平成五年(ワ)第六四二号   原告        愛 美紀子                     被告       世界基督教統一神霊協会   平成一〇年一二月 二日               原告代理人     嘉松 喜佐夫                   同         河  田  英  正               同         近  藤  幸  夫               同         清  水  善  朗               同         山  本  勝  敏   岡山地方裁判所     御 中             準 備 書 面 第一、 はじめに− 本件裁判に求める判断   一、 原告は、被告統一協会の勧誘・教化及びその過程における原告への違法     行為の指示等が原告の自由な意思決定を阻害し、献金・物品購入などの財     産的損害と反社会的活動に従事することになって被告統一協会の組織に入     り、貴重な人生の一時期を無為にそして反社会的行為に手を貸すなどせざ     るをえなかったことに陥ったことによる多大の精神的損害を被ったとして、     損害賠償請求を求めている。私たちはそれ故この裁判を「青春を返せ裁判」     と呼んできた。   二、 右の事実を明らかにするために    1、 被告統一協会の活動実態    2、 被告統一協会の組織及びその指揮命令関係(信者の具体的な活動内容)    3、 被告統一協会の一体的なマインドコントロ−ルシステムとその実情    4、 被告統一協会の及ぼしている被害の実態を明らかにし、    5、 個別的には     1) 原告に対する勧誘の経過     2) 入会を決意するに至った経過     3) 入会後の活動と被告統一協会による教化の経過     4) 献金に至る経過     5) 脱会を決意するに至った経過     等々を主張し、これらを立証してきた。   三、 原告は、いうまでもなく被告統一協会の教理そのものの是非を問うてい     るのではない。原告の立場は信者の自由は人間にとって根源的なものであ     り、最も大切にされるべき人権の一つであるというものである。教理が原     告の恐怖心を生じさせるためにどのように影響しているかを検討する限り     において、教理の内容(当該宗教の教義・信仰の内容)にも触れざるをえ     ないが、その当否そのものの判断を本件裁判に求めているわけではない。     従って、本件が「宗教」に関連しているからといって何ら判断を避けるこ     とがあってはならないのである。被告が宗教法人であることを理由として、     違法な行為が容認されるという特別な配慮がなされるべきではない。   四、 被害の広まりと深刻化    1、 昭和六二年四月、岡山において霊感商法被害対策弁護団が結成された。      この弁護団の目的は、当時被告統一協会が組織的に全国的に展開しその      被害が多発していた壺や多宝塔を法外な金額で販売するといういわゆる      霊感商法の被害を救済するというものであった。そのころ弁護団に被害      相談にきた人は約七〇名でその被害額は一億五、〇〇〇万円を超えてい      た。全国的には昭和六二年から平成七年一二月までに弁護士及び消費者      センターなどに相談があったものは一七、二八九件総被害額は六五〇億      三一六九万円に及んでいる。霊感商法が刑事責任を問われたり、合同結      婚の婚姻無効判決や審判が多数出されるなどの問題を起こしている。       これら財産的被害救済の活動をすすめていくうちに多くの被害者の人      の声を聞くことができると同時に統一協会側の販売員などととして加害      者の立場にたっていた人々と接する機会が多くなっていった。統一協会      にかつていたが、肉体的にも精神的にもボロボロになって脱会し、元の      自分の生活をとり戻し、自らの人格の回復を求めるべく統一協会との財      産的被害の回復などを求めて交渉するという相談であった。    2、 脱会した元統一協会員の人達は例外なく本当に素直であり、自らの人      生を真剣に考えて生きてきた人達ばかりであった。そのような人達が自      ら気づかないうちに統一協会の会員となり、やがては疑念を抱かないで      霊感商法の加害者と仕立てあげられていく事実は、この被害の実態に真      剣に耳を傾け、被告組織の現実をみつめなければ部外者にとっては理解      しがたい現実である。脱会して統一協会に関する外部からの情報に触れ      た時、この人達は騙されていたことに気づき、不法な行為に関与してき      たことに対して深い自責の念にさいなまされ、統一協会の責任を追及し、      その違法性を明らかにしたいと考えるに至るのである。このような訴訟      を前記のとおり青春を返せ裁判と呼んでいるのであるが、全国で一五〇      名を超える原告によってなされている現状にある。    3、 統一協会がその信者をして極めて巧妙且つ計画的で組織的な手段によ      る物品販売、献金強要、借入名目の金員領得をさせている全国的な実態      とその経緯、組織的背景が明らかになっている。これらによって、被告      統一協会がその教義や文鮮明の指示に基づいて「万物復帰」の実践とし      て違法な資金獲得を組織的になしてきたものであり、その手口は、壺、      多宝塔を因縁話などを媒介として不当に高額で売りつけるいいわゆる「      霊感商法」として激しい社会的批判を浴びたものであった。さらに、裏      と表の二重の会計構造を持ち、ウラ金つくりのために信者を働かせてき      ている実態がある(甲第八三号証の一、二及び甲第八四号証の一ないし      一六)。これらの実態を明らかにし、被告統一協会がその教義・信仰の      内容に関わらず、実在的な組織体として違法な資金集めなど反社会的な      行動を繰り返してきている団体であることをも立証してきた。    4、 さらに、被告統一協会がその資金を安定的に捻出するために、組織的      に株式会社ハッピーワールド及び「世界のしあわせ」各社その傘下の末      端販売会社を組織し、韓国の統一協会企業である一信石材や一和製薬か      ら壺や人参濃縮液等を輸入して信者に販売させてきた実態をも立証して      きた(甲第五三号証・同第五四号証)。これらの事実は、被告統一協会      のなかにおいて原告に対してなされた行為の「目的・方法・結果」にお      いて社会的相当性があったか否かを判断するうえで極めて重要な事実関      係となる。この事実を明確に認定することによって、原告に対する具体      的働きかけの目的を明らかにし、その及ぼした結果を評価できるものと      なり、その手段の違法性を明確にすることになる。       被告統一協会は、その実態として、信者らから全資産を取り上げるこ      とを究極の目的として、接近し、勧誘し、献金を迫り、物品を販売し、      信者にし、新たな信者を獲得して被害の再生産を図るシステムを有して      いるといえる。これらの目的を達成するために、原告らの自由な意思決      定を阻害する違法なマインドコントロールが利用されている。 第二、 被告統一協会の実態   一、 被告統一協会は、一九五四年ソウルで設立された宗教団体であり、その     教祖は文鮮明である。日本においては、一九五八年、密入国した韓国人崔     翔翼(チェ・サンイク日本名西川勝)によりもたらされ、一九六四年七月     一五日東京都知事の認証を得て、宗教法人として設立登記されている。信     者数は世界一三七ケ国三〇〇万人と自称しているが、元幹部の話によれば     日本に八、〇〇〇人、アメリカ・韓国に各二〇〇人、ヨーロッパ全体で二     百数十人ではないかといわれている。代表役員は、右設立当初は久保木修     己であったが、一九九一年九月神山威に、一九九三年一月には藤井 雄に     かわった。その後は、相次ぐ統一協会批判をかわすためと内部抗争のため     にめまぐるしく代表役員が交替させられていて、現在では平成一〇年三月     に就任した江利川安栄と成っている。   二、 霊感商法などの実態    1、 被告は絶えず社会問題を 起させてきている。日本では活動をはじめ      てまもなく「親泣かせの原理」と呼ばれ、突然子供が姿を消し、親と連      絡が取れなくなるなど原理運動の異常な活動が問題となった。そして、      盛り場や街頭での花売り、戸別訪問によるインチキ募金などが社会問題      と成った。昭和五六年以降、物品販売・募金活動が活発になり、昭和六      二年以降は「霊感商法」として社会問題化し、社会的批判にさらされて      きた。これらが組織的になされてきた実態は、元信者幹部が明らかにし      ている(甲第五二号証など)。