「青春を返せ裁判」判決文(岡山地裁、原告B子)

構成
主文
事実
 第一 当事者の求めた裁判
 第二 当事者の主張
  一 請求原因
  二 請求原因に対する認否
  三 被告の主張
 第三 証拠関係
理由
  一 請求原因1(当事者)について
  二 請求原因2(被告の組織と宗教活動)について
  三 請求原因3(原告に対する侵害行為)について
  四 請求原因5(被侵害利益・違法性)について
  六 結論
  ※「請求原因4」、理由「五」が欠けているのも原文のままです


平成五年(ワ)第六四二号 損害賠償請求事件(口頭弁論終結の日 平成一〇年一二月一六日)

                   判     決

   岡山県倉敷市〇〇〇〇〇〇〇〇−〇〇〇
     原    告           B                    子
     右訴訟代理人弁護士        河      田      英      正
     同                近      藤      幸      夫
     同                嘉      松      喜   佐   夫
     同                清      水      善      朗
     同                石      田      正      也
     同                佐      藤      知      健
     同                種      田      和      英
     同                谷             和      子
     同                火      矢      悦      治
     同                的      場      真      介
     同                山      本      勝      敏
     同                山      崎      博      幸
     右河田英正訴訟復代理人弁護士
                      紀      藤      正      樹
   東京都渋谷区松濤一丁目一番二号
     被  告        宗教法人世界基督教統一神霊協会
     右代表者代表役員         石      井      光      治
     右訴訟代理人弁護士        和      島      登   志   雄
     同                鐘      築             優

                  主     文

     一 原告の請求を棄却する。
     ニ 訴訟費用は原告の負担とする。

                  事     実

第一 当事者の求めた裁判

 一 請求の趣旨
  1 被告は、原告に対し、金九二八万五二〇〇円及びこれに対する平成四年八
   月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
  2 訴訟費用は被告の負担とする。
  3 仮執行宣言
 二 請求の趣旨に対する答弁
   主文同旨

