「青春を返せ裁判」

98.10.30 控訴人(原告)A男の控訴理由書(その二)

平成一〇年(ネ)第一五八号 

          控  訴  人       A         男 
          被 控 訴 人       世界基督教統一神霊協会 
                                 外
  平成一〇年一〇月三〇日

         控訴人代理人弁護士      河  田  英  正 

  広島高等裁判所岡山支部    御中

       控訴理由書(その二)
第一、原判決の基本的な考え方と判断
  一、 被控訴人統一協会の指揮監督関係について
     「被告法人の信者が被告法人と別に組織を構成し、それら信者組
    織の意思決定に従って宗教活動又はこれに付随する布教活動を行う
    場合であっても、被告法人とその信者組織とは、同じ目的のために
    立し、宗教法人あっての信者組織であり、当該宗教法人の存立目的
    を達成するのに必要な限度と方法とにおいて、当該宗教法人が信者
    組織を規律することが当然予定されているものとみるべきであるか
    ら、前記認定事実によれば、被告法人においても信者組織に対する
    実質的な指揮監督関係があるものと認めるのが相当である。」(判
    決書一一六頁)
     被控訴人統一協会が本件訴訟になって突如として信者組織の存在
    を主張してきたが(もっとも岡山においては一定レベル以上の人で
    ないと知らなかったかもしれないという程度のもの)、例えこのよ
    うに別に信者組織が存在していたとしても信者に対して被控訴人統
    一協会は指揮監督関係にあるとした。これは、高松地裁判決(甲第
    一〇六号証)、奈良地裁判決(甲第一一三号証)、東京地裁判決甲
    第一二一号証)等で示された判断をより流れを確かなものとしたも
    のであるといえる。
  二、 宗教関連事件に対する基本的立場
     「宗教団体が当該宗教を広めるために非信者を勧誘、教化する布
    教行為、勧誘、教化された信者を各種宗教活動に従事させたり、当
    該信者から献金を勧誘する行為は、それらが社会的に正当な目的に
    基づいており、その方法、結果が社会通念に照らして相当と認めら
    れる限り、正当な宗教活動の範囲内にあるものと認めるのが相当で
    ある。」
     「しかしながら、宗教団体の行う右各行為が、その目的、方法、
    結果からみて社会的に相当な範囲を逸脱していると認められる場合
    は、民法が規定する不法行為法との関連において、違法の評価を受
    けるものといわなければならない。」(判決書一五五頁)
     という当然の一般論を述べている。しかし、控訴人らは本件裁判
    で宗教の教義、信仰の内容の当否を直接問うているのではないのに
    あえて「宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項につい
    ては、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、
    これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではな
    く、一切の審判権を有しない」(同一五五頁)と判断に消極的立場
    を明らかにしている。これ自体は、当否を問われるべき立場ではな
    いが、あえてこのようなことをつけ加えているところに本件の判断
    を避けようとする意図が見られる。論点を混同しているのではない
    かと思われる。
  三、 右立場に立った上で、控訴人が「最初に勧誘を受けてから棄教・
    脱会に至るまでに約一年五ケ月の期間を要しているが、その間、被
    告法人の教義、信仰を受容する過程において、その各段階毎に自ら
    真摯に思い悩んだ末に、自発的に宗教的な意思決定をしているとい
    うほかはない。」(同一六〇頁)として宗教団体であることをあえ
    て秘して、しかも宗教団体ではないと積極的に虚偽の事実を告げて
    ビデオセンター等に誘い、占い師をを装ったりしながら組織的に役
    割を分担して控訴人を恐怖に陥れて献金を決断させたことも「自発
    的に宗教的な意思決定」であると判断している。被控訴人統一協会
    の目的・方法・結果について一つ一つ具体的に把握し吟味する判断
    を避けている。
  四、 マインドコントロールを「それ自体多義的な概念である」「一定
    の行為を繰り返し積み重ねることにより相手に一定の思想を植え付
    けることをいう」と定義している。三項の「自発的に宗教的な意思
    決定」にどのように影響を及ぼし、それぞれの段階に控訴人の主観
    的な意識状況(例えば恐怖感など)はどのようなものであったのか
    右マインドコントロールの独善的定義をするのみでその作用につい
    て触れていない。宗教学者、心理学者らの意見を聴くことをも拒否
    したうえでの判断であった。
  五、 「宗教活動に伴う献金勧誘行為にあたって、多少なりとも吉凶禍
