1997年7月16日、統一協会の活動の違法性を訴えた「青春を返せ裁判 」で、原告A男さんが陳述した意見は次のとおりです。
(中見出しを紹介します)
 一、はじめに
 二、裁判を起こした理由
 三、精神的被害の内容
 四、統一協会の危険性
 五、統一協会の騙し、献金の違法性
 六、占い師花田の証人喚問の意味
 七、善悪の判断、価値観のすり替えが行われた。
 八、勧誘の違法性(信教の自由)
 九、どうして命がけで信じていたものから脱会できたのか
 十、最後に

意見陳述書

一、はじめに

 まず、この裁判で私に陳述の場を与えて下さり、裁判長及び皆様に感謝申し 上げます。
 私は約9年前にこの訴訟を起こしました。この裁判では、私が受けた精神的 被害、及び献金という形で、脅され、騙された私の財産を返してほしいと訴え ていますが、ただ、これだけが目的でないことを分かってほしいのです。この 裁判で仮に勝利しても結果としてはお金でしか解決できません。損害額、訴え ている金額は200万円です。2年前に仕事の関係で転勤し、この裁判に来る 交通費だけでも3万円が必要です。裁判以外にも打ち合わせ等必要に応じて経 費は積み重なって行きます。1回3万円の旅費が我が家の生計に重くのしかか ってくることがあります。このことからも、お金だけを返してくれと言ってい るのであれば、最初からこの裁判は起こしていません。私だけではありません。 弁護を引き受けて下さっている河田先生はじめ多くの弁護士さんへ私は弁護士 費用を払っていません。ほとんど手弁当で裁判を進めてもらっています。また、 毎回傍聴に来られ支援して下さる皆さんも、平日ということもあり、わざわざ 忙しい仕事を休み、時には遠く東京から来られる方もいます。この裁判が私の 200万円の損害賠償であれば、これだけの支援はないと思います。
 さらに、この裁判を続けて身にしみて分かったことですが、精神的被害とい うのは、脱会後に重くのしかかるのだと分かりました。正直に申しますと、私 個人としては、この裁判を続けていくことが非常に辛いのです。犯罪組織であ る統一協会に在籍していたことが、もし、世間に知れればどんな冷たい仕打ち に逢うか分からない。白い目で見られ、仕事を辞めなければならない。家族が 路頭に迷うのでは、自分の子供がいじめに逢うのではと、考えれば考えるほど 計り知れず悩まされ苦しめられるのです。この裁判を闘い続けることが、果た して自分にとって何の意味があるのだろうか。過去の苦い経験をさらけ出さな ければならない。しかも、世間の目という恐怖に脅えなければならない。もし、 考えているものが現実のものとなれば、この裁判で訴えている200万円では 済まなくなるでしょう。
 もし家族がバラバラになれば、もはやお金では解決出来なくなり、裁判をや ったことにより自分を責め後悔すると思います。
 それでも、この裁判を続けなれればならない理由があるのです。このことか らも、訴えている内容以上に大変大きな意味があるのです。