第二 当事者の主張

 一 請求原因
  1 当事者
   (一)被告
     世界基督教統一神霊協会は、昭和二九年に韓国ソウルで設立された宗教
    団体であり、その教義創始者は韓国人文鮮明である。同会の教えは、昭和
    三三年、韓国籍の崔翔翼(チェ・サンイク、日本名西川勝)により、日本
    にもたらされ、同会の教えを奉ずる信者らは、宗教団体日本統一教会を創
    立し、昭和三五年、教理解説書「原理解説」を発刊し、昭和三九年七月、
    東京都知事から宗教法人法一四条に定める規則を認証する旨の決定を受け、
    同月一六日に世界基督教統一神霊協会として宗教法人の設立登記をした。
   (二)原告
     原告は、路傍アソケートを契機として 被告の施設であるビデオセンタ
    ーに通うようになり、その後被告に在籍するようになったが、家族等の努
    力により被皆の実態を知り、自ら脱会した者である。
  2 被告の組織と宗教活動
   (一)被告の粗織
     被告は、各都道府県に布教所を置き、地区本部、教会又は伝導所等を設
    置している。
   (二)被告の宗教活動
    (1)被告の教理
      被告の目的は、神と人間の究極の理想である人間完成と地上天国を実
     現するところにあるとされている。被告の教理である統一原理は大別す
     ると、以下に述べる創造原理、堕落論、復帰原理の三つから成り、その
     教理解説書が原理講論である。霊感商法等数々の反社会的経済活動への
     必然性も右教理の申に存する。
     @ 創造原理
       統一原理の根本は、神が人間と万物をどのように創造したかを明ら
      かにする創造原理である。
       人間は、永遠なる神が最も愛し、喜ぶことのできる対象として創造
      された。そのため、人間には永遠の生命が与えられており 神の愛が
      人間の生命と幸福の根源となっている。人間は肉身と共に霊人体を備
      えた霊肉の統一体であり、愛による善き行いによって霊肉共に完成す
      ることができる。被造世界は肉的な五官で感知することのできる世界
      (現実世界)と霊的な五官によってしか感知できない世界(霊界)と
      から成り立っている。人間は肉身の寿命か尽きると肉体の衣を脱ぎ、
      霊界においては霊人体として永遠に生きるように創造されたものであ
      る。神は、神と喜怒哀楽を共にする人間が天国を造って喜ぶ時に一番
      喜ばれる。人間を中心とした被造世界の目的は神を喜ばせることにあ
      る。人間の完成とは神性をなして神と一体となり、完成に共鳴するこ
      とにより喜怒哀楽を共にすることをいうが、そうなるためには他の万
      物と異なり、人間だけには五パーセントの自己責任がある。
       その人の霊人体が天国へ行くか地獄へ行くかは、肉身であるその人
      の地上生活が神の創造日的を成就するためにプラス(善)であるかマ
      イナス(悪)であるかによる。人間の本当の幸せとは氷遠の世界であ
      る霊界での永遠の幸福のために地上で善の生活をすることである。
     A 堕落論
       神は善の主体であり、永遠なる理想の本体であるから、その神の意
      思によって創造された人間が善の理想体としてすでに完成されていた
      ならば、罪悪や苦痛や矛盾かあるはずかない。しかし、現実の人間の
      世界は、あまりにも創造の理想とはかけ離れた状態にある。個人、家
      庭、氏族、民族、国家、世界に不幸は絶えず、罪悪に苦しむ人類の歴
      史が連綿と統いてきた。このような人間の本性では善を希求している
      にもかかわらず、現実には悪に傾きやすい矛盾した状態は、結局、人
      間が神の子としての本然の位置と状態を失って堕落したため生じたも
      のである。人間が、創造本然の目的を離れて、右のような罪の歴史を
      繰り広げてきたのは、人間の始祖であるアダムとエハがその未完成期
      に善悪の実を食べてはならないとの神の御言を守らず、サタンとなっ
      た天使長ルーシェルとエハが不倫な肉体関係を持ち、その結果エバは
      ルーシェルの要素をそのまま受け継いだからてある。そして、エハが
      アダムを誘惑してアダムと夫婦の関係を結んだため、エハがルーシェ
      ルから受けたすべての要素をアダムがそのまま受け継ぐことになり、
      この要素はその子孫に連綿と遺伝されるようになった。すなわち、罪
      の根は、人間始祖が蛇に表示された天使と不倫なる関係を結んだとこ
      ろにある。したがって、人類は神の善の血統を繁殖することができず、
      サタンの血統を繁殖するようになった。したがって、この世界はサタ
      ンの支配する世界(地上地獄)となってしまったのである。そして罪
      には前記した原罪のほか、子孫が血統的因縁によって引き継いだ祖先
      の罪との連帯罪と自分が犯した自犯罪とがある。原罪を清算しない限
      り他の罪を根本的に清算することができない。
     B 復帰原理
       堕落して罪悪に陥った人類は、神の恩恵による救いの道を行かなけ
      ればそこから説することはできず、統一原理ではこの救いの意昧を復
      帰摂理として理解する。そして、人類に対する神の復帰摂理がどのよ
      うな原則に基づいてなされているかを明らかにする救い全般の原理が
      復帰原理である。
       イエスは、メシアとして地上に降臨された。そのめ的は地上天国を
      造ることであった。ところが、ユダヤ人がイエスを信じないで彼を十
      字架に付けたので、彼の肉身はサタンの侵入を受けた。したがって、
      彼と一体となった信徒の肉身は同じようにサタンの侵入を受けるよう
      になった。したがって、いくら篤信者てあっても、イエスの十字架の
      贖罪では肉的救いを完成することができなくなり、アダム以来の血統
      的原罪は清算することができず、原罪のある子女を産むようになる。
      それ故、メシアは十字架で清算できなかった原罪を贖って肉的救いを
      完成し、霊肉共に救いの摂理の目的を完遂するために地上に再臨され
      なければならない。
       終末とは、サタン主権の罪悪世界が神主体の理想社会に転換される
      時代をいう。メシアが再臨する時が終末である。現在は、聖書に予言
      された終末現象が顕著に現れており、まさに人類歴史の終末を迎えて
      いる。今や人間社会は、天の側の主権を立てようとする民主主義世界
      と、サタンの側の主権を立てようとする共産主義世界との二つの世界
      に分立しているが、人類歴史の終末に至れば、これらは必ず一点にお
      いて交叉し、理念を中心として肉的に衝突し、それか原因となって軍
      事力を中心とする外的な戦争が行われ、結局、サタン主権は永遠に滅
      び、天の側の主権のみが永遠なる神の単一主権として復帰する。
       メンアは韓国に文鮮明として再臨された。神は既にこの地上にこの
      ような人生と宇宙の根本問題を解決されるために一人の御方を遣わし
      給うたのである。その御方こそすなわち文鮮明先生である。人類は文
      鮮明を中心とした地上天国を造るために、その責任分担である五パー
      セントの自己責任を果たさなければならない。
    (2)被告の経済活動
      被告の霊感商法等の経済活動は「万物復帰」と言われ、サタン側にあ
     る万物(金銭等地上にあるすべての財物)を神(再臨のメシアである文
     鮮明)のもとへ取り戻すという教えに基づくものである。被告の会員は、
     天法は地法に優ると教えられ、マインドコントロールされて、地上天国
     実現のために「復帰した万物」を用いるのであるから、他人を騙して売
     ってもそれはむしろその人のためには罪滅ぼしになり、その人のために
     もなるのであるから構わないと自らの行為を正当化して盲信し、違法な
     販売活動に狂奔するのである。
      また、被告では、神の祝福による結婚という名の下に会員に結婚式直
     前まで面識のない文鮮明の組み合わせた相手との合同結婚式を挙げさせ
     ている。被告会員は、この合同結婿式によって原罪のない子供を産むこ
     とができると教えられ、合同結婚式に参加する資格を得るために、新た
     な会員獲得を目指して勧誘活動や霊感商法に勤しむ。
    (3)被告の会員の生活
      被告の会員は、献身を決意すると、職場や家庭から離脱し、以後はホ
     ームと呼ばれる建物内で集団生活を営むようになり、朝早くから夜遅く
     まで珍味売りや霊感商法等の経済活動に従事し、ホームに帰ると、その
     日の成果を上司に報告し、短い睡眠時間の後、翌朝再び経済活動のため
     ホームを出発するという生活を繰り返し、休日もほとんどない。
      このように多くの被告の会員は、社会から隔離された集団生活を送り、
     他の思想や価値に触れる経済的及び精神的余裕を与えられないまま文鮮
     明一神教とも言うべき思想に浸り統けている。
    (4)アベル・カインの関係(絶対服従、絶対屈伏の関係)
      旧約聖書によれば、カインはアダムとエバの間の長子であり、アベル
     はその弟であるが、被告では一般信者がカインであり、その上司がアベ
     ルとされる。そして、最終・最高のアベルは文鮮明である。被告の教理
     解説書である原理講論によれば、神は、堕落した人間を元に戻す救い主
     を出現させるため何度かチャンスを与えたが、その最高がカインとアベ
     ルの時であり、その時カインはアベルに従順に屈伏してその条件を立て
     るべきであったのに、逆にアベルを殺してしまい、そのチャンスを失わ
     せてしまった。したがって、カインはアベルに絶対服従しなければなら
     ないし、もしそれを守らないとカインのように呪われるのであると教え
     ている。
      このような立場から、被告の内部では、一般信者(カイン)は、上司
     (アベル)を通さなければ、神のもとに立ち帰ることができないとされ、
     絶えず神の願いや方向性から外れないようにするために神の代身者であ
     る上司(アベル)の指示に従い、絶対服従することこそ勝利の秘訣であ
     ると繰り返し教育している。
      日々の実生活においても、一般信者(カイン)は、上司(アベル)に
     対し、その日の行動やその結果、自分の気持ちや考えなどを逐一報告、
     連絡、相談し、その上で上司(アベル)のチェックを受けるという行動
     を繰り返している。この上司に対する頻繁な報告、連絡、相談のことを
     被告内では「報・連・相(ほうれんそう)」と呼び、日常生活の基本と
     している。そして、その反映として、被告では、信者の横の関係、すな
     わち自分と同じレベルないしは自分より信仰の幼い者に対し上司(アベ
     ル)の指示に対する不平不満を語ることは異常に嫌われる。そのような
     信者間の横のつながりを発生させるような行動は「横的になる」と呼ば
     れ、「横的に流さない」という言葉で上司(アベル)以外に不平不満を
     言ったり行動したりすることは厳しく禁じられている(因みに、アベル
     ・カインの関係は「縦的」と呼ばれる。)。
      「報・連・相」の世界では、信者同士の精神的なつながりは上下の関
     係のみであり、一般信者(カイン)の気持ちのはけ口や精神的情緒的な
     安定は唯一上司(アベル)との接触のみによって得られることとなり、
     上司の指示(それは即ち最高のアべル文鮮明の指示と同一視される。)
     に何ら疑問を挟むことなく絶対服従するという精神構造が作り出される
     のである。
      このような精神構造のまま長く生活していると、自分の頭で考え行動
     する能力が著しく低下してしまい、被告の内部にいる時は楽でも、被告
     を抜け一般社会で生活を始めた場合、そうした能力低下が一種の後遺症
     としていつまでも残ってしまい、そのことに悩む人も多い。
    (5)「人事」による経済活動
      被告の活勧の中心は経済活動であるが、そのための人材配置は被告の
     当該地域やグループの責任者(上司)のー方的指示で決まる。これを被
     告の内部では「人事」と呼ぶが、前述した上司の指示に対し絶対服従を
     強いるアべル・カインの関係を利用したものである。一般信者の中には、
     人事により数か月毎に全国を転々と移動する者も珍しくない。
      また、自分の所属すべき地域や従事する経済活動の内容が人事によっ
     て定まることはもちろん、例えば霊感商法を行う際の役割分担もすべて
     上司の指示によっている。
      霊感商法では、販売担当者と霊能者(トーカー)が交互に対象者に対
     し印鑑や大理石の壷を買わせようとするが、誰が販売担当者となるか、
     誰が霊能者役を演ずるかはすべて上司であるタワー長が事前に決める 
     (しだかって、同一人物が、ある時は販児担当者となり、別の機会には
     霊能者役を演ずる場合もある。)。
      そして、あらかじめ作成しておいた対象者の経済力や性格等を個別に
     記載した動員カードや家系図をもとに、三者間で販売戦略を立て、それ
     に見合うトーク内容を準備し、当日は、販売担当者や霊能者役を演ずる
     者が対象者の反応を逐一タワー長に報告し、その指示を仰ぎ、二人三脚
     でセールストークを駆使して長時間にわたりほぽ迷信に近い脅し文句を
     繰り返し、対象者の不安、困或や恐怖を煽りたて、しまいには大理石の
     壷等の霊感商品を高額で買わせるのである。
   (三)マインドコントロールの実態
    (1)被告の正体を隠した接近
      入教者(献身者)獲得のための伝道活動は、被告の組織拡大と経済活
     動要員獲得のためには必要不可欠である。しかし、被告が行っている違
     法な伝導活動や経済活動については社会やマスコミの批判が厳しいため、
     被告の伝導活動は違法な経済活動を行っている団体であることについて
     はもちろん、被告の教団名統一協会(世界基督教統一神霊協会)さえも
     徹底的に隠して行われる。
      「路傍伝道」と称する街でのアンケートをきっかけに接近する方法、
     「F・F伝道」と称する家族関係や友人関係を利用して接近する方法、
     被告の主要な経済活動である霊感商法で大理石の壷等を買わせるのをき
     っかけに接近する方法、一人住まいのアパートや寮へ訪問する「訪問伝
     道」、学校の卒業者名簿も使い電話をする「イナズマ伝道」等の方法に
     よって対象者との接触が始まる。
