
しかし、常に霊界からの恐怖におびえていたのであった。
  2、 スリーディズが終わるとすぐ間をおかないで新生トレーニング(甲
第二〇号証)が始まった。新生トレーニングの段階にはいると教会に寝泊まり
するようになり、職場から帰って午後七時から始まる二時間の講義を受けるよ
うに午前六時には起床し、体操等きびしい日課がはじまり参加者は慢性的睡眠
不足となる。この段階から直属の班長に対し、定刻に報告・連絡・相談をしな
ければならなくなり、生活そのものが完全に被告側によってコントロールされ
るようになる。原告が被告から脱落しないためのシステムの一つである。
  3、 一〇月からは実践トレーニングが始まった。これまでは統一協会員
として献金をしたり、一方的に講義を受けるだけであったが、この段階で統一
協会の伝道活動を行う実践的訓練に入る。原告は騙されるようにして被告統一
協会と接触を持つようになったが、逆に原告が騙す立場になるのである。新生
トレーニングで六時間位の睡眠時間であったものがさらに短くなりこの段階に
入ると一日平均五時間位しかなくなる。いよいよ献身に向けて最後の段階を迎
えることになる。
 原告は指示に従い、岡山中央郵便局の前とかビデオセンターの周辺で通行人
に対してアンケート用紙を持って声をかけ、戸別訪問をした。統一協会の定着
経済部門としての絵画転時販売会についてはできるだけ大勢の人を動員するの
も実践トレーニングの内容の一つである。事前に動員目標の設定がなされ、セ
ールストークについてもあらかじめ指示を受け、会場に配置された「トーカー
」「マネキン」「担当者」「タワー長」の組織的な役割をそれぞれが果たすな
かで買わせるようにする。原告も何度かこの動員をする役割を担った。これら
の活動はいずれも原告がより深く統一協会と関わりをもつようにプログラムさ
れたシステムの一つである。
  4、 実践トレーニングが始まってからは教会での寝泊まりが始まったが、
やがて、一〇月の終わりごろから原告は統一協会の青年部と学生部の人が集団
生活をしているいわゆるホームといわれていた「津倉荘」で他の人と一緒に過
ごすようになった。こうして全生活が統一協会にとりこまれた情態となり、欺
瞞的な方法による物品の販売、姿をかくした伝道等の反社会的行動を何ら疑問
を持たないで遂行するようになった。
  5、 前述したとおり、原告には毎日報告・連絡・相談が義務づけられて
いていわば全生活を被告統一協会によって支配されている状況であり、外部で
ある両親らとの接触もきびしく制限されていた。部内では「対策」と称し、統
一協会の被害者を救出し、被害救済活動を行っている人達をサタンとして外部
からの情報に接することを困難にし、自らの意思で考え、思考する能力を奪い、
統一協会からの脱会を決断することを著しく困難な状況にした。その結果、脱
会するまでに多大な精神的苦痛を味わうこととなった。
  6、 原告は、セミナー参加費として合計一二万五、〇〇〇円を支払った。
前記六〇万円の献金の他に一四万七、〇〇〇円を別途献金している。
第三、 マインドコントロールの違法性
 一、 原告は第二の項目で述べたとおり、姿を隠した接近からニセ占い師の
登場、ビデオセンターでの組織的にプログラムされたビデオ講座の受講、これ
を支えるスタッフの手紙・訪問、スリーディズ・新生トレーニング・実践トレ
ーニング、右の中でなされる総献金等は、一連の原告への働きかけとして最終
的には文鮮明の指示であればそのまま受けいれ、たとえ反社会的行動でも何ら
の疑問を持たないで遂行することのできる人間をつくるためのマインドコント
ロールの手段である。これは原告の宗教を選ぶ権利を不当に侵害するのみなら
ず、人格権を侵害し、反社会的集団にこころならずも所属し、その一員として
活動させられたもので、脱会に至るまでの精神的苦痛などその精神的損害は一
〇〇万円を下ることはない。
 二、 被告統一協会のマインドコントロール
  1、 これらのマインドコントロールのシステムの意味は「統一協会のマ
インド・コントロール」(甲第四〇号証)にまとめられている。原告A男の場
合は右表のうち「VC」「2ディズ」「新生トレ」「実践トレ」の項目がこれ