二、裁判を起こした理由

 ここ数年、宗教関係で大きくマスコミに取り上げられたものとして「オウム 真理教」があります。彼らは地下鉄サリン事件等過去に類をみない凶悪犯罪を 犯しました。この犯罪に荷担した実行班はこれから、罪を償わなければならな いと思います。例え、マインドコントロールされていたにせよ、罪は罪として 償う必要があります。ただ、彼らに言えることは、オウム真理教、麻原教祖が 存在、出会わなければ決してあんな凶悪犯罪を起こさなかったと思います。罪 の根元は彼ら自身ではなく、あくまでオウム真理教及び麻原教祖にあると思い ます。彼らがもともと持っていた善悪の基準をマインド・コントロール等を用 いて打ち壊し、オウム真理教にとって都合のいい新たな価値観を植え付けたこ とが問題であると思います。彼らの大部分はマインド・コントロールが解けた 今となっては反省し、後悔しているように、決して、自主的判断で望んでやっ たことではないのです。
 私の裁判でも、統一協会側が主張・反論していた内容は、「あなた自身が納 得した上で入り、協会員となり、喜んで活動していたではないですか。」もし、 この主張のとおりであれば、私はこの裁判を起こす事自体間違いと思いますし、 裁判も成り立たないと思います。ビデオ会員として入会し、ビデオセンターに 通ったのも私であり、献金を決意し渡したのも私です。統一協会の名前を知っ てからも通い、各種セミナーに行ったのも私です。統一協会が私の首に縄を掛 けて強制的に誘拐したものではありません。確かに、何も知らない人から見れ ばそのように見えると思います。しかし、実態は心に縄を掛けて引きずり込ま れ、活動させられたものであります。この裁判が分かりにくいのは、この当た りに原因があるのだと思います。
 私はこの裁判で、心を乗っ取ることが罪になるのか、というところを争いた いのです。統一協会が起こしている様々な犯罪が、組織の命令によるものなの か。個人で勝手に活動していることなのかを争いたいのです。ただし、前にも 申しましたが、例え、統一協会の命令で、マインド・コントロールにより心を 乗っ取られていたとしても、実際に活動したのは統一協会員本人に間違いない のでしょうから、犯罪行為を起こせば罪になると思います。しかし、それは組 織に罪の根があるのだと裁いて欲しいのです。

三、精神的被害の内容

 この裁判で訴えている内容で、半分は、献金で脅し奪われたもの、セミナー に参加した費用でありますが、残り半分が精神的被害となっています。100 万円の精神的被害とはどのようなものなのか。それを立証する必要があると思 います。
 精神的被害とは、むしろ私の両親にもあったと言えると思います。息子を救 出しようと考えた時点から、全国から情報を集め、飛び回り、あまりにも相談 者が多く「今は手一杯で2年待ってくれ、その後でないとあなたの息子には対 応できない」と言われ、絶望の日々を半年間味わったのです。この半年間は生 きた心地がしなかったと話してくれました。両親にとっては、息子が誘拐され たと同じ気持ちだったと思います。私は両親に対して、この苦痛の日々に対し て一生かけて償わなければならないのです。両親だけでなく、私の入信によっ て数々の人々にご迷惑をかけてしまいました。
 私の精神的被害としては、むしろ脱会後に現れました。脱会後は、何をする にも、頭では分かっていても、一度頭に入ってしまった霊界の恐怖というもの は、そう簡単に取り除くことは出来ませんでした。しかし、日が経つにつれ、 夢の中で文鮮明が現れ、うなされることも少なくなりました。
 この裁判を争う上で裁判所側からも言われたことですが、いったい精神的被 害とは、具体的に何なのか具体的に出して欲しい言われました。この9年間毎 日夢にうなされるぐらい苦しみ、仕事が手につかず職場を転々として来たので あれば、訴えるべき内容はあると思いますが、正直に申しまして、今は、霊界 の恐怖は取り除かれています。文鮮明も出てきません。いったい統一協会から 受けた精神的被害とは何なのか分かりにくいと思います。
 しかし、今でも恐怖・苦痛に感じることがあるのです。前にも述べましたが、 統一協会員であった過去が暴かれ、犯罪者としてのレッテルが貼られること。 世間から白い目で見られ、今の生活が出来なることの恐怖です。この恐怖を脱 会後9年間味わってきたのです。数年前、桜田淳子の合同結婚式でマスコミを 中心に世間を賑わしました。統一協会の名前が出る度に、私はビクビクしてき ました。この思いを、死ぬまで背負わなければならないのです。このことによ り、実際に仕事を辞めさせられた等の被害が起きれば、それは別の訴えになる のでしょうが、今までに精神的苦痛を味わって来たことは事実です。