      路傍伝道では、街頭で聖書研究会や青年サークル等と称して、若い人
     を対象にアンケートをとりながら心情交流を図る。相手が家庭や社会の
     矛盾に疑問を感じていたり、人生の目的について悩んでいたりするのを
     知ると、「一度話を聞きに来ませんか。」、「キリストや聖書のことが
     良くわかるビデオを見てみませんか。」、「人生の目的が分かりますよ。
     」などと言って被告の教会やビデオセンターに誘う(最近はビデオセン
     ターに誘うことが多くなっている。)。
      F・F伝道では、通常まず友人、家族、親戚等の名前を思い付く限り
     すべて紙に書き出した上で、一人一人の状況についてアベル(上司)に
     報告して対象者を絞り、手紙や電話で対象者との親交を温めておき、対
     象者の状況を詳しくF・Fカードに記入し、それをもとに、更に手紙や
     電話で心情交流を図り、被告の教会やビデオセンターに誘う。
      霊感商法をきっかけとする方法は、例えば次のようなものである。被
     告の会員である販売員が、その身元を隠して家庭を訪問し、印相や手相
     を見てあげる、あるいは姓名判断をしてあげると称して話のきっかけを
     作った上で身内の不幸を聞き出し、それは先祖に悪い因縁(色情因縁、
     殺傷因縁等)があるからだなどと言って相手を不安に陥れ、今度霊界に
     詳しい霊能者(実は霊能者を装った被告の会員)が来るからと言って、
     会うことを勧める。その霊能者役は、販売員からの情報をもとに、先祖
     の悪い因縁や霊界等につき執拗に話して一層相手を不安や困惑に陥れ、
     悪い因縁のために霊界で苦しんでいる先祖を救うため、時価の何十倍何
     百倍もする大理石の壷や多宝塔などを授かりなさいと迫って買わせる。
     その上で、大理石の壷等を授かってこれで救われると喜んでいる人で二
     十代位の若い人には、「それにはもっと大きな意味があるのだけれど、
     それを知りたくありませんか。」、「真理の業を積みなさい。」などと
     言ってビデオセンターに行くことを勧める。最近では、販売商品が絵画
     や貴金属に変わってきている。               
      相手を献身(入教)させるためには、とにかくまずビデオセンターで
     原理講論のエッセンスを説明したビデオを見せることや、被告の教会で
     の講義を聞かせることが有効である。きっかけの如何を問わず、もっと
     詳しい話を聞いてみよう、ビデオセンターに行ってみようという気持ち
     になる者は、十代後半から二十代半ばまでの青年、とりわけ純粋に家族
     や社会の矛盾について真面目に悩んでいる青年がほとんどである。献身
     (入教)を勧める者は、微笑みを絶やさず話をし、問題意識を持って悩
     んでいる青年の話を親身に聞く素振りであるため、当該青年は、相手が
     いかにも親切で信頼できる者であるかのように思い、その勧めに従う気
     持ちになり、何時しか、心を許し誰にも打ち明けることのできない悩み
     まで打ち明けてしまい、後にその弱みをつかれて被告の教えに引きずり
     込まれていくのである。
    (2)ビデオセンター
      被告のビデオセンターでは、被告の違法な経済活動はもちろん、通常
     は被告の教団名統一協会(世界基督教統一神霊協会)さえも隠したまま、
     来訪者にビデオを見せる。ビデオセンターは、大抵近代的ピルの中にあ
     り、LIC(人生情報センター)、NPC(ニユープリンシプルセンタ
     ー)、NLC(二ユーライフセンター)、文化センターなどと呼ばれて
     おり、文化講座教室を装い、来訪者に宗教団体と全く感じさせないよう
     にしてある。
      そして、被告の会員である担当者が、連れて来られた人に対して、終
     始優しく笑顔で接し、喫茶店のように音楽を流し、コーヒーや菓子を出
     し、何を話しても来訪者を誉める。とにかく、来訪者に対しとても居心
     地の良い場所として印象づけるのである。ビデオを見せた後は、来訪者
     にその感想文を書かせたり、和やかに話合いをする。大抵の青年はまず
     もってその温かい雰囲気に惹かれる。
      ビデオの内容は、最初は宗教とは関係のない誰もが興味を持つような
     内容のものから入り、やがて講師が原理講論の講義を進めていく形をと
     っている。原理講論のビデオは、総序、創造原理T・U、堕落論、メシ
     ア論、復活論、終末論、アダム・ノア家庭における復帰摂理、アプラハ
     ム家庭における復帰摂理、モーセ路程、イエス路程、摂理的同時性、再
     臨論の一三巻から成っている。しかし、これらのビデオが被告の教理解
     説書である原理講論に関するものであることは明かされない。
      ビデオに登場する講師は、自信を持った様子ですべてを断定的に言い
     切る。ビデオは、言うまでもなく視覚と聴覚の双方に訴えるものであり、
     しかも選挙の際の投票所のように一人ずつ仕切られた場所で集中的にこ
     れを見せられるので非常に効果的である。ビデオ視聴の目的を隠し、し
     かも一度に全部を見せずに少しずつ見せ、興味をつないで何日もビデオ
     センターに通ってくる気にさせる。来訪者の発するビデオの内容に関す
     る疑問についても、「次回のビデオを見れば分かります。次のは素晴ら
     しいですよ。」などと言って、次回も通って来させるようにする。帰り
     がけには必ず玄関まで送り、あるいは別に手紙を出したりして来訪者に
     親密感を生じさせる。
    (3)修練会
      修練会は、短期間で急激に過去の価値観を捨て、文鮮明が再臨したメ
     シア(救世主)であり、この地上に天国を実現するためには、万物を神
     (文鮮明)のもとに復帰することが大切であり、そのためには、人を騙
     し、違法な経済活動をしてもかまわないと信ずる若者を作りだす。
      何回もビデオセンターや教会に通った人には、その人に応して、「合
     宿に行けばもつと良く分かりますよ。」などと言って、あるいは執拗に
     「決断するのは今しかない。」などと迫って、合宿研修会である修練会
     に参加させる。修練会は原理講論等の研修会であり、ツーデイズとかス
     リーデイズと呼ばれている一泊二日あるいは二泊三日のコース、一ない
     し三週間コース、更に一か月、二か月のコースまで、色々なコースが用
     意されており、最初はツーデイズ、次にスリーデイズ、そして新生トレ
     ーニング・実践トレーニング・青年実践部等を経て献身に至るという一
     連の基本的パターンはあるが、対象者の状況に応じて、最初にスリーデ
     イズに参加させたり、新生トレーニングに繰り返し参加させたりという
     ように多少これに変化をつけている。
      ビデオセンターもそうであるが、各種修練会に共通しているのは、隔
     離(なるべく一人で通って来させ、家族や友人等から引き離してお
     く。)、反復(同じ講義を反復継続して教え込む。初、中、上級とも内
     容は基本的に同じであり、量が違うだけである。)、精神や睡眠の管理
     (睡眠時間は極端に短くし、感想文や自己分析の日記を書かせ、相手の
     心理状態を把握する。)といった点である。
     @ ツーデイズ
       最初はツーデイズ(二日間修練会)に参加させる。これは各地の研
      修センターに各二〇名前後の青年を集めて毎月、土、日あるいは祭日
      に行われる。中国地方では広島市可部にセンターがある。早朝起床、
      洗顔、歯磨き、ランニングと班単位に行動する。その後ほとんどぶっ
      続けで深夜まで講義が行われる。トイレに立つことまで管理される。
      受講者仲間で話すこと(「横的に流れる」と言われる。)もサタン
      (悪魔)が働くとして固く禁止されている。受講者は一人一人個別に
      班長と「縦的」に結ばれていて、班長は受講者である班員の心理状態
      を把握する。講義の内容である原理講論は、自分で読んでみても意味
      不明の言葉が羅列してあるだけで何がなんだか訳が分からず、さっぱ
      り頭の中にも入ってこないし、何の感動も起きない。それが講義とい
      う形で講師から冗談を交えながら覇気迫る激烈な調子で説明されると、
      無批判に頭の中に入り込んできて何となく分かってくるのである。特
      に講義の切れ目には「ソーレ、ソーレ」と合いの手の入った勇ましい
      聖歌と熱烈な祈りがあり、受講者は何時の間にか異様に昂揚した雰囲
      気に飲まれていく。
       このツーデイズの段階でも、受講者は、通常まだ被告の教団名統一
      協会(世界基督教統一神霊協会)も教祖の文鮮明の名前も知らされて
      はいないし、被告の違法な経済活動等についてはもちろん知る由もな
      い。ただ、「今は世界を牧う再臨主の来る摂理の時代である。」と教
      えられ、何となくそれを信じ、期待を持ち始めるようになる。
       ツーデイズが終わると、迎えの車が来て、地区(教会)毎に歓迎会
      に招かれる。そこには御馳走が並び、「ご苦労様。おめでとう。」、
      「素晴らしかったでしょう。」と口々に祝福され、握手を求められ、
      美しい絵とお祝いの言葉が書かれた記念色紙が贈られる。最初は戸惑
      うが、次第に自分がいかにも素晴らしい体験をしてきたかのような気
      分になってくる。
       キリスト教の映画を見せることもある。ビデオセンターでの講義や
      スリーデイズが近づく頃、文鮮明のビデオを見せられ、これが再臨主
      文鮮明であり、被告を名乗る宗教団体であることが始めて明かされる。
      受講者は、これまで講義等により再臨主の話を聞かされており、一体
      再臨主とは誰なのか早く知りたいという心理状態になっているから、
      ビデオに登場する文鮮明が再臨主であると教えられると、「ああそう
      なのか。」と短絡的に文鮮明をメシアとして受け入れてしまう。
     A スリーデイズ
       スリーデイズは、早朝から深夜まで私語厳禁、熱烈な祈祷等の点で
      はツーデイズと同じであるが、受講者は既に再臨したメシアを知らさ
      れているので緊迫感がある。講義が四日間も統くので、極度の興奮で
      肉体は疲れ果てる。講師は壇の上を駆け巡り飛び眺ね全身で講義をす
      る。受講者は睡魔に襲われるが、「重要なところに限ってサタンは聞
      かせまいと眠気を起こさせるのだから、眠いと感じたところこそ一番
      肝心なところです。」と励まされ、また、文鮮明の写真に手を置いて
      祈ると眠くならないと教えられたりする。班長はい深夜講義終了後、
      班員の受講者一人一人と個別に面接し、その心理状態を把握し、献身
      (入教)の決意を迫る。ほとんどの受講者が三日目には「献身の宣
      誓」をさせられ、その後の新生トレーニング、実践トーレーニング
      (経済、伝道のトレーニング)へと引き継がれていく。
     B 新生トレーニング
       新生トレーニングは、約一か月間にわたって毎日夕方から夜にかけ
      て行われる修練会である。従来の講義内容に国際情勢、マルクス主義、
      資本論、勝共理論、統一理論等の講義が加わる。更に、経済活動、伝
      道活動の実践も行われる。それまで考えてもみなかった珍味売りにた
      めらいを見せる青年たちには、「珍味売りこそ自己否定の訓練の場で
      ある。」、「自己否定は堕落性を脱する道である。」などと教える。
      それでも疑問を抱いたり実践の辛さに躓く者は再度スリーデイズに戻
      して、「リメンバー・ダンベリー」を合い言葉に受難のメシア文鮮明
      を偲ばせ、すべての苦しみに耐えられるように叩き込まれる。
   (四)被告の経済活動(霊感商法等の販売活動)及び献金の実態
    (1)霊感商法は関連商法とも呼ばれ、被告関係者が全国に多数の販売会社
     を設け、被告関係者、販売会社、販売担当者が一体になって組織的に行
     われているものであり、その典型的な手口は次のようなものである。
     @ 販売担当者は、いずれも被告関係者である。
       販売担当者は、日頃から「手相や印相を見てあげる。」とか「姓名
      判断をしてあげる。」などの口実で一般市民宅を訪問したり、街頭で
      アンケート調査の名目で相手に接近し、販売対象者の年齢、職業、経
      済状況、性格等を克明にチェックして対象者名簿を作成する。
     A 販売担当者は、この対象者名簿をもとにして他の被告関係者と綿密
      な販売計画を練り、「家系図を見てあげる。」などの口実で対象者の
      先祖や身内の死亡原因や不幸等を詳細に聞き出し、併せてその財産状
      態を克明に調査する。
       販売担当者は、このようにして対象者のウイークポイントを詳細に
      調査し、更に対象者に対して、「あなたの先祖には殺傷因縁があり、
      これがあなたの身内の不幸を招いている。このままでは大変なことに
      なり、救われない。」などと虚偽の害悪を告知し、対象者を不安や恐
      怖に駆り立てる。
       続いて、販売担当者は、数日後対象者に連絡を取り、「今度、霊界
      のことに詳しい偉い先生が来られる。あなたは今、人生の転換期に差
      し掛かっているから、是非先生と会ってみてはどうか。」と述べ、対
      象者を展示会の会場(霊場)に誘い出す。
     B 販売担当者は、対象者名簿をもとに対象者の住所、氏名、信頼度、
      経済力、人柄、関心事、信仰心、動員トーク、トークポイント等を詳
      細に記入した動員カードを作成し、展示会を運営するタワー長に渡し
      ておく。
       展示会は、ほぼ毎月一回開催され、開催前日、タワー長、販売担当
      者、トーカー(霊能者役)団が一緒になって結団式を開く。
       タワー長やトーカー団はいずれも被告の熱心な会員である。販売担
      当者は個々に販売目標を宣誓し、更に動員カードや家系図をもとに個
      々の対象者に対する販売戦略が検討される。これらの準備を経て、販
      売担当者は対象者を霊場に連れて来る。
       対象者はまず霊場の控室で、霊界の話や不幸を背負った人たちが大
      理石の壷や多宝塔の霊力で幸せになったという内容のビデオを見せら
      れる。しばらくして先生と呼ばれる自称霊能者が現れ、対象者と面談
      する。
       自称霊能者は、霊界について詳細に述べ、あらかじめ作成してある
      動員カードの内容を念頭に置きながら対象者から先祖や身内の死因や