信者を被告組織から脱落させないために、      合同結婚という両性の合意を基本とする婚姻関係を否定する非人間的な      宗教儀式を行い、それによってさらに資金集めをするという実態も明ら      かにされてきた。これらの資金の流れについてはいわゆる神戸事件にお      いて明らかにされていて、霊感商法等によって集められた資金は、被告      に統一的に納められてきていた(甲第一一一号証の一ないし一三)。       また、一方において、アメリカ下院フレーザー委員会などを通してK      CIAとの関係なども明らかにされるなど、勝共運動等の謀略的政治活      動を行ってきた一面もある。このように、常に社会に問題を起こし続け      ている団体である。    2、 昭和六二年以降の被告の霊感商法の被害は莫大なものとなっている。      前述のとおり、昭和六二年から平成七年一二月までに弁護士及び消費者      センターなどに相談のあった被害額合計は六五〇億円を超えている。こ      の商法が被告の組織的なものであり、その資金は全て被告のところへ集      まってきていることは、甲第四二号証ないし甲第一一二号証等によって      立証されている。岡山においても、霊感商法被害救済に取り組む弁護士      に対して被告側がすさまじい業務妨害をしてきた事案が発生していて、      被告側の組織的悪質性は明らかである(甲第一四二号証)。    3、 被告統一協会の主催した合同結婚に関し、多くの婚姻無効の判決・審      判が確定している。平成九年七月二〇日現在で、三八事例(一事例は最      高裁で確定)が報告されている。このような法律的に無効とされるよう      な「合同結婚」を次々と資金獲得のために行っているのである。また、      本件と同様の「青春を返せ裁判」も全国で一五〇名以上の被害者が統一      協会を被告として訴訟を提起している。その他、霊感商法をめぐる訴訟      等は数十件に上っている。そして、その判断のなされた事例のほとんど      において(名古屋地裁及び岡山地裁のいわゆる青春を返せ裁判を除いて      全てといってよい)、被告の責任が問われている。       被告の右実態のなかで、判断を求めている本件被害が発生したのであ      り、本件判断がなされるにあたって、右事実がまず明確に認識されなく      てはならない。   三、 「万物復帰」と霊感商法への関わり    1、 被告は、その教理解説書原理講論において創造原理・堕落論・復帰原      理について述べている。霊感商法への関わりは、この復帰原理のところ      から導かれている万物復帰の考えに基づくものである。原告もこの万物      復帰について説明がなされて恐怖に陥れられた後に献金の決断をさせら      れているのである。これを簡単にまとめれば以下のとおりである。       創造原理においては、人間は永遠なる神が最も愛し、喜ぶことのでき      る対象として創造され、人間の完成とは、神性をなして神と一体となり、      完成に共鳴することにより喜怒哀楽を共にすることをいうとされている。      次に、堕落論において、人間の始祖であるアダムとエバが、その未完成      期に善悪の実を食べてはならないとの神の御言葉を守らず、サタンとな      った天使長ルーシェルとエバが不倫な肉体関係をもったが故に原罪を負      い、さらにその子孫の犯した罪と共に自らの罪とを清算しなければなら      ないというのが堕落論である。そして、最後にこれらの罪から救われる      方法としての復帰論が説かれる。結論的にはこの救いのメシアは文鮮明      であり、文鮮明を中心とした地上天国を創るために自己の責任を果たさ      なければならないとされる。    2、 万物復帰について       被告法人の霊感商法等の経済活動は「万物復帰」と言われ、サタン側      にある万物(金銭等地上にある全ての財物)を神(再臨のメシアである      文鮮明)のもとへ取り戻すという教えに基づくものである。被告法人の      会員は、天法は地法に優ると教えられ、マインドコントロールされて、      地上天国実現のために「復帰した万物」を用いるのであるから、他人を      騙して売ってもそれはむしろその人のためには罪滅ぼしになり、その人      のためにもなるのであるから構わないと自らの行為を正当化して盲信し、      違法な販売活動に狂奔する結果となるのである。    3、 被告統一協会の組織的関わり    (一) 被告統一協会が霊感商法の実行を組織的に指揮・命令し、その利益       を得ていることは、前述のとおり既に明らかとなっている。1)被告統       一協会の幹部が度々信者に対して極限的な資金集めを命令し、2)被告       統一協会はそれを機関誌に掲載して周知せしめ、3)現に信者が経済活       動、特に霊感商法の商品である壺や人参茶(以下「人参茶」には人参       濃縮液を含む)などの販売を実施してきており、4)被告統一協会はこ       れらの商品販売の実情及び商品販売を行うべきことを機関誌に掲載し       て信者らを督励し、5)被告統一協会の組織自体に経済部門を抱え、被       告統一協会が別訴等で自らの責任は職員の行為に限定されると主張す       るその職員(「伝道部門」)と経済部門の人的一体性が見られる上、       経済部門人事を被告統一協会が掌握しており、6)霊感商法が全国的に       同様の手口で組織的計画的に遂行され、7)霊感商法の因縁トークも霊       感商法を支える態勢も被告統一協会の教理と密接な関連を有しており、       8)霊感商法の実行者、関係者はいずれも被告統一協会の信者であり、       9)霊感商法が被告統一協会の伝道と連携して行われており、10)霊感商       法による利益は被告統一協会に帰属していることに鑑み、霊感商法は       被告統一協会がその資金集めのために自ら組織的に行っているもので       あることは明らかである。    (二) 株式会社世界のしあわせ(各地区ごとに世界のしあわせ広島とか世       界のしあわせ関東とかが設立されていた)は、被告統一協会の資金集       めのために設立された法人であり、表向きは霊感商法の商品である壺、       多宝塔、人参茶などを韓国における統一協会組織傘下の企業から輸入       する業者であるが、末端販売業者の契約書上の苦情処理窓口がハッピ       ーワールドのお客様相談室(岡山の場合は世界のしあわせ広島)とさ       れていることなどからも明らかなように、霊感商法の実施を指揮監督       していたものである。    (三) 広島に有るパシフィック産業(旧商号株式会社世界のしあわせ広島)       は、被告統一協会の資金集めのために設立された法人であった。これ       ら「世界のしあわせ」なる商号を冠していた会社は全国に八社あり、       各担当地域について表向きは霊感商法の商品である壺や人参茶などの       卸業者となっているのであるが、世界のしあわせ東北(現「興宇商事」       )がいわゆる青森事件に深く関与していたこと、世界のしあわせ名古       屋(現「一成」)代表取締役が「霊感商法の張本人」と自認している       こと、ユニバーサル東京(株式会社世界のしあわせ)の代表取締役が       直々に霊感商法を指示していたことなどからも明らかなように、これ       らの「卸業者」も霊感商法の実施を指揮・監督しているものである。        また、広島に本社のある株式会社シャルムは、右同様、被告統一協       会の資金集めのために設立され、ブランド名「クリスチャン・ベルナ       ール」なる宝石等の卸業者であった。宝石等による霊感商法の実施を       指揮・監督しているものである。現在は、「シュウビジャパン」とし       て活動している。        さらに有限会社丸扇、有限会社美光などもそもそも被告統一協会の       霊感商法実施のために設立された法人であり、信者をかりたてて直接       に霊感商法を実施しているもである。    (四) 被告統一協会幹部は再三にわたり、信者に対して資金集め活動を指       揮・命令してきた。そして、それらの内容を機関誌(「成約の鐘」「       聖徒」「ファミリー」「祝福」など)に掲載して信者に周知徹底させ       てきた。        文鮮明自らが「この道を行くには借りてでも天に捧げようとする心       がなければなりません」「万物復帰をするべきですか、それともする       べきではないですか。そうです。たとえ死ぬようなことがあったとし       てもそれに合格しなければならないのです」(甲第四七号証一三ペー       ジ〜一五ページ)。「お金は人類のため神様に仕えたいと願っている       からです。それがお金の目的です」(甲第九七号証)などと説教し、       それが機関誌で周知されている。        