「青春を返せ裁判」

98.10.14 原告B子の意見陳述書

 私が、この裁判を起こしてから、五年三ヵ月という歳月が流れました。
 それは、私が、統一教会にいた期間の二倍以上の期間に相当します。
 それにも関わらず、この裁判は、今だ核心に触れるに至らず、足踏み状態のままです。

 私がこの裁判を起こした時には、すでに岡山でのA男さんをはじめ全国で多くの元統一
教会員の方々が、この裁判を起こして、統一教会とたたかつていました。
 つまり、私は、後に裁判に参加することになつたわけですが、統一教会の持つ危険性を
考えると、この裁判は重要であり、その必要性を感じずにはいられませんでした。
 統一教会の実態については、統一教会の中にいるときには全くわからないことでした。
 むしろ、文鮮明こそが、世界をより良きものに変えてくれ、人類を救つてくれる唯一の
存在であり、統一教会とその関連の組織は、その崇高な目的を成就するために必然的につ
くられたものであると信じ込んでいました。
 いえ、信じ込まされていたのです。
 しかし、統一教会を脱会して、統一教会の中にいるときには全く知らされなかつた文鮮
明と統一教会についての情報に触れることで、私は公平な判断をすることができました。
 その結果、文鮮明の経歴と談話には嘘が多いこと、統一教会の教典である原理講論がキ
リスト教の教義から逸脱していることや聖書の引用部分に解釈の間違いがあること、そし
て、統一教会が霊感商法などの社会的問題を起こしている反社会的集団であることがわか
りました。
 しかも、これらのことは、普通の状況、つまり、いろいろな情報が得られる状況の中で
考えれば、容易に理解できることばかりです。
 それなのに、・何故、そういつた事実を見抜けなかつたのか。
 統一教会へ入会するとき、どうして十分に検討できなかつたのか。
 統一教会へ入会後も、何故、反社会的で違法ともいえる活動に従事できたのか。
 何故、統一教会を脱会できなかったのか。
どうしても、それらのことがわからず、また、それらの疑問は、私の今後の人生の前に立
ち塞がつてきたのです。
 自らの判断で、自らの意思で、このような集団に所属し、反社会的活動を行なつていた
としたら、社会的にも許されないことです。
 死んでしまいたいという思いにもかられました。
 しかし、どのように考えても、統一教会に勧誘されたときから脱会に至るまでの間、私
はそれまでの自分とは違う判断をしていたこと、そして、その判断は普通の状況の中でし
たものではないということ、それ以外の結論を導き出すことはできませんでした。
 そんな時に、破壊的カルト集団が行なうマインド・コントロールの手法を知りました。
 私は、統一教会が宗教的装いをした破壊的カルト集団であること、破壊的カルトは自分
たちの欺瞞を隠し、カルトのメンバーたちに表向きの目標を遂行させて、裏の利益をあげ
させる組織であること、そして、カルトのメンバーたちを駆使するために、マインド・コ
ントロールという技法を用いて、その人格を変えていくことを知りました。
 そして、私は、統一教会に自分の純粋な思いを利用されていたことを理解したのです。
 統一教会は、自分たちの目的を達成するために、他人の心を本人の知らなぃ間に勝手に
操作して、統一教会へ入会させ、自分たちの利益追従のための活動に従事させていたので
す。
 統一教会は、統一教会への勧誘、入会、献金、統一教会員の教育に関するマインド・コ
ントロールの一連のプログラムを持つていて、それを用いることで、新しい統一教会員を
獲得し養成していきます。しかも、統一教会は、このプログラムで統一教会員にした者も
同じプログラムに従わせることで、他人のマインド・コントロールに加担させる、という
非常に巧妙な方法を用いています。
 このことを理解したとき、私は、自分の体験を語ることにより、統一教会の社会への悪
影響を阻止したいという思いと、何よりも自分の状況を知らずして、統一教会に酷使され
ている統一教会員たちを一刻も早くマインド・コントロールから解放してあげたいという
願いを抱きました。
 私は、この問題を自分自身のことだけでなく、統一教会の被害にあつた人や常に標的と
されている日本国民の方々、そして、一番の被害者である統一教会員とその家族の方々、
元統一教会員の全てに関わる問題と考えて、この裁判に参加しました。
 統一教会の危険性が及ぶのは、一部の特殊な人に限られたことではありません。
 個人の財産に関しても、統一教会はあらゆる手口でそれを奪い取ろうとしていますし、
統一教会への入会に関しても、タイミングさえあえば、誰のうえにもふりかかってくる問
題です。それも、本人の全く気づかない状況の中で、心理操作されて、信者にさせられて
いくのです。
 自分では「大丈夫」と思ってはいても、統一教会の財産剥奪の手法や信者獲得の手法、
マインド・コントロールの知識を持つていなければ、殆どの人が知らない間にその手口に
ひつかかり、財産を奪われるだけでなく、自分の人生さえも狂わせられることになりかね
ません。

 私が、この裁判で明らかにしたいことは、
 1統一教会への入会は、自分自身の自由意思で決断したことではないということ。
  統一教会への勧誘から入会の決断におけるまで、統一教会の組織としての働きかけが
  あつたということ。
 2統一教会への献金は、自分自身の自由意思で決断したことではないということ。
  統一教会は、最初から対象者に全財産を拠出させる目的とその目的を成就するための
  プログラムを持つており、それに従つて対象者にマインド・コントロールを行ない、
  不安や恐怖心を植えつけて心理的に逃げ場のない状況へと追い込んだ上で、組織的略
  奪を行なったということ。
 3統一教会員としての活動は、自分自身が合意の上で行なっていたわけではないという
  こと。
  統一教会は、対象者を統一教会員へと変貌させていくための教育プログラムを持つて
  おり、それに従つて対象者にマインド・コントロールを行ない、対象者の判断基準を
  入れ替えて、統一教会にとつて都合のよい判断しかできない人格に変えた上で、反社
  会的ともいえる活動に従事させたということ。
  また、霊界への恐怖心を増幅させて、活動へと駆り立てていつたということ。
 4統一教会の活動は、文鮮明の個人的野望を実現するために必要な労働力とそれにかか
  る莫大な費用を調達するために行なっているものであって、その活動内容は反社会的
  であり、かつ違法なものであるということ。
つまり、信者の獲得、献金の剥奪、統一教会員の活動への就かせ方、活動内容にいたるま
で、統一教会は、社会はもとより統一教会員までをも欺くやり方で行なつている事実があ
るということです。
 これらの四つの点について、私の体験をもとに考察した内容をここにまとめたいと思い
ます。