に該当する。この仕組みについてはこれまでの準備書面でも詳しく述べた。
  2、 「ビリーフの形成と変化の機制についての研究」(甲第四五号証)
は統一協会を脱会した人を対象に研究者が直接面接するなどして質問用紙を回
収して分析したものである。ビデオセンター・セミナーでの心理状況を分析し、
被告統一協会のマインドコントロールのシステムを解明している。被告らの前
記一連の欺瞞的システムが勧誘を受ける者の「ビリーフ」を変容させていくこ
とを明らかにしたものである。
  3、 右二つの事実から 被告統一協会のマインドコントロールシステム
は全国共通的に行われていること マインドコントロールの結果の原告の献金
及び統一協会への入会等であるとすれば表面的には原告の意思に基づくもので
あると見えても実際は自らの意思でなされたものではなく、右システム自体の
妥当性の有無が問われなくてはならない。
 被告統一協会の前記一連の行為によるマインドコントロールは積極的に三項
以下記載のとおり原告に虚偽の事実を告げ、騙し、恐怖に陥れ、畏怖困惑させ
てビリーフの変容をもたらしたもので、その手法において法的に許容されない
ものであって、原告の意思決定を不当に阻害した違法なものである(本件の場
合、献金を迫った明らかに違法な行為をみるとき、被告らの行為は入会勧誘か
ら脱会を決断するまでの一連の連続的違法行為と評価することもできる)。
 三、 被告らの勧誘等における嘘の数々
  1、 原告に対する最初の被告からの接触は、アンケートに協力して下さ
いというものであった。真実は最終的には統一協会員にして献金をさせ、新た
に統一協会の伝道活動にあたるように勧誘する目的であったにも関わらず、そ
れらの目的を全く隠していた。積極的に隠すよう指示を受けて接近していた。
最初に接触した小野直美は「ホ−ム」に暮らしていた統一協会の献身者であり、
統一協会のビデオセンターのスタッフであるとともに統一協会の経済活動(霊
感商法)を担っていた美光のスタッフでもあった。
  2、 アンケート調査は青年意識調査を装いながら(甲第九号証、甲第一
二号証、甲第一三号証)実は統一協会に勧誘しやすい人を選別していた(平成
六年二月二〇日小野直美調書一三ページ〜二一ページ)
  3、 統一協会であるか否かを問われても宗教とは関係ないことを言うよ
うに指示をされていた。あくまでも若者の文化サークルといっていた。原告が
ビデオセンターに通うようになって疑問に思ってただした時も宗教とは関係な
いと答えていた。しかし、あくまでもビデオセンターは統一協会の伝道の場所
であった(同調書二五ページ)。
  4、 ビデオセンターは甲第二五号証のような配置になっていて、外部者
には見えないところにスタッフルームがあり、タワー長がいて原告らが決断を
しぶっていると即座に指示がでるようになっている。しかも、その対応の仕方
はマニュアル化され(甲第一〇号証・甲第三二号証・同第三一号証・同第三八
号証・甲第九〇号証)、統一協会であることを気付かれないままビデオセンタ
ーに入会を迫ることができるようにシステム化されている。これらのマニュア
ルは、被告統一協会において全国的に作成され、組織的に運用されてきてきて
いた(甲第九八号証の一〇など)。
  5、 ビデオセンターでの亀甲アンケート(甲第二一号証)は、真に原告
らのためになされるのではなく、原告の財産状況をあらかじめ把握し、どこま
で献金を迫れるかの目安とし、家系図づくりはその後の恐怖に陥れる占い師ら
の因縁トークに利用するための材料を得るためのものである。そして、この因
縁トークなどは占い師ではなくても誰でもが対象者に対して確実に霊界の恐怖
を抱かせてそれを利用するなどその役割を果たすことができるようにマニュア
ル化(甲第三六号証、同三七号証、同三三号証)されている。
  6、 占い師による嘘と脅迫
   (一) 目的の嘘
       統一協会との関わりに一歩ふみだせないでいる原告を先祖の因
縁を説くなどして霊界の恐怖に陥れ、最終的には文鮮明に対する帰依を迫って
献金をさせる目的であったにも関わらずこれを秘して、偉い先生による占いで