そして、このような指示は絶対服従であるとされている。「堕落」       への恐怖から信者は例え社会的に違法と評価されるものであっても指       示に従ってしまうのである。例え「刑務所に投獄されることがあって       も行かなければなりません。決して躊躇してはなりません」(甲第九       六号証)などといわれている。このような指揮・監督・強制の実態に       ついては甲第四二号証ないし甲第五一号証、甲第八九号証ないし甲第       九七号証において明らかとなっている。      このように、原告らが違法とされるニセ募金をしたり、全資産を献金し     たり、他の人を勧誘したりすることは、原罪の恐怖に陥れられた中で、な     んとか救いの道をみいだすために被告らの関わりによって決断させられて     いくものである。 第三、 被告の勧誘から献身を迫っていく過程は全国的にほぼ統一された手法とプ    ログラムが組まれている。原告に対しててなされたそれぞれの過程は、その    統一的なプログラムによるものであり、マニュアル等によって勧誘・献金・    物品の購買等がなされた。それらの事実関係は、既に詳しく主張してきてい    るし、多くの書証で立証してきている。 第四、 原告と被告との関わり     この経過と意味については原告本人の陳述書(甲第一二七号証)に詳しく    原告本人によって適格にまとめられ分析されている。また、法廷においても    誠実に証言しているところである。   一、 原告は、四人兄弟の長女として生まれ、山陽女子高校を卒業後、株式会     社福武書店(現在のベネッセコーポレーション)に勤務した。原告は大学     に進学して図書館司書のような職に就きたいと考えていたが、女性に高等     教育はいらないという父親の反対もあって進学を断念していた。そして、     一四年間福武書店に勤務した後に、日々仕事に追われてゆっくりと考える     ことのできない日常生活に強い圧迫感を抱くようになり、精神的な休養を     求めて右会社を退職した。そして、オーストリアで合計四ケ月間を過ごし、     リフレッシュすると共に内面的に充実させ自分を磨いていかなければなら     ないという気持ちを強く抱くようになった。そして、被告との接触が始ま     ったのは、再び日本アイビーエムにアルバイトとして就職して働くように     なったばかりのころであった(平成六年一一月三〇日原告本人尋問調書・     甲第一一号証等)。   二、 平成二年一月二三日の夕方、バス停で統一協会員である西崎美和から声     をかけれらた。目的はビデオセンターに通わせ、その後のセミナー等につ     なぎ、統一協会員にさせ、献金をさせ、様々な物品を購入させ、さらには     統一協会員として全生活を被告に委ね、献身の決意をさせたうえで、統一     協会員の新たな勧誘員にさせていくことにあった。しかし、声をかけてき     た西崎の話の内容は、宗教団体であることを明かさなかったばかりか、一     切の目的を秘して単に「青年サークルの青年意識調査を行っているのでア     ンケートに答えて欲しい」というものであった。しかも、このアンケート     は、後に統一協会に勧誘しやすい人であるか否かを判断することのできる     内容あるいは献金を迫ったりする際に利用できるようになっている。しか     も全国統一的に同じような内容でなされている(甲第一八号証・甲第二五     号証等)。そして、そこには住所氏名の記入をさせる。原告はいわれるま     まにアンケートに答え、住所・氏名・電話番号を記入した。   三、 同月二五日から原告に対する手紙や電話による勧誘が始まった。しかし、     単に青年サークルに参加しないかというだけのことであり、それ以上の説     明は一切なかった。西崎氏からの運勢鑑定チケットの同封された手紙や電     話での勧誘であった。原告も「青年サークル」とか「ビデオセンター」に     行くつもりは全くなく、まして統一協会に行くことになるなど予想もして     いなかった。   四、 同月二八日、西崎氏に対しては好意を抱いた原告は、同人と喫茶店で会     うことにした。「青年サークル」には参加したくないという強い原告の意     思の表れであった。しかし、西崎と約束の場所でおち会ったところ、喫茶     店に行くといいながら、被告の管理する施設であるビデオセンター「岡山     カルチャーセンター」に連れられていった。      このカルチャーセンターは、統一協会員によって運営されていて、組織     的に訪問者(ゲストという)を最終的には統一協会員にしたてていく窓口     となっている。岡山カルチャーセンターは甲第二八号証のとおりの配置と     なっていて、被告側はスタッフルームで逐次、指示をだしながらゲストに     対応するようになっている。正に原告は仕組まれた中に騙されて連れ込ま     れた状態であった。しかも、そこでなされる原告に対する会話は、ビデオ     センターに通うことを決断させるためのマニュアル(甲第一二五号証・甲     第一一四号証)に基づく組織的なものであった。      さらに、ここで青年意識アンケートと亀甲アンケートがなされ、原告に     気付かれないよう原告の悩み、所持金の額等が被告側に把握されてしまう。     これらの情報が、今後原告に統一協会員になることを迫る貴重な武器とな     っていくものである。これらのやり方も、被告において全国的になされて     いる方法であった。原告においても、原告の悩みの内容、所持している金     額について把握されている。      長時間のやり取りがなされた後にビデオセンターに通うことを決断した。     そして、1)ビデオセンターに通うようになったことを口外してはならない     2)ビデオセンターでは専任スタッフの指示に従い、独自の考えで学んでは     ならない、3)できるだけ毎日、そして定時に来るよう指示があった。こう     して、原告は単に西崎氏と喫茶店であって話をするだけと考えていたにも     関わらず、終ってみれば客観的には統一協会と深い関わりをはじめる決断     をしたことになった。しかし、被告側からは全くその組織について説明が     なかったのみでなく、積極的に虚偽の事実が述べられ、しかも、組織的意     図をもってビデオセンターへ通うことを決断させられている。   五、 原告は、右に述べた経過でビデオセンターに通うようになった。通うこ     とを決断させられた日には、「総序」というビデオを見せられ、その内容     は「人類が堕落している。しかし、その復帰の方法がある」というもので     あった。そして、二月七日には「霊界について」のビデオを見せられてい     る。そして、翌日にはこれらのビデオを受けて、新たに「姓名判断」「家     系図」などを利用して「殺傷因縁・愛の恨みが強く出ている。あなたが変     わって氏族を救わなければ、弟さんの命が危ない」などといわゆるマニュ     アルに従った因縁トークがあった。原告は、特に「弟の命が危ない」と言     われたことに対して恐怖と大きな不安とを感じるようになった。しかし、     これらも全て後に問題となる献金を迫っていく一つの布石となっているの     である。ビデオセンターに通うことに対して積極的でなかった原告を再び     結び付けるに十分な脅しであった。   六、 そして、ビデオセンターで見た「総序」の続きは講義でなされる旨言わ     れ、その後講義を受けることになった。ここで完全に統一協会教理を学ぶ     体制に入ったのである。しかし、そのことは原告に伝えられていない。「     創造原理」「堕落論」へと進み、人間の堕落の本当の原因は、サタンとエ     バの不倫の愛であるとの説明は潔癖な性格の原告にとっては大きなショッ     クであり、自分の中の原罪の存在を知り、恐ろしくもあり、何かにすがっ     ても何とかならないものかと不安を広げてきていた。そして、二月一六日     から一八日にかけて復帰原理の講義があり、その救いの道が呈示されるこ     とになった。堕落論を聞いた段階で絶望感に陥っていた原告は、復帰原理     をきき「一本の希望の光」を見出した気持ちになった。そして、そのメシ     アは文鮮明であることを知らされ、続いて上級ワンディセミナーに参加し     た。この過程の中で、原告は文鮮明がメシアであることを信じるようにな     った。また、創造原理・堕落論・復帰原理を受け入れている状況となって     いた。   七、 献金    1、 被告側は、その日は原告に献金を決断させる日であることをあらかじ      め企図し、献金を迫る人等をあらかじめ配置するなどして準備していた。      一方、原告はその日に献金することになることなどとは思いもよらなか      った。単に「今後のことについて重大な話がある」というものであった。    2、 二月二七日、ビデオセンターに行って「万物と人間の関係」というビ      デオを見せられた。