    福や先祖の因縁話・霊界の話等が説かれる場合が多く、そのような
    言を用いて献金を求める行為一般を違法であると断じることは宗教
    に対する過度の干渉となるので許されないものと解すべき」(同一
    六六頁)   としている。
     控訴人に対してなされたニセ占い師から組織的、目的的になされ
    た具体的な献金を迫る因縁トークを認定しながらも、これらは「社
    会常識に反するものとまでは認められない」としている。原審は宗
    教には嘘や脅しはつきものとでも評価する立場であろうか。
第二、 本件裁判で求めた判断
  一、 控訴人は、被控訴人統一協会の勧誘・教化及びその過程における
    控訴人への違法行為の指示等が控訴人の自由な意思決定を阻害し、
    献金・物品購入などの財産的損害と反社会的活動に従事することに
    なって貴重な人生の一時期を過ごさざるをえなかったことによる多
    大の精神的損害を被ったとして、損害賠償請求を求めている。私た
    ちはこの裁判を「青春を返せ裁判」と呼んできた。
  二、 右の事実を明らかにするために
   1、 被控訴人統一協会の活動実態
   2、 被控訴人統一協会の組織及びその指揮命令関係(信者の具体的
      な活動内容)
   3、 被控訴人統一協会の一体的なマインドコントロ−ルシステムと
      その実情
   4、 被控訴人統一協会の及ぼしている被害の実態を明らかにし、
   5、 個別的には
    1) 控訴人に対する勧誘の経過
    2) 入会を決意するに至った経過
    3) 入会後の活動と被告統一協会による教化の経過
    4) 献金に至る経過
    5) 脱会を決意するに至った経過
    等々を主張し、これらを原審で明らかにしてきた。
  三、 控訴人は、いうまでもなく被控訴人統一協会の教理そのものの是
    非を問うているのではない。控訴人の立場は信者の自由は人間にと
    って根源的なものであり、最も大切にされるべき人権の一つである
    というものである。教理が控訴人の恐怖心を生じさせるためにどの
    ように影響しているかを検討する限りにおいて、教理の内容(当該
    宗教の教義・信仰の内容)にも触れざるをえないが、その当否その
    ものの判断を本件裁判に求めているわけではない。従って、本件が
    「宗教」に関連しているからといって何ら判断を避けることがあっ
    てはならないのである。また、被控訴人統一協会の控訴人に対する
    働きかけの意味を明らかにし、その目的を立証するためには、被控
    訴人統一協会の異常なる集金システムの全体的実態が明らかになら
    ない限り、これらを立証することは難しく、個別被害とともに総論
    的にこれらの立証をもしてきた。
  四、 全国的な被害の広まりと深刻化
   1、 昭和六二年四月、岡山において霊感商法被害対策弁護団が結成
     された。この弁護団の目的は、当時被控訴人統一協会が組織的に
     全国的に展開しその被害が多発していた壺や多宝塔を法外な金額
     で販売するといういわゆる霊感商法の被害を救済するというもの
     であった。そのころ弁護団に被害相談にきた人は約七〇名でその
     被害額は一億五、〇〇〇万円を超えていました。全国的には昭和
     六二年から平成七年一二月までに弁護士及び消費者センターなど
     に相談があったものは一七、二八九件総被害額は六五〇億三一六
     九万円に及んでいる。霊感商法が刑事責任を問われたり、合同結
     婚の婚姻無効判決や審判が多数出されるなどの問題を起こしてい
     る。
      被害救済の活動をすすめていくうちに多くの被害者の人の声を
     聞くことができると同時に統一協会側の販売員などととして加害
     者の立場にたっていた人々と接する機会が多くなっていった。統
     一協会にかつていたが、肉体的にも精神的にもボロボロになって
     脱会し、元の自分の生活をとり戻し、自らの人格の回復を求める
     べく統一協会との財産的被害の回復などを求めて交渉するという
     相談であった。
   2、 脱会した元統一協会員の人達は本当に素直であり、自らの人生
     を真剣に考えて生きてきた人達ばかりであった。そのような人達
     が自ら気づかないうちに統一協会の会員となり、やがては疑念を
     抱かないで霊感商法の加害者と仕立てあげられていく事実はこの
     被害の実態に真剣に耳を傾け、被控訴人組織の現実をみつめなけ
     れば部外者にとっては理解しがたい現実である。脱会して統一協
     会に関する外部からの情報に触れた時、この人達は騙されていた
     ことに気づき、不法な行為に関与してきたことに対して深い自責
     の念にさいなまされ、統一協会の責任を追及し、その違法性を明
     らかにしたいと考えるに至るのである。このような訴訟は全国で
     一五〇名を超える原告によってなされている現状にある。
   3、 統一協会がその信者をして極めて巧妙且つ計画的で組織的な手