1統一教会との接触から入会を決断させられるまで。

 統一教会の勧誘には、次のような特徴があります。
 1)統一教会という実名を隠し、差し障りのない他の団体名で接触してくる。
 2)最初は、統一教会の教義とは全く関係のない青年意識アンケート等から入り、賛美や
  称賛で心を開かせ、安心感を与え、親交を深め、信頼関係をつくる。
 3)しつこいくらいの手紙や電話や訪問でのアプローチを行ない、気持ちを変えさせて、
  もつと対話のできる状況へと誘導していく。
 4)対話のできる状況へ誘導すると、次は統一教会の主張を聞かせる場所、つまりビデオ
  センターヘ連れ込む。
 5)統一教会の主張とは、亀甲アンケートなどを利用して対象者のニーズを引き出し、個
  人や社会の問題を急激に浮き彫りにして不安や恐怖心を引き起こし、唯一の解決方法
  であるビデオセンターでの学びを提示し、ビデオ受講を決断させることです。
  ビデオセンターは統一教会の教育機関であり、ここを通過させることで、次のステッ
  プである献金の剥奪、さらには統一教会員へと変貌させる教育プログラムを受けさせ
  ることが可能となります。
 6)統一教会は、このような一方的な働きかけで、対象者をビデオセンターヘ連れ込むと
  勧誘者かビデオセンターのスタッフが中心となって、対象者が統一教会の主張を受け
  入れるまで、繰り返し繰り返し説得を行ないます。
  この時、統一教会では、主張を述べて説得にあたる者とその説得者を権威づけする者
  とが対象者を囲み、強力な説得体制を作り上げた中で、長時間にわたる説得を行なっ
  て、その日のうちにビデオ受講を決断させます。
 これは、私が統一教会からの勧誘を受けた時も、統一教会員として勧誘をさせられた時
も、全く同じ方法を用いての組織的展開がありました。

 私が統一教会から接触を受けてビデオ受講を決断させられるまでの経緯を述べます。
 1月23日に、N子さんによる「青年サークル」の青年意識アンケートに答えることで、
統一教会との接触が一方的になされました。
 その後、1月25、26、27日と連続して、手紙と電話によるアプロコチを受けました。
 アンケートを受けた時から、私の気持ちは、サークル(後にビデオセンターと説明され
た場所)に参加する気持ちは全くなく、手紙や電話での勧誘を疎ましく思っていました。
 しかし、N子さんに対しては、私のことを褒めてくれたり、話を一生懸命に聞いてくれ
たりで親しみを感じ始めていました。また、N子さんの熱心さにも根負けして、そこまで
誘ってくれるのなら、もうー度会ってもいいかな、という気持ちになつていきました。
 私は、N子さんと喫茶店で会う約束をしました。
 ビデオセンターヘ行くことは電話ではっきりと断りました。
 しかし、N子さんは、統{教会のアベルといわれる上司の命令を受けて、何が何でも、
私をビデオセンターヘ連れて行かねばという気持ちにさせられていたのです。
 ビデオセンターの入り口で、私はN子さんともめました。
 しかし、ビデオセンターの中へ私を連れ込むことにー生懸命になっていたN子さんには
その言葉は耳に入らなかったのでしょう。
 私は、スリッパまで用意してくれて、笑顔で迎えてくれるN子さんに対して、その場で
すぐに帰る、とは言い切れませんでした。
 せめて、N子さんが、私に聞かせたがっている話くらいは聞いてあげようという気持ち
になつていました。
 この時の私は、ビデオセンターの中に入ることがどれほど危険なことか皆目見当がつき
ませんでした。
 また、事前に統一教会の名称や文鮮明が教祖であること、そしてビデオセンターが統一
教会の教育機関であることなどを説明された上での勧誘であれば、当然のことながら、統
一教会や文鮮明のことを調べた上で、N子さんの誘いに応じるべきか否かの判断もできて
いましたし、ビデオセンターが特殊な環境であることも知り得ることができました。
 しかし、残念ながら、正しく判断できる最小限の情報(つまり、統一教会という名称と
文鮮明という教祖名)すら与えられることなく、全く関係のない青年サークルということ
で勧誘を受けたのです。

 ビデオセンターの中では、「青年意識調査アンケート」と「亀甲アンケート」をもとに
話が進められ、私の中の二ーズが引き出されていきました。
 私の中の弱点を見つけだし、反応しやすい問題点を浮き彫りにしていくことで、不安や
恐怖心を引き起こすのが目的でした。
 当時の私は、長年勤めた会社を辞めて、一時的にアルバイトをしていましたが、年令的
にも人生の節目にいたのは確かです。
 このままでいていいのだろうか、という漠然とした不安を抱いていました。
 私のそういった状況を変えるには、ビデオセンターで学ぶしかないと説得されました。
 私は、元来、物事を早急に結論づけるタイプの人間ではありません。
 そうは思っても、やはり納得のいくまでと何度でも考え直すタイプの人間です。
 結論が出せるまで、早くて三ヵ月、長くて三年はかかりました。
 そのため、チャンスを逃してきたことも沢山ありました。
 N子さんは、時を逃がしてはいけない、きょう入会しないと後悔すると、さらに熱心な
説得を続けました。
 私は、こんなにも一生懸命になってくれるN子さんに対して、このまま帰るのはわるい
という気持ちになり、せめてビデオの一本でも見て、N子さんの気持ちに応えようと思い
ました。
 その時、私が見せられたのは、倉原講師の「総序」というビデオでした。
 ビデオの内容は、私のニーズに合ったものでした。
 というよりも、私の二ーズに合う内容のビデオを選んで見せられたのです。
 しかも、そのビデオの内容は、問題提起の部分が殆どを占めていて、解決の方法がある
と述べてはいるものの、詳しい内容には触れていませんでした。
 そのビデオを見終えた後、私の心の中には人類の救いという問題がクローズアップされ
その解決方法を早く知りたいという新たな気持ちが沸き起こつていました。
 そのためには、ビデオセンターに入会して、ビデオ学習をする以外に方法はありません
でした。しかも、総序からは、すぐにでも次のビデオで解決方法を知ることができるよう
な錯覚を与えられたため、創造原理、堕落論、復帰原理の三本のビデオを見るだけでビデ
オ受講が簡単に終了するものと考えての安易な決断でした。
 それが、ビデオセンターヘ入会するきつかけとなり、統一教会員への道の第一歩となっ
たのです。
 このような経緯で、私は、統一教会からの一方的な接触を受け、執拗なアプローチで、
ビデオセンターヘ連れて行かれ、統一教会による心理操作を受けて、組織の主張を受け入
れさせられたのです。
 しかも、ビデオセンターの延長線上には、全財産を献金させられること、統一教会員に
させられて統一教会の反社会的活動に従事させられること、そして、文鮮明の奴隷として
一生を酷使されるという運命が待ち受けていたことを考えると、この決断が私の人生に於
いての大きな分岐点となるにも関わらず、自分自身の意思で決断するために必要な確かな
情報と十分な時間を奪われただけでなく、統一教会による一方的な心理操作の結果、統一
教会に入会させられたという事実に対して、非常に許しがたいものを感じます。