この内容は、人間は堕落によって神との距離が万物      以下となっているので、神のもとに行くにはまず万物を通さなければな      らないという内容であった。そして、続いて「万物復帰」について話が      あり、岩井講師から万物を捧げなさい、万物の中で一番良い物はお金で      あると言われた。原告は「ビデオセンターで、霊界の存在と誰も天国へ      行けない現状を教えられて、このままだと皆地獄へ行くと言われ、因縁      トークでは自分の家系が絶家に向かっていると言われ、弟の生命が危な      いと宣告され、解決の方法は、私が三四歳までに変革することであり、      変革するにはビデオセンターで学ぶしかないと言われ、しかも、それは      人間個人の努力では解決できず、堕落した人間は再臨のメシアによる救      いを受けなければ、本当の解決はないと断言されていたために、私は文      鮮明と統一協会を受け入れるしかありませんでした。」(甲第一二七号      証三二ページ)という状況の中で、復帰するのはお金が一番と迫られた      のであった。    3、 そして、岩井は      1) どうしても献金しないと復帰の道を歩むことができないこと      2) 一、〇〇〇万円、二、〇〇〇万円も献金しろとはいわないといいな       がらもあらかじめ把握している全資産を献金するよう促す      3) 生命を捧げろといっているわけではない      などと迫り、結局四五〇万円を献金することになった。右に述べたとお      り、堕落論を聞いて弟の命が危ないとまで言われているなかで、復帰の      道を歩むには万物復帰つまり全資産の献金でしかないと不安と恐怖のな      かで唯一の救いの道であると信じさせ、長時間深夜にわたり、全資産に      近い献金であるにも関わらず、何らの考慮期間を置こうとせず即断を迫      り、翌日には西崎が原告から通帳等を預かり、定期預金を解約して現金      化した。       このように、万物復帰の原理は、既に堕落論によって恐怖と不安に陥      っている原告にとってはことさら心理的強制として強く働くのである。      原告は「統一協会の教義、信仰の内容の当否」の判断を求めているので      はなく、「教義を用いての心理的強制・詐欺的勧誘のあった」ことの違      法性の判断を求めているのである。   八、 そして、その後は続いて献身に向けてのプログラムが実施される。スリ     ーディズセミナー、新生トレーニング、実践トレーニングと進行される。     これらの内容及び問題点については既に準備書面・原告の法廷における供     述、陳述書等で明らかにしてきたとおりである。      新生トレーニングの最後には、万物復帰の実践として組織を隠したニセ     募金活動が行われる。原告は親善会の身分証明を渡され、三枚一セット二、     〇〇〇円のハンカチを売り歩いた。そして、実践トレーニングは、原告が     されてきた路傍伝道などのビデオセンターに誘う仕事をしたり、着物、絵     画など統一協会関連企業の行う展示会などに客の動員をしたりする。原告     も、当時は罪の意識なくこれらに参加してきた。そして、平成二年一一月     から岡山教会で宿泊して生活するようになった。そして、平成三年二月か     らは、統一協会のホームで共同生活するようになり、青年実践部へ配置と     なった。そこで、マイクロと呼ばれる珍味売りの訓練を受けたりした。も     はや、原告は、手元に残された資産もなく被告を頼りに生活するしか方法     がないことになっていた。   九、 統一協会系の企業株式会社ワコム岡山営業所、広島教会青年部に帰属し     ながら同世一観光株式会社広島営業所に勤務しながら合同結婚への準備へ     とはいっていった。平成三年六月二〇日父の交通事故による死を知らされ、     さらに巡回師から「あなたがお父さんを殺した」などといわれ、合同結婚     (祝福)をやりとげなければならないと思うようになった。しかし、父の     四九日に自宅に帰った際に保護され、脱会するに至った。 第五、 被告の行為の違法性   一、 統一協会の組織的活動実態(目的性)    1、 被告の活動は、「万物復帰」の教義に基づき、「万物(全ての財物)」      を神の側(教祖である文鮮明)に復帰させること(捧げること)を究極      の目的とするものであり、全員の全ての活動は財物の獲得と、統一協会      の教義である統一原理のうち、とりわけ万物復帰の実践のための活動(      資金集めの活動)をする信者の獲得にそそがれている。    2、 すなわち、被告は、幹部が一般信者に対し直接資金集めを命令したり、      機関誌に掲載するなどして、いわゆる霊感商法の手法により大理石製壺、      多宝塔、人参茶等の販売、インチキ募金、いわゆる定着経済による毛皮、      宝石、着物、絵画等の販売、HG(信者に借入れさせた金員を献金させ      ること)、サミット等と称して老人等の社会的弱者から多額の金員を奪      取するなどの行為を指揮して、系統的・組織的に違法な資金獲得活動を      なしてきたものである。    3、 また、被告は、こうした資金獲得活動に従事する一般信者を獲得する      ために、被勧誘者に正体を隠して接近し、ビデオセンター、修練会、各      種トレーニングといった一連の入教プロセスに誘導し、一定の教育プロ      グラムに基づきマインドコントロールの手法を駆使した教え込みを行い、      被勧誘者のそれまでの信念体系を破壊し、統一協会の教義の教え込みを      行っている。    4、 日本における被控訴人統一協会の活動は、資金獲得のための違法な経      済活動及びこれを実践する信者獲得活動が最優先課題とされている。そ      のため、インチキ募金や霊感商法等の違法な経済活動を組織的に実行し、      また新会員(信者)獲得の手法においても、他の宗教団体には見られな      いような、宗教活動であることを秘匿し、文化サークル活動などを装っ      た接近勧誘がなされているのである。    5、 原告は、当初宗教団体であることはもちろん、その主たる活動(目的)      が資金獲得のための違法な経済活動であって、その活動用員として利用      されることになることを知らされずビデオセンター等に誘われたことが      契機となり、被告の会員(信者)となり、過酷な状況の下に違法な経済      活動等にも従事させられたものである。本件は、こうした被控訴人統一      教会の違法な勧誘方法、劣悪な労働環境において違法(詐欺的)な経済      活動に従事させられた人格権侵害及び献金等によって奪取された財産権      の侵害に対し損害賠償を求めるものである。被告自らが宗教活動である      ことを秘匿して活動している以上、一般の経済団体以上に「宗教の自由」      の名のもとに特段の保護を与える必要性は何ら認めるべきではないとい      うべきである。   二、 元信者の被害者性    1、 霊感商法の違法性は、既に刑事事件で有罪判決が出るなど確定したも      のといえる。また、献金事件についても、その違法性は、最高裁判所で      認定されているところである。同じく統一協会を被告としているのに本      件が霊感商法や献金裁判と異なるように見えるのは、霊感商法や献金に      よる被害は、統一協会の外側に存在した者が、統一協会員より害悪の告      知を受けて高額の物品を購入させられたり、多額の献金をさせられたり      したと認定されているのに対し、統一協会員(信者)となって、いわば      統一協会の内側に入って霊感商法等をその手先となって実践していたも      の(信者)が、霊感商法等をさせたもの(統一協会)を訴えている点で      ある。    2、 しかし、原告は、統一協会が資金獲得活動をするため、事情を知らさ      れないで単なる道具として利用されたと言う意味で、真の被害者である。       原告は、地上天国の実現という被告の教え込みに従い、仮に人の世の      法(統一協会用語で「人法」という)に反していても天の法(同じく「      天法」という)にかなうと信じて、霊感商法やインチキ募金活動に加担      したのであって、自らは全く利得を目的としておらず、実際に全く利得      を得ていない。それどころか、睡眠時間や休息時間もまともに与えられ      ず、ノルマを達成できないときは食事を抜いたり、深夜まで歓楽街を歩      き回って集金活動をさせられてきたのである。    3、 統一協会の外にあって霊感商法や献金事件の被害者となった者と、統      一協会の信者となって、霊感商法やインチキ募金等違法な資金獲得活動      の手先とされたものとの違いも紙一重である。