四、統一協会の危険性

 オウム真理教は、地下鉄サリン事件を契機として、実行犯・幹部が逮捕され オウム真理教は解散しました。でも、あの忌まわしい犯罪が今後起きないとは 私は言い切れないと思います。また、再び起きる可能性があると、それは、オ ウム真理教ではなく、統一協会が起こす可能性があると言いたいのです。現に、 統一協会によって多くの国民の財産が騙し取られています。その実行犯が自ら の本心で行動した結果であれば、彼ら自身で責任を取ればいいのですが、本来 の彼らであれば決して行動しない犯罪行為、組織の命令により行動しているの であれば、組織の存在そのものが問題であると思います。人の財産を騙し奪っ ても何の良心の呵責も持たない人間、そんな人間が今もこの日本国内、統一協 会の手により、ビデオセンターを使い、あらゆる方法を用いて、危険な人間が 製造されているのです。それは、宗教団体という隠れ蓑を使い、また、ある時 は信者自らが運営していると言い逃れ、今も何も知らない若者を引きずり込ま れているのです。いずれにしても、決してそのことは放置されるべきではない と思いますが、今は、例え危険と分かっていても警察も何も手出しが出来ませ ん。あの地下鉄サリン事件のように犯罪が起き、物的・状況証拠等をつかまな ければ何もできないのです。だから、この裁判によって、私自身が統一協会か ら実際に受けた接触経過等を踏まえ、統一協会の存在の危険性、違法性、勧誘 の違法性を問いたいのです。
 彼らの目的は、以前陳述書でも紹介したように、教義上からも問題がありま す。それは、教義の中に復帰原理というものがあり、この世の全ての財産はサ タンによって奪われものであり、神側(統一協会)に戻さなければ、彼らの究 極の目的である地上天国が成就しません。そのために、騙そうが、脅そうがサ タンより奪ったとして、何の罪もなく彼らの中では正当化されます。その行為 を邪魔する弁護士、マスコミはサタンであり、傷つけても構わない。と教えら れています。このような、危険な組織を野放しにしていれば、いずれ、第二の オウムと成りかねないのです。

五、統一協会の騙し、献金の違法性

 私は、献金という形で、統一協会にお金を渡しました。それは脅し騙し取ら れたと言いたいのです。
 統一協会から献金を迫まられたとき、統一協会では、アジア・アフリカで飢 餓で苦しむ人達に、医療・食糧援助を行っていると言っていました。私は献金 に至る行動が問題でも、100歩譲って結果において何も問題がなければ裁判 は起こしていません。しかし、脱退後知ったお金の使われ方は、文鮮明教祖の 己の私利私欲のために使い、自分達の悪事を隠すために政治家に近づき、使っ ていると知りました。ビデオセンターで、アジア・アフリカで苦しんでいる人 々の映像を見せられた時、私は、日本政府として、また民間独自として青年海 外協力隊等、海外に対して膨大な予算を支出し、援助、協力しているではない かと聞いたとき、確かに援助・協力はしているが、実際は、苦しんでいる末端 の人達へは届いていない、一部の特権階級の人達が着服し使っているのだと聞 かされました。自分はその時、新聞、テレビ情報では知り得ないことがまだま だあるのだと思いました。その時、自分自身にしっかりとした情報・知識があ れば良かったのですが、今思っても悔やまれると思います。
 献金とは本来、持っている財産の全てを出せとか、霊界の話しをして脅した りはしないと思います。
 私の場合、統一協会のアンケートに答えてから、約9ヶ月後、初めて統一協 会という名前を知らされたその日、1988年5月27日、夕方7時頃から1 2時過ぎまでの長時間に渡り、統一協会が所有するビデオセンターから1歩も 外へ出ることなく、また、食事も取れず、入れ替わり立ち替わり統一協会のス タッフから、総ての財産を献金するように迫られたのです。献金を決意後も決 意が変わらないようにフォローするため急にやさしい言葉をかけられ、寮に帰 れたのは午前3時となってしまいました。
 統一協会から嘘の情報を一方的に聞かされ、常に2〜3人の統一協会員に取 り囲まれ、統一協会員以外とは誰とも相談するが間を与えられず、くたくたに 疲れさせられ正常な判断を奪った上で、さらに霊界の恐怖を覗かしながら、恐 怖のうちに私に総ての財産を統一協会に捧げるように決意させられたのです。 このことは、前回の陳述書の中で、献金に至るまでの周到な準備、組織的な取 り組みについて述べています。献金とは本人の意思が最大限尊重され、無理の ない範囲で出したものであれば問題ないと思いますが、統一協会の場合は、献 金に至るまで占い師を登場させる等霊界の恐怖を植え込み、周到な準備を進め、 対象者に献金するしか救われる道はないと思いこまし、選択の余地が残されな い状態で献金を迫るのは明らかに違法と思います。