      不幸を聞き出す。更に家系図を手元に置きながら長時間にわたり、
      「あなたの先祖には殺傷因縁や色情因縁がついている。」、「あなた
      の家系は短命だ。」、「このままでは子孫が絶えることになる。」、
      「あなたの先祖が霊界で苦しんでいる。これを救うのはあなただけだ。
      あなたは先祖の霊を救うために選ばれた人であり、出家して先祖の霊
      を救う使命を持って生まれた人だ。」などと述べ、対象者を一層不安
      と恐怖に陥れる。
       更に自称霊能者は、「あなたが出家できないのなら、先祖を救うた
      めに財産をすべて投げ出し、大理石の壷や多宝塔を授からなければな
      らない。」などと述べ、対象者の不安と恐怖につけこみ、執拗に大理
      石の壷や多宝塔の購入を勧誘する。
     C 自称霊能者や販売担当者は、展示会場(霊場)で、タワー長の指示
      を受けながら、対象者のウイークポイントを指摘し、セールストーク
      を駆使し、ほぼ迷信に近い脅し文句で対象者に長詩間にわたって執拗
      に迫り、対象者の不安、困惑、恐怖心を煽りたて、そのような対象者
      の心理的動揺につけこみ、脅迫的ないし催眠的な話術により、大理石
      の壷や多宝塔等を「授ける」という口実で、押しつけ販売を行い、最
      終的には、対象者に販売契約書に調印させ、あたかも適正な売買が行
      われたかのように糊塗する。この段階で対象者は始めてこの売買に販
      売会社が関与していることを知る。
    (2)このような霊感商法は、昭和五〇年代初め頃から行われてきたが、昭
     和六一年暮以降、霊感商法に対する世論の非難が厳しくなるや、被告は
     それまでのやり方から、対象者に直接被告へ献金させる方法を取るよう
     になった。それは、対象者をビデオセンターに通わせてマインドコント
     ロールし、直接被告に対し献金を迫るやり方であり、霊感商法の究極的
     なやり方といってよい。
      この献金の方法による被害者は、ビデオセンター等で原理講論の研修
     を受けた後、メシアが文鮮明であるとの証を受け、更に被害者自身のウ
     イークポイントを指摘される。担当者は、「献金しなければ子供が授か
     らない。」、「献金しなければ先祖の霊が救われない。」などと言って、
     被害者の心理的動揺につけこみ、献金を強要するものであり、そのやり
     方は霊感商法の場合と同様である。
      また、現金は有しないが土地を所有している被害者に対しては、その
     土地を処分させ、その代金(多くは数千万円にのぼる。)を献金させる
     事例も多く、これは特にFD又はサニーと呼ばれている。
    (3)以上から明らかなように、霊感商法は、被告関係者が組織的、計画的
     に大理石の壷や多宝塔等を販売するために、一般市民に対して先祖に悪
     い因縁がついているなどと虚偽の事実を告知して脅迫し、かつ欺罔する
     ものであって、通常の商品販売方法をはるかに逸脱した違法な脅迫的押
     しつけ販売方法である。しかも、商品を購入することにより運が開ける
     とか、先祖の霊を教えるといったセールストークの内容は、科学的根拠
     や裏付けのない無責任極まりないものであり、いやしくも商品販売に際
     してロにすべきものではなく、社会的に全く許容されないものである。
      また、勧誘の当初において、商品販売目的や販売者の身分を秘して、
     「手相や印相をみる。」などと偽っている点は訪問販売等に関する法律
     三条に違反する。
      この霊感商法で販売される大理石の壷、多宝塔、高麗人参濃縮液等は
     原価の数十倍から数百倍もの高額で販売されている。つまり商品価値そ
     のものよりも「不幸から救われる。」といったセールストークでそのよ
     うな高額で押しつけ販売されるものであって、その暴利性は明らかであ
     る。もともと大理石の壷や多宝塔は、いずれも日常生活上必須の商品で
     はなく不要不急の商品であって、被害者らの資産状態と対比してもその
     暴利性は明白である。
    (4)定着経済の実態
      霊感商法や献金が社会的に問題となるのと相前後して、被告は、大理
     石の壷、多宝塔、念珠等の宗教的色彩の強い商品の販売に代えて着物、
     貴金属、絵画、毛皮等の一般商品の販売に乗り出した。これらが定着経
     済と呼ばれるものであり、特に、被告は、「昭和六〇年からは定着経済
     の時代である。」と位置付けている。
      しかし、その販売方法は基本的に前述した大理石の壷や念珠等の販売
     方法と少しも異ならない。すなわち、これらの商品の販売を行う販売員
     はすべて被告の関係者である。そして、霊感商法の手ロによって印鑑や
     大理石の壷等を購入させ、ビデオセンターに通わせて、半ばマインドコ
     ントロールされている被害者を、「今度○○の展示会がある。」と言っ
     て誘い出し、展示会場では複数の販亮員が被害者を取り囲み、長時間に
     わたって「この○○を買えばメシア(文鮮明)を受け入れることができ
     る。」、「この○○を買えばあなたも家族も救われる。」などと説得し
     て商品を購入させるのである。そして、絵画、貴金属、着物等の高額商
     品についてはその場でクレジット契約を締結させ、後に被害者が解約を
     申し出ても、既にクレジツト契約が成立しているなどとして解約に応じ
     ないのが通常である。      ‐
      これまで被告が行っている定着経済は多種多様であり、前記した着物
     等の他にも羽毛布団、家庭用常備薬、説臭剤、自動車、墓石、化粧品、
     清涼飲料水、サウナ風呂等にまで及んでいる。
    (5)その他の経済活動
      被告は、以上のような霊感商法、献金、定着経済の他にも様々な経済
     活動をしている。
      古くから現在に至るまで引き続きなされているものとしては、インチ
     キ募金がある。「恵まれない子らに愛の手を。」、「難民のために。」
     などと言って、街頭や各戸を回って募金を集めるものであり、もちろん
     これらの募金は最終的にはすべて被告に集められる。また、数人の被告
     の会員をマイクロバスに乗せ、全国各地で珍味、花、ハンカチ等を販売
     させる(マイクロ部隊と言われている。)方法も一貫して行われている
     経済活動の一つである。
      一方、近時は、被告の会員あるいはビデオセンターに通っている者ら
     から名義を借用して金融機関から借入をする方法で資金調達を図るHG
     と言われる方法がとられている。すなわち、被告の指示で会員(信者)
     が銀行やクレジット会社から借入をし、借入金は全部被告に入る。返済
     は毎月被告が本人に金を渡し、本人名義で借入先に支払うようにしてい
     る。しかし、利息分は本人の自己負担となったり、献金を勧められて名
     義貸しをした本人が被告のために全額かぶってしまうことも多い。HG
     の勧誘は、献金の勧誘から始め、献金をする資力がない場合に更にHG
     を勧めるのである。つまり、もともと献金をする資金がなかったり、霊
     感商法で金員を使い果たした勤労青年から金員を巻き上げる最後の手段
     としてHGが導入されているのであり、その終極的な狙いは名義を貸し
     た本人に被告の借金を献金の名目で肩代りさせ、支払義務を本人に押し
     つけるのである。そのため、献金しそうにもない人に対しても、「とり
     あえずHGをしてほしい。」と頼み、最後には献金を迫るのである。
   (五)まとめ
     以上のように、被告は、宗教団体とは名ばかりで、むしろ設立当初から
    様々な経済活動をし、利益を上げることを目的としている団体である。そ
    して、被告の会員が以上のような方法で上げた利益は会員自身には全く帰
    属せず、すべてを被告が吸い上げる。このように被告の会員は、その売上
    高とは無関係に一か月に約一万円程度の金員が与えられるに過ぎず、ほと
    んど無償で経済活動に従事させられているのである。そればかりでなく、
    被告は、後述するように、会員自身にも商品を購入させ、あるいは献金を
    強要するなどして金員を吸い上げている。
     そして、被告は、これら販売活動は会員個人又は会員が代表取締役とな
    っている個々の営利法人の経済活動であるとして、被告自身の利益として
    は計上せず脱税を図っている。税法という地上の法よりも被告の目的のた
    めの天の法が優先されるべきであるとして、販売員個人個人は、すべて被
    告の指示するままに住居を変え、まだ販売会社も短期間の内に解散と別法
    人の設立を繰り返し、課税を妨げている。
  3 被告による原告の勧誘(侵害行為)
   (一)入会に至った契機
     原告は、四人兄弟の長女として生まれ、S女子高等学校を卒業後、株
    式会社F書店(現在の「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇」)に勤務した。原
    告は、大学に進学して図書館司書のような職に就きたいと考えていたが、
    女性には高等教育は要らないという父親の反対もあって、進学を断念して
    いた。そして、一四年間F書店に勤務した後に、日々の仕事に追われて
    ゆっくりと考えることのできない日常生活に強い圧迫感を抱くようになり、
    精神的な休養を求めて、右会社を退職した。そして、オーストリアで合計
    四か月間を過ごし、リフレッシュすると共に、内面を充実させ、自分を磨
    いていかなりればならないという気持ちを強く抱くようになった。そして、
    被告との接触が始まったのは、再び日本A株式会社にアルバイ
    トとして就職して働くようになったばかりの頃であった。
     原告は、平成二年一月二三日の夕方、バス停で被告会員であるN子
    (以下「N子」という。)から、街頭での青年意識調査アンケート(路傍
    アンケート)として声をかけられた。N子の目的は、原告をビデオセンタ
    ーに通わせ、その後のセミナー等につなぎ、被告会員にさせ、献金をさせ、
    様々な物品を購入させ、更には被告会員として全生活を被告に委ね、献身
    の決意をさせた上で、被告会員の新たな勧誘員にしていくことにあった。
    しかし、声をかけてきたN子の話の内容は、宗教団体であることを明かさ
    なかったばかりか、一切の目的を秘して単に「青年サークルの青年意識調
    査を行っているのでアンケートに答えてほしい。」というものであった。
    しかも、このアンケートは、後に、被告会員として勧誘しやすい人物であ
    るか否かを判断することのできる内容あるいは献金を迫ったりする際に利
    用できるようになっており、しかも、全国統一の同じ内容であり、対象者
    の住所氏名を記入させる方式となっていて、原告も言われるままにアンケ
    ートに答え、住所、氏名、電話番号を記入した。
     同月二五日から原告に対する手紙や電話による勧誘攻勢が始まった。し
    かし、単に青年サークルに参加しないかというだけのことであり、それ以
    上の説明はー切なかった。N子からの運勢鑑定チケットの同封された手紙
    や電話での勧誘であった。原告も、「青年サークル」や「ビデオセンタ
    ー」に行くつもりは全くなく、ましてや被告に入会することになるなどと
    は予想もしていなかった。
     同月二八日、N子に対して好意を抱いた原告は、同人と喫茶店で会うこ
    とにした。「青年サークル」には参加したくないという強い原告の意思の
    表れであった。しかし、N子と約束の場所で落ち合ったところ、喫茶店に
    行くといいながら、被告の管理する施設であるビデオセンター「岡山カル
    チャーセンター」に連れていかれた。
     この岡山カルチャーセンターは、被告会員によって運営されていて、組
    織的に訪問者(「ゲスト」という。)を最終的には被告会員に仕立ててい
    く窓口となっている。岡山カルチヤーセンターでは、被告側は、スタッフ
    ルームで逐次、指示を出しながら、ゲストに対応するようになっている。
    まさに、原告は、仕組まれ騙されて連れ込まれた状態であった。しかも、
    そこでなされる原告に対する会話は、ビデオセンターに通うことを決断さ
    せるためのマニュアルに基づく組織的なものであった。
     更に、ここで青年意識アンケートと亀の甲アンケートが行われ、原告に
    気付かれないよう原告の悩み、所持金の額等が被告側に把握されてしまう。
    これらの情報が、今後原告に被告会員になることを迫る貴重な武器となっ
    ていく。これらのやり方も、被告において全国的になされている方法であ
    り、その結果、原告も、悩みの内容や所持金額について把握されている。
     原告は、長時間のやりとりがなされた後に、ビデオセンターに通うこと
    を決断させられ、ビデオ会員として入会した。そして、ビデオセンターに
    通うようになったことを口外してはならない、ビデオセンターでは専任の
    スタッフの指示に従い、独自の考えで学んではならない、できるだけ毎日、
    そして定時に来るよう指示があった。こうして、原告は、単にN子と喫茶
    店で会って話をするだけと考えていたにもかかわらず、終わってみれば客
    観的には被告と深い関わりを始める決断をしたことになった。しかし、被
    告側からは全くその組織について説明がなかったのみでなぐ、積極的に虚
    偽の事実が述べられ、しかも、組織的意図をもってビデオセンターヘ通う
    ことを決断させられている。
   (二)因縁トークによる恐怖感の植えつけ
     原告は、右の経過で、ビデオセンターヘ入会して通うようになり、こう
    して、被告の企画によってビデオを鑑賞することになった。
     右決断をした二八日には、「総序」というビデオを見せられ、その内容
    は、「人類が堕落している。しかし、その復帰の方法がある。」というも
    のであった。そして、同年二月七日には、「霊界について」のビデオを見
    せられた。
     原告は、同月八日、これらのビデオを受けで、新たに、姓名判断や家系
    図などを利用して、運勢判断を受け、「殺傷因縁・愛の恨みが強く出てい
    る。あなたが変わって氏族を救わなければ、弟さんの命が危ない。」など
    といわゆるマニュアルに従った因縁トークを告げられた。原告は、特に、
    「弟の命が危ない。」と言われたことに対して、恐怖と大きな不安を感じ
    るようになった。しかし、これらも全て後に問題となる献金を迫っていく
    一つの布石となっているのである。ビデオセンターに通うことに対して積