統一協会の手口は、若者      に対しては街頭アンケートで単なる教養サークルであるかのようなふり      をしてビデオセンターに誘い込み、ツーデイズ、フォーデイズセミナー      等を経て「献身」に導くこと(すなわち労働力の搾取)に重点が置かれ、      年輩者や財産を有している者については訪問販売による霊感商法で近づ      き、更に統一協会で借りた結婚式場等に誘い出して、壺、人参茶、多宝      塔等の高額な商品を購入させたり、高額な「献金」をさせることに重点      が置かれる。しかし、前者、すなわちビデオセンターに通いだし、やが      てツーデイズ、フォーデイズセミナーを受講した若者にも、必ず印鑑や      絵画、壺等の霊感商法商品や統一協会の「定着産業」商品をも購入させ      る。他方、後者、すなわち霊感商法被害者となって印鑑、壺、人参茶等      を購入させられた者も、次はビデオセンターで見せられるのと同様のビ      デオを見せられ、徐々に原理講論の講義を聞かせられ、共に、統一協会      の信者あるいは、天地正教の信者になるよう働きかけられるのである。      このように、若者の場合、本人に資力がない反面霊感商法やインチキ募      金活動に従事させる労働力として使えるので、財産被害を受ける側面よ      り「献身」によって身柄自体を取られる傾向が強いのに対し、年輩者は      財産は狙われるが、労働力としては使いにくいので、財産被害の側面の      方が大きいという傾向があるが、どちらもその被害が財産的被害あるい      は身体的被害のみに限定されるわけではないのである。奈良の判決(甲      第一一五号証)においては、被害者は露骨な害悪の告知をなされて献金      に至ったのではなく、統一協会の教義を教え込まれる中で恐怖感に駆ら      れて献金をするに至っている場合であったが、統一協会の献金の違法性      を認めている。    4、 被告は、信仰の名前の下に、原告を「献身」させた上、二四時間管理・      支配して、もっぱらインチキ募金等、詐欺まがいの集金活動や、珍味売      り等の資金獲得活動、そして自らがなされたと同じ違法な方法を用いた      伝道活動に従事させるというカラクリないしシステムの中に原告を巻き      込んだのである。そして、このカラクリに巻き込まれた原告は、脱会す      るまでの期間を被告の道具として意のままに使われてきた。ここで、原      告を道具と言うのは、原告のなしたインチキ募金、珍味売り、霊感商法      等の諸活動は、すべて被告からの命令(統一協会用語で「人事」と言う)      に従って行ったもので原告が自ら企画したり、参画したたわけではなく、      原告はこれらの活動の目的も知らされることなく、また、何らの報酬も      利益も得ていないからである。    5、 霊感商法や献金事件の違法性は既にいくつかの裁判所で認定され、最      高裁判所でも確認されている。インチキ募金については判例こそないも      のの、実際には難民募金に入金されるのはごくわずかであるのに、「難      民募金」と称して募金活動をなすことが詐欺であることは明白である。      しかれば、これらの違法行為を被告の手足、道具としてなした原告は、      なさしめた被告に対して違法な行為をなさせたことの責任追及ができて      当然である。    6、 被告が、原告を街頭でアンケート調査と偽って勧誘し、ビデオセンタ      ーに誘い、更にツーデイズ、フォーデイズセミナーに誘い、ついには入      教させて「献身」に至らせ、その後種々に活動に携わらせる中で、被告      が原告に対して弄した個々の欺瞞ないし脅迫的行為は、一つ一つをバラ      バラに見ればそれ自体の違法性は一見弱く見えるかもしれない。しかし、      被告の行為を個別に区切ってばらばらに捉えるべきでない。すべてが一      連のカラクリ、システムなのである。違法性の評価は、一連の行為を対      象に行われるべきなのである。一連の行為をその目的と照らしてみたと      き、その違法性の重大さは十分把握し得るはずである。   三、 宗教活動と司法判断について    1、 宗教上の教義それ自体は裁判所でその適否を判断すべきではないとし      ても、勧誘・教化の過程や宗教活動上の行為に関し、教義の内容がどの      ように用いられ、その結果がどうなったかという面における裁判所の判      断・認定は不可欠である。    2、 教義の内容と機能     ▼教義の内容       被告の教義をかいつまんで述べると以下のとおりとなる。             ・二性性相と堕落論       この世は神とサタンの二つからなり、エバと天使長ルーシェルの不倫       により人間は堕落し、サタンの主管するところとなった。      ・メシア論と復帰原理       サタンの主管から脱するためには、人(人間復帰)と物(万物復帰)       をメシアの元へ復帰しなくてはならない。      ・霊界の讒訴       もし、被告の教義を知り、これにそむいたりした場合には霊界で讒訴       をうけ、祖先の霊が苦しんだり、あるいはウロコが生えた子供が生ま       れてくる。     ▼機能       この教義の機能は以下のとおりである。すなわち、万物復帰の教えの      もと、違法な経済活動をしてでも財物をメシアの元へ復帰せよと教え、      これに反したり、あるいは脱会したりすると霊界の讒訴があると教え込      み、恐怖心をうえつける。       その結果、原告を始めとする信者は、経済活動に奔走せざるを得なく      なる。かように万物復帰を中心とする教えは、経済活動に奔走させる道      具として用いられたものである。    5、 奈良判決の場合       右については、奈良判決(甲第一一五号証)の判断が参考になるので      ここに引用する。     ▼奈良判決の万物復帰に関する判断の部分      ・被告(統一協会)の研修教材「復帰摂理と万物」によれば、万物復帰       とは、人間は堕落して万物より劣る存在となったので、万物を神の前       に返し、万物を通じることによって初めて堕落人間を復帰させること       ができるというものであり、思想的には共生共栄共義主義を目指すも       のであるとしている。      ・万物復帰の具体的実践方法につき、被告(統一協会)発行の「信仰生       活と献金」中には、被告(統一協会)の教義においては、初代教会の       原型を踏襲して、信者に対して一旦すべての物を神の前に捧げ、しか       る後に生活に必要な分だけを神に授かるという精神を持ちながら、惜       しむ気持ちからではなく、自発的に持てる限りを尽くして捧げること       を奨励していること、捧げ物の程度について「収入の一〇分の一」と       する聖書の考え方に対して、被告(統一協会)においては、収入の一       〇分の一という伝統的な基準から一旦すべてを神の前に捧げ、改めて       生活に必要な分だけ授かるという「出家的」基準まで、様々な基準が       存在しえるものと考えていること、具体的な金額は、献金の本質が信       徒各自の信仰と経済的事情に応じて自発的になされるべき性質で、絶       対的なものとはなりえないとされていることの各記載がある。      ・しかし、仮に、被告(統一協会)の万物復帰の教えの実践方法が理念       的には前記・のとおりであったとしても、実際の場面においては、被       告(統一協会)の信者を物品の販売活動等の経済活動に奔走させて資       金集めを行うというものであったことが認められる。      ・かように、奈良判決においては、万物復帰の教えが違法な経済活動に       奔走させる道具として用いられていたことが率直に認定されており、       被控訴人統一協会の教えが本来の宗教的意義を有するものではなく、       宗教の皮を被ったものであることを端的に認定している。   四、 「マインド・コントロール」について    1、 平成一〇年六月三日岡山地裁判決は、「マインド・コントロールは、      それ自体多義的な概念であるのみならず、これを一定の行為を繰り返し、      積み重ねることにより相手に一定の思想を植え付けることをいうと捉え      たとしても、勧誘、教化の方法、経過を併せ考慮しても、宗教上の勧誘、      教化行為のあり方として、社会的相当性を逸脱したとはいえない」(一      六一、一六二ぺ−ジ)としている。また、「教化にあたり、宗教上の言      説以上に薬物や物理的・身体的な強制力が使用された事実を認めるに足      りない」(一六四ページ)として、古典的な強制概念に固執して、詐欺      的勧誘や心理的強制の分野に立ち入ることなく判断している。    2、 しかしながら、右判決の判断には二重の誤りがある。