六、占い師花田の証人喚問の意味

 花田は、ビデオセンター会員時代、スタッフの紹介により占い師として偽り 私の前に現れました。花田により霊界の恐怖を知り、その恐怖から逃れようと して、その日以来毎日ビデオセンターへ通うようになってしまったのです。そ のきっかけを作った張本人が花田です。花田が出廷してこないのははなはだ遺 憾であり、なおかつ、私を知らないと言っていることは、人を馬鹿にするにも 程があると思います。協会員となり、花田とは何度か直接話したり、大元駅近 くの教会とビデオセンターを行き来したり、彼の自宅まで私の車で送ったこと もあります。
 花田は当時占い師ではなく、統一協会岡山県本部長をしていました。数多く の協会員と接し、数々のビデオ会員に祖先の因縁を説き、霊界の恐怖を植え付 けていましたから、「誰に何を言ったか忘れてしまった。さらに9年前で細か くは覚えていない。」というのであれば分からないではないが、私にとっては、 非常に重大な出来事であります。花田にとっては日常的な出来事の一つにすぎ ないと認識しているのかも知れない。ただ、彼が全国屈指の偉い占い師として 私の前に現れ、私の先祖が武士であり、殿様だったと占ったのは事実であり、 もう一度占い師としての力を法廷の場で明らかにしてもらいたいものである。 彼の仕事は運送業の手伝いで一日も休めないと言っているが、一日も休めない 仕事というものが、本当にあるのだろうか。労働基準局にでも調査に行っても たいたいものである。
 彼は、明らかに私だけでなく、多くのビデオセンター会員に祖先の因縁を説 き、恐怖を植え付け、最終的には仕事を辞めさせた責任があり、自分の仕事・ 生活のことを言える立場ではないと思う。あまりにも卑怯である。
 彼に対して法廷の場で確かめたいことは沢山あった。まず、
 ・彼の当時の立場は何か。ビデオセンターが統一協会の運営ではなく、会員 で運営しているのであれば、どうして、組織の中枢の人間である岡山県本部 長が活動していたのか。
 ・彼の霊能力とはいかなるものなのか。ほんとうに占い師としての力がある のか。
 ・どれだけの人間に対して占い師役を演じ脅してきたのか。
 ・何が目的で統一協会本部長と偽り占い師と嘘をついたのか。
・占いをした時の雰囲気、周囲の状況はどのようなものであったのか。
・私の家系図における家族の不幸な出来事は誰から聞いたのか。
・祖先が武士であるという殺し文句は、統一協会がかつて霊感商法を行って いた時の、霊能師役が対象者を恐怖に陥れるための手段に使われていたもの でなかったのか。
 当時、岡山では、統一協会が起こした霊感商法により億の単位で多くの被害 者が生まれました。被害者は弁護士の河田先生を頼り被害を取り戻そうとして いました。その統一協会側の対策・対応窓口が花田であったことは間違いなく、 彼の存在が、統一協会と悪徳霊感商法を結びつけるものであり、さらに、統一 協会(教会)とビデオセンターを結びつけるものであります。
 かつて行われていた悪徳な霊感商法の被害は、物金の被害でした。しかし、 それだけでは終わらず、取れる物がなければ、組織の命令に対して忠実に行動 する人の確保・頭がすり替えられる人の被害も同様に行われていたことが分か る重要証人でした。