 統一教会は、対象者をビデオセンターヘ入会させると、この時の一時的な心理操作が元
に戻る前に、ビデオセンターでの学びを早急に開始させようとします。
 また、対象者を外部の情報から隔離、孤立させるために、ビデオセンターで学ぶことを
口外させないようにします。
 そして、ビデオセンターでの統一教会員への素地教育を経させて、教育プログラムによ
る永続的なマインド・コントロールヘと結びつけていくのです。

2統一教会へ献金させられるまで。

 統一教会への献金のさせ方には、次のような特徴があります。
 1)事前に「亀甲アンケート」で財産の把握をしておき、献金の目標額を設定しておく。
 2)対象者が、これまでの判断基準の材料として持っていた情報を排除するために、故意
  に真つ白な心の状態を作り出して、統一教会が用意した新しい情報を注入し、これま
  での情報との入れ替えを行なう。この作業により、対象者を統一教会にとつて都合の
  よい判断しかできない人格へと変えていく。
  統一教会が用意した新しい情報とは、統一教会の教義である原理講論の内容と霊界の
  恐怖であり、この作業は、社会から隔離、孤立した場所で行なう。
  新しい情報が定着すると、対象者は文鮮明と統一教会を受け入れざるを得ない心理状
  況になる。
 3)統一教会は、ここで初めて、対象者に文鮮明と統一教会の名前を明かす。
 4)対象者が、文鮮明と統一教会を心理的に受け入れた段階で、さらに文鮮明を美化して
  文鮮明と統一教会を唯一絶対の存在として位置づける。
 5)これらの心理操作が完了した段階で、献金の強要を行なう。
 6)献金の強要を行なう当日も、対象者には絶対に献金のことは言わない。
  献金の強要は、ビデオセンターの会議室、つまり統一教会員が包囲し、外界から隔離
  した状況の中で、長時間にわたって行なうことで、疲労やストレスからくる判断力の
  低下を利用して、対象者の正常な判断を狂わせる。
 7)統一教会は、対象者にこの一連のプログラムを通過させて、目標額の献金を確実に奪
  い取る。
 これは、私が統一教会から献金を奪われた時も、統一教会員として献金に立ち合わせら
れた時も、全く同じ方法を用いての組織的展開がありました。

 私が統一教会から献金を奪われるまでの経緯を述べます。
 私の場合は、1月29日から、ビデオセンターでのビデオ学習を開始させられました。
 まず、三浦綾子原作の塩狩峠というピデオを見せられて、自分の中の強い自我を打ち砕
かれ、犠牲的精神を植えつけられました。
 そして、次のビデオで、霊界の存在と霊界への恐怖心を植えつけられました。
 その恐怖心が消えないうちに、因縁トークで解決困難な人生の難問を提示されました。
 その話の中には、私がビデオセンターでの学びを続けて自分が変われば、解決の道があ
るとの希望的内容も含まれていましたが、それができないと、弟の生命が危ないとの警告
も含まれていました。
 また、特別な学びに入るということで、40日の真理行をさせられました。
 それらのことで、私の心の中は真っ白な状況へと変えられていつたのです。
 そして、2月13日から、統一教会の教典であり統一教会の活動の原点ともなる原理講論
という新しい価値観、つまり判断基準ともなる情報の注入が始まつたのです。
 私は、自分が変わらなければ、弟の生命や家族や先祖の救いはない、という気持にさせ
られていて、新しい情報を受け入れやすい心理状況になっていました。
 原理講論は、創造原理、堕落論、復帰原理の三つの内容から構成されていました。
 私は、このうちの創造原理と堕落論をI男講師から、マンツーマンの講義形式のもとに
教え込まれました。
 次第に、自分が何をしていけばよいのか、の答えに近づいていくようでした。
 それは、統一教会の望む方向へ近づかされているということでもありました。
 統一教会が望む方向とは、対象者に、情報の入れ替えを行なうことで、文鮮明と統一教
会を心理的に受け入れさせて、文鮮明と統一教会を唯一絶対の存在と思い込ませることで
す。
 統一教会は、ビデオセンターという統一教会員で占められた特殊な環境の中で、統一教
会の教典である原理講論を中心としたビデオ、統一教会員であるコンサルタントによる指
導、ビデオの後に必ず書かせる感想文での心理チェツクで心理操作を行ない、何かを判断
するときに用いている情報そのものを入れ替えてしまいます。
 そのため、対象者は、統一教会からの問いかけに対して、自分の意思で判断したという
錯覚にとらわれるのです。
 統一教会は、対象者に対して、統一教会にとつて都合のよい判断をさせるために必要な
情報の注入をビデオセンターの中で行ない、その結果、対象者は、統一教会にとって都合
のよい答えのみを導き出すようになっていくのです。
 その中でも、堕落論の講義は、特に重要な意味を持つていました。
 何故ならば、今後、統一教会員として、統一教会の活動を行なう時の原点ともなる内容
であり、この内容によつて、統一教会員は思考を管理されるといっても過言ではないから
です。
 堕落論の内容は、
 人間が堕落した原因は、「神様の命令に従わなかった」ことにあり、そのために人間は
「原罪」を負うことになる。
 「原罪」は、決して人間の努力では取り除くことはできない。
 「原罪」を取り除くことができるのは、再臨のメシア、文鮮明だけである。
 「原罪」は「血統転換」でしか、取り除くことはできない。
 つまり、文鮮明のマッチングを受け、祝福と呼ばれる「合同結婚式」を受けなければな
らない、ということであり、祝福を得るためには、文鮮明の指示・命令に従わなければな
らないということです。
 この堕落論を受け入れることが重要であり、対象者には、この講義の後で初めて、文鮮
明と統一教会を明かします。
 対象者が、文鮮明と統一教会を受け入れると、次には、統一教会が作り上げた文鮮明の
美談の数々を一日の講義で語り、再臨のメシアにふさわしいイメージを植えつけていくの
です。また、文鮮明が展開している統一運動を表向きの内容で紹介して、文鮮明と統一教
会が崇高な目的を持つているかの印象を与えます。