    極的でなかった原告を再び結びつけるに十分な脅しというべきものであっ
    た。
     そして、原告は、ビデオセンターで見た「総序」の続きは講義で説明さ
    れる旨言われ、その後講義を受けることになった。ここで完全に被告の教
    理を学ぶ体制に入ったのである。しかし、そのことは原告には伝えられて
    いない。
     「創造原理」から「堕落論」へと進み、同月一四日にI良治ことI
    一正(以下「I男」という。)から「堕落論」の講義を受けて、人間が堕
    落した本当の原因は、サタンとエバの不倫の愛であるとの説明は潔癖な性
    格の原告にとっては大きなショックであり、自分の中に原罪の存在を知り、
    深い罪の意識を衝撃的に植え付けられ、恐ろしくもあり、何かにすがって
    も何とかならないものかとの不安を拡げるものであった。
     そして、同月一六日から同月一八日にかけて、復帰原理の講義があり、
    その救いの道が提示されることになった。堕落論を聞いた段階で絶望感に
    陥っていた原告は、復帰原理を聞き、そこに「一本の希望の光」を見出し
    た気持ちになった。そして、メシアは文鮮明であることを知らされ、続い
    て上級ワンデイセミナーに参加した。この過程で、原告は、文鮮明がメシ
    アであることを信じるようになった。また、創造原理・堕落論・復帰原理
    を受け入れている状況となった。
   (三)献金
     被告側は、その日に原告に献金を決断させる日であることをあらかじめ
    企図し、献金を迫る人々をあらかじめ配置するなどして準備していた。一
    方、原告は、その日に献金することになるなどとは思いもよらず、単に、
    「今後のことについて重大な話がある。」と聞いていただけであった。
     原告は、同月二七日、ビデオセンターに行って、「万物と人間の関係」
    と題するビデオを見せられた。この内容は、人間は堕落によって神との距
    離が万物以下となっているので、神のもとに行くにはまず万物を通さなけ
    ればならないという内容であった。そして、特別な講義があると言われて、
    小会議室に通され、続いて「万物復帰」について話があり、I男から、万
    物を捧げなさい、万物の中で一番良い物は金銭であると言われた。原告は、
    ビデオセンターで、霊界の存在と誰も天国へ行けない現状を教えられて、
    このままだと皆地獄へ行くと言われ、因縁トークでは、自分の家系が絶家
    に向かっている、弟の生命が危ないと宣告され、解決の方法は、自分が三
    四歳までに変革することであり、変革するにはピデオセンターで学ぶしか
    ないと言われ、しかも、それは人間個人の努力では解決できず、堕落した
    人間は再臨したメシアによる救いを受けなければ、本当の解決はないと断
    言されていたために、文鮮明と被告を受け入れるしかないという状況の中
    で、復帰するには金銭が一番と迫られたのであった。
     そして、I男は、どうしても献金しないと復帰の道を歩むことができな
    いこと、一〇〇〇万円や二〇〇〇万円も献金しろとは言わないと言いなが
    らも、あらかじめ把握している原告の全資産を献金するように促す、生命
    を捧げろと言っているわけではないなどと迫り、原告は、結局四ニ一万円
    を献金することになった。右に述べたとおり、堕落論を聞いて、弟の命が
    危ないとまで言われている中で、復帰の道を歩むには万物復帰つまり全資
    産の献金でしかないという不安と恐怖の中で唯一の救いの道であると信じ
    させ、長時間深夜にわたり、全資産に近い献金であるにもかかわらず、何
    らの考慮期間を置こうとせず即断を迫り、翌日には、N子が原告から通帳
    を預かり、定期預金を解約して現金化した。
     このように、万物復帰の原理は、既に堕落論を知って恐怖と不安に陥っ
    ている原告にとってはことさら心理的強制として強く働くのである。
   (四)セミナー等によるマインドコントロール
     原告は、同年三月一六日から同月一八日の間、広島県可部にある可部修
    練所において行われたスリーデイズセミナーに参加した。終日、集団行動
    ・講義・スポーツ等のスケジュールの中で、原告は、被告への入信を決意
    し、献身への決意表明と、次の新生トレーニングヘの参加を決断させられ
    た。
   (五)新生トレーニング
     原告は、同月三〇日に、新生トレーニングのための面接を受け、同年四
    月から、新生トレーニングに参加した。月曜日から土曜日まで毎日、終業
    後の午後七時三〇分から約二時間講義を受け、その後もビデオを見る等す
    る生活が続き、自らの生活のための時間を持つことができなくなった。こ
    のころから、アベル(霊の親)に対する「報・連・相」、心情ノートの提
    出等が義務づけられるようになり、心身共に常にアベルの管理下に置かれ
    ることとなった。
   (六)ソウルでのスリーデイズセミナー
     原告は、同年五月、ソウルで行われたスリーデイズセミナーに参加した。
    このころから、被告に反対する人達からの働きかけなどに対する対策のた
    めの学習がビデオなどでなされ、これらの情報に接しても心を開くことが
    ないようにさせられた。
   (七)実践トレーニング
     原告は、同年六月から、実践トレーニングに参加し、路傍伝導に従事す
    るチームに配属させられ、「チームマザー」の指示を受けながらアンケー
    ト調査等を装い、新しい会員勧誘、展示会への勧誘、ビデオセンターヘの
    勧誘等を連日行った。原告は、この中で、原告の両親も勧誘した。
     更に、「ブルー展」で、クリスチャンベルナールの商品の購入を他に勧
    め、自らもこれを購入した。「ブルー展」は定期的に開催され、原告は、
    その都度客の動員や購入を勧める役割を担ってきた。こうして、霊感商法
    に深く関わるようになった。
   (八)献金
     原告は、同年八月、原告の両親に二一〇万円を献金させた。原告は、そ
    の後、献身のための準備をしたり、祝福(合同結婚式)について考えるよ
    うになった。、
   (九)韓国でのフォーデイズセミナー
     原告は、同年一二月六日から同月九日までの間、韓国で行われたフォー
    デイズセミナーに参加した。
   (一〇)青年実践部
     原告は、平成三年二月、青年実践部の所属となり、津倉荘のホームで共
    同生活をするようになり、マザー補佐の役割を担当した。
   (一一)被告会員としての活動
     原告は、同年四月、広島可部修練所で行われた特別スリーデイズセミナ
    ーに参加し、参加後、意欲的に物品販売、勧誘等に取り組み、多くの成果
    を上げた。
     同年六月には、被告系企業である株式会社ワコム岡山営業所に勤務する
    ようになった。
     原告は、同年九月二四日、福岡で韓鶴子(文鮮明の妻)が参加した信徒
    大会に参加した。
     原告は、平成四年三月、被告系企業である世一観光株式会社広島営業所
    に勤務するようになり、広島教会の青年部所属となった。
     同年四月、同年八月に実施される合同結婚式に参加するための準備活動
    が始まり、原告は、セブンデイズセミナーに参加し、祝福への参加の関心
    が高まった。参加の条件として霊の子を三名立てるよう指示され、勧誘
    (伝道)活動を強化した。
   (一二)脱会
     原告は、同年六月、原告の父親が交通事故のため死亡し、巡回師から、
    「あなたがお父さんを殺した。」などとその原因が原告にある旨告げられ、
    父親の死に対して責任を感じ、被告の仏壇を購入し、合同結婚(祝福)を
    やり遂げなければならないと思うようになった。こうして、原告は宗教と
    認識しないまま被告に入会し、その中で先祖の因縁に脅かされながら、霊
    感商法に従事し、他の人をリクルートしてきたのである。
     そして、原告は、同年七月、父親の四九日の法事のため自宅に帰った際、
    家族らによって保護され、被告にすされていたことに気付き、被告を説会
    した。
  4 被侵害利益・違法性
   (一)マインドコントロールの違法性
    (1)思想及び良心の自由は、人間の尊厳を支える根源的なものであり、民
     主主義存立の基盤となるものであって、内心の自由として絶対的に尊重
     されなければならない。宗教を信じない自由、特定の宗教を信じる自由
     はこの内心の自由の一つである。このような信教の自由には単に内心の
     信仰の自由だけでなく、宗教団体に入教を強制させられない自由や宗教
     活動の自由も含まれるが、行為が単に内心にとどまることなく他人に対
     して具体的害悪を及ぼす場合には制約を受けるのは当然であり、他人の
     人格権を侵害する「宗教活動」については行為者は損害賠償の責任を負
     わなければならない。
    (2)本件において、被告は、前記のとおり、高度に組織化された環境と手
     法の中で、被告会員として資金集めのための違法な経済活動に従事させ
     る目的をもって原告をマインドコントロールして被告に入信させたもの
     である。そして、その後は、被告は原告を新たな「信者」のリクルート
     活動や資金集めのための違法な霊感商法へと駆り立てた。
      スティーブ・ハッサン著「マインドコントロールの恐怖」では、マイ
     ンドコンドロールについて、「個人が自己自身の決定を行うときの人格
     的総合性を切り離そうとするシステム。その本質は、依存心と集団への
     順応を助長し、自律を失わせることである。行動、意思、感情、情報を
     コントロールすることによって達成される。」と述べられている。
      被告は、二ーズの操作やカムフラージユによる情報コントロールとい
     ったマインド・コントロールの手法により、一定の教化や説得を通じて
     被勧誘者に新しい信念体系を植え付けるのである。
   (二)平成二年二月二七日の献金の違法性
     被告の献金勧誘行為の違法性を基礎づける事実としては、次のうちのい
    くつかの事実が主張立証されれば十分であり、そのことによって、もはや
    献金とはいえなくなるのである。
    (1)当初、被告の献金勧誘の目的であることが秘匿されている。
    (2)あらかじめ悩みや財産状態を聞き出している。
    (3)それに基づいて献金の目標額が定められている。
    (4)具体的かつ執拗に因縁話をして不安をあおり献金を要求して決意させ
     ている。
    (5)献金承諾後すぐに信者が付き添って預金の引き出しなどを行い、献金
     や受講について口止めをし、すぐさま献金についてその是非を考えるこ
     とをできなくさせている。
   (三)本件の場合は、原告には献金に至ることを知らせないで、仕組まれた部
     屋において、万物復帰をしなければ弟の命が危ないなど、原告の恐怖感
     に乗じて、長時間深夜の説得がなされ、原告にとってほぼ全資産を提供
     させ、翌日には、被告会員によって預金が解約されるなど、右で述べた
     全ての要件を満たしていて、献金だけとっても違法と判断されるべきで
     ある。
  5 責任原因
   (一)被告の責任
    (1)被告の献金勧誘行為がたとえ布教活動の一環として行われたものであ
     ったとしても、その目的・手段・結果において社会的に相当でないと判
     断される場合は違法となり、民法七〇九条の不法行為を構成する。
      本件の場合、直接勧誘のなされる前に原告に恐怖感を持たせる一連の
     行為がなされ、そのようにして醸成された霊界に対する原告の恐怖心を
     利用して計画的に長時間にわたり複数人が取り囲んでした献金勧誘行為
     は、目的・手段において社会的相当性を欠き、原告をして全資産を被告
     に提供することを決断させたもので、結果においても相当ではなく、右
     献金勧誘行為は全体として不法行為を構成する。
    (2)前述したとおり、被告の献金勧誘システムは全国で組織的に遂行され
     ているものであって、これが違法と評価される場合、被告は直接不法行
     為責任を負うべきである。
    (3)被告は、少なくともこのような勧誘行為をした信者を統括している立
     場にある者として、民法七一五条に基づき損害賠償責任を負う。
    (4)非営利団体である宗教法人は、その信者が第三者に損害を与えた場合、
     当該信者は宗教法人との間では、被用者と同視すべき地位にあるものと
     認めるべきであり、かつ、その加害行為が宗教法人の宗教的活動等の事
     業の執行につきなされたものであるときは、右信者の加害行為につき民
     法七一五条に定める使用者責任を負う。
    (5)よって、被告は、原告の被った財産的損害及び精神的損害について、
     直接不法行為責任を負うとともに、信者のなした違法行為についても使
     用者責任を負う。
  6 損害
    原告は、被告の不法行為によって次の合計九二八万五ニ○○円の損害を被
   った。
   (一)献金 四五七万八二〇〇円
     原告は、平成二年二月二七日、被告に対し、四二一万円を献金し、その
    他に月例献金として二二万七〇〇〇円及び特別献金として一四万一二〇〇
    円計三六万八二〇〇円を別途献金した。
   (二)セミナー参加費 三三万四〇〇〇円
     原告は、セミナー参加費として合計三三万四〇〇〇円を被告に対し支払
    った。
   (三)宝石購入 一三万五〇〇〇円
     原告は、同年六月二四日、自ら宝石を購入し、その代金として一三万五
    〇〇〇円を被告に対し支払った。
   (四)絵画購入 三〇万円
     原告は、同年一二月一七日、自ら絵画を購入し、その代金として三〇万
    円を被告に対し支払った。
   (五)印鑑購入 二万八〇〇〇円
     原告は、平成三年一月三一日、自ら印鑑を購入し、その代金として二万
    八○○○円を被告に対し支払った。
   (六)毛布購入 二万円
     原告は、平成四年五月二四日、自ら毛布を購入し、その代金として一一
    万円を被告に対し支払った。
   (七)精神的損害 三〇〇万円
     原告は、被告の違法なマインドコントロールによって宗教選択の権利を
    不当に侵害されたのみならず、その人格権を侵害され、反社会的集団に心
    ならずも所属させられ、その一員として活動させられたことにより多大な
    精神的苦痛を被ったが、これを金銭的に評価すると三〇〇万円を下らない。
   (八)弁護士費用 八〇万円
  7 結論
    よって、原告は、被告に対し、民法七〇九条または同法七一五条に基づき、
   九二八万五二〇〇円及びこれに対する不法行為後である平成四年八月一日か
   ら支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