七、善悪の判断、価値観のすり替えが行われた。

どうして、持っていた価値観、善悪の判断までがすり替えられるのか、オウ ム真理教の場合、殺人をしても、それも何も罪のない人を殺す無差別殺人をし ても何も感じない。一般常識では到底考えられない行動だと思います。ただ、 私も統一協会からマインド・コントロールを受け、善悪の基準を180度転換 させられました。あのまま強固にマインド・コントロールを受けていたなら、 人を殺しても何も感じない人間になっていた可能性もあると思い体験談から少 しお話をしたいと思います。ビデオセンター、3デーズセミナー、新生トレー ニング段階を卒業し実践トレーニング段階(実際に街頭、訪問し行動し、ビデ オセンターを紹介し、会員を獲得する。)から常に言われていたことは、君た ちは何も考えず行動すればいい、後は神様が責任を取るのだから、自分で考え 行動することは非常に危険であり、サタンの誘惑に落ちてしまうことだ。統一 協会の教義である堕落論の中でサタンに騙され善悪を知るの木の実を神様から 決してとって食べてはいけないと言われていたのに、とって食べたことにより エバとアベルはエデンの園を追放されたように、サタンは常にあなたの心の中 にささやき騙そうとしている。常に上との連絡を密にして行動しなさい。自分 の考えはサタンの考えであり、統一協会の上部の命令は神の考えと教え込まさ れるのです。その繰り返しが毎日続き、いつしか自分で考えることができなく なるのです。又は、言い方を変えれば、統一協会の教え以外は、自動的に拒否 する思考回路になってしまっているのです。伝道勧誘活動は、はじめは非常に 恥ずかしいし戸惑いもありますが、この体は自分ではないと思うことにより、 不思議と恥ずかしさも忘れ行動し言葉が次から次へと出てくるのです。このよ うな伝道活動は、自分を捨てる訓練をさせられているのではないかと私は思い ます。伝道活動は、統一協会を知って間もない頃から行われます。統一協会の 経済を担う、悪い事を悪い事と思わない金銭を騙し取っても何も感じない人間 に作り上げるためへの、第一ステップが伝道活動と思います。訓練期間中です から、時として、家族のこと、職場のこと、友達のこと、将来のこと等考える と行動出来なくなることがあります。どうしても迷いが出てくるのです。そん な時は、直属のアベル(上司)から「あなたは今サタンに取り付かれている。 」と厳しく戒められたり、セミナーを受講するように進められます。そうする と、なぜかスキッとし、再び行動する事が出来るようになります。彼らの行動 は非常にハードに組まれています。時として寝る間もなく、他のメンバーと同 じ行動をし続けることにより、不信な考えが出てくるのが少なくなります。

八、勧誘の違法性(信教の自由)