 このように、対象者に不安や恐怖心を植えつけ情報を入れ替えて、対象者の心理を操作
することで、統一教会は、対象者の気持ちを自分たちの望む方向へと向かわせ、統一教会
の望む判断をさせていきます。
 そして、献金の話は、対象者の心が誘導できる状況、つまり、文鮮明と統一教会を完全
に受け入れて、文鮮明と統一教会を唯一絶対の存在として受けとめた状況になつた時に行
なわれるのです。
 場所は、ビデオセンターの中の講義室で、周りは全て統一教会員に囲まれているという
いわば軟禁ともいえる状況の中で行なわれます。
 つまり、統一教会員が総監視する中で、献金の説得は行なわれていきます。
 私も、そんな中で、I男講師に献金の説得をされました。
 もちろん、その日に献金を強要されるなどとは誰からも聞かされませんでした。
 講義室の中では、
 まず、万物復帰の講義を説かれ、復帰の道を行くには、神様の前に万物を捧げなければ
ならないことを説かれ、
 その万物は、万物の王者であるお金が最もよい。
 神様は、お金を一番に喜ばれる。
ことを強調されました。
 そして、人類の堕落から復帰の話を繰り返され、救いの道は、文鮮明と統一教会にしか
ないと断言されました。
 万物以下の人間が神様に近づくためには、神様の前に万物を捧げなければならないこと
を再び繰り返されて、献金の必要性を強調されました。
 献金を躊躇している私に、一千万円とか二千万円の巨額な金額を提示して、私の全財産
との比較を行ない、出来る範囲でいいからと、聖書の中の例え話を用いて、私に全額を献
金させるように心理操作していきました。
 それでも、全額を献金すると言わない私に最後の決断をさせるために、神様に聞いてみ
ると言つて一時的に席を外し、神に従わせるための心の準備を整えさせたのです。
 つまり、これまでに、統一教会が対象者に対して行なってきた情報の入れ替えが成功し
ていれば、まちがいなく対象者が献金を承諾するとの予測がついたからです。
 I男講師が決めてきた金額は、全財産の殆どともいえる四百万円でした。
 一千万円とかニ千万円に比べれば小さい額です。
 それでも、私にとつては、十五年間勤めてやっと貯めた大切なお金でした。
 私の心の中では、どう決断するかで迷いが生じていました。
 確かにその時の私は、文鮮明と統一教会を受け入れさせられていました。
 しかし、自分が本当に納得できるほど、文鮮明のこと、統一教会という組織とその目的
などが理解できていたわけではありません。
 全財産に近い金額を献金するなどということは考えられないことです。
 それなのに、献金を否定しようとすると、恐ろしいほどの不安や恐怖心がわいてきて、
私の献金を否定する気持ちにブレーキがかかるのです。
 突然、神様の命令に背いて堕落した人間始祖に生じた「原罪」のことが心の中に蘇つて
きました。まさに今、私も人間始祖と同じ過ちを犯そうとしてるという恐怖感でした。
 神様の命令は、献金として四百万円を捧げろ、ということでした。
 神様は、私が四百万円を献金しなければ、復帰の道を閉ざす、と言つているのでした。
 それは、目に見えない脅迫でした。
 私は、心理的に逃げ場のない状況へと追い込まれたのです。
 その時の私の状況は最悪でした。
 個室に長時間閉じこめられた状態で、じわじわと心理的に追い込まれ、疲労とストレス
もピークに達していました。
 しかも、相談できる外部の人間もいない。
 正常な判断力は低下していました。
 そんな中で、今度は、生命を捧げろと言つているわけではない、お金を出すだけで復帰
の道を歩くことができるのだ、迷うことはない、とI男講師に言われたのです。
 私は、この場から逃れたいためだけに、その言葉にうなづいていました。
 私の統一教会への献金は、このようにして統一教会に約束させられていきました。
 そして、すぐさま、次のような方法で、現金を集金されたのです。
 献金のお金は三日以内に現金で統一教会に納めなければなりませんでした。
 そのことで、生命保険の解約をめぐつて、N子さんと口論になりました。
 生命保険の解約に一週間の日にちがかかり、三日以内に納めることができなくなったこ
とが原因でした。
 N子さんには、神様に嘘をついたと罵られたのです。
 結局、N子さんが生命保険の担当者に確認を取ることで、その件は落ち着きました。
 しかし、銀行の定期預金の解約に関しては、統一教会が事前に用意した委任状に署名さ
せられ、N子さんに解約の手続きを委ねることを強制的に約束させられて、翌日には集金
されていきました。
 これらのことを普通の状態に戻つた今、もう一度考え直してみました。
 どのように考えても、私には、統一教会によつて仕組まれた中で、組織的に全財産を奪
い取られたとしか結論が出せません。
 献金とは、決して強要されるものではないし、ましてや、金額を提示されたり、脅かさ
れて、全財産を奪うようにして持つていかれるものではないと、私は考えています。