 二 請求原因に対する認否
  1 請求原因1(一)及び同(二)のうち原告が被告の会員であったことは認めるが、
   ビデオセンターが被告の施設であること及び原告の脱会の経緯は否認する。
   原告の脱会は被告に対する反対活動家らによって強制されたものである。
  2 同2(一)及び同(二)(1)のうち霊感商法等数々の反社会的経済活動への必然性が
   被告の教理の中に存することは否認するが、その余は認める。
    同2(二)(2)ないし(5)及び同(三)は否認する。
    同2(四)のうち被告の信者が設立した商事会社があり、その会社が物品販売
   をしていることは認めるが、その余は知らない。
    同2(五)は否認する。
  3 同3ないしは6は否認する。

 三 被告の主張
  1 被告は、宗教活動のみを目的とする宗教法人であって、霊感商法その他い
   かなる収益事業も行っておらず、一切これに関与していない。原告を勧誘教
   化した組織は被告ではなく、被告の信者を中心として独立して設立された全
   く別の組識であって、右組織が被告の組織に組み込まれているわけではない。
   ビデオセンターや修練会、展示会等の主催者も右組織であって被告ではない。
    また、信者らのうち、信者組織が使う意味での「献身者」もそうでない者
   も、被告の職員になるわけではない。右信者らは被告の信者ではあるが、被
   告の職員ではないのであるから、そこに指揮監督関係は存在しない。信者ら
   は、被告から雇用されているものでもなく、被告が信者らの不法行為の発生
   を回避できる可能性もないから、そこに実質上の指揮監督関係もない。被告
   は、職員以外の信者の生活について関与できる立場にはない。
    被告が信者から献金を受け入れることはあるが、それは被告に限らずどこ
   の宗教法人もしていることである。
  2 原告は、自己の人格が破壊され、違法行為も善であると信じて行動するよ
   うになったのは、被告のマインドコントロールによるものであるかのように
   主張する。
    マインドコントロールという概念は、心理学上普及した概念ではなく、ニ
   ューイングランドの心理学協会では一九八〇年代にこの概念を否定している。
   また、アメリカの科学的宗教研究学会SSSRは、この概念は科学的裏付け
   のないものであるとしている。更に、原告は西田公昭の論文に基づいて主張
   しているようであるが、西田自身、「この理論は未だ心理学の観念として普
   及していない。」旨明確に証言している。
    したがって、そもそも、このような概念を用いて、被告の責任を追及する
   のは誤っている。
    人間の主体性は、素質、環境等諸々のものに影響されつつ、その中から自
   己に有益な事実や情報を取り出し、それを受容し、それに従って行動してい
   く判断選択過程に最も端的に現れるものであって、その際、他者から諸々の
   影響を受けることは絶対避け得ない。他方、人間が個人ないしは所属する団
   体を通して他人に対して自己の信ずる思想、信条、宗教心等を理解してもら
   うべく話しかけ説得するのはその当然の権利である。かかる他者への影響力
   の行使を悪意に満ちた客親性を持たない意図や目的を持ってマインドコント
   ロールの概念を用いて否定することは決して許されるべきではない。
    してみれば、被告の行為は、ある新しい宗教の信者を獲得するためのごく
   普通の説得行為ということになり、その対象者が自らの自由意思に基づき宗
   教を選択受容する際に一つの影響を与えているにすぎない。
    人間存在は、主体性ある自己決定にその根拠を認められるのであり、それ
   を奪い去ることはできない。
    原告の主張に従えば、現在被告の信者である者も同様に被告によってマイ
   ンドコントロールされていることになるが、そうした主張自体自らの自由意
   思で信仰生活を送っている被告の信者に対する冒涜であって、まさに信教の
   自由に対する挑戦というほかはない。
    更に、原資はマインドコントロールの主体を被告とするがパ被告は、原告
   の主張にかかる一連のシステムとしてのマインドコントロールの施設である
   ビデオセンターやツーデイズ、スリーデイズ等の修練会や各種トレーニング
   等の管理・運営をしたことはない。
  3 宗教等の領域においては宗教団体名等を明らかにしないでする勧誘や教化
   行為は違法とはいえない。
    被告が行う伝道活動は、その教義の流布という宗教法人の日的に従ったも
   のであり、その実質は宗教的確信に基づく宗教活動である。いうまでもなく、
   日本国憲法において保障されている信教の自由は、自ら信仰する自由ととも
   に、そのコロラリー(系)として自らの信仰を他者に伝達し、宗教的確信を
   他と共有するための活動を行う自由をも含むものである。
    したがって、被告の信者がいかなる宗教を信仰しているかを明かさないま
   ま伝道活動を行ったとしても、それは直ちに相手方の信教の自由を侵害する
   ものではなく、社会通念上許された伝道活動というべきである。被告の信者
   らによる原告に対する勧誘行為は、伝道される者の自由な意思に基づく正当
   な行為であり、信教の自由の範囲内において行われたものである。原告は、
   自ら被告の教義を信仰し、宗教的確信に基づいて、本人の自由な意思決定に
   より社会奉仕や伝道活動に携わるなど、宗教活動の意味を十分理解した上で
   任意にしたものである。
  4 原告の主張は、要するに、被告が組織的に自らの正体を隠して原告に接近
   し、耳に心地よい言葉と原告の好奇心や向上心をくすぐるような言葉で原告
   を組織の中にとらえ、次第に他の情報から遮断隔離し、優しい人間関係で原
   告を包み、他方、原告の精神的弱点を指摘して原告を不安と恐怖に陥れ、ビ
   デオセンターあるいはツーデイズ、スリーデイズ等の修練会等、目的的に管
   理された環境の中で一方的に教義を教え込み、やがて霊感商法という違法行
   為さえも正しい行為であると信じ込ませることが、原告の思想・信教の自由
   を侵害し、その人格を破壊するものであって不法行為を構成するというもの
   である。
    しかし、原告のそのような不法行為の主張が、民法七〇九条に基づくもの
   であるとした場合、観念的な存在である法人自体の故意・過失ではなくて、
   法人の機関の故意・過失を問題とすべきであるから、右主張は失当である。
    また、原告の不法行為の主張が、同法七一五条に基づくものであるとした
   場合、第一に被告と信者らとの間に使用関係がなければならないが、原告は
   単に被告と信者らの組織的一体性を主張するのみで、具体的にどのような使
   用関係があったかについては何ら主張していないし、第二に、被用者が「事
   業の執行に付き」第三者に損害を加えなければならないが、原告は、原告を
   勧誘し、金員を出損させた信者らが、具体的にどのような事業を執行するに
   つき原告に損害を与えたかを主張していない。
    なお、「事業の執行に付き」の判断に当たっては、被用者の行為が使用者
   の事業自体の範囲に入るか否かの判断が必要となるが、被告は宗教活動以外
   の事業活動は全く行っていない。

第三 証拠関係
   本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

                理    由

一 請求原因1(当事者)について
 1 請求原因1(一)(被告)は当事者間に争いがない。
 2 請求原因1(二)(原告)のうち、原告が被告の会員であったことは当事者間に
  争いがない。

二 請求原因2(被告の組織と宗教活動)について
 1 請求原因2(一)(被告の組織)は当事者間に争いがない。
 2 請求原因2(二)(被告の宗教活動)(1)(被告の教理)は、霊感商法等数々の反
  社会的経済活動への必然性が被告の教理の中に存するとする点を除き当事者間
  に争いがない。
 3 そこで、その余の原告主張の請求原因2(二)(被告の宗教活動)(2)ないし(5)、
  同(三)(マインドコントロールの実態)、同(四)(被告の経済活動〔霊感商法等の
  販売活動〕及び献金の実態)及び同(五)(まとめ)について判断する。
  (事実関係)
   右の各争いのない事実に甲第四二号証ないし第五四号証、第八九号証ないし
  第九七号証、第一一八号証、第一二四号証、乙第一五号証、第二五号証の1な
  いし4、第二六号証ないし第二九号証、第三六号証ないし第四〇号証、第四二
  号証、第四四号証、第四五号証、第四八号証ないし第五九号証、証人I男、
  同N子の各証言、原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、次の
  事実が認められる。
  (一)被告の信者組織は、中央本部と呼ばれる事務局を頂点に、全国をブロック
   及び更にこれを細分化した地区と呼ばれる各単位に分け、連絡協議会又はブ
   ロック長会議と呼ばれる意思決定機関において、全国的に活動統制が図られ
   ており、昭和五七年頃、ブロック長会議において、被告の教義を布教、伝道
   するため、非信者に被告の教義に関するビデオを見せる施設としてビデオセ
   ンターを設置することが決定され、各地にこれが設置された。ビデオセンタ
   ーでは、被告の組織活動や教義布教活動等に専従する献身者と呼ばれる被告
   の信者(以下「献身者」という。)が中心になってその運営に当たっていた。
    岡山カルチャーセンターもこのビデオセンターの一つであって、被告の岡
   山地区信者組織所属の信者らがその運営に当たっていた。
    右信者組織は、被告の信者の配置及び活動場所を決めて布教活動又はこれ
   に伴う献金勧誘等の活動に当たらせ、被告に対する献金の窓口となり、月毎
   あるいは年毎に新規信者の獲得数や献金又は収益事業による売上金の目標額
   を決めてこれを地区毎に分担させ、献金の説得に至るまでの手順についてビ
   デオ等による手引きを作成して非信者及び既に信者となった者に対し、その
   先祖らの色情因縁や殺傷因縁等を説き、そのような因縁から解放されるため
   には、全財産を献金する必要があると説明するように指導していた。
  (二)非信者が連絡協議会の下部組織であるビデオセンターを通じて被告に入教
    (献身)する過程は、その時期や地域によって若干の変遷や差異があるが、
   概ね@ビデオセンターヘの勧誘(伝道)、Aビデオセンターにおけるビデオ
   講座の受講、Bツーデイズセミナー、Cライフトレーニング、Dスリーデイ
   ズセミナー、E新生トレーニング、F実践トレーニング等の手順を経て、G
   献身に至るというものである。
    ビデオセンターにおける学習は通所によるビデオ視聴形式を中心とした講
   義受講の方式が採用され、ツーデイズセミナー(以下「ツーデイズ」とい
   う。)、スリーデイズセミナー(以下「スリーデイズ」という。)は合宿形
   式のセミナーである。ライフトレーニングは通所の集中研修であり、新生ト
   レーニング、実践トレーニングは、連絡協議会の下に設置されているホーム
   と称される研修所において集団生活をする長期研修である(以下、これらを
   総称して「セミナー等」という。)。
    セミナー等は有料であり、受講者は受講料を支払ってこれに参加する。そ
   の内容はいずれも被告の教義の講義であり、ビデオセンターではビデオ視聴
   による講義が、他のセミナー等では講師による講義がそれぞれ行われる。セ
   ミナー等が実施される会場は色々であるが、その中心はビデオセンターであ
   り、研修スタッフもビデオセンクーから派遣される。
    ビデオセンターでは、ライフトレーニングまでは被告の教団名や文鮮明の
   名前、あるいはセミナー等の主催者が連絡協議会であることは受講者に明か
   されず、スリーデイズ参加直前に始めて明らかにされる。
    新生トレーニング以降の段階では、受講者は通常各自の家を出てホームに
   泊まり込むことになる。
    実践トレーニングでは、実践と称して、献身者と同様に街頭でのアンケー
   ト活動、珍味等の訪問販売、連絡協議会主催の各種商品販売展示会への動員
   等の各種経済活動が始まり、受講者には一定のノルマも課される。
    右各研修過程では、受講者は到達段階毎にビデオセンターのスタッフによ
   ってその成長度を判定され、教義に疑問を抱いたり、家族が強く反対するな
   どの問題があると判断された場合には、その段階に止まって学習を続け、問
   題がなくなったと判断された時点で更に先に進む。時には、一且進んでから
   前の研修段階に戻されることもある。
    街頭アンケートで声をかけられた者のうち実際にビデオセンターに通うよ
   うになる者の割合は数パーセント程度にとどまり、それらの者のうち献身の
   段階にまで到達する者の割合は更に低く、途中で相当数の受講者が辞めてい
   く。
    以上の過程を更に詳説すると次のとおりである。
   (1)ビデオセンターヘの勧誘(伝道)
     連絡協議会では、新規信者の勧誘を伝道と呼び、その方法には、@見知
    らぬ人に街頭でアンケートの名目で声をかけ、ビデオセンターヘ連れてい
    く路傍伝道、A知人や親族を紹介するFF(ファミリー、フレンドの略
    称)伝道、B印鑑や念珠等の訪問販禿をきつかけとする訪問伝道等の方法
    がある。相手がピデオセンターヘ行くことに応じた場合、伝道者を霊の親、
    被伝導者を霊の子と呼び、霊の親は霊の子が献身に至るまでの間途中で辞
    めることがないよう、アフターケアとして手紙や簡単な贈り物、電話等を
    頻繁に行って激励する。ビデオセンターでは来訪者をゲストと呼び、新規
    ゲストと応対する担当者をトーカーないし新規トーカーと呼ぶ。トーカー
    はあらかじめ霊の親からゲストの悩みや願い、問題意識等を聞き出し、ゲ
    ストを賛美しながら、ビデオセンターで霊の親と共に勉強しましょうなど
    と述べて入会を勧誘する。
   (2)ピデオセンター
     被告の内部ではゲストに対して担当カウンセラーが決められる。担当カ
    ウンセラーはゲストがビデオ視聴に通い学習する間、終始にこやかにゲス
    トと応対し、決して否定的な態度を取らず、ゲストとの間に信頼関係を醸
    成し、ゲストが更に先の段階のツーデイズやスリーデイズ等に参加するよ
    うに働きかける。
   (3)ツーデイズ
     ツーデイズは連絡協議会のブロック単位で開催され、被告の修練所等が
    その会場となる。ツーデイズで最も重要な役割を担うのは班長である。班
    長は、受講者に対して包み込むような態度で接し、受講者の状況を常に把
    握して更に先の段階であるライフトレーニングやスリーデイズに参加する
    ように働きかける。
     このセミナー中、受講者は家族や友人と電話連絡することを禁止され、
    受講者間の会話も制限される。
     講義内容はビデオセンターでのそれと同じであるが、このセミナーにお
    いて始めて救い主である再臨したメシアが現在すること、堕落した人間が
    救われる可能性のあることが示唆され、講師は受講者に対しメシアが誰で
    あるかは次のライフトレーニングないしスリーデイズにおいて明らかにな
    ると告げる。担当カウンセラーを含めたビデオセンターのスタッフらは、
    ツーデイズ終了後、祝賀会を開き、受講者を賛美し労う。この段階に至っ
    てもなおスリーデイズやライフトレーニングに参加することを決めていな
    い受講者に対しては、参加を決意するように説得する。
   (4)ライフトレーニング
     ライフトレーニングはツーデイズ終了日の翌日から始まり、ビデオセン
    ターの教育部がこれを担当する。受講者は一五日から一か月の間毎晩仕事
    や学業終了後会場となる施設に通い、講義を受け食事をして解散する。受
    講者はこの段階で始めて他の受講者と会話する。スタッフは、様々な機会
    を利用して、受講者が偶然の幸運や不運を神様の働き、サタンの働きと捉
    えるように働きかけ、自分の行動や周囲の状況等について、スタッフに対
    し常に「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」をするように求める。最終
    日はワンデイと呼ばれ、メシアの証と題する講義が行われる。この講義で
    は、受講者に対し、始めて文鮮明の名前と同人のみがメシアの条件を満た
    すこと、同人を支える団体が被告であること、これまでのセミナー等の主
    催者は被告ないしその関連組織であることが明かされ、マスコミの被告に
    対する誹膀中傷はサタンが働きかけた結果であるから惑わされないように
    と注意される。
   (5)スリーデイズ
     スリーデイズは、連絡協識会のブロツク単位で開催され、被告の修練所
    等市街地から離れた自然の中の施設が会場になる。
     ツーデイズと同様、緊急時以外は外部の者と連絡することは禁止される。
     受講者は、これまでと違い、被告の伝道活動であることを自覚して参加
    する。文鮮明の提唱する統一運動、勝共理論、文鮮明の活動軌跡等に関す
    る講義が新たに加わり、ブロック長等の説教がある。講義の要所要所で感
    動的な音楽が流されるなど演出にも工夫が凝らされている。聖歌や祈りの
    時間があり、全員が祈祷し、泣き出す者が続出するなど感情の高揚した状
    態が続く。受講者は、セミナーの期間中、何度も献身することが神を喜ば
    せる途である旨聞かされる。
     班長は、セミナーの期間中、毎日受講者と班長面接を行い、全員が新生
    トレーニングに参加し、最終的には献身まで決意するように働きかけると
    ともに、受講者の成長度合いを判定し、受講者からその財産内容、実家の
    状態、恋人や婚約者の有無等の個人状況を聞き出す。障害があって新生ト
    レーニングの段階へと進めない受講者に対しては、障害の内容を具体的に
    聞き出し、その対策を伝授する。最後の班長面接は感情の最も高揚する講
    義の直後に行われ、受講者に対し献身の決意の有無を尋ねる。決意しない
    者については、翻意するよう朝まで説得を続ける。大部分の受講生は、献
    身する旨返事をするが、献身後の活動については具体的なイメージまで持
    っていない。最終日には宣誓式があり、受講者は皆の前で被告に献身し神
    のために(ないしは文鮮明夫妻のために)生きる旨の宣誓をする。班長は、
    受講者に対し、所持金の全額を献金するよう強く勧める。
     ビデオセンターのスタッフは、研修終了後、ツーデイズの場合と同様に
    祝賀会を開き、受講者を賛美し労う。
   (6)新生トレーニング
     新生トレーニングはスリーデイズ終了後から始まる。スリーデイズ終了
    日の翌日に面接があり、班長が参加者と共に家を留守にする口実を考える。
    参加者は自宅を出て信者らが集団で居住するアパート等(信者の間ではホ
    ームと呼ばれている。)に泊まり込み、ホームから会社や学校に通い、ホ
    ームに帰ってからは講義を受ける。
   (7)実践トレーニング
     実践トレーニングは、新生トレーニングと同様、ホームに起居して講義
    を受講する研修であるが、期間は決められておらず、参加者の献身をもっ
    て終了する。
     献身後の信者活動の実践として、街頭アンケート活動、被告主催の展示
    会への動員活動等が始まり、参加者全員がこれを経験する。
     いずれの活動についても、まず当該活動の意義を被告の教義と関連づけ
    て説く講義があり、受講者は、スタッフの指導の下でマニュアルに基づき
    想定問答等の反復練習をする。各種展示会においては、受講者は、これら
    の物品を購入することは、購入者本人のためになると信じ、班長と協力し
    て自分の家の財産の程度、その処分権限の所在、霊界や先祖の因縁に対す
    る感覚等を検討して商品の売値を決め、購入させる算段をする。
   (8)献身
     受講者がそれまでの職を捨て、家を出て信者としてビデオセンターの活
    動に専従することを献身という。献身後の信者は、ホームで生活し、食事
    の提供を受け、仕送り、退職金、自分の財産等があればすべてホームの会
    計担当者に渡し、ホームの会計から月一万円ないし一万五〇〇〇円程度の
    小遣いの支給を受ける。
   (9)献身後の信者の諸活動
     献身後の信者は、当初連絡協議会の青年部(ビデオセンター)に配属さ
    れて活動するが、一定期間経過後、青年部から国際機動隊等へ派遣されて
    活動することになる。その間、信者としての成長段階に応じて、二一日修
    練会、合同結婚式(祝福)等被告の主催する活動に参加する。いずれも参
    加資格が必要であり、資格の有無は連絡協議会等で上司が判断する。
  (判断)
   右認定事実によれば、被告の信者らによる右一連の勧誘、教化行為は、被告
  の宗教活動ないしはそれと密接に関連する布教活動の一環として行われ、かつ、
  被告の教義、信仰の実践行為と認められる。そうすると、被告の信者が被告と
  別に組織を構成し、それら信者組織の意思決定に従って宗教活動又はこれに付
  随する布教活動を行う湯合であっても、被告とその信者粗織とは、同じ目的の
  ために存立し、宗教法人あっての信者組織であり、当該宗教法人の存立目的を
  達成するのに必要な限度と方法において、当該宗教法人が信者組織を規律する
  ことが当然予定されているものとみるべきであるから、前記認定事実によれば、
  被告においても信者組織に対する実質的な指揮監督関係があるものと認めるの
  が相当である。