 統一協会は決して、一度に高いハードルを課しません。出来るだけ脱落者を 出さないように賢明に努力しています。裁判の中では、100人勧誘すれば大 部分の人が辞めていく、1人残ればいいくらいと、残った人は自由意思で残っ ていると言っていましたが、決して自由意思というものではありません。最初 は本当に低いハードルから始めます。まず、ビデオセンターへ通ってもらうこ とが第一であり、そのために、喫茶店のような雰囲気を作り、コーヒー、ジュ ース、お菓子を無料で出し、日常生活の悩み相談相手をする等こまめに世話を してくれます。それでも来なくなったゲストには、電話、手紙を何度となく繰 り返し行い、ビデオセンターへ真剣につなげていきます。ここが宗教団体であ るとか、まして、統一協会の会員を獲得するために使っている施設である。将 来は全ての財産を統一協会へ捧げなければならない、仕事を辞めて統一協会の ために無償で一生奴隷のようにこき使われなければならないとは決して言いま せん。ただ居心地のいい場所であると最初は思ってもらえるだけでいいのです。 それから、少しずつ、ゲストが越えられると思われるくらいのハードルを徐々 に高くして行きます。100人いれば、最終的にはほんの数人しか残らないの は、余りにも越えなければならないハードルが多すぎるためで、統一協会はハ ードルを越えさせるためにあらゆる手段、例えば、先の陳述で出てきた花田の ように、統一協会員でありながら、姿を隠し、偉い占い師と偽り、祖先の悪行 を例に、霊界を通じて今後、家族に災難が降り懸かるなど言って脅すなどして、 なんとか上に上げようとします。落ちこぼれた人はどうなったかというと、霊 界の恐怖から逃れることが出来ず、苦しみ、悩み、舞い戻ってくる人もいれば、 自殺をしたという人もいると聞いたことがあります。統一協会との関わりが初 期段階であれば、さほど問題はないのですが、何年も信じ込み、仕事を辞め、 家族、一般社会と関係が切れてしまった人は、精神的な損傷は相当深刻なもの となっています。統一協会側は、脱会は自由で、離れようとしている人を牢獄 に入れるとか、ロープで縛って逃げられないようにしているわけではない、あ くまで、本人の自由意思にまかせていると言っていますが、決してそんな生半 可なものでなく、むしろ霊界の恐怖という鎖で心をつながれ、どうすることも できない状態になっています。私に言わせれば、その100人がどれだけ脅さ れ、傷つけられたか、今後の将来を不安にかられながら人生を送っていかなけ ればならないか。その100人に対して統一協会は責任を取るべきと思います。
 一般の宗教の勧誘活動との違いは、最初から統一協会とは決して名乗らない ことであり、神、霊界、占い師を使い不安に落としいれ、高度に洗練された一 方的な情報を吹き込んだ上でないと名乗らない。統一協会が一般社会で言われ ている悪徳団体ではなく、一般社会が嘘の情報を流していると思うまで名乗り ません。何カ月間も名乗らないのは宗教の勧誘活動としては極めて違法とだと 思います。
 これら彼らの巧妙な行動は、全て統一協会上部の命令により活動しますが、 全国各地でも勧誘活動が繰り広げられる中、最良の勧誘方法が生まれれば、そ の地域にとどめず、やり方を詳細にまとめ組織を通じて全国へ紹介します。そ うして出来上がったマニュアルは上部から紹介されます。そのマニュアルに従 い、時として手紙の書き方まで指示を受けることもあります。このマニュアル については、先の証拠資料として既に裁判所に提出していますが、私が青年実 践部に所属していた時に、ビデオセンター内で直に統一協会の上司(アベル) から手渡されたものであり、このことからも勧誘活動が組織的に行われていた と証明できると思います。
 宗教は信じる自由もあれば、信じない、信じ込まされない自由も保障される べきと思います。統一協会は、ビデオセンターは統一教会が運営しているもの でなく、信者が何人か集まり独自に運営しているもので、統一教会とは何ら関 係のないものであると反論していますが、目的が信者獲得である以上、それは 言い逃れとしか言いようがない。私自身が、ビデオセンターに通うようになり、 その後、統一協会員となったことから、ビデオセンターが会員獲得・育成する ための伝道活動拠点施設・統一教会という組織を隠すための隠れ蓑であったこ とに間違いはありません。さらに、そこが統一教会で運営しようが、会員で運 営しようが、目的が犯罪人を養成している以上そのことが大問題であると思い ます。