 また、このようにして、統一教会が、対象者から全財産を奪い取るのは、文鮮明への送
金のためもありますが、対象者の統一教会入会後の脱会を阻止するために、新しい生活の
支援となる基盤を剥奪しておくためなのです。家族や親族、友人との関係を完全に断ち切
らせるのもそのためです。
 献金後、統一教会は、さらに「献金式」を行ない、ブラザーサン・シスタームーンなど
のビデオを見せて、対象者のお金への執着を断ち切らせます。

 しかし、この段階でのマインド・コントロールは一時的なものにすぎません。
 そして、この一時的マインド・コント口1ルの効果が消えないうちに、統一教会は、対
象者に永続的マインド・コントロール行ない、統一教会員へと変貌させていくのです。
 その永続的マインド・コントロールを行なうプログラムが統一教会の教育プログラムな
のです。

3統一教会員へと変貌させるための教育プログラムについて。

 統一教会の教育プログラムは、
 対象者を一時的マインド・コントロールで文鮮明と統一教会を受け入れさせて、全財産
を奪つた状況から、さらに、文鮮明と統一教会のために全てを捨てさせ献身させることを
目的に組まれているものです。
 文鮮明と統一教会のために献身するということは、一生を文鮮明の奴隷として酷使され
ることを意味しますが、対象者にはいつさい本当のことは知らされません。
 また、一つの教育課程を終えて次の教育課程へ進めるときも、対象者への事前の説明は
ありません。全ては、統一教会の用意したプログラムに適応できる心理状態になつたと判
断された時点で、次の教育課程へと進められていくからです。

 私が受けさせられた教育プログラムも一つ一つをクリアさせられていく内容でした。
 ビデオ受講を終えた後は、
 1)スりーディズセミナー
 2)新生トレーニング
 3)実践トレーニング
 4)特別スリーディズセミナー
 5)ソウルスリーディズセミナー及び韓国フォーディズセミナー
の順番で参加させられていきました。

 統一教会の教育プログラムには次のような特徴がありました。
 1)新しい情報を対象者に納得させるために他人の判断を利用しやすい合宿形式をとる。
 2)今までの情報から隔離し孤立させるために、
  ●それまでの人間関係を断ち切らす。
  ●統一教会員との接触の機会を増やす。
  ●対象者どうしでの話はさせない。
  などの環境変化を行なう。
 3)新しい情報を植えつけるために、
  ●統一教会の主張を繰り返して、それを正しいと納得させる。
  ●常に主張者を権威者と位置づけることにより、文鮮明と統一教会を「絶対者」と意
   識づける。このための役割分担が決まつている。
  ●多数者の影響力を利用する。
  ●長時間にわたる集中的アプローチを行ないストレスを生じさせ、催眠効果を利用し
   て、判断を鈍らせる。
  ●教義の奥の深さを強調して、問題の解決を先送りする。
  ●また、わからない問題も実践させることで、わかると錯覚させて定着させる。
  ●自己否定、自己犠牲を強いる。
  ●告白させる。
 これらの内容は、セミナーの順番に従つて効果的に取り込まれており、全てのセミナー
を通過することで、統一教会の最終目的が達成されるようになっていました。
 教育プログラムを全て通過させられると、対象者は、総一教会にとって都合のよい判断
を自ら行ない、統一教会の意のままに行動してしまう「新しい人格」に変貌してしまうの
です。

 私の受けた教育プログラムにも、このような条件がそろつていました。
 まず、最初に受けさせられたのは、広島県可部で行なわれたスリーディズセミナーでし
た。日程は三泊三日で、中・四国ブロックから約三十名が参加させられました。
 セミナーは、午前六時の起床から午後十一時頃の就寝までの間、原理講論の講義を中心
に進められました。講義の合間にはスポーツやレクリエーションをさせられましたが、そ
の内容は全て統一教会によつて決められていました。
 セミナーの期間中は、五〜六人の班体制で行動させられました。
 食事をするのもスポーツやレクリエーションをするのも全て班ごとにさせられました。
また、一日のスケジュールが終了すると、必ず「感想文」を書かされ、一人ずつ班長面接
を受けさせられました。講義の内容に関する質問や統一教会に関する話は参加者どうしで
してはいけないことになっていて、必ず、講師か班長にさせられました。また、セミナー
ヘ参加することは家族や友人、会社には内緒にするように指示されました。セミナー期間
中の外部との電話連絡も自由にはできず、班長の許可が必要でした。また、自由にテレビ
や新聞を読むことも禁止されていて、セミナーの三日間は、外界から隔離されて、統一教
会員とだけしか接触のできない状況下におかれたのです。
 そして、原理講論の講義を集団の中で繰り返し受けさせられました。
 このセミナーでは、事前に霊的現象が起こりやすいなどといわれていましたが、二日め
の夜に暗くした部屋の中で、文鮮明の次男で事故死した文興進が統一教会員に伝えたとい
うメッセージの朗読が行なわれ、霊界の悲惨さを心にやきつけられ恐怖心を増幅させられ
ました。
 また、原理講論の内容を繰り返し聞かされるうちに、これが真実だという思いがだんだ
んと強まつていきました。
 そして、私の中の神様とメシアに対する情報が入れ替えられ、これまでのイメージとは
まつたく逆のものへと変わっていきました。
 その結果、人類を救えるのは再臨のメシア文鮮明しかいないという結論を導き出すよう
になつていました。
 それは、講義の内容からだけでなく、文鮮明と統一教会を絶対的存在として受け入れさ
せる環境を作るために、組織の中に上下関係をつくり、神に近いものと遠いものを区別し
て、神に近いものを権威づけることで、文鮮明を絶対的存在として意識づける工夫もされ
ていたからです。スタッフには、それを遂行するための役割分担が決められていました。
 統一教会は、対象者を自分たちの目的とする方向へ向かわせるために、さまざまな仕掛
けと働きかけを行ない、確実に対象者を次のステツプヘと送り込んでいくのです。
 スリーディズセミナーの目的は、対象者に「統一教会入会申込書」へ記入させて、統一
教会員としての出発を促すこと、「新生トレーニング」への参加を決断させること、「献
身」を参加者全員の前で誓わせることにありました。