     段による物品販売、献金強要、借入名目の金員領得をさせている
     全国的な実態とその経緯、組織的背景を立証してきた。これらに
     よって、被控訴人統一協会がその教義や文鮮明の指示に基づいて
     「万物復帰」の実践として違法な資金獲得を組織的になしてきた
     ものであり、その手口は、壺、多宝塔を因縁話などを媒介として
     不当に高額で売りつけるいいわゆる「霊感商法」として激しい社
     会的批判を浴びたものであった。さらに、裏と表の二重の会計構
     造を持ち、ウラ金つくりのために信者を働かせてきている実態が
     ある。これらの実態を明らかにし、被控訴人統一協会がその教義・
     信仰の内容に関わらず、実在的な組織体として違法な資金集めな
     ど反社会的な行動を繰り返してきている団体であることをも立証
     してきた。
   4、 さらに、被控訴人統一協会がその資金を安定的に捻出するため
     に、組織的に株式会社ハッピーワールド及び「世界のしあわせ」
     各社その傘下の末端販売会社を組織し、韓国の統一協会企業であ
     る一信石材や一和製薬から壺や人参濃縮液等を輸入して信者に販
     売させてきた実態をも立証してきた。これらの事実は、被控訴人
     統一協会のなかにおいて控訴人に対してなされた行為の「目的・
     方法・結果」において社会的相当性があったか否かを判断するう
     えで極めて重要な事実関係となる。この事実を明確に認定するこ
     とが、控訴人に対する具体的働きかけの目的を明らかにし、その
     及ぼす結果を予測して評価できるものとなり、その手段の違法性
     を明確にしている。
  五、 マインドコントロールと勧誘行為等の違法性について
   1、 控訴人は、被控訴人統一協会の組織的な勧誘方法としてあえて
     正体とその目的を隠してビデオセンターに虚偽の事実を告げて勧
     誘し、その後の様々の教化活動を行って違法な霊感商法さえも遂
     行できる人格をつくりあげる目的を持って接近して、自己の自由
     な意思に基づいて社会生活を営む権利を侵害したうえに、詐欺・
     脅迫などの違法行為さえも地上天国をつくるためなどと合理化し、
     多額の献金を強いて、合同結婚という婚姻の自由さえ奪われる破
     壊された人格をつくりあげていく一連の総体としての行為の違法
     性を問うている。もちろん、個々の行為を個別に判断しても詐欺・
     脅迫・恐喝等の不法行為の該当することを否定するものではない。
     このことについては、控訴人本人尋問、各種マニュアルの存在等
     でも明らかになってきている。
   2、 控訴人は、このような破壊的な人格が形成され、一つの場面を
     とればあたかも自己の自由意思で行動した結果であると表面上み
     られることであってもそこには「マインドコントロール」の結果
     そのように認識されているに過ぎない場合があることを主張して
     いる。
      控訴人は、このような心理状態を心理学的に説明する用語とし
     てマインドコントロールという概念を使用した。そして、これら
     を心理学的に明らかにする文献をも原審で提出した(甲第四〇号
     証・同四五号証)。静岡県立大学社会心理学者西田公昭氏による
     被控訴人統一協会を脱会した元信者二〇人に面接、二七二名から
     の質問紙調査に基づいて考察されたものであった。控訴人のマイ
     ンドコントロールの仕組みについての主張は、事実を控訴人本人
     から聴取し、右研究結果に基づきながら整理してみたものである。
   3、 控訴人は、既に主張においても整理されているとおり、「マイ
     ンドコントロール」が存在するからただちに違法であると主張し
     ているのではない。本件においては、当初から正体を明らかにし、
     各段階ごとに目的を示されたうえでの勧誘あるいは教化行為がな
     されていれば、被控訴人統一協会に所属することはなかったし、
     違法な経済活動に従事することはなく、多額な献金に応じること
     も、物品を購入することもなかったことを主張し、控訴人の自由
     な意思決定を阻害し、違法な活動に従事し、財産的にも精神的に
     も多大な損害を被ることになった結果を生じさせたマインドコン
     トロールの存在を指摘してきた。
      従って、右の控訴人の主張からも明らかなとおり、マインドコ
     ントロールの概念が多義的であるとして、マインドコントロール
     による勧誘教化行為により宗教選択の権利を侵害されたというこ
     とはできないなどという短絡的な判断は許されない。そして、マ
     インドコントロールがどのようにして控訴人の意思決定に関わっ
     たか、控訴人の主張に対して裁判所は判断を避けている。
   4、 マインドコントロールの研究者スティーブハッサンは「個人が
     自己自身の決定を行うときの人格的総合性を切り離そうとするシ
     ステム。その本質は、依存心と集団への順応を助長し、自律と個