すなわち、前述      のように薬物を使ったり、物理的、身体的な強制力を用いたりした場合      でなければ、勧誘、教化方法についての違法性が問えないとするのであ      れば、詐欺的・脅迫的行為についての違法性判断を一切放棄することに      なる。また、そもそも本件において原告は、薬物を用いられたり、物理      的・身体的な強制力を用いられたともともと主張しているのでないこと      からすれば、原判決は的はずれの判断をしていると云わざるを得ない。    3、 また、右判決は「マインド・コントロール」につき、「一定の行為の      積み重ねにより一定の思想を植え付けること」と定義しているが、原告      はそのような定義付を行っていない。       スティーブ・ハッサン著「マインドコントロールの恐怖」には「個人      が自己自身の決定を行うときの人格的総合性を切り離そうとするシステ      ム。その本質は、依存心と集団への順応を助長し、自律を失わせること      である。行動、意思、感情、情報をコントロールすることによって達成      される」とある。       ニーズの操作やカムフラージュによる情報コントロールといったマイ      ンド・コントロールの手法により、一定の教化や説得を通じて被勧誘者      に新しい信念体系を植えつけることにつき、「物理的な強制力」や「社      会との完全な隔絶の有無」を判断基準としている点につき右判決の誤り      がある。    4、 マインド・コントロールの概念が新しい概念であり、且つ効果に疑問、      があると考えれば、専門家の証拠調べは不可欠であるところ、原告から      の心理学者である西田証人・宗教学者である浅見証人の証人申請を採用      しなかった点はなお審理不尽があると言わざるを得ない。なお、本件心      理学的な意味については甲第一六号証、甲第一二六号証を提出している。   五、 被告の勧誘等の違法性    1、 被告の被勧誘者は、被告の信者の正体を隠した詐欺的な接近を受けて      入教プロセスに誘導される。       被勧誘者は、初期の段階では判断力は比較的損なわれていないものの、      被告の正体や被勧誘者が信者になった(献身した)後の生活様式(ホー      ムと呼ばれる合宿所へ入居しての集団生活を強いられること)や活動(      違法な献金勧誘や霊感商法をさせられること等)に関する情報が決定的      に不足している。これらの情報は、被勧誘者が批判的な判断力にしたが      って反応する能力が減退ないし喪失させられたと被告が判断した場合に      だけ小分けにして出され、ある程度進行が受容されるまでは、被告の正      体(実態)などの重要な情報は開示されないのである。       このように、被告の被勧誘者は、入教プロセスの各段階に参加するこ      とには形式上同意してはいる場合であっても、最終的な目標についての      情報が与えられないまま、参加することに同意しているに過ぎないので      ある。また、その後の教育プログラムによる教え込みによって、被勧誘      者は被告に対する依存心を強め、価値観が転換し、被告の教義のためな      らば、違法な活動を行うことに対しても規範的障害が失われるようにな      る。このようにして自由な意思決定を阻害されてきたのである。    2、 モルコ・リール事件       この事件は、米国統一協会の元信者であるデービット・モルコ、トレ      ーシー・リールが統一協会に対し、詐欺、精神的苦痛を故意に与えたこ      と、不法監禁、不当な影響力の行使によって六、〇〇〇ドルの献金をさ      せられたことを理由に、六、〇〇〇ドルの献金の返還と一〇万ドルの損      害賠償を求めたもので、モルコは、統一協会は、同人を、理性的に考え、      真実の情報に基づきインフォームド・コンセントをする能力を減退させ      るプロセスに追いやったと主張した。       これについて、カリフォルニア州最高裁大法廷は、「統一協会が不実      表示や正体を隠して誘導し、知らないまま強制的説得に服従させる環境      に引きずり込んだことを理由に、統一協会に対して伝統的な詐欺訴訟を      提起することを合衆国憲法も州憲法も禁止していない」と判示し、上告      人モルコの再審理の申請を認め、第一審裁判所の略式判決(訴え却下)      を支持した中間控訴裁判所の判決を破棄し、事件をサンフランシスコの      賠審法廷で行うよう命じた。       右大法廷は、詐欺訴訟における「法律問題は単に、宗教団体が非会員      を騙して、彼らの認識や同意を欠いたまま強制的説得に服従させること      が、伝統的な詐欺訴訟で有責と判断されるかどうかである。」とし、「      本件訴訟で検討すべき点は、教会の教え、また宗教的回心の正当性では      ない。検討すべき点は、疑うことを知らない部外者を高度に構築された      環境の中に引き入れる目的で正体の不実表示をしたり、正体を隠す教会      の活動である。」とし、信仰の自由という絶対的な権利を理由としてど      のような勧誘方法も許容されるのではなく、その選択の場面においてイ      ンフォームド・コンセントがなければならないとした。    3、 被告の勧誘等における嘘の数々は例えを挙げれば以下のとおりであっ      た。    (一) 原告に対する最初の被告からの接触は、アンケートに協力して下さ       いというものであった。真実は最終的には統一協会員にして献金をさ       せ、新たに統一協会の伝道活動にあたるように勧誘する目的であった       にも関わらず、それらの目的を全く隠していた。積極的に隠すよう指       示を受けて接近していた。最初に接触した西崎美和は「ホ−ム」に暮       らしていた統一協会の献身者であり、統一協会のビデオセンターのス       タッフであるとともに統一協会の経済活動(霊感商法)をも担ってい       た。    (二) アンケート調査は青年意識調査を装いながら(甲第一八号証、甲第       二五号証)実は統一協会に勧誘しやすい人を選別していた。    (三) 統一協会であるか否かを問われも宗教とは関係ないことを言うよう       に指示をされていた。あくまでも若者の文化サークルといっていた。       しかし、ビデオセンターは統一協会の伝道の場所であった。    (四) ビデオセンターは甲第二八号証のような配置になっていて、外部者       には見えないところにスタッフルームがあり、タワー長がいて原告が       決断をにぶっていると即座に指示がでるようになっている。しかも、       その対応の仕方はマニュアル化され(甲第一二五号証・甲第一一四号       証)、統一協会であることを気付かれないままビデオセンターに入会       を迫ることができるようにシステム化されている。これらのマニュア       ルは、被告において全国的に作成され、組織的に運用されてきてきて       いた。    (五) ビデオセンターでの亀甲アンケート(甲第二六号証)は、真に原告       のためになされるのではなく、原告の財産状況をあらかじめ把握し、       どこまで献金を迫れるかの目安とし、家系図づくりはその後の恐怖に       陥れる占い師らの因縁トークに利用するための材料を得るためのもの       である。そして、この因縁トークなどは占い師ではなくても誰でもが       対象者に対して確実に霊界の恐怖を抱かせてそれを利用するなどその       役割を果たすことができるようにマニュアル化(甲第二七号証、同三       六号証)されている。    (六) 占い師による嘘と脅迫      1) 目的の嘘        統一協会との関わりに一歩ふみだせないでいる原告を先祖の因縁を       説くなどして霊界の恐怖に陥れ、最終的には文鮮明に対する帰依を迫       って献金をさせる目的であったにも関わらずこれを秘して、偉い先生       による占いであるなどといって、単なる人生相談の機会であるかのご       とく目的を偽っている。原告の前には岩井が姿を現し、その役割を担       った。      2) 占いの嘘        既に右に述べたように、その占いの内容はマニュアルに基づき対象       者(原告)が恐怖を抱くようになされる。信仰もしくは独自のインス       ピレーションや信念によってなされるものではない。従ってその内容       は「祖先が犯した女の恨みによって君を堕落させようとしている」な       どという画一的な内容となっている。      3) 画展・着物の展示販売の 統一協会員としての活動の一つとして右       のような販売会への動員指示がなされる。この会場には誰でもが自由       に入れるのではない。単なる資金稼ぎでしかない催し物について指示       された数の動員を達成することが信仰の証しとされ、何らの罪悪感を       感じさせない。