 こうして、新生トレーニングヘと結びつけられていくのですが、もちろん、新生トレー
ニングの本当の目的は知らされません。また、宿泊の研修になるということも事前には知
らされません。
 新生トレーニングは一ヵ月単位で進められ、二ヵ月の受講が基本となります。
 場所は、統一教会の岡山教会で、月曜日〜金曜日の午後七時三十分から二時間行なわれ
ました。私は、通いでトレーニングに参加していましたが、講義終了後はすぐに帰れるわ
けではなく、心情日誌を書かされ、チームマザーの面談が一人ずつ行なわれ、全員で夕食
をとりながら「神体験」などを発表させられるため、教会を出られるのは午後十一時過ぎ
でした。自分の部屋へ帰つてからも「蕩減条件」をしていると就寝は翌日になりました。
 また、土曜日と日曜日も統一教会に管理されるようになりました。
 土曜日の午前中は、自分の身の回りのことに使わせてもらえましたが、午後からは、教
会へ呼ばれて、班長のもとで原理講論の勉強をさせられたり、統一教会関連のビデオを見
せられました。土曜日の夜は、教会へ泊り、翌日曜日の午前五時から始まる「参拝敬礼」
に参加させられ、続いて、午前十時からの「聖日礼拝」に参加させられました。その後は
教会で、原理講論の講義を受けたり、ビデオを見たりして過ごさせられました。
 このため、急激に自分の時間がなくなり、交友関係も統一教会員だけとなりました。
 外部の情報から隔離された状況へ取り込まれていつたのです。
 このような状況の中で、原理講論の内容はもちろん、今後の活動の基盤ともなる「人材
復帰」と「万物復帰」の内容を徹底して教え込まれました。
 また、自己否定、自己犠牲を強いられる中で、「イサク献祭」と称する自分の一番大切
なものも捨てさせられました。
 そして、統一教会に反対する団体のあることも「反原理ビデオ」で教えられ、心理的に
自分の行き場所を奪われていきました。
 統一教会にしか、自分の居られる場所はありませんでした。
 そのような心境の中、新生トレーニングの最後の日に、ボランティアと称した「ハンカ
チ売り」をさせられました。
 教義の内容をすぐに実践させられると、人は自分のやつたことを正しいと感じてしまい
ます。
 それは、次の教育プログラムである実践トレーニングヘ、抵抗なく結びつけていくため
のテクニックでもあり、統一教会員としての活動を受け入れさせていくための予備訓練で
もありました。

 実践トレーニングも一ヵ月単位で行なわれましたが、人によつて受ける期間が異なって
いました。私は八ヵ月間、実践トレーニングを受けさせられました。
 実践トレーニングでは、統一教会員の活動の基盤である「伝道活動」と「経済活動」の
実践を徹底してさせられました。
 「伝道活動」とは、信者獲得のことで、組織の労働力を確保するための活動でした。
 「経済活動」とは、財産剥奪のことで、組織の資金を調達するための活動でした。
 どちらも、文鮮明の個人的野望を実現するために使われるものです。
 もちろん、トレーニング生には、本当のことはいつさい伝えられません。
 人類の救いのために、やらなければならない統一教会員の義務として教えられます。
 実践トレーニングは、統一教会の岡山教会に宿泊しながら、今度は実践センターと呼ば
れる場所を拠点にして行なわれました。
 月曜日〜土曜日の午後七時三十分から午後十時位までと日曜日の聖日礼拝の後は、ここ
でトレーニングを受けさせられました。
 実践トレーニングでは、実績を出すために「伝道目標数」と「献金目標数」を決めさせ
られ、基台というグループを組まされて活動させられました。
 活動に関する指示・命令は、実践トレーニングの部長から出され、基台長が基台員をま
とめて組織的に行なうというものでした。
 こうして、実践させることで、統一教会の価値観を身体に覚えさせていくのです。
 実践トレーニングからは、講義の方は極端に少なくなりますが、その講義も統一教会の
活動内容を正当化するために行なわれます。
 その内容は、人間は祝福を受けなければ救われない、人生の目的は文鮮明に会うことで
ある、祝福を受けられる条件は公式七年路程を歩み霊の子を三名復帰することであるとい
うものでした。
 つまり、人間は文鮮明に出会い、文鮮明と一緒に公式七年路程といわれる三年六ヵ月の
万物復帰と三年六ヵ月の人材復帰の道を歩き、文鮮明の望む額のお金を集めて、三人の新
しい統一教会員を獲得できなければ、祝福による血統転換も救いもないということです。
 実践トレーニングの目的は、統一教会にとつて支配しやすい人格、つまり、統一教会の
意のままに行動する人格をつくりあげることにあります。
 そして、その後は、それぞれの立場に応じた部署へと配属させられていきます。
 私は、青年実践部という勤労青年ばかりで構成された部署へ配属させられました。
 そこでは、活動を続けながら、今度は、「献身」に向けての訓練をさせられます。
 「献身」とは、身も心も文鮮明に捧げ、文鮮明の奴隷にさせられることを意味します。
 ここには、「献身」をさせるための教育プログラムが用意されていました。
 それは、特別スリーディズセミナーとソウルスリーディズセミナー又は韓国フォーディ
ズセミナーと呼ばれていたものです。
 特別スリーディズセミナーでは、献身しないと祝福は与えられないこと、祝福は他人か
ら奪つてでも受けなければならないことを徹底して教えられ、「献身」しなければという
気持ちにさせられていきます。
 ソウルスリーディズセミナー、韓国フォーディズセミナーでは、実際に文鮮明の足跡を
辿るために韓国へ行かされ、韓国の先生方による原理講論の講義を受けさせられて、文鮮
明の美談で感動を増幅させられ、最後の日には睡眠時間も二時間程度という状況の中で、
第一聖地まで登山させられて、文鮮明に向けての「献身宣言」をさせられます。

 これが、統一教会の用意した教育プログラムのしめくくりです。

 この時から統一教会員は、文鮮明の絶対服従者となり、文鮮明のもとから心身ともに逃
れられなくなるのです。

4統一教会の活動について。

 統一教会の活動には、大きく分けて「伝道活動」と「経済活動」の二つがあります。
 これは、表向きの活動分類であって、本当は、文鮮明の個人的野望を実現するために必
要な労働力とそれにかかる莫大な費用を調達しているにすぎません。
 また、労働力として獲得した信者は、マインド・コントロールで人格を変えて、この活
動に参加させて一生酷使します。
 しかも、これらの活動のやり方は、反社会的で違法ともいえるものばかりです。
 それぞれの活動がどんな方法で行なわれるのかを、私の体験からまとめてみたいと思い
ます。