     性を失わせることである。行動・意思・感情・情報をコントロー
     ルすることによって達成される。」としている。「一定の行為を
     繰り返し積み重ねることにより、相手に一定の思想を植え付ける
     概念」というように単純に定義づけられるものではない。
  六、 宗教団体の違法行為と信教の自由
   1、 憲法において信教の自由が保障されている。しかし、信教の自
     由の保障は、宗教団体が何をしても免責されるというものではな
     く「正当な目的に基づいており、その方法、結果が社会通念に照
     らして相当と認められる限り、正当な宗教活動」として保護され
     るが、右を逸脱すれば不法行為を構成することになる。本件の場
     合、前述のとおり、被控訴人統一協会の実態からみて、その目的・
     方法・結果の相当性がまず評価されなければならない。
   2、 控訴人は、本件裁判において「当該宗教の教義、信仰の内容の
     当否」の判断を求めているのではない。「教義を用いての心理的
     強制・詐欺的勧誘のあった」ことの違法性の判断を求めているの
     である。「裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審
     判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議について
     は厳に中立を保ち」「立ち入って判断すべきものではない」とし
     て判断を避けてはならない。つまり、たとえば万物復帰の原理の
     当否の判断を求めているのではなく、万物復帰の原理を説きなが
     ら、控訴人を恐怖に陥れて長時間説得して献金を決断させたこと
     などの違法性の判断を求めているのである。裁判所はその判断を
     避けている。
第三、 違法性論
  一、 統一協会の実態
   1、 被控訴人統一協会の活動は、その教義である「万物復帰」の教
     義に基づき、「万物(全ての財物)」を神の側(教祖である文鮮
     明)に復帰させること(捧げること)を究極の目的とするもので
     あり、会員の全ての活動は財物の獲得と、統一協会の教義である
     統一原理のうち、とりわけ万物復帰の実践のための活動(資金集
     めの活動)をする新会員(信者)の獲得にそそがれている。
   2、 すなわち、被控訴人統一教会は、幹部が一般信者に対し直接資
     金集めを命令したり、機関誌に掲載するなどして、いわゆる霊感
     商法の手法により大理石製壺、多宝塔、人参茶等の販売、インチ
     キ募金、いわゆる定着経済による毛皮、宝石、着物、絵画等の販
     売、HG(信者に借入れさせた金員を献金させること)、サミッ
     ト等と称して老人等の社会的弱者から多額の金員を奪取するなど
     の行為を指揮して、系統的・組織的に違法な資金獲得活動をなし
     てきたものである。
   3、 また、被控訴人統一教会は、こうした資金獲得活動に従事する
     一般信者を獲得するために、被勧誘者に正体を隠して接近し、ビ
     デオセンター、修練会、各種トレーニングといった一連の入教プ
     ロセスに誘導し、一定の教育プログラムに基づきマインドコント
     ロールの手法を駆使した教え込みを行い、被勧誘者のそれまでの
     信念体系を破壊し、統一協会の教義の教え込みを行っている。
   4、 いわば、日本における被控訴人統一協会の活動は、資金獲得の
     ための違法な経済活動及びこれを実践する信者獲得活動が最優先
     課題とされている。そのため、インチキ募金や霊感商法等の違法
     な経済活動を組織的に実行し、また新会員(信者)獲得の手法に
     おいても、他の宗教団体には見られないような、宗教活動である
     ことを秘匿し、文化サークル活動などを装った接近勧誘がなされ
     ているのである。
   5、 本件控訴人らのいずれもが、当初宗教団体であることはもちろ
     ん、その主たる活動(目的)が資金獲得のための違法な経済活動
     であって、その活動用員として利用されることになることを知ら
     されずビデオセンター等に誘われたことが契機となり、被控訴人
     統一教会の会員(信者)となり、過酷な状況の下に違法な経済活
     動に従事させられたものである。本件は、こうした被控訴人統一
     教会の違法な勧誘方法、労働権を無視した過酷・劣悪な労働環境
     において違法(詐欺的)な経済活動に従事させられた人格権侵害
     及び献金等によって奪取された財産権の侵害に対し損害賠償を求
     めるものであることからすれば、被控訴人統一協会において、自
     らが宗教活動であることを秘匿して活動している以上、一般の経
     済団体以上に「宗教の自由」の名のもとに特段の保護を与える必
     要性は何ら認めるべきではないというべきである。
  二、 元信者の被害者性
   1、 霊感商法の違法性は、既に刑事事件で有罪判決が出るなど確定