この展示会においては「トーカー」「マネキン」「担       当者」「タワー長」などの役割を持った者が配置され、この場におい       ても事前のアンケート調査などの資料が活用され、単なる物品の販売       の場所ではなく霊感商法実践の場となる(甲第三七号証ないし甲第三       九号証)。        原告もこのような中から、甲第四一号証に記載のとおり、宝石、絵       画、印鑑、毛布を購入させられている。 第六、 献金の違法性   一、    1、 被告に対する献金の違法性については既に多くの違法と認定する判決      がなされていて、被告らの全国的にほぼ統一された手法でなされている      このシステムは違法であるとの評価は定まってきているといってよい。      これらの判決において指摘された事実とその判断をまとめると以下のと      おりである。    2、    (一)福岡地裁判決(福岡高裁及び最高裁判決も同旨)       福岡地裁判決(甲第一三〇号証)は、まず総論的に「一般に、特定宗      教の信者が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を勧      誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基づくものであ      り、かつ、その方法や結果が社会通念に照らして相当である限り、宗教      法人の正当な宗教的活動の範囲内にあるものと認めるのが相当であって、      何ら違法でないことはいうまでもない。しかし、これに反し、当該献金      勧誘行為が右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等による利益獲得にあ      るなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁や霊界の話      等をし、そのことによる害悪を告知するなどして殊更に相手方の不安を      あおり、困惑に陥れるなどのような不相当な方法による場合には、もは      や当該献金勧誘行為は、社会的に相当なものとは言い難く、民法が規定      する不法行為との関連において違法の評価を受けるものといわなければ      ならない。」(判例時報一五二六号一三〇頁第三段ないし第四段)と判      示した。       その上で同判決は、原告一名については、1)当該献金以前に「霊界の      ことや統一原理等を内容とするビデオを見せられたり、先祖の因縁を説      き聞かされたりした上で」献金等をさせられるなど「既に因縁の話や霊      界で亡夫が苦しんでいることがあたかも真実であるかのように」原告に      思わせる状況が作出され原告もこれを真に受けていたものと認められる      こと、2)このような状況に乗じて、被告統一協会の信者らが原告に対す      る教育予定を組み、予め把握していたものと思われる原告の資産(の一      部)の額に基づいて献金額を決定し、これを原告から献金させるべく一      〇日間の講習によって統一原理等を集中的に教育した後に原告をマンシ      ョンの一室に呼び出していること、3)比較的狭い部屋において約六時間      の長時間にわたり被告統一協会の信者が原告に家系図を示すなどして再      三強い口調で先祖の因縁や献金に応じなければ不幸が起こるなどと執拗      に害悪を説き、被告統一協会の信者が両脇に座ってその手を握り、他の      信者の話に呼応して献金を促すなどして原告を退去することもままなら      ない、いわば軟禁状態といっても過言でない状況に置いて、原告の不安      をあおり、原告を困惑に陥れて三〇〇〇万円の献金を承諾させた、4)さ      らにその献金について口止めをしていたこと、5)そして、その結果原告      は、その取得した亡夫の生命保険金の大部分を出捐してしまったことを      列挙して被告統一協会の献金勧誘行為を違法な行為とした(判例時報一      五二六号一三〇頁第四段ないし一三一頁第一段甲第一〇三号)。       同判決は、もう一名の原告については、1)原告はビデオにより被告統      一協会の教義等の講習を受けた後、原告と被告統一協会の信者のみが在      室する個室内において被告統一協会の信者から身上話や悩み事を聞かれ      た後、その悩み事や内縁の夫の死亡が母方の祖母の因縁であるなどと存      在の定かでない因縁や亡夫の訴えを強い口調でいわれた上で、その因縁      を清算するための献金が要求され、さらにただちにその要求に応じなけ      れば救われないなどといわれて長時間(認定事実によれば二時間半)に      わたる執拗な勧誘を受けたこと、2)その結果、直ちに献金に応じなけれ      ばならないような状況に追い込まれて不安に駆られ、困惑に陥ったため、      二一〇万円の多額な献金を承諾したこと、3)原告の献金額は予め決定さ      れていたばかりでなく、その後も被告統一協会の信者らによる原告に対      する金銭の出捐要求がされていること、4)被告統一協会の信者が原告に      対し献金について口止めしていることを列挙して被告統一協会の信者に      よる献金勧誘行為を違法な行為とした(判例時報一五二六号一三一頁第      一段ないし第二段)。    (二) 右福岡地裁判決においては、結局、献金勧誘の目的の要素として献       金額が予め決定されていたこと及びその額が予め把握していたと思わ       れる被害者の資産額に基づいておりその献金獲得のために計画的に講       習が行われたことまたは献金後も金銭出捐要求がなされたこと、献金       勧誘行為の態様として、悩み事が先祖の因縁によるものでありその因       縁を清算するためには献金が必要でありそれに応じないと救われない       などと強い口調で個室で長時間執拗に勧誘されて不安に駆られ困惑に       陥って献金を決断するに至ったこと及び献金について口止めされたこ       と、献金勧誘の結果として多額の献金を行ったこと認定し、献金勧誘       行為の違法性を認めていると解されるのである。本件原判決とは異な       り「先祖の因縁」の話をするなどして困惑に陥れる行為は不法行為と       なることを明言しているのである。なお、本件については福岡高裁、       最高裁と争われ、いずれも原告の主張を認める内容となっている。    3、 高松地裁判決    (一) 高松地裁判決は、「特定宗教の信者が自己の属する宗教団体への献       金を勧誘する行為も、その目的、方法、結果から判断して、社会通念       上相当と認められる範囲を超える場合には、民法の不法行為との関連       において違法の評価を受けるものといわねばならない。」(甲第一一       三号証)とした上で、       「本件における被告の信者らの献金勧誘行為は前記認定のとおりであ       り、勧誘すべき人数につき一定の目標を定めたうえ、珍味の訪問販売       をきっかけに訪問先の相手を被告の信者らが主催する後援会等に誘い       出し、被告の名を明かさないまま、家系図調査と称して家系、悩み事       等を、さらに、環境浄化と称して財産状態をも詳細に聞き出し、これ       らの情報をもとに被告の信者らの間で獲得する献金の目標額を決め、       周囲の信者から「先生」と呼ばれるリーダー格の信者が、右目標にし       たがって、事前に得た情報を利用しながら献金の勧誘をするという一       連の流れが認められ、これら一連の行為は献金獲得に向けられた組織       的、計画的行為と認められること、献金の直接の勧誘行為は、原告の       入会の意思も十分に確認しないまま、予め得た情報を利用して、その       不安をあおり、執拗に多額の献金の即決を迫る方法でなされているこ       と、原告が献金を承諾した翌日には、信者らが迎えに行ったうえ、預       金の引き下しなどの諸手続から献金が終るまで始終付き添い、原告に       熟慮の機会を与えていないこと、右勧誘は被勧誘者の出捐しうる金額       全部を献金するように勧めるとの基本姿勢の下に行われており、現実       に右のような勧誘の結果原告によりなされた献金は六〇〇万円と多額       で、原告の預金のほぼ全額であることなどの緒事情を総合すれば、被       告の信者らが行った前記一連の勧誘行為は、その目的、方法、結果に       おいて社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法性を帯び       るといわなければならない」と判示して被告統一協会の信者による献       金勧誘行為を違法とした。    (二) 右高松地裁判決においては、勧誘の目的の要素として事前に悩みや       財産等の情報を収集し目標額を定めるなど計画的であること、献金勧       誘行為の態様として入会の意思を十分確認していないこと、予め得た       情報を利用して不安をあおり執拗に多額の献金の即決を迫ること、献       金承諾後すぐに信者が始終付き添って預金の引き下しや献金を行い熟       慮の機会を与えないこと、献金勧誘の結果として多額の、預金のほぼ       全額の献金が行われたことを認定し、献金勧誘行為の違法性を認めて       いると解される。    4、 奈良地裁判決(甲第一三一号証)    (一) 奈良地裁判決は、被告統一協会の献金勧誘システムについて、総論       的に「前記認定によれば、被告の献金勧誘のシステムの特徴として、       1)万物復帰の教えの下、個々の対象者からその保有財産の大部分を供       出させ、被告全体としても多額の資金を集めることを目的とするもの       であること、2)対象者がある一定のレベルに達するまで、被告の万物       復帰の教えはもちろんのこと、被告や文鮮明のことを秘匿あるいは明       確に否定したまま、対象者の悩みに応じた因縁話等をして不安感を生       じさせあるいは助長させる方法をとっていること、3)各種マニュアル       等により勧誘方法が全国的に共通していて、組織的に行われているこ       とが挙げられる。」「このうち、2)の点は、被告への入会ないしは献       金等をしようとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものに       つき、不実のことを告げ、また、被告への入会ないしは献金等をさせ       るため、対象者を威圧して困惑させるものであり、方法として不公正       なものと評することができる。」(略)「以上を全体として総合的に       判断すれば、被告の献金勧誘のシステムは、不公正な方法を用い、教       化の過程を経てその批判力を衰退させて献金させるものと言わざるを       得ず、違法と評価するのが相当である。」と判示した。        その上で同判決は、原告の一名については「予め財産の把握が行わ       れた上、執拗に献金の勧誘が行われていること、勧誘の当初において       宗教であることを明確に否定していること、原告市川の身上及び本件       献金勧誘行為を受けた当時の健康状態及び精神状態に照らせば、因縁       話等による不安感等を覚えやすい状態にあったものといえるところ、       家系図を示して具体的にかつ執拗に因縁話がなされ、原告市川の受講       内容は、六回に及ぶ竹内のカウンセリングや三日連続の個人路程(人       生の中での出来事を告白文のような形で書かせるもの)など、個人の       抱える悩み等を十分聞き出した上でこれに応じた因縁話等をするとい       う内容であり、原告市川の不安感を助長させていること、姓名判断が       用いられていない外は奈良地区におけるマニュアルに沿った勧誘方法       が行われていること、奈良カルチャーセンターでの受講につき他言を       禁じられたことなどの点が認められる。以上からすれば、被告の原告       市川に対する献金勧誘行為には違法性がある。」と判示して被告統一       協会の信者による献金勧誘行為の違法性を認めた。        同判決は、原告のもう一名については「統一協会であることを明確       に否定して献金勧誘行為が行われていること、予め財産の把握がなさ       れ、これに基づき献金額及び献金に至るまでのスケジュールが決めら       れていたこと、家系図を示すなどして具体的に因縁話が行われている       こと、受講につき他言を禁じられていることなどが認められ、以上に       よれば原告黒田に対する献金勧誘行為は違法性がある。」と判示して       被告統一協会の信者による献金勧誘行為の違法性を認めた。    (二) 右奈良地裁判決では、結局、宗教ないし統一協会であることが当初       否定されていること、予め財産が把握されそれに基づいて献金額及び       献金スケジュールが決定されたこと、具体的に因縁話が行われたこと、       受講につき他言を禁じられたことを認定し、献金勧誘行為の違法性を       認めたものである。    5、 東京地裁判決(甲第一三二号証)    (一) 右判決は、家系図を示しながら原告の実家の因縁話、このまま放置       すれば絶家する家系であり、先祖の罪が清算されない限り霊界の低い       ところから抜け出すことができず先祖が霊界で苦しみ、現世の人間に       も不幸が起きると告げられた事実を認定した。そして、「当該宗教の       教義が信じるに足りる所以を説明すること、教祖又は宗教上の指導者       が過酷な運命から人類を救う超能力を備えることなどを説明すること、       更には、当該宗教活動を維持するために献金を求めることは、その方       法が市民法の許容するものである限り、法律上の責任を生じることは       ない」と一般論を述べたが、「献金が、人を不安に陥れ、畏怖させて       献金させるなど、献金者の意思を無視するか、又は自由な意思に基づ       くとはいえないような態様でされる場合、不法に金銭を奪うものと言       ってよく、このような献金名下の金銭の移動は、宗教団体によるもの       ではあっても、もやは献金と呼べるものではなく、金銭を強取又は喝       取されたものと同視でき」不法行為が成立するとした。    (二) この判決は、科学的知見に照らして荒唐無稽であるかの如き事実で       あってもそれが宗教活動においてなされている限り何ら責められるべ       き点はないという基本的立場を明らかにしながら、因縁話に基づく恐       怖感を押しつけたりするなど「自由な意思に基づくといえないような       態様」の場合には「献金」とはいえないことを明確にし、信教の自由       との関係において不法行為の成立する基準を示したといえる。なお、       本件判決は原告の慰謝料請求を棄却していたが、東京高裁は慰謝料に       ついてもこれを認容している。   二、 判例の基本的方向    1、 これらの判決においては、献金勧誘行為の違法性を基礎づける事実と      して、献金勧誘の目的にかかる要素として献金の目標額が予め定められ      ていたこと及び事前に悩みや財産について情報を収集していること(但      し福岡地裁判決の二人目の原告についてはこれに代えて献金後も財産出      捐要求があったことが挙げられている)、献金勧誘行為の態様としては、      具体的かつ執拗に因縁話がなされそれにより不安をあおられて献金を決      意したことに加えて口止めがなされたこと(福岡地裁判決、奈良地裁判      決)または献金承諾後すぐに信者が付き添って預金の引き下しや献金を      行わせ熟慮の機会を与えなかったこと(高松地裁判決)、いずれの要素      であるか必ずしも明らかではないが当初統一協会の献金勧誘の目的であ      ることを秘匿ないし否定していること、献金勧誘行為の結果として多額      ないしほぼ全財産の献金がなされたことが認定されて被告統一協会の信      者による献金勧誘行為が違法であると判示されている。そして、これら      の認定の背後にあるものは、責任主体として各判決においてそれぞれ統      一協会そのものが認められているとおり、全国画一的に組織的指揮命令      関係をもって行われ、同様の被害を多発させている実態が明確になって      いる事実がある。    2、 従って、被告の、献金勧誘行為の違法性を基礎づける事実としては、      次の事実のいくつかが主張立証されれば十分である。このことによって、      もはや違法とされ「献金」とはいわれなくなるのである。      a 当初被告統一協会の献金勧誘の目的であることが秘匿されている      b 予め悩みや財産状態を聞き出している      c それに基づいて献金の目標額が定められている      d 具体的かつ執拗に因縁話をして不安をあおり献金を要求して献金を       決意させた      e 献金承諾後すぐに信者が付き添って預金の引き下しや献金を行わせ       たり、献金や受講について口止めをし、すぐさま献金についてその是       非を考えることをできなくさせる。   三、 本件の場合は、第四、七項に記載のとおり、本人には献金に至ることを     知らせないで、仕組まれた部屋において、万物復帰をしなければ弟の命が     危ないという恐怖感にあることに乗じ、長期間深夜の説得がなされ、原告     にとってほぼ全資産を提供させ、翌日には統一協会員によって預金が解約     されるなど、右全ての要件を満たしていて、献金だけをとっても違法と判     断されるべきである。