あるなどといって、単なる人生相談の機会であるかのごとく目的を偽っている。
   (二) 占い師の嘘
       「偉い先生」であるとか「日本で五本の指に入る先生」という
のは嘘である。一九八八年四月一〇日に小野直美から誘われて会った「占いの
先生」と称していた鈴木光は、実は被告統一協会岡山教会青年部団長の地位に
いた者で(甲第九四号証七ページ)、一九八六年一月三〇日には島根県松江市
で人参液や絵画などを売って霊感商法の最前線にいた有限会社光和商会の取締
役をしていた者であった(甲第四四号証)。霊感商法の正に責任者であった者
である。なお、霊感商法批判の高まるなか一九八八年一月にこの会社は解散さ
れている。
「日本で五本の指に入る先生」と紹介された花田雅弘は当時被告統一協会岡山
県本部長の役職にあった者である。そして、壺や多宝塔を先祖の因縁を説くな
どして霊感商法を推進していた有限会社岡一商会(甲第一〇八号証)の営業部
長の職責にいた(甲第一〇七号証)。また、同人は霊感商法をめぐるトラブル
に関して直接原告代理人ら弁護士と交渉してきていた者であって、霊感商法を
中心的に推進してきた最前線の人であったといえる(甲第二四号証、甲第九三
号証の一ないし三)。本件訴訟において右事実関係を立証すべく証人申請をし、
採用されたが、同人は正当な理由なく出廷を拒否した。直接交渉をしてきた弁
護士の尋問を受け、事実が明らかになることをおそれたためである。このよう
に占い師として登場した者は、いずれもいかにして対象者を先祖の因縁を説く
などして霊界の恐怖におびえる人間をつくって献金を迫るという目的をもって
「占い」をしている。常に恐怖心をあおって不安に陥れることをしてきている
ものである。
   (三) 占いの嘘
       既に右に述べたように、その占いの内容はマニュアルに基づき
対象者(原告ら)が恐怖を抱くようになされる。信仰もしくは独自のインスピ
レーションや信念によってなされるものではない。従ってその内容は「祖先が
犯した女の恨みによって君を堕落させようとしている」などという画一的な内
容となっている。
  7、 絵画展・着物の展示販売の嘘
     統一協会員としての活動の一つとして右のような販売会への動員指
示がなされる。この会場には誰でもが自由に入れるのではない。単なる資金稼
ぎでしかない催し物について指示された数の動員を達成することが信仰の証し
とされ、何らの罪悪感を感じさせない。この展示会においては「トーカー」「
マネキン」「担当者」「タワー長」などの役割を持った者が配置され、この場
においても事前のアンケート調査などの資料が活用され、単なる物品の販売の
場所ではなく霊感商法実践の場となる。
 原告もこのようななかからシャルムを販売店とする時計を高額で購入させら
れている(平成四年三月一八日原告本人調書一二〇項等)
  8、 「万物復帰」との関わり
     被告統一協会による霊感商法等の経済活動は「万物復帰」と言われ、
サタン側にある万物を神の下へ取り戻すという教えに基づくものである。ここ
にいう万物とはお金をはじめ地上にある全ての財物とされ、再臨のメシアであ
る文鮮明にこれを全て捧げるということである。この統一協会の教えを実践す
ることは「天法は地法に勝る」と教えられ、詐欺的・脅迫的な霊感商法は、地
上天国実現のために「復帰した金」を用いるのであるから人を騙して売っても
むしろその人のためにもなるのでかまわないという違法行為を正当行為として
すすめられるべきこととされている(甲第四六号証ないし甲第六五号証)。こ
うして統一協会員は違法な販売活動に何ら疑問を抱かず推進するようになるの
である。原告が統一協会員として絵画の販売活動等について罪悪感を感じなく
なっていたのはこのような統一協会の教えと深い関わりがある。シャルムから
時計を購入したのもこの考えに基づくものであった。また、余裕がある限り献
金をしていくのも右考えによるものである。右に引用した統一協会の機関紙「
ファミリー」には繰り返しこの万物復帰のことが説かれている。例えば「この
世界にみれば、先生のやり方は最悪ですが、天的に見ればそれは最善のことな