     したものといえる。また、献金事件についても、その違法性は、
     最高裁判所で認定されているところである。同じく統一協会を被
     告としているのに本件が霊感商法や献金裁判と異なるように見え
     るのは、霊感商法や献金による被害は、統一協会の外側に存在し
     た者が、統一協会員より害悪の告知を受けて高額の物品を購入さ
     せられたり、多額の献金をさせられたりしたと認定されているの
     に対し、統一協会員(信者)となって、いわば統一協会の内側に
     入って霊感商法等をその手先となって実践していたもの(信者)
     が、霊感商法等をさせたもの(統一協会)を訴えている点である。
   2、 しかし、控訴人らは、統一協会が資金獲得活動をするため、事
     情を知らされないで単なる道具として利用されたと言う意味で、
     真の被害者である。
      控訴人らは、地上天国の実現という被控訴人(統一協会)の教
     え込みに従い、仮に人の世の法(統一協会用語で「人法」という)
     に反していても天の法(同じく「天法」という)にかなうと信じ
     て、霊感商法やインチキ募金活動に従事したのであって、自らは
     全く利得を目的としておらず、実際に全く利得を得ていない。そ
     れどころか、睡眠時間や休息時間もまともに与えられず、ノルマ
     を達成できないときは食事を抜いたり、深夜まで歓楽街を歩き回
     って集金活動をさせられてきたのである。
   3、 統一協会の外にあって霊感商法や献金事件の被害者となった者
     と、統一協会の信者となって、霊感商法やインチキ募金等違法な
     資金獲得活動の手先とされたものとの違いも紙一重である。統一
     協会の手口は、若者に対しては街頭アンケートで単なる教養サー
     クルであるかのようなふりをしてビデオセンターに誘い込み、ツ
     ーデイズ、フォーデイズセミナー等を経て「献身」に導くこと
     (すなわち労働力の搾取)に重点が置かれ、年輩者や財産を有し
     ている者については訪問販売による霊感商法で近づき、更に統一
     協会で借りた結婚式場等に誘い出して、壺、人参茶、多宝塔等の
     高額な商品を購入させたり、高額な「献金」をさせることに重点
     が置かれる。しかし、前者、すなわちビデオセンターに通いだし、
     やがてツーデイズ、フォーデイズセミナーを受講した若者にも、
     必ず印鑑や絵画、壺等の霊感商法商品や統一協会の「定着産業」
     商品をも購入させる。他方、後者、すなわち霊感商法被害者とな
     って印鑑、壺、人参茶等を購入させられた者も、次はビデオセン
     ターで見せられるのと同様のビデオを見せられ、徐々に原理講論
     の講義を聞かせられ、共に、統一協会の信者あるいは、天地正教
     の信者になるよう働きかけられるのである。このように、若者の
     場合、本人に資力がない反面霊感商法やインチキ募金活動に従事
     させる労働力として使えるので、財産被害を受ける側面より「献
     身」によって身柄自体を取られる傾向が強いのに対し、年輩者は
     財産は狙われるが、労働力としては使いにくいので、財産被害の
     側面の方が大きいという傾向があるが、どちらもその被害が財産
     的被害あるいは身体的被害のみに限定されるわけではないのであ
     る。奈良の判決(甲第一一三号証)においては、被害者は露骨な
     害悪の告知をなされて献金に至ったのではなく、統一協会の教義
     を教え込まれる中で恐怖感に駆られて献金をするに至っている場
     合であったが、統一協会の献金の違法性を認めている。
   4、 被控訴人統一協会は、信仰の名前の下に、控訴人らを「献身」
     させた上、二四時間管理・支配して、もっぱらインチキ募金等、
     詐欺まがいの集金活動や、珍味売り等の資金獲得活動、そして自
     らがなされたと同じ違法な方法を用いた伝道活動に従事させると
     いうカラクリないしシステムの中に控訴人らを巻き込んだのであ
     る。そして、このカラクリに巻き込まれた控訴人らは、脱会する
     までの何年間かを被控訴人の道具として意のままに使われてきた。
     ここで、控訴人らを道具と言うのは、控訴人らのなしたインチキ
     募金、珍味売り、霊感商法(日弁連の報告書(甲第一五号)証等
     でもその被害の大きさが明らかにされている)等の諸活動は、す
     べて被控訴人統一協会からの命令(統一協会用語で「人事」と言
     う)に従って行ったもので控訴人らが自ら企画したり、参画した
     たわけではなく、控訴人らはこれらの活動の目的も知らされるこ
     となく、また、何らの報酬も利益も得ていないからである。
   5、 控訴人らが「献身」中になした諸活動を、原判決は基本的には
     控訴人らの信仰に基づく宗教的活動と捉えているのではないかと
     推測される。そして、「宗教的」ということにとらわれて、控訴
     人らがさせられた行為の違法性を見逃しているのではないかと思