九、どうして命がけで信じていたものから脱会できたのか

 ビデオセンターへの思いが、最初は警戒し、疑っていた私ですが、統一協会 により徐々に考え方が変えられていきました。一度動き出した車が止まらない ように、私は、統一協会が用意した各セクションを1カ月単位で卒業し、あた かも自分がエリートコースに乗ったかのような気持ちになり、突き進むように なっていました。統一協会の教えが全てとなり、命がけで信じていましたから、 脱会は夢にも思っていませんでした。
 私の行動がおかしいと職場の先輩から聞かされて、両親は岡山に何度か出て きましたが、いくら説得を受けても平行線のままでした。このような私をみて、 両親は自分からは出てこれないと思ったのでしょう。私の親が脱会に向けて本 気になり、立ち上がったおかげで脱会で出来たと思います。自分の息子を取り 戻すため仕事を放棄してでもという気持ちがあったからこそ救出できたと思い ます。もしあの時、親が本気になっていなかったなら、今頃は、南米のウルグ アイ等で野たれ死んでいたと思います。自分の意志で行動出来ない以上、脱会 も出来ないのです。今の自分があるのは、親や周囲のがんばりのおかげであり、 言葉に言い表すことの出来ない感謝の気持ちでいっぱいです。
 牧師の説得のもと、初めて自分の頭で統一協会を疑うことができました。今 までは、疑えば家族の誰かが霊界の力で交通事故に逢うのではないか。疑うだ けで、不幸なことが起きると本気で信じていました。それは、新生トレーニン グ又はセミナー参加時に、講演の合間で先輩が自分の体験談を話してくれるの ですが、統一協会から離れようと思い意を決して出てきたが、家に帰る途中、 交通事故に遭ってしまった。天の声がその時に聞こえたと。その時は何気なく 聞いていましたが、何回か数人の先輩から話を聞くと本当にそうなると思うよ うになりました。統一協会では、日常の生活の中で、神・霊界体験が起きれば、 みんなの前で発表する場が設けられていました。
 私は、統一協会への献身を決意し3月には退職しようと考えていた頃、1月、 親の用意した四国のマンションに強制的に連れて来られました。祖母が危篤状 態であると親は説明しましたが、それはすぐに嘘と分かりました。これから監 禁されるのだと思いました。それでも、その時は抵抗はしませんでした。それ は1週間前から風邪をひき体調を崩していたのと、後で聞いた話ですが、職場 の人達と協力して、もし、私が抵抗し逃げれば、捕まえれるように道路の角に 人を配置していたと聞かされました。それだけ、このチャンスを逃せば絶望と 思い真剣だったのでしょう。両親は私を救出しようと思い、全国で統一協会か らの救出を手助けしている牧師さん等に会いに行ったそうです。そして、東京 に行った時、相談者が多く、今は手がいっぱいで2年待ってくれと言われ、帰 りの新幹線の中で泣きながら帰って来たそうです。そして、四国内の牧師さん になんとか話を付けマンションを確保しました。
 私は、抵抗はしませんでしたが、親に対して、精神病院に入れ注射だけはし ないでくれと訴えていました。統一協会から、献身が間近に迫った人に対して は特別に団長の指示下に入り、鉄格子の入った精神病院に入れられ、注射を討 たれ、口が利けなく、動けられなくなると聞かされていました。サタンは何を するか分からないと脅されていました。また、統一協会内で出版されている本 の中にも生々しい出来事を綴った本があり、実の親がこんなひどいことをする はずがない。サタンは実在するのだと恐怖を感じていました。
 連れてこられたマンションは5階で、その日は一言も口を利かず、押入に閉 じこもって寝ました。なぜか、久しぶりにぐっすり眠ることが出来ました。翌 日、両親が最初に言ったことは、お前のやっていることは兄ちゃんは何にも知 らない、もし、兄ちゃんがお前の言うことが正しいと思えたら、ここから出し てやる。私らもお前をとめたりはしないと約束してくれました。その日以来、 両親、兄に対して、統一協会の講義が始まりました。そうすると、分かっても らえる部分と、どう説明しても分かってもらえない分野が出てきました。
 そして、マンションに入り3日目に牧師が現れました。兄から、一言、私に 「がんばれ」と言われたことが、嬉しく、後々、この一言が自分の考えが生ま れるきっかけとなったと思います。
 最初牧師の言うことは信じられませんでした。全てを反論出来ないので、聞 いているふりをして何も聞こうとはしていませんでした。それが、サタンのさ さやきだから聞いてはならないと教えられていましたから。でも、1日目、2 日目と統一協会の反社会的活動の実態、無意味な実現不可能な日韓トンネル、 統一協会の教義は聖書から作られものですが、解釈の違い、統一協会のように 一部分を読めば統一協会の言っていることも正しいのですが、聖書を全体的に 説いていくと統一協会の教義が180度違ってくる部分が出てくるのです。た ぶん、その考える場が統一協会内の施設でなく、両親が用意したマンションの 1屋であり、統一協会からも、私からも連絡ができない場所であったから、一 つ一つじっくり考えることが出来たのだと思います。もし、牧師の言っている ことが間違いであるならば、その場で両親、兄を説得し、統一協会へ引き込も うと考えていました。このため、真剣に疑いながら勉強をし、恐怖を払いのけ 統一協会を疑ってみました。そうすると、どうしてこんな簡単なことが分から なかったのか不思議なくらい、すらすらと統一協会の間違い、矛盾が分かって きました。いかに、統一協会内で作られた嘘の情報を信じていたのか、情けな く、腹が立ってきました。