のです」(甲第六〇号証)「刑務所が悪いところではありません。もしも天命
によってそういう罪を犯したとするならば地獄に行きません。そこに国が加担
し、天が加担する」(甲第六四号証)等々万物復帰のため違法行為を犯すこと
に何ら躊躇しないように価値観を転換させている。こうして、統一協会員たち
は、展示販売会への動員、壺・多宝塔・人参液等の販売、献金の強要へとかり
たてられていくのである。この万物復帰と霊感商法との関わりは既に他の判決
等で認められているところである(甲第四三号証)。
 四、 アンケートから献身に至るまでの一連の不法行為
    原告が宗教には何らの興味を持たない青年から霊界への恐怖感を抱く
ようになり、全財産を投げだす献金をしたうえで、被告統一協会に献身を決意
するに至ったのは第二記載の経過であり、それぞれは一連の一体化した目的行
為であり、前述のとおり原告の自由な意思形成を不当に妨げる不法なものであ
り、人格権を侵害する不法行為である。
 これらの一連の行為が合目的的になされていることは被告らの内部資料(甲
第一一二号証)、全国的に共通のプログラムが実践されていること等から明白
である。甲第一一二号証にはビデオ受講に至るまでの手法と以後どのようにし
て献金を迫り、「実践」という段階に至らせるかというチャート図が記載され、
家系図のとり方、その利用の仕方、因縁トークから献金(SK)の迫り方など
細かく内容が指示されている。また、恐怖を抱かせて信者献金を迫る手法につ
いて被告統一協会内部において組織的に詳しく講義がなされている(甲第八九
号証の一、二)。霊感商法への被告統一協会としての組織的関わりについては
その幹部も認めているところである(甲第四一号証)。
第四、 献金(一九八八年五月二七日)の違法性
 一、 原告は、一九八八年五月二七日にビデオセンターの一室において原告
の全資産を被告に献金することを決断させられ、翌日六〇万円の現金を被告統
一協会に渡した。これは、それまでのビデオセンターに通いビデオ講座を受講
しニセ占い師によって霊界の恐怖にとりつかれている原告の状況を利用し、全
ての財産の献金を迫るべくビデオの題材を選択して見せ、特別講義と称して献
金を迫り、深夜数時間に渡ってビデオセンターのスタッフが取り囲み献金を決
断しなければ帰宅できない状況に追い込んで、恐怖のうちに献金を決断させた。
そして、その決断後はすかさずスリーディズ、新生トレーニング、実践トレー
ニングが始まり、統一協会から脱会させないためのフォローがあり、献身へと
誘導していった。
 二、 献金の勧誘行為が例え布教活動の一環として行われたものであったと
しても、その目的・方法・結果において社会的に相当でないと判断される場合
は違法となり、民法七〇九条の不法行為に該当する(平成六年五月二七日福岡
地裁判決等々)。本件の場合、直接本件勧誘のなされる前に原告に恐怖感を持
たせる一連の行為が存在し、そのようにして霊界に対する原告の恐怖心を利用
して計画的に深夜の長時間にわたる原告を取り囲む複数の人による献金強要は
目的手段において社会的相当性を欠き、その結果全資産を提供することを決断
させたことは結果においても相当ではなく、右献金勧誘行為は不法行為を構成
し、被告統一協会はこのような勧誘行為を組織的にした直接の責任を負う。少
なくともこのような勧誘行為をした信者を統轄している立場として民法七一五
条に基づく損害賠償責任を負う。
第五、 被告らの一体性と違法性
 一、 被告の献金勧誘システムは 全国及び各地区において献金目標額が定
められ、目標達成に向けて献金勧誘が行われていたこと、 伝道方法について
は、各種マニュアル等により全国的に共通の方法がとられていたこと、 伝道
方法は、対象者の悩みを聞き出し、様々な悪い現象は先祖の因縁によるもので
あるなどの因縁話や霊界の話をした上、被告の教義ビデオ等を見せて教育する
というものであったこと、 献金前に予め対象者の財産を把握することに重点
が置かれていたこと、 献金直前まで被告及び文鮮明のことを明かさずに勧誘
行為をしていたこと、 執拗な勧誘行為が行われていた。そして、被告の献金