     料される。
      しかし、霊感商法や献金事件の違法性は既にいくつかの裁判所
     で認定され、最高裁判所でも確認されている。インチキ募金につ
     いては判例こそないものの、実際には難民募金に入金されるのは
     ごくわずかであるのに、「難民募金」と称して募金活動をなすこ
     とが詐欺であることは明白である。しかれば、これらの違法行為
     を被控訴人統一協会の手足、道具としてなした控訴人らは、なさ
     しめた被控訴人に対して違法な行為をなさせたことの責任追及が
     できて当然である。
   6、 被控訴人が、控訴人らを街頭で勧誘し、ビデオセンターに誘い、
     更にツーデイズ、フォーデイズセミナーに誘い、ついには入教さ
     せて「献身」に至らせ、その後種々に活動に携わらせる中で、被
     控訴人が控訴人らに対して弄した個々の欺瞞ないし脅迫的行為は、
     一つ一つをバラバラに見ればそれ自体の違法性は一見弱く見える
     かもしれない。しかし、被控訴人の行為を個別に区切ってばらば
     らに捉えるべきでない。すべてが一連のカラクリ、システムなの
     である。違法性の評価は、一連の行為を対象に行われるべきなの
     である。一連の行為をその目的と照らしてみたとき、その違法性
     の重大さは十分把握し得るはずである。
  三、 宗教活動と司法判断について
   1、 宗教上の教義それ自体は裁判所でその適否を判断すべきではな
     いとしても、勧誘・教化の過程や宗教活動上の行為に関し、教義
     の内容がどのように用いられ、その結果がどうなったかという面
     における裁判所の判断・認定は不可欠である。
   2、 ところが原判決は、違法性の判断では教義の内容の当否は勿論
     のこと、その内容、機能さえ触れず、恰も教義は無色透明の概念
     としてとらえられている。これでは被控訴人の行為の実態をとら
     えることはできない。
      この原因は、原裁判所があまりに「宗教」にナイ−ブになりす
     ぎ、「その自由に介入すべきではなく一切の審判権を有しない」
     とし、臆病な判断に終始したためと思われる。
   3、 教義の内容と機能
    ▼教義の内容
     被控訴人の教義をかいつまんで述べると以下のとおりとなる。
     ・二性性相と堕落論
        この世は神とサタンの二つからなり、エバと天使長ルーシ
       ェルの不倫により人間は堕落し、サタンの主管するところと
       なった。
     ・メシア論と復帰原理
        サタンの主管から脱するためには、人(人間復帰)と物
       (万物復帰)をメシアの元へ復帰しなくてはならない。
     ・霊界の讒訴
        もし、被控訴人の教義を知り、これにそむいたりした場合
       には霊界で讒訴をうけ、祖先の霊が苦しんだり、あるいはウ
       ロコが生えた子供が生まれてくる。
    ▼機能
       この教義の機能は以下のとおりである。すなわち、万物復帰
      の教えのもと、違法な経済活動をしてでも財物をメシアの元へ
      復帰せよと教え、これに反したり、あるいは脱会したりすると
      霊界の讒訴があると教え込み、恐怖心をうえつける。
       その結果、控訴人らを始めとする信者は、経済活動に奔走せ
      ざるを得なくなる。かように万物復帰を中心とする教えは、経
      済活動に奔走させる道具として用いられたものであり、原判決
      はこの点を看過することなく、正面から判断し、被控訴人が控
      訴人らをしてなさしめた経済活動の違法性を認定すべきであっ
      た。
   5、 奈良判決の場合
      右については、奈良判決(甲第一一三号証)の判断が参考にな
     るのでここに引用する。
    ▼奈良判決の万物復帰に関する判断の部分
     ・被告(統一協会)の研修教材「復帰摂理と万物」によれば、万
      物復帰とは、人間は堕落して万物より劣る存在となったので、
      万物を神の前に返し、万物を通じることによって初めて堕落人
      間を復帰させることができるというものであり、思想的には共
      生共栄共義主義を目指すものであるとしている。
     ・万物復帰の具体的実践方法につき、被告(統一協会)発行の
      「信仰生活と献金」中には、被告(統一協会)の教義において
      は、初代教会の原型を踏襲して、信者に対して一旦すべての物
      を神の前に捧げ、しかる後に生活に必要な分だけを神に授かる
      という精神を持ちながら、惜しむ気持ちからではなく、自発的
      に持てる限りを尽くして捧げることを奨励していること、捧げ
      物の程度について「収入の一〇分の一」とする聖書の考え方に
      対して、被告(統一協会)においては、収入の一〇分の一とい
      う伝統的な基準から一旦すべてを神の前に捧げ、改めて生活に