1伝道活動について。
 伝道活動には、「路傍伝道」「訪問伝道」「講演会伝道」がありました。
 どの手段においても、その目的は、対象者をビデオセンターに連れ込むことです。
 そして、ビデオセンターに入会させることです。
 勧誘の段階で、対象者には、統一教会の名前を絶対に言つてはならないことになってい
ました。
 「路傍伝道」と「訪問伝道」は、アンケート調査で、相手の心を開いていき、信頼関係
を築いてから、ビデオセンターヘ誘うというやり方を指導されました。
 また、直接ビデオセンターヘ来てくれそうもない人に対しては、結婚講座、開運講座、
国際情勢講座などへ有料で誘い、そこからビデオセンターヘ誘うというやり方を指示され
ました。
 すべては、アベルと呼ばれる上司的立場の統一教会員から指示が出され、個人で伝道し
ないというのが決まりでした。
 また、伝道活動を躊躇すると、アベルから、「あなたが今何もしなければ、霊界で先祖
たちから殴る蹴るの暴行を受ける」と脅されました。
 アンケートがとれると、アベルに報告させられます。
 アベルは、そのアンケートの内容と話のやりとりから、人材選別を行ない、統一教会員
として教育できそうな人物を選びます。
 統一教会員として教育できそうな人物の条件は、
 1)霊的なものに関心のある人
 2)公的意識の高い人
 3)時間に余裕のある人
 4)一人暮らしの人
 5)お金を持っている人
の五項目のうち何項目かを満たす人でした。
 対象者が決まると、アベルの命令で、すぐに手紙を書かされました。
 手紙は、対象者の状況に合わせての文例が用意されていて、その文例を参考にして書く
ように指示されました。
 また、対象者一人一人に「伝道記録」をつけていくことも命じられ、ニ回めのアプロー
チも手紙か訪問で三日以内にすることを指示されました。
 こうして、一人の人に対して、最低十回はアプローチすることを命じられました。
 そして、対象者をビデオセンターに連れ込むことに成功すると、今度は、ビデオセンタ
ーヘ入会させるためのテクニックをあれこれ使わせられました。
 対象者への賛美・称賛やお茶やお菓子でのもてなしなどです。
 また、ビデオセンターでの説得も自由にできるわけではなく、ビデオセンターのスタッ
フの指示に従い、説得はビデオセンターのスタッフが行ない、スタッフを権威づけして、
対象者に説得を受け入れさせるためのフォ口ーをさせられました。
 統一教会の伝道、つまり信者獲得は組織として行なっているもので、個人が勝手な方法
で伝道をすることは許されていませんでした。

 これらの経験上から、統一教会の伝道方法が反社会的で違法と思える点は、
 1)統一教会の伝道を、統一教会の名前も文鮮明の名前もその目的も隠し、全く違う名前
  と全く異なる目的を対象者に抱かせる方法で行なっていること。
  勧誘される側が、正しい情報のもとに正しい判断を行なうための公平さがそこには存
  在せず、自分の意思で入会を決断できる状況からは程遠いこと。
 2)文鮮明と統一教会を明かす前に、それを受け入れなければならない心理状態をつくり
  あげて、統一教会の教義内容を一方的に教え込み、その上で、統一教会への入会を決
  断させていること。
  この過程の中には、入会させられる側の選択の余地が全く存在せず、自分で自由に選
  び決断できる権利が剥奪されているということ。
 3)統一教会員へと変貌させていく教育プログラムによるマインド・コント口ールを、対
  象者の人生にとつて非常に大切なことであるにもかかわらず、本人の全く知らないと
  ころで、しかも文鮮明の奴隷にするという統一教会の一方的な目的のために、勝手に
  行なうのは人道的に許されるべきものではないということ。
の三点です。

2経済活動について。
 経済活動には、「訪問販売」「展示会販売」があり、個人の財産を脅かすという点では
「献金」も経済活動の一種であろうと思われます。
 どの手段においても、その目的は、対象者に全財産を出させることにあります。
 その目的達成のためには、一人の対象者に対して数回のアプローチを行なうこともあり
ます。
 対象者には、統一教会の名前を絶対に言つてはならないことになっていました。
 「訪問販売」は、ボランティアを装つたもので、新生トレーニングのときにさせられた
親善会のハンカチ売りなどです。
 三枚一セットのハンカチを二千円で販売させられるのです。
 訪問販売テクニックの指導もありました。
 また、決められた時間にアベルヘ電話での売り上げを報告させられ、売り上げがわるい
と、昼食抜きとか祈祷とかを指示されました。高層マンションなどでは、エレベーターを
使わず階段を走つて上がることも指示されました。
 ハンカチ売りの売上は、その中から昼食代や交通費などを引いた残りをアベルが集金し
ました。
 「展示会販売」は、統一教会ではブルー展といわれていたもので、統一教会系企業の商
品をあらかじめリストアップして絞り込んだ対象者だけを招待して、高額な商品を売りつ
けるというやり方です。
 「展示会販売」には、クリスチャン・ベルナールの宝石や毛皮を売りつける「CB展」
丸扇の着物を売りつける「呉服展」、アート創和の絵画を売りつける「絵画展」、宝翔の
印鑑や数珠や弥勒像や仏壇を売りつける「宗具展」、一和の高麗人参茶や健康器具や健康
食品そして男女美の化粧品を売りつける「ハッピー・フェア」がありました。
 「展示会販売」へは、商品を売りつけられそうな人をリストアップさせられ、アベルと
の面談の中で、アプローチ方法と目標金額が設定されて、電話や訪問による動員をさせら
れます。
 展示会へ誘うときは、必ず次の五項目を伝えることになつていました。
 1)招待制であること
 2)二時間位かかること
 3)コンサルタントがつくこと
 4)私も買つたということ
 5)あなたも買ったらいいねということ
 しかし、統一教会主催であることは絶対に言つてはならないと指示されました。
 そして、展示会の当日は、対象者とは会場以外の場所で待ち合わせて、しっかりと信頼
関係を築いてから会場に入ることを指示されました。
 受付を済ませても、勝手に会場を案内することは許されず、必ず、対象者をラウンジで
待たせて、タワー室と呼ばれる司令室にいって、タワー長と呼ばれる責任者に報告し、新
たな目標額を設定されて、コンサルタントとともに対象者を迎えに行き、コンサルタント
と二人で対象者を取り囲む格好で会場内を案内し、販売の説得を始めます。
 このときもコンサルタントが販売の説得を行ない、紹介者は、コンサルタントを権威づ
けして、対象者に商品を購入させるためのフォローをさせられます。
 そして、商品を購入させられた対象者は、ビデオセンターヘ入会させられる場合もあり
他の統一教会員と同じ運命をたどらされます。
 統一教会の販売、つまり財産剥奪も組織として行なっているもので、個人が勝手な方法
で販売を行なうことは許されていませんでした。