三 請求原因3(原告に対する侵害行為)について
  前記認定事実に加え、甲第一号証の1、2、第二号証の1、2、第三号証、第
 四号証の1、2、第五号証の1、2、第六号証の1、2、第一〇号証ないし第一
 三号証、第一五号証、第一七号証ないし第二〇号証、第二一号証の1、2、第二
 二号証の1、2、第二三号証ないし第三九号証、第四一号証、第一二七号証、第
 一二八号証、乙第一号証ないし第二四号証、証人I男、同N子の各証言
 及び原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
 1 原告の宗教観等
   原告は、妹二人と弟一人の四人兄弟の長女として生まれ、幼少の頃から霊的
  存在を信じ、カトリック系の幼稚園で聖書やイエスキリストの話を聞いて強い
  関心を持ち、自らの人生をイエスキリストの教えと深く結びつけて考えながら
  育った。原告は、正義感が強く、潔癖性の面や男性嫌いのところがあり、高校
  は女子校である山陽女子高等学校に進学した。
   原告は、同校卒業後、社会に出る前に自分の生きる世界について自分なりに
  考えをまとめるため、大学に進学したいとの希望を抱いていたが、女性に学問
  は要らないという父親の反対にあって、大学進学を断念せざるを得ず、人生に
  対する挫折感を強く感じてそのまま社会へ出ることを懸念し、一時は修道院に
  入ることも考えた。しかし、高校の恩師の勧め等もあって、結果的に株式会社
  F書店(現在の「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇」)に就職した。原告は、同社
  に勤務中、男性優位の組織と学歴や出世競争について矛盾を感じ、強いコンプ
  レックスを抱くようになった。
   原告は、そのようなこともあって、ますます精神世界や魂の重要性を感じる
  ようになり、自分の生きている世界は何かが間違っているという思いをいつも
  心に抱きながら、書物の中から答えを得ようと、様々なジヤンルの本を渉猟し、
  また、聖書の中に真実があるのではないかと考えて聖書を学びたいという思い
  を強くしていた。ちょうどそのような矢先に、友人に誘われて、原告は、比叡
  山へ座禅の修行に行ったり、創価学会やエホバの証人といった各種宗教団体と
  も接触を重ねていた。その一方で、原告は、日々の仕事に追われて心身共に非
  常に疲れ果て、昭和六三年五月、一四年間勤務した同社を退職した。
   原告は、退社後、オーストリア等で合計四か月間を過ごし、人間性を回復す
  るとともに、もっと様々なことを学び、人間として内面を充実し、自分自身を
  磨いていかなければならないと思い詰めるようになった。そして、新たな勉強
  の機会を摸索しながら、必要資金を貯めるため、日本アイビーエム株式会社で、
  一年間の短期アルバイト社員として勤めるようになった。
 2 ビデオセンターヘの勧誘
   原告は、平成二年一月二三日の夕刻、バス停でバスを待っていると、被告の
  会員であるN子から青年サークルの生活意識アンケートと称して声をかけられ
  た。原告は、少し以前にも二度ばかり、男性の被告会員から同種のアンケート
  調査を求められて応じたことがあったが、原告自身アンケート内容に興味を持
  っており、N子も「人の心は状況によって変わるので、もう一度答えてほし
  い。」と熱心に勧め、同人が非常に親しみやすい雰囲気で声をかけてきたこと
  も手伝って、バスが来るまでの間であればということで、再度アンケート調査
  に応じた。N子は、アンケートについて青年の意識調査であると説明し、宗教
  と関係があるという話は一切しなかった。原告は、前回のアンケート調査のと
  きは相手が男性であったこともありやや警戒していたが、このときは女性であ
  るから特に問題は生じないだろうという気持ちになり、アンケート用紙に氏名、
  年齢、職業、住所等をすべて書き込み、バスを待っている間の一五分から二〇
  分位の間、N子とアンケート以外についても色々な話をしたが、待っていたバ
  スが来たことから、その日はそれで別れた。
   原告は、翌二四日、同じ場所で再度同じアンケート調査をしているN子に声
  をかけられ、そのときは、N子は原告に対して何ら勧誘はしなかったが、原告
  は、同人と縁があるように感じた。そして、同月二五日頃、N子から、運勢鑑
  定チケットの同封された手紙を受け取り、原告は、丁度その手紙を読み終えた
  頃、同人から電話を受け、青年サークルヘの熱心な勧誘を受けたが、サークル
  には参加したくないと思っていたため、遠慮がちに断った。
   更に、同月二六日、同月二七日と、次々にN子から手紙が届き、原告は、な
  ぜN子が毎日のように手紙をくれるのか不思議に思うと同時に、手紙を貰って
  悪い気持ちはせず、同人から手紙を貰ったり、同人と電話で話をするうち、同
  人の人柄も分かって好意を持ち、もっと話がしたいと思うようになり、同人個
  人とであれば話をすることを了承して、同月二八日の日曜日に同人と会う約束
  をし、岡山中央郵便局のポスト前で待ち合わせた。
   同月二八日、原告が時間に少し遅れて待ち合わせ場所に行くと、既にN子が
  来ており、原告は、喫茶店に行くと言うN子に付いて行った。ところが、実際
  にはN子が原告を岡山カルチャーセンター(以下「センター」という。)に連
  れて行ったことから、原告は、N子に対し、「約束が違う。」と抗議したもの
  の、結局ちょっとぐらいならいいかという気持ちから同人に押される形で、セ
  ンターに入った。
   原告が通された部屋は、こじんまりとした観葉植物や絵画がさり気なく飾ら
  れ、バックミュージックにクラッシックが流れるといった非常に落ち着いた雰
  囲気の原告が好きなタイプの部屋であり、パーテーションで区切られた他の区
  画には他にも大勢の人がいて、それぞれのテーブルで熱心に会話が交わされて
  いた。原告は、当初その部屋でN子と二人で話をし、茶菓の接待を受け、青年
  意識調査アンケートと亀の甲アンケートについて回答を求められた。亀の甲ア
  ンケートには家庭運、交際運、仕事運、結婚運、健康運、住居運、財運、発展
  運といった項日があり、原告は、財運の項では所持している金額について二〇
  〇万円から三〇〇万円のところに○をつけ、そうした原告の回答内容に従って
  N子との話が進んだ。その後、途中からN子が同人以外の人と入れ替わったり
  しながら、原告に対しセンターヘの入会を勧める話になった。原告は、あくま
  で入会しないというつもりであったが、N子は特に積極的に原告に入会を勧め、
  原告がなかなか入会を決断しないでいると、何度かスタッフルームから人が呼
  びに来てN子は席を外した。そして、原告は、余りにも執拗にN子がビデオを
  見ることを勧めるので、とりあえずビデオを見てから決めようと思い、ビデオ
  を見ることに応じた。そして、原告は、「総序」と題するビデオを見せられ、
  その中で人間本来の姿、堕落の原因、復帰の具体的方法等が示されていて、そ
  れらが聖書の内容に近く、原告自身これまで疑問に感じていたことについて答
  えてくれるのではないかと期待して大いに興味を持った。原告は、「とても感
  動したので、すぐに全部のビデオを見てしまいたい。」と感想文に書き、特に
  復帰の部分について以前から関心があったため、その部分のビデオを見せてく
  れるように頼んだところ、I子(以下「I子」という。)から、「一度に
  見ると消化不良を起こしてしまう。」と言って断られ、その場では見ることが
  できなかったが、原告は、続きを見たいという思いもあって、最終的にセンタ
  ーヘの入会を決断し、入会申込書と会員カードに必要事項を記入し、年会費二
  万円の一部を支払った。センターでは、I子がコンサルタントとして原告の担
  当になり、同人は、原告に対し、自分が原告の理解度を見てその都度見るビデ
  オを用意する旨伝え、原告は、他人のコントロールを受けなければならないこ
  とに少し抵抗感を持ったが、どうしてもビデオの続きを見たかった上、N子か
  ら、「ここで学んでいくには、子供のような素直な気持ちにならなければなら
  ない。」と言われ、かねてから我の強い自分の性格を直したいとも思っていた
  こともあり、素直にこれに従うことにした。N子は、原告に対し、勉強用と称
  して簡単なメツセージを記載したノートを渡し、原告が帰ると早速手紙を書き
  送った。
 3 センターでの受講内容
   原告は、見たいと思っていたビデオを早く見たかったのと、会費の残金の支
  払が気にかかっていたことから、翌二九日、仕事が終わるとすぐにセンターに
  行った。受付に行くと、その日見ることになっているビデオが渡され、この日
  は「塩狩峠」と題するビデオを見た。
   原告は、同月三一日も、ビデオの続きを早く見たいと思い、仕事を終えたそ
  の足でセンターに行ったが、期待に反してその日は「遺伝と胎教」と題するビ
  デオを見ることになった。
   その後、原告は、最初希望していたビデオをなかなか見せてくれないのと、
  N子と話す機会がなく、また、体調が芳しくなかったこともあって、徐々にセ
  ンターから遠ざかるようになったが、同月六日、N子から見舞いの訪問を受け、
  手紙も受け取り、再びセンターに通うようになった。
   原告は、同年二月七日、「霊界について」と題するビデオを見て、人間が皆
  堕落していてこのままでは地獄に堕ちることを痛切に感じ、自分もこのままで
  はいけないと感じた。
   原告は、同月八日、ビデオを見るためセンターに行ったところ、I子から、
  姓名判断や家系図による運勢判断を受けた。姓名判断では原告が変革の最後の
  年にあると言われ、家系図による運勢判断では、原告が自分を中心に思い出す
  範囲で詳しく書いた家系図をもとに、原告には男運がなく、原告の家系は今ま
  で女性が中心になってきた家系で、絶家に向かっている、殺傷因縁があって体
  を切られたり体に傷が入るような因縁があり、愛情に飢えている家系であるな
  どと言われた。原告は、自分の兄弟四人のうち男は一人であり、それも両親の
  願いの末に最後に生まれた子であったこと、父親が昔からよく手術をしていた
  ことなどから、ある程度あたっているところがあると思い、そのような話を聞
  いて非常に怖く感じた。更に、原告は、自分が頑張らなければ弟の命が危ない、
  そのためにはセンターでしっかり勉強して、自分自身を変えていかなければな
  らないと言われ、自分が変わるまでセンターで勉強することを決意し、毎日セ
  ンターに通うことを約束した。その際、原告は、I子に対し、翌々日から倉吉
  方面への出張の予定であり毎日来ることはできないし、出張の際、鳥取の妹の
  ところに寄るつもりであると話すと、I子は、出張を取りやめて、妹のところ
  にも行かないようにした方がいいと言った。しかし、原告がどうしても止める
  ことはできないと言うと、I子は、妹のところに行っても絶対にセンターに通
  っていることを言わないという約束ができるのであれば行ってもいいと言い、
  更に、センターに通っていることは、親や会社の人等にも言わないほうがいい
  と言った。また、I子は、原告に対し、真理行として聖書を毎日一頁あるいは
  一章ずつ読むこと、水行として四〇日間毎日洗面器一杯の水を四〇杯かぶるよ
  うに言い、原告は、その後これを実行した。
   原告は、同月一三日、出張に出掛ける前に三日以上間隔をあけてはいけない
  と言われていたことから、久しぶりにセンクーヘ行った。原告がセンターヘ行
  くと、N子は、今日は大変立派な人が原告のためだけに特別な講義をしてくれ
  ると言って、原告にI男を紹介した。原告は、I男から一対一で創造原理につ
  いての話を聞き、その話の内容に大変感動し、翌一四日も同様に、I男から一
  対一の講義を受け、二日間もこのような立派な人の講義を受けられたことを嬉
  しく思った。
   原告は、同月一五日、創造原理と堕落論までを一気に知り得たという安心感
  もあり、会社の上司の誘いで会社の同僚と出かけて飲酒し、午後一〇時過ぎ頃、
  センターに電話を入れると、なぜすぐに連絡してこなかったのか、近くにいる
  ならどんなに遅くなってもセンターに寄ってから帰るようにと言われたため、
  会社の人と別れた後、センターに行ったところ、センターは神聖な場所なので
  飲酒して入ってはいけないと言われ、少し世間話をしてから帰宅した。
   原告は、同月一六日から同月一八日まで復帰原理のビデオを見た。
   原告は、この頃には、朝起床してすぐ会社に行き、午前九時始業、午後六時
  一五分終業で、会社が終わるとそのまますぐにセンターに行き、時間が早けれ
  ば用意されたビデオを見て感想文を書き、その後コンサルタントのI子あるい
  はN子と話をして帰宅し、遅いときであれば、センターヘ顔を出して帰るとい
  う生活が続いた。
   原告は、同月二〇日「メシア論」、同月二一日「摂理的同時性」と各題する
  ビデオを見た。
   原告は、同月二二日、I男から、メシアが文鮮明であると明かされ、I子か
  らは、世間に文鮮明に対する悪評があるが信じてはいけないと言われ、素直に
  これを受け入れた。この時、センターが被告の粗織の一部であることも明かさ
  れたが、原告にとっては、「文鮮明」も「統一協会」も始めて聞く名前で、そ
  れ自体には何ら抵抗を覚えなかった。
   原告は、同月二三日と二四日に、共産主義や現代摂理といった政治的問題に
  ついてのビデオを見て、反共主義の思いが芽生えた。
   原告は、翌二五日午前九時から午後五時頃までの間、農業会館で行われた上
  級ワンデイセミナーに参加し、文鮮明の生い立ちや被告の統一運動についての
  話を聞いた。原告は、同セミナーの参加費としてー〇〇〇円を支払った。
 4 献金
   原告は、同月二七日、あらかじめ大切な話があると言われていたが、午後六
  時半から七時頃までの間に、センターに行き、最初に「万物と人間の関係」と
  題するビデオを見た。その内容は、人間は堕落した存在なので、神の前に復帰
  しなければならないが、そのためには、万物の位置付けが重要であって、万物
  を通さなければ復帰できない、万物とは、物とか権威とか金銭である、という
  ものであった。原告は、ビデオを見た後、特別な講義があると言われて、小会
  議室に通され、I男から一対一で万物復帰についての話を聞き、万物の中でも
  神が一番喜ぶのは金銭であると言われ、献金を勧められた。原告は、最初は、
  自分の所持金の中からある程度は献金しなければならないと思ったが、原告が
  いくらが適当か思案していると、I男は、一〇〇〇万円や二〇〇〇万円も要求
  しているわけではないと言い、原告は、そんなに出さなければいけないのかと
  ややびっくりした。そして、原告がなお考えていると、I男は、自分が考えて
  あげるので所持金を全部紙に書き出しなさいと言ったので、原告は、銀行預金
  や生命保険等総額約四五〇万円と所持金をすべて書き出し、その後、I男は、
  この中からどのくらい出せばいいのか考えてくると言って一旦席を外し、戻っ
  てきて、原告に四〇〇万円を出すようにと言った。I男の口調は激しいもので
  はなく、また、献金をしない場合にどうなるかといった趣旨の話もなかったが、
  原告としては、I男からニ人きりで、三時間から四時間献金をするように詰め
  よられ、とにかくここで決めないといけないという雰囲気を感じ、また、前記
  アルバイト期間の終了が予定されており、その後の収入に不安があったが、被
  告の献身会員となって関連企業で働けば収入確保と会員活動が両立しやすい旨
  I男から説得され、その場で献金の決心をした。そして、全財産四五〇万円の
  うち五〇万円については献金するよう言われなかったことにかえって気持ちが
  落ち着かなかったことから、思い返して自ら四五〇万円を献金すると言った。
  すると、I男は、五〇万円については、そのうち二一万円を献金し、残りの二
  九万円は今後のセミナー費用に充てるようにと言った。支払方法については、
  原告は、三日以内に調達してセンターヘ持ってくるようにと言われたが、原告
  が、仕事があり銀行に行く時間がないと言うと、翌日、N子が、銀行預金につ
  いて委任状を作成してきて、原告に対し、自分が代わって引出に行って来るの
  で、委任状に印鑑を押すようにと言った。そこで、原告は、N子に通帳と銀行
  届出印を預け、同人が定期預金の解約手続をした。更に、N子は、生命保険の
  解約返戻金の取り戻しについて、解約に一週間かかると言われたことから、原
  告が三日以内に金を持ってくると言ったのに持って来られないということは神
  に嘘をついたことになると原告に詰め寄り、原告と口論となったが、午前二時
  頃まで話し合った末、お互い納得した。
   同年三月二日、岡山市東古松の被告岡山教会において献金式が行われた。
   原告は、ほとんど自分の全財産といっていい金を渡したことから、後は、す
  べて被告に身を委ねるしかないという気持ちになっていた。
 5 スリーデイズヘの参加
   原告は、同月一六日から同月一八日までの間、広島県可部にある被告の可部
  修練所において行われたスリーデイズに参加した。岡山地区からの参加者が、
  前日午後七時頃、センターに集まり、出発式が行われ、岡山駅から出発し、午
  後一〇時過ぎ頃、可部修練所に到着した。同修練所では、外出や勝手に外部に
  電話をすることを禁じられ、疑問を持ったことについては必ず班長に相談して
  指示を受けなければならず、一緒に参加した者同士で話し合うことは禁止され
  ていた。
   朝は、六時に起床し、洗面、ラジオ体操、掃除等の後、食事をとり、原理講
  論を中心とした講義やレクリエーション、スポーツ等のスケジュールが、わず
  かな休憩時間を挟んで繰り返され、毎日感想文を書いて提出した。原告は、そ
  のようなスケジユールの中でも、どんなことでも逃さず吸収しようと、絶えず
  気を張りつめていたが、特に疲れは感じなかった。原告は、二日目の夜、
  Y子から個人面接を受け、その話の中で、献身と次の新生トレーニングヘの
  参加を勧められた。原告は、この話に何の抵抗もなく、むしろ自らすすんで被
  告への入会と献身を決意し、被告への入会申込書に記入した。最終日は、正午
  位まで講義を受けた後、他の参加者の前で一人一人が献身宣言をし、原告も宣
  言した。セミナー終了後、岡山からの参加者は、まとまって岡山まで帰り、そ
  の後、被告岡山教会に向かった。被告岡山教会では、歓迎会が行われ、原告も、
  選ばれてスリーデイズの感想等を述べ、歓迎会は午後八時頃終了し解散した。
  原告は、同セミナーヘの参加に際し、参加費として三万円を支払ったほか、ス
  リーデイズ感謝献金として二万円の特別献金をした。
 6 新生トレーニングヘの参加
   原告は、同年四月から新生トレーニングに参加した。新生トレーニングは、
  被告岡山教会において、月曜日から土曜日まで終業後の午後七時三〇分から約
  二時間講義を受け、感想文を書いてから皆で食事をとって、チームマザー等と
  話をした後、午後一○時過ぎ頃帰るというスケジュールで、一か月のスケジュ
  ールが組まれ、参加者は通いではなく、できる限り宿泊するようにと勧められ
  た。原告は、開講式後、感想文を書いて、チームマザーに提出し面談を受けた
  際、チームマザーから、かなり執拗にその日は泊まっていくように言われたが、
  そこまで拘束されるのはいやだという気持ちの方が強く、誘いを振り切るよう
  にして帰宅した。
   原告は、新生トレーニングに参加している間、十分な休み時間がなく、睡眠
  時間も短く、非常に身体も疲れ、そのため集中力を欠いて仕事も十分にできな
  い状況となった。それにもかかわらず、原告は、日曜日にも、午前四時頃起床
  して、午前五時から被告岡山教会で行われる三拝敬礼式に参加し、午前一〇時
  から開かれる通常の礼拝にも参加した。
   新生トレーニングの段階に入ると、毎日午前一二時から午後一時までの間、
  指示された電話番号に定期的に電話を架けて、チームマザーに報告連絡等をし、
  その日の指示を受けることになった。その他にも、服装、異性に対する接し方、
  親兄弟に連絡する前には必ず事前にアベルに相談することなどについても指示
  された。
   新生トレーニングの最終段階では、万物復帰の実践として、原告は、親善会
  と称するボランティア活動組織に入り募金集めのため各戸を訪問してハンカチ
  売りをした。
   なお、原告は、同月から平成四年七月まで、月例献金(給料のー〇分の一を
  献金するー〇分の一献金と文鮮明の小遣いとしての身上献金からなる。)とし
  て合計二二万七〇〇〇円の献金をした。また、この間、原告は、年末の特別献
  金、年始の神の日献金などとして合計一二万一二〇〇円の特別献金をした。
 7 両親の勧誘、入会
   原告は、統一原理について親が先に学んで恵みを受けるべきであると考え、
  両親に対し、これまでの親不孝を詫びる手紙を書き送ったところ、原告の両親
  は、これに感動し、揃ってセンターを訪れ、平成二年六月一〇日に母親が、同
  月一五日に父親が、それぞれセンターに入会し、二一〇万円を献金した。
 8 実践トレーニングヘの参加
   原告は、同年六月から平成三年一月までの間、実践トレーニングに参加し、
  路上でのアンケート勧誘や展示会への勧誘に従事することを中心とした活動を
  した。原告は、この間の平成二年一一月に、自宅マンションを出て、被告岡山
  教会に移り住んでいる。
   なお、原告は、自ら、平成二年六月二四日宝石を購入しその代金として一三
  万五〇〇〇円を、同年一二月一七日絵画を購入しその代金として三〇万円を、
  平成三年一月三一日印鑑を購入しその代金として二万八〇〇〇円を、平成四年
  五月二四日毛布を購入しその代金として一一万円をそれぞれ被告に対し支払っ
  た。
 9 韓国でのスリーデイズ等への参加
   原告は、同年五月二五日から同月二七日までの間、韓国で行われたスリーデ
  イズに、同年九月二三日及び同月二四日に行われた祝福修練会に、同年一二月
  六日から同月九日までの間、韓国で行われたフォーデイズに、平成三年四月一
  九日から同月二一日までの間、特別スリーデイズに、それぞれ参加し、その費
  用として合計二八万八〇〇〇円を支払った。
 10 青年実践部での活動とホームでの生活
   原告は、同年二月から、青年実践郎に参加し、ホーム(津倉荘)で共同生活
  をするようになった。津倉荘での生活は非常に厳しいものであったが、原告は、
  年齢的にも祝福を受けられるのは最後かもしれないとの切迫感もあり、同年八
  月に行われる合同結婚式の際に祝福を受けられるよう準備を進めた。
   原告は、津倉荘で生活している間、被告の関連会社である株式会社ワコム岡
  山営業所に勤務するようになり、その後、同じく被告の関連会社の世一観光株
  式会社広島営業所に勤務するようになり、同社の女子寮で共同生活をした。
 11 棄教と脱会
   原告は、平成四年四月二九日から同年五月五日までの間、祝福セブンデイズ
  セミナーに参加して(参加費一万五〇〇〇円)祝福を受ける準備を重ねていた
  ところ、同年六月、父親が交通事故のため死亡し、その原因が原告にあると言
  われて責任を感じ、父親の死に報いるためにも一層の努力をして祝福を絶対に
  受けようと強く決意した。
   原告は、同年七月、父親の四九日の法事のために自宅に帰った際、原告が彼
  告に入会していることを知った親族によって、教会に連れて行かれ、被告の活
  動に反対している牧師と話し合い、説明を受けるうちに、被告の教えにつじつ
  まが合わないことが多く、被告の中にいたときから感じていた疑問も再度芽生
  えてきた。そして、原告は、どうしても受けなければならないと思い詰めてい
  た祝福の機会を逸したことから、被告の体質が、ついてこられない者は蹴落と
  していくという競争主義であり、自分は被告から突き放されたとの疎外感を深
  め、被告からの脱会を決意した。
  以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