      必要な分だけ授かるという「出家的」基準まで、様々な基準が
      存在しえるものと考えていること、具体的な金額は、献金の本
      質が信徒各自の信仰と経済的事情に応じて自発的になされるべ
      き性質で、絶対的なものとはなりえないとされていることの各
      記載がある。
     ・しかし、仮に、被告(統一協会)の万物復帰の教えの実践方法
      が理念的には前記・のとおりであったとしても、実際の場面に
      おいては、被告(統一協会)の信者を物品の販売活動等の経済
      活動に奔走させて資金集めを行うというものであったことが認
      められる。
     ・かように、奈良判決においては、万物復帰の教えが違法な経済
      活動に奔走させる道具として用いられていたことが率直に認定
      されており、被控訴人統一協会の教えが本来の宗教的意義を有
      するものではなく、宗教の皮を被ったものであることを端的に
      認定している。原判決もこれと同様の認定をすべきであり、そ
      の上で被控訴人の資金集めのための経済活動の違法性、ひいて
      はそれを控訴人らになさしめたことの違法性を認定すべきであ
      った。
       仮に、百歩譲って、被控訴人の教えに何らかの宗教的意義が
      あったにせよ、違法な経済活動がそのことによって合法化され
      るものではなく、また、そのような経済活動に信者を奔走させ
      たことの違法性を阻却するものでもない。
  四、 「マインド・コントロール」の概念の誤解と審理不尽
   1、 原判決は、「マインド・コントロールは、それ自体多義的な概
     念であるのみならず、これを一定の行為を繰り返し積み重ねるこ
     とにより相手に一定の思想を植え付けることをいうと据えたとし
     ても、勧誘、教化の方法、経過を併せ考慮しても、宗教上の勧誘、
     教化行為のあり方として、社会的相当性を逸脱したとはいえない」
     (一六一、一六二頁)としている。また、「教化にあたり、宗教
     上の言説以上に薬物や物理的・身体的な強制力が使用された事実
     を認めるに足りない」(一六四頁)として、古典的な強制概念に
     固執して、詐欺的勧誘や心理的強制の分野に立ち入ることなく判
     断している。
   2、 しかしながら、右判決の判断には二重の誤りがある。すなわち、
     前述のように薬物を使ったり、物理的、身体的な強制力を用いた
     りした場合でなければ、勧誘、教化方法についての違法性が問え
     ないとするのであれば、詐欺的・脅迫的行為についての違法性判
     断を一切放棄することになる。また、そもそも本件において控訴
     人らは、薬物を用いられたり、物理的・身体的な強制力を用いら
     れたともともと主張しているのでないことからすれば、原審は的
     はずれの判断をしていると云わざるを得ない。
   3、 また、原判決は「マインド・コントロール」につき、「一定の
     行為の積み重ねにより一定の思想を植え付けること」と定義して
     いるが、控訴人らはそのような定義付を行っていない。
      スティーブ・ハッサン著には「個人が自己自身の決定を行うと
     きの人格的総合性を切り離そうとするシステム。その本質は、依
     存心と集団への順応を助長し、自律を失わせることである。行動、
     意思、感情、情報をコントロールすることによって達成される」
     とある。
      ニーズの操作やカムフラージュによる情報コントロールといっ
     たマインド・コントロールの手法により、一定の教化や説得を通
     じて被勧誘者に新しい信念体系を植えつけることにつき、「物理
     的な強制力」や「社会との完全な隔絶の有無」を判断基準として
     いる点につき原判決の誤りがある。
   4、 マインド・コントロールの概念が新しい概念であり、且つ、効
     果に疑問があると考えれば、専門家の証拠調べは不可欠であると
     ころ、原審は控訴人らからの心理学者である西田証人・宗教学者
     である浅見証人の証人申請を採用せず、前述の通りの判断をした
     点は審理不尽と云わざるを得ない。
  五、 被控訴人統一協会の勧誘等の違法性
   1、 被控訴人統一協会の被勧誘者は、被控訴人の信者の正体を隠し
     た詐欺的な接近を受けて入教プロセスに誘導される。
      被勧誘者は、初期の段階では判断力は比較的損なわれていない
     ものの、被控訴人統一協会の正体や被勧誘者が信者になった(献
     身した)後の生活様式(ホームと呼ばれる合宿所へ入居しての集
     団生活を強いられること)や活動(違法な献金勧誘や霊感商法を
     させられること等)に関する情報が決定的に不足している。これ
     らの情報は、被勧誘者が批判的な判断力にしたがって反応する能
     力が減退ないし喪失させられたと被控訴人統一協会が判断した場
     合にだけ小分けにして出され、ある程度進行が受容されるまでは、