勧誘のシステムの特徴として、 万物復帰の教えの下、個々の対象者からその
保有財産の大部分を供出させ、被告全体としても多額の資金を集めることを目
的とするものであること、 対象者がある一定レベルに達するまで、被告の万
物復帰の教えはもちろんのこと、被告や文鮮明のことを秘匿あるいは明確に否
定したまま、対象者の悩みに応じた因縁話等をして不安感を生じさせあるいは
助長させる方法をとっていること、 各種マニュアル等により勧誘方法が全国
的に共通していて、組織的に行われていることが挙げられる。このうち、 の
点は、被告への入会ないしは献金等を勧誘するに際し、入会ないしは献金等を
しようとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のこ
とを告げ、恐怖に陥れ、また、被告への入会ないしは献金等をさせるため、対
象者を威迫して困惑させるものであり、方法として不公正なものである(甲第
一一三号証奈良地裁判決)。
 二1、 右に述べたとおり、被告統一協会の献金等勧誘システムは全国的組
織的に遂行されているものであって、これが違法と評価される場合は直接不法
行為責任を負うというべきである(前記奈良地裁判決)
  2、 非営利団体である宗教法人の信者が第三者に損害を与えた場合に、
その信者が右宗教法人との間に被用者の地位にあると認められ、かつ、その加
害行為が宗教法人の宗教的活動などの事業の執行につきなされたものであると
きは、右信者の加害行為につき民法七一五条に定める使用者責任を負う(甲第
四三号証福岡地裁判決)。
 よって、被告統一協会は原告の被った財産的損害・精神的損害について、直
接不法行為責任を負うとともに、信者のなした違法行為についても賠償責任を
負う。
  3、 被告久保木修己は、被告統一協会の設立当初から同協会の組織活動
に中心的に深く関わってきた者であり、前記組織的な違法な献金をはじめとす
る伝道活動、霊感商法を指揮・監督してきたものであって、本件原告の被害に
対して不法行為責任(民法七〇九条)が存する。
 同被告が被告統一協会の責任者として指揮をとっていた時期にビデオによる
原理講論の普及を直接指示し(甲第一六号証の一ないし七)、ビデオセンター
による伝道をつくりあげている。そして、これらビデオセンターが中心的役割
を果しながら霊感商法をめぐる深刻な被害が多発した(甲第八〇号証ないし甲
第八八号証)。
 三1、 被告側はビデオセンターが宗教団体の名を秘した統一協会の伝道の
場所であることを認めながら、これは「信者を中心につくられたもの」(平成
六年二月一〇日小野直美証人調書二五ページ)としてビデオセンターでの献金
・伝道については統一協会は一切責任がないかのような主張している。しかし、
前述のとおりビデオによる伝道が統一協会の方針として全国的組織的になされ
ていること、信者団体という法人とか特別の団体があるわけではなく単なるグ
ループであること(同調書五八ページ)、これらの団体が存在したかのような
被告側からの主張は、本件訴訟が提起されてはじめて主張されたこと、被告側
の認識でも「もしかしたら、ある組織一定レベル以上の人しか知らない組織」
(甲第一二〇号証の二)というものであって、あえて被告統一協会の責任を免
れさせるための詭弁である。
  2、 原告の本件献金は信者組織に対してなされたものではない。原告は
統一協会の他に信者組織、信徒団体の存在など全く知らされていなかった(こ
れらの組織が存在するはずはなかったことは前述のとおり)。宗教上の理由に
より寄付する者は、自ら帰依しようとする宗教団体またはその教祖を信じ、当
該団体または教祖が有すると誇示する力を頼み、それから御利益を得、または
それによって降りかかると告知された災難から逃れる意図の下に寄付するので
あって、自己に利益をもたらすか、または降りかかる災難を防ぐについての力
を有するかどうか判然としない信徒の団体に対して寄付することはありえない
のは当然である(甲第一二一号証)。


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