「青春を返せ裁判」

99.5.6 控訴人側の準備書面

平成一〇年(ネ)第一五八号
             控    訴    人  A        男
             被  控  訴  人  世界基督教統一神霊協会
                                  外
  平成一一年五月六日

             被控訴人代理人弁護士  河  田  英  正

 広島高等裁判所岡山支部 御 中

            準   備   書   面

一、平成一〇年八月二八日付控訴人準備書面のまとめでも触れたとおり、原判
 決は、独断で「マインドコントロール」の誤った評価をし、原告の意思決定
 の実態・変容の過程をみつめようとせず、この点に関する一切の原告側の立
 証を認めなかった。控訴審において、控訴人は、改めてこの立証のために、
 心理学者である西田証人、宗教学者である浅見証人、ジャーナリストである
 有田証人の申請をしている。被控訴人統一協会をめぐる問題は単に本件岡山
 だけで発生しているのではない。全国各地で勧誘から献金・脱会をめぐり同
 様の問題が統一的な手法によって多く引き起こされているのである。ここに、
 被控訴人統一協会の一体的で構造的な問題が存在しているのである。控訴人
 は、この統一協会による控訴人に対する控訴人の主張する人権侵害の内容は、
 単に控訴人個別の問題ではなく、構造的にひき起こされているものであって、
 被控訴人統一協会の勧誘から脱会に至るまでの一体的な違法性を主張してい
 るのである。
二、被控訴人は、西田証人について同人が正式な論文発表前に証言した「これ
 は、仮説である。」という発言をとらえ、西田証人は不要であると主張する。
 仮説であるということは、科学的でないということではない。これを同一の
 ものとしてとらえて、西田証人の採用に反対するのは誤っている。その後、
 科学者として明確にその研究の成果を論文として発表し、学会においても評
 価されているのである。また、被控訴人は西田氏の研究は、訴訟を提起して
 いる控訴人らの主張に基づいているとして批判している。西田氏の研究の契
 機が元統一協会員を対象にしてなされた調査であったことは何ら同人の研究
 を減殺するものではない。まさに、本件問題に直接関係する研究と言うべき
 ものである。原告らの単なる主張に基づいてなされたものではなく、丹念な
 膨大な量の聞き取り調査などによって集められて分析された結果である。こ
 のような控訴人の主張と直接的に関係のある証人を採用しないことは明白に
 審理不尽となる。
  控訴人は、例えば原審でも認められた被控訴人の姿をかくした勧誘が控訴
 人の意思決定にどのように作用したか、そのことに心理学的にどのような意
 味があるのか、個人の人格を本人が抵抗できないまま変えられてしまうこと
 がありうるのか、それはどんな場合か、これらのことをまず明らかにしよう
 というのである。従って、本件証人は、控訴人にとって不可欠である。
  既に主張しているところであるが、モリコリール事件において一九八八年
 カリフォルニア州最高裁は一審、ニ審では採用されなかった心理学者マーガ
 レットシンガー、社会学者サミュエルベンソンらの統一協会の洗練された教
 化技術は原告らがその勧誘の際詐欺をされて、それから独立した自由な意思
 や自由な判断をすることはできなくなっていたとの証言を採用して、原告ら
 が自由な意思で決定する能力を奪われていたとの利断をしている。さらに、
 被控訴人が西田証人を批判する意味で引用している東大教授島薗進氏は(被
 控訴人準備書面二、二九頁)、破壊的カルトの問題をマインドコントロール
 だけで説明することに疑問を呈して、全面的環境支配をもたらす教義への批
 判を適格な方法で行われる必要性を説いているのである。統一協会の特殊な
 教義が個々人に対する集団による全面的環境支配を支えていると精神医学者
 として断定している。このことは、西田証人の採用を否定する根拠にはなら
 ない。心理学者とは違った方向ではあるが、心の操作の存在であるという内
 容の結論は同様であるからである。脅迫とか物理的強制力を利用しなくても
 強制的な説得は可能であるというものである。
三、被控訴人は、浅見証人は、「統一協会の信者が拉致・監禁されている現場
 に出向き、不当な改宗活動に関与したり、統一協会を誹謗する講演・執筆活
 動を操り返し行い…」などと主張して証人としての採用に反対している。被
 控訴人を擁護する証人であればいいが、これに批判的な意見を述べるであろ
 う証人の採用には絶対反対てあるというにすきない。同人は、スティーブハ
 ッサン著「マインドコントロールの恐怖」(恒友出版)の訳者である。これ
 らのアメリカにおける議論についても詳しい。被控訴人も認めているとおり、
 同人は統一協会員やその親などから統一協会のことで様々な相談にも応じて
 きた。そのため、被控訴人の実態についても詳しくそのために統一協会をめ
 ぐる出版も多い。しかし、被控訴人が主張するように決して不当な改宗活動
 には一切関与していない。被控訴人の内部においては同人のことを最悪のサ
 タンの指導者として信者に教育し、絶対に接触してはならないとしている。
 悪意をもって証人採用に反対するのは、被控訴人の活動実態に身近に接し、
 反対の意見を持つ者を全て排除しようとする異様な被控訴人の態度の現れで
 ある。
  同人は、東京神学大学博士課程を終了後、ハーハード大学神学部博士課程
 を卒業して、長い間、東北学院大学教授(神学博士)として主に旧約聖書学
 の分野で研究をしてきていた。宗教学者の立場から信教の自由などについて
 も発言をしてきている。宗教学者であり、かつ統一協会の実態についても詳
 しく、現実に多くの統一協会信者とも接してきている者で、統一協会が信教
 の自由を侵害し、人格的破壊などの被害をもたらしていることを同人の証言
 によって証明する。控訴人の置かれてきた実態を立証するには、同証人が最
 適であると考える。
四、被控訴人は、有田証人の採用に反対する。被控訴人は、有田の統一協会に
 関する執筆活動などはこれを認めている。但し、それを単に一方的である、
 客観性に欠けると主張しているにすきない。被控訴人は自らに都合の悪いこ
 とは客観性に乏しいとしているだけである。ジャーナリストとして現に身を
 挺して実地に調査し、取材を通して実態を明らかにしてきている。統一協会
 に関してすでに数限りない著作があるが、そのどれをとっても名誉毀損に問
 われるとか、その内容に関して正式に批判を受けたことはない。
  被控訴人の実態をあきらかにしない限り、控訴人が本件のような裁判を提
 起したのか、統一協会に所属していたときの生活実態、控訴人が関与した霊
 感商法の実態などについて明らかにすることはできず、同人の証人採用につ
 いても不可欠である。
五、証人らの尋問時間について
  控訴人は以上述べたとおり、三名の証人採用は、控訴人の立証にとっていず
 れも不可欠であると考える。しかし、三名の尋問がその内容からいってかなり
 の時間を要することになるのも事実てあり、採用いたたけるならば、申請の時
 間をそれぞれ半分とする努力をしたい。すなわち、浅見、西田の主尋問を各一
 時間、有田を三〇分としたい。浅見氏からは、信教の自由と統一協会の実態に
 ついてを中心として、西田氏からはマインドコントロールと統一協会の諸活動
 の信者の意思決定に及ぼす影響について、有田氏からは統一協会の組織及び活
 動実態についてを中心として証言してもらうこととし、できる限り文献などを
 事前に提出するなどして尋問時間の短縮を図りたい。なお、既に提出している
 尋問事項は右観点から整理されているものである。
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