四 請求原因5(被侵害利益・違法性)について
 1 宗教団体が当該宗教を広めるために非信者を勧誘、教化する布教行為、勧誘、
  教化された信者を各種宗教活動に従事させたり、当該信者から献金を勧誘する
  行為は、それらが社会的に正当な目的に基づいており、その方法、結果が社会
  通念に照らして相当と認められる限り、正当な宗教活動の範囲内にあるものと
  認めるのが相当である。
   しかしながら、宗教団体の行う右各行為が、その目的、方法、結果から見て
  社会的に相当な範囲を逸脱していると認められる場合は、民法が規定する不法
  行為法との関連において、違法の評価を受けるものといわなければならない。
   但し、以上の判断に当たり、宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する
  事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、
  これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の
  審判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議については厳に中立
  を保つべきであることは、憲法二〇条のほか、宗教法人法一条二項、八五条の
  規定の趣旨に鑑み明らかなところであって、当該宗教の教義、信仰の内容の当
  否等については立ち入って判断すべきものではない。
   以下そのような見地から原告のこの点に関する主張について判断する。
 2 原告は、被告のいわゆるマインドコントロールによる違法な勧誘、教化行為
  により宗教選択の権利を侵害され、自由な意思形成を不当に妨げられ、人格権
  を侵害され献金をさせられた旨主張するので、以下順次検討する。
  (一)勧誘の違法性について
   (1)宗教団体が当該宗教を布教するために非信者を勧誘、教化する行為は、
    宗教上の目的によるものであり、前記認定事実によれば、被告のセンター
    等の施設における諸活動は、被告の教義を布教するための勧誘、教化行為
    にあたるというべきである。
   (2)原告に対する被告のセンター等の施設における勧誘、教化の方法は前記
    認定のとおりであり、N子は、平成二年一月二三日の夕刻、バス停でバス
    を待っている原告に声をかけ、当初被告の「統一教会(世界基督教統一神
    霊協会)」という教団名や文鮮明の名前はもとより、宗教の勧誘であるこ
    とすら秘匿し、青年サークルと称してセンターを訪れるよう勧誘しており、
    原告は、右勧誘を受けた当時、宗教ないしは宗教団体に対して抵抗感があ
    った旨供述する。
     しかしながら、原告の宗教観等は前記認定のとおりである上、勧誘の経
    過について見ても、前記認定事実によれば、同年一月に始めてセンターを
    訪れて、最初に見たビデオである「総序」は、聖書の内容とかなり共通性
    を持っていて宗教的色彩の濃いものであったのに対し、原告は、これに反
    発するどころか、むしろ急激に関心の度合いを高め、原告自身がかねてか
    ら抱いていた人生に対する疑問に答えてくれるものとの期待を深めている。
     また、右の最初のビデオ視聴から一か月も経たない同年二月二二日には、
    原告は、センターで視聴したビデオや講義に登場するメシアが文鮮明であ
    り、センターが被告の組織の一部であることを知らされているが、これに
    対して何ら抵抗を示しておらず、仮に、実際よりも早い段階でメシア及び
    原告を勧誘している組織の名称を明らかにされていたとしても、それが文
    鮮明であり被告であることを理由に原告が勧誘に反発したり、宗教的決断
    に変更を加えたとは必ずしも思えない。原告は、文鮮明の名が実際に明ら
    かにされた時点で、同時に、I子から、文鮮明に対する悪評が世上存在す
    ることについても告げられており、そうした悪評の中味を知ろうと思えば
    容易に可能であったはずであるのに、それもしていない。
     原告自身、当時、文鮮明や被告の名称を知らなかっただけでなく、現時
    点でも、被告の名称をいつの時点で告げられたかについて記憶が定かでな
    いと述べているのであって、当初から被告の組織に対する偏見も抵抗感も
    チになかったことが窺われ、また、原告本人尋問の結果によれば、特別な
    説得行為を受けたり各種セミナーヘ参加するなどしないうちに、原告自身
    の考えで、被告を宗教を超えた存在と考え、統一運動や勝共運動といった
    そのイデオロギー的な側面にも賛同し、そうした運動への参加意欲も高め
    ていたことが認められるのであって、原告にとっては、被告の名称や被告
    が宗教団体として伝道を目的として活動をしていること自体は特に重視し
    てはいなかったものというべきであり、当初被告の名称や被告の伝道活動
    (勧誘)であることが秘匿されていた点は、一般的に見れば問題がないわ
    けではないが、本件における原告への勧誘の態様としては、これをもって
    違法とまでいうことはできない。
   (3)また、原告は、被告が入信のための勧誘において、先祖の因縁等を説い
    て被勧誘者である原告を畏怖せしめて入信を迫っている点にも違法性が存
    する旨主張する。本件においては、前記認定のとおり、原告に対して、姓
    名判断と家系図による運勢判断がなされているが、前者においては何ら畏
    怖の対象となるような事柄は告げられていない。後者においては、@原告
    の家系が女性中心の家系で、絶家に向かっていること、A殺傷因縁があっ
    て身体を切られたり身体に傷が入るような因縁があること、B原告が努力
    をしないと原告の弟の命が危ないことが告げられている。このうち、@は、
    原告が女三人と男一人の兄弟で末子が男である旨、原告自身の説明によっ
    て作成された家系図を基にして話がなされているのであるから、女性中心
    の家系であることも、まだ若い弟に将来子供が産まれるか否かは分からな
    いことも、いわば当たり前の事項であり、絶家といっても、「家」の継続
    にどのくらいの意味を見出すかは各人の価値観によって大きく異なること
    である上、養子制度の存在を考慮すれば、害悪を告知されたというほどの
    ものとは認められない。Aについては、原告自身は、告げられた事実を父
    親の手術歴と重ね合わせて解釈しているが、これも、将来生じるであろう
    家族に関わる具体的な不幸を告げたものとまではいえない。Bについては、
    あまりに抽象的で、この際の状況を述べた甲第一二号証の原告作成の陳述
    書の該当部分の記載を読んでもその内容は極めて淡泊なものであって、こ
    れをもって果たして原告に実際上どれだけの畏怖感を生ぜしめたものか甚
    だ疑問といわざるを得ない。
   (4)原告は、被告が違法なマインドコントロールにより信教の自由ないし宗
    教的人格権を侵害した旨主張し、マインドコントロールは、自由な意思決
    定を阻害するものであるといい、また、スティーブ・ハッサンの定義付け
    を引用しつつ、マインドコントロールとは自発的意思決定という外形を保
    ちつつも二ーズの操作や情報コントロールにより信念体系や意思決定その
    ものを変化させるものであるという。しかしながら、勧誘の当初において
    被告の名称等を秘匿した点の実際上の影響力については前記したとおり特
    に原告の信念体系や意思決定に影響を及ぼしたものとまでは認められず、
    被告の教義内容については、原告に対する情報伝達が不足したことも窺わ
    れない。
     また、入信後の生活様式や活動についての情報については、確かに、教
    会に住み込んで行われる生活がいかなるものか、あるいは、被告としての
    物品販売活動がいかなるものかについて、当初からその内容が原告に十分
    伝わっていたとは言い難いが、他方で、入信後の生活については、必ず教
    会に住み込まなければならないものではなく、当初原告が実際にそうした
    ように「通い」で活動を行うこともできたのであり、また、物品販売活動
    についても、宗教活動の本質的かつ必然不可避的な部分であるとまでは認
    められないから、当初の入信勧誘段階でそうした活動についてまで逐一詳
    細に述べられていないからといって、それにより原告の信念体系や意思決
    定が直ちに変容されるものとも認められない。
   (5)更に、被告において原告の入信に向けての勧誘について手引きが作成さ
    れてマニユアル化されている点は前記認定のとおりであるが、これも、伝
    道活動の効率化の要請を考えれば、そのこと自体を非難することは必ずし
    もできず、結局は、個々具体的な勧誘の場面において、いかなる態様の勧
    誘がなされ、被勧誘者がいがなる過程を経て宗教上の意思決定に至ったか
    によって、その違法性の有無及び程度が判断さるべきである。
   (6)本件において、原告は、N子の勧誘に応じたことをきっかけとして、同
    人に好意を持ち、同人と話をするため喫茶店へ行くつもりで結局は同人に
    連れられてセンターを訪れることとなったのであるが、センターヘの入会
    の勧誘過程で見せられたビデオの内容に感動し、原告自身従前から関心を
    持ち悩み続けていた問題に対する答えがそのビデオを見ることによって見
    つけられるのではないかという思いからセンターヘの入会を決意している
    のである。そして、早くビデオの続きを見たいとの思いから、センクーヘ
    通うこととなったのであるが、自らの期待に反してなかなか希望するビデ
    オを見せてもらえなかったこととN子と話す機会がなかったことで、一旦
    はセンターヘの足が遠ざかったものの、N子の勧誘により再度、センター
    通いを始めている。その後、原告は、I子から、原告の家系図を基に男運
    がなく、今まで女性が中心になってきた家系であり、原告の家系は絶家に
    向かっている、殺傷因縁があり、愛情に飢えている家系であるなどと言わ
    れているが、それ以上に特別な被告への入会や献金等の決断を迫る勧誘や
    指示は受けていない。原告は、平成二年二月二二日になって、I男から、
    メシアが文鮮明であることを明かされて素直にこれを受け入れ、同月二七
    日の献金にあたっても、四〇〇万円出すように言われたところを、全財産
    である四五〇万円のうち五〇万円については献金するよう言われなかった
    ことがかえって気持ちが落ち着かなかったことから、思い返して自ら四五
    ○万円を献金するとまで言っている。原告は、右に述べたようにセンター
    に通うことなどについては、被告から特段の強制を加えられたわけではな
    いし、外部との接触についても、必ずしも完全に物理的に遮断されていた
    わけではなく、口頭でそのように指示を与えられていたのみである。また、
    本件全証拠によるも、原告の勧誘、教化にあたり、宗教上の言説以上に薬
    物や物理的、身体的な強制力が使用された事実を認めるに足りない。他方
    で、当初、毎日センターに通うことを約束したときも、原告は、倉吉方面
    への出張を取りやめてはおらず、また、原告は、同年四月から参加した新
    生トレーニングにおいても、チームマザーから、かなり執拗に泊まってい
    くように言われても、そこまで縛られたくないとの気持ちの方が強く、誘
    いを振り切るようにして帰っている。脱会の経緯も前記認定のとおりであ
    って、結局は、第三者の説得を契機として原告自身既に薄々感じていたと
    窺われる被告の組織に対する挫折感を主たる要因とする自発的かつ主体的
    な判断により脱会したものといわざるを得ない。
   (7)以上によれば、原告は、最初に勧誘を受けてから棄教・脱会に至るまで
    に約二年六か月の期間を要しているが、被告から右のとおり被告の名称等
    を秘匿されたり、因縁話を告げられても、特段これにより信念体系を変容
    されることもなく、その間、被告の教義、信仰を受容する過程において、
    自ら受容できないことははっきりと断ることもでき、現にそのようにして
    各段階毎に自ら被告の教義、信仰に感動し、自発的に宗教的意思決定をし
    ているというほかはない。
     そうすると、被告の各種セミナー等における原告に対する勧誘、教化行
    為は、当初被告の「統一教会(世界基督教統一神霊協会)」という教団名
    や文鮮明の名前を明かさなかった点では道義上の問題を残すけれども、そ
    の点を考慮してもなお、原告に対する勧誘、教化の方法、目的等を総合考
    慮すれば、いまだ社会的相当性を逸脱したものであるとまではいうことが
    できない。
     したがって、原告が、被告のいわゆるマインドコントロールによる勧誘、
    教化行為により宗教選択の権利を侵害され、自由な意思形成を不当に妨げ
    られ、人格権を侵害されたということはできない。
  (二)献金の違法性について
    信者が宗教団体に献金する行為は、宗教的行為として意味づけられるもの
   である。そして、前記認定事実によれば、原告は、被告の教義、信仰を受容
   する過程において、自ら被告に対する献金が有意義なものであると判断して
   これを行ったものと認められる。
    もっとも、原告がそのような判断をするについては、前記認定のとおり、
   被告関係者の宗教上の言説による勧誘が大きな影響を与えていることは否定
   できず、その言説のなかには、前示のように、吉凶禍福を説いたり先祖の因
   縁や霊界に触れるものも含まれている。
    しかしながら、前記(一)で判断したところによれば、被告の原告に対する勧
   誘、教化行為は全体として違法なものとはいえず、一般に、宗教活動に伴う
   献金勧誘行為にあたって、多少なりとも吉凶禍福や先祖の因縁話、霊界の話
   等が説かれる場合が多く、そのような言を用いて献金を求める行為一般を違
   法であると断じることは宗教に対する過度の干渉となるので許されないもの
   と解すべきであり、本件のそれが特に社会常識を逸脱したものとまではいえ
   ないことは前示のとおりであるのみならず、本件全証拠によるも、被告がそ
   の他社会通念に反する合理性を欠く手段を弄したものとは認めるに足りず、
   更に、献金額等その態様についてみても、原告の年齢や収入等に比して社会
   常識に反するものとまでは認められない。
    そうすると、被告が原告に対して献金をさせた行為は、その目的、方法、
   結果を総合すれば、いまだ社会的相当性を逸脱したものとまではいえない。

六 結論
  以上の次第で、原告の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由が
 ないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法六一条を適用
 して、主文のとおり判決する。

岡山地方裁判所第二民事部

  裁 判 長 裁 判 官   小     澤     一     郎
        裁 判 官   村     田     斉     志
        裁 判 官   山     田     真  由  美

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