十、最後に

 入り込んでしまった多くの協会員は、私のように条件が整っているわけでは ありません。統一協会そのものの崩壊を待つしかないのか、私にもどうしてい いか分かりません。しかし、一つ言えることは、今取り込まれている若者を未 然に防ぐことは出来ると思うし、犯罪を犯そうとしている協会員を未然に止め ることは出来るのではないか、それが、この裁判を闘う意味であると思います。 勧誘・活動行為そのものが違法であるならば、また、姿を隠したビデオセンタ ーからの勧誘活動が違法であるならば、彼らの活動は鈍ると思います。
 私が思うに、彼ら統一協会員は、はじめから犯罪を犯す人達ではなかった。 根は純真で人の心の痛みが分かる人一倍思いやりのある優しい人達と今でもそ う思っています。ただ、その思いが強いが故に引き込まれていった。ビデオセ ンターで勧誘し脱落していく人の多くは、自分の財産を困っている人達に分け ることを拒み、そのようなことは全く興味がない自分本位な人達でした。むし ろ残っている人の多くが自分のことはどうなってもいい、全世界の人々同士が、 戦争をすることなく、争いもない幸せな家庭、世界を本気で望んでいます。し かし、その気持ちがあるがゆえに利用され引き込まされた。嘘の情報が見破れ ず奴隷のように使われていることが分からないだけなのです。そんな、優しい 心を持った人達でも、野放しにすることは大変危険なことなのです。第二のオ ウムとなる可能性もあるのです。彼らは、虎視眈々と国民の財産を命がけで狙 っています。財産だけでなく、会員として獲得し、家族の絆を崩壊させようと しています。彼らに、これ以上罪を作らしてはならないのです。結果的には、 彼ら自身が最終的には罪を償わなければならず、それが、統一協会から離れた ときに、自らの本心の行動でないだけに非常な苦しみを味わうこととなるので す。
私は、今回の裁判で諸悪の根元は統一協会にあるのだと、統一協会側の反論 は個人個人の責任で行動していることだと真っ向から対立していますが、決し て、個人の判断では犯罪行為には荷担しない、組織によって巧みに騙しつづけ、 ただ踊らされているだけだと言いたいのです。
 この裁判で私が統一協会を訴えることができる唯一の内容が、私自身が受け た被害を立証し訴えることです。ただし、この裁判は200万円の損害賠償だ けのために行っているものでなく、統一協会の勧誘に対する目的、結果におい ても違法であると、このまま放置することが如何に危険であるか、また、入信 に至る経過を見ると岡山では、B子さんの裁判でも証明されているとおり、ま ったく同じ勧誘方法であり、100人を越える元統一協会員が全国で統一協会 を相手に裁判を起こしています。いずれも入信に至る経過は同じであり、特に、 そのほとんどがビデオセンターを通じて入信したと言っています。このことか らも組織的犯行と証明できると思います。そして、完全に考え方が変わるまで 教育した上でないと、協会の名前すら証そうとしません。姿を隠し偽り接近し、 嘘の情報を吹き込み、さらに犯罪行為をさせることが、果たして宗教団体とし ての真の姿と言えるでしょうか。統一協会の悪事が認められるとは思いたくあ りませんが、もし、この裁判に負けることになれば、全国で同じ内容で闘って いる人達に申し訳ないし、統一協会側は公に認められたと思い、益々被害者が 出てくるのは必定であります。
 国民の財産を守るためにも、公平な裁判を切にお願いいたします。

岡山地方裁判所 裁判長 様

                   平成9年7月16日 原告 A男


弁護団の意見陳述書(TEXT FILE)。
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