 これらの経験上から、統一教会の販売方法が反社会的で違法と思える点は、
 1)統一教会の名前を隠して、統一教会系企業の商品を売りつけること。
  これは、私が活動させられた親善会のハンカチ売りや展示会販売だけでなく、他にも
  様々な商品をダミーの会社名で販売していることにも関連します。
  一番の問題は、その売上金が全て文鮮明のもとへ送金され、文鮮明の個人的野望を実
  現するためだけに使われていることです。
  特に、表向きはボランティアと称して行なう親善会のハンカチ売りや募金活動などは
  世間を欺いたやり方であり、協力してくれた方の気持ちを無にする行為であること。
  また、展示会販売のやり方については、対象者と販売する金額などをあらかじめ決め
  た上で、統一教会員だけの特殊な環境である会場に連れ込み、軟禁にも近い状況の中
  で、コンサルタント(トーカー)を中心に長時間にわたる説得を行ない、賛美や称賛
  などで対象者の気持ちを変えて、目標額の商品を売りつけるという、統一教会が、入
  会や献金を決断させるときに使うやり方を応用したもので、個人の判断力を狂わせて
  高額商品を買わせるというテクニックを用いていること。
  また、「宗具展」といわれる販売方法は、先祖のたたりで不幸になる、購入すれば不
  幸から免れるなどと、人の不幸や不安につけこみ、高額な数珠や印鑑などを買わせる
  霊感商法の手法をそのまま応用したやり方であること。
  どの方法にしても、統一教会の販売活動は日本の全国民をターゲットに繰り広げられ
  ているもので、その目的は、サタンに奪われた神のものを全て奪い返すことと統一教
  会員は教えられ、全ての人から全財産を剥奪するために、全国展開されている活動で
  あるということ。
 2)統一教会の販売活動は、その本当の目的を知らされず、人類の救いのためと思い込ま
  された統一教会員が、統一教会にその純粋な気持ちを利用されてさせられているもの
  であるということ。
の二点です。

 次に、この裁判で、統一教会側の証人として、I男さんとN子さんの二名の証言が取り
上げられましたが、私自身は、二人とも統一教会の被害者であると思つていますし、今も
なお、統一教会のマインド・コントロールから解放されず、統一教会に支配された状況下
において証言させられたと思っています。
 その意味から、二人の証言には真実を語つていると思える部分はありません。
 それは、二人の証言の内容に一貫性がないからです。
 しかし、それも無理のないことだと思います。
 私が、統一教会を脱会して、牧師さんと話しているときにも、ちょうど同じような現象
が起きたからです。
 統一教会の中で言われたことをそのまま伝えている段階で、相手に深く追求された時に
起こりました。
 自分のしやべつていることに一貫性がなくなってしまうのです。
 その結果、与えられているメッセージを繰り返ししやべるだけとなってしまいます。
 それこそが、統一教会のマインド・コントロールを受けている証しでした。
 二人の証言に対する反論は、別にまとめて提出させていただいていますが、その全ての
内容に対する反論内容をここで述べていくとなると膨大な量になつてしまいます。
 今回の陳述書は、二人の証言への反論部分も含めてまとめていますので、今まで述べて
きた中でそれをくみ取つていただければ幸いに思います。

 最後に、裁判官の方にお願いしたいことを申し上げたいと思います。
 それは、私がこの裁判で明らかにしたい四つの点についての裏付けともなる次の二つの
ことについて、専門家の方々の意見を聞いていただく時間をぜひとつていただきたいとい
うことです。
 まず、一つめは、この裁判の争点でもあるマインド・コント口ールについてです。
 私が自分の経験から述べてきたことの中に、私の主張する「統一教会がマインド・コン
トロールの技法を用いている」という事実があるか否か。
 また、マインド・コント口ールとはいかなるものか。
 これらの点について、マインド・コントロールを専門的に研究しておられる心理学者の
方からの検証をお願いしたいのです。
 それは、全員が、マインド・コントロールについての共通認識を持つためにも必要なこ
とであると思っています。
 そして、二つめは、統一教会の本質についてです。
 私は「統一教会は裏と表の二面性を持つ組織であり、統一教会員には表の善なる顔で接
し、その実、裏の目的のために統一教会員を酷使している」と自分の経験上からそう感じ
ていますが、それが、私の思い込みであるのか否か。
 文鮮明とはいかなる人物であるのか。
 文鮮明を教祖とする統一教会とはどのような組織であるのか。
 文鮮明と統一教会の真の目的とは何か。
 これらの点についても、カルト問題に詳しい宗教学者やジャーナリストの方々からの検
証をお願いしたいのです。
 それらはまた、この統一教会問題の核心に触れることでもあり、統一教会問題の全体像
を浮き彫りにする意味においても重要なことであると思っています。
 もし、裁判官の方々が、この統一教会問題を真摯に受けとめてくださり、統一教会がも
たらす多大な被害について心を痛めてくださるのであれば、これ以上、統一教会による被
害を社会に蔓延させないためにも、この問題を専門的に分析した上で、結論を出してくだ
さいますことを心からお願い申し上げます。
                                     以 上

    一九九八年十月十日

                             B         子
岡 山 地 方 裁 判 所  御中

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