     被控訴人の正体(実態)などの重要な情報は開示されないのであ
     る。
      このように、被控訴人統一協会の被勧誘者は、入教プロセスの
     各段階に参加することには形式上同意してはいる場合であっても、
     最終的な目標についての情報が与えられないまま、参加すること
     に同意しているに過ぎないのである。また、その後の教育プログ
     ラムによる教え込みによって、被勧誘者は被控訴人統一協会に対
     する依存心を強め、価値観が転換し、被控訴人の教義のためなら
     ば、違法な活動を行うことに対しても規範的障害が失われるよう
     になる。このようにして自由な意思決定を阻害されてきたのであ
     る。
   2、 原判決は、一一七頁以下に客観的事実関係については控訴人が
     主張してきた内容をかなり詳細に認定している。そして「そのよ
     うな判断をするにあたっては木下・小野・鈴木・吉田・窪田・花
     田・久野ら被告法人関係者の宗教上の言説による勧誘が大きな影
     響を与えていることは否定でき」ない(一六五頁)としながらも
     「勧誘・教化行為は全体として違法なものとはいえず」(一六六
     頁)と短絡的な判断をしている。木下・小野らが宗教上の言説を
     どのように使用したのであろうか、身分を偽って占い師を装い、
     単に控訴人の恐怖心を発生させてそれを利用しようとした花田・
     鈴木らの行為は果たして社会常識を逸脱したものといえるのであ
     ろうか。このような欺瞞的なプロセスが控訴人の自由な意思決定
     を侵害しているのである。宗教的場面における自由な意思決定は
     人生の極めて重要な場合におけるものであり、特に尊重されなけ
     ればならない人格権の一つである。勧誘とその後のプロセスにお
     いて真の宗教的自由な意思決定が保障されていたのか否か単に形
     式的事実を摘示するだけでなく、その内容が判断されなければな
     らない。この意味においても原審には審理不尽の違法がある。
   3、 被控訴人らの勧誘等における嘘の数々は例えを挙げれば以下の
     とおりであった。
    (一) 控訴人に対する最初の被控訴人からの接触は、アンケート
       に協力して下さいというものであった。真実は最終的には統
       一協会員にして献金をさせ、新たに統一協会の伝道活動にあ
       たるように勧誘する目的であったにも関わらず、それらの目
       的を全く隠していた。積極的に隠すよう指示を受けて接近し
       ていた。最初に接触した小野**は「ホ−ム」に暮らしてい
       た統一協会の献身者であり、統一協会のビデオセンターのス
       タッフであるとともに統一協会の経済活動(霊感商法)を担
       っていた美光のスタッフでもあった。
    (二) アンケート調査は青年意識調査を装いながら(甲第九号証、
       甲第一二号証、甲第一三号証)実は統一協会に勧誘しやすい
       人を選別していた(平成六年二月二〇日小野**調書一三ペ
       ージ〜二一ページ)
    (三) 統一協会であるか否かを問われても宗教とは関係ないこと
       を言うように指示をされていた。あくまでも若者の文化サー
       クルといっていた。控訴人がビデオセンターに通うようにな
       って疑問に思ってただした時も宗教とは関係ないと答えてい
       た。しかし、あくまでもビデオセンターは統一協会の伝道の
       場所であった(同調書二五ページ)。
    (四) ビデオセンターは甲第二五号証のような配置になっていて、
       外部者には見えないところにスタッフルームがあり、タワー
       長がいて控訴人らが決断をにぶっていると即座に指示がでる
       ようになっている。しかも、その対応の仕方はマニュアル化
       され(甲第一〇号証・甲第三二号証・同第三一号証・同第三
       八号証・甲第九〇号証)、統一協会であることを気付かれな
       いままビデオセンターに入会を迫ることができるようにシス
       テム化されている。これらのマニュアルは、被控訴人統一協
       会において全国的に作成され、組織的に運用されてきてきて
       いた(甲第九八号証の一〇など)。
    (五) ビデオセンターでの亀甲アンケート(甲第二一号証)は、
       真に控訴人らのためになされるのではなく、控訴人の財産状
       況をあらかじめ把握し、どこまで献金を迫れるかの目安とし、
       家系図づくりはその後の恐怖に陥れる占い師らの因縁トーク
       に利用するための材料を得るためのものである。そして、こ
       の因縁トークなどは占い師ではなくても誰でもが対象者に対
       して確実に霊界の恐怖を抱かせてそれを利用するなどその役
       割を果たすことができるようにマニュアル化(甲第三六号証、
       同三七号証、同三三号証)されている。
    (六) 占い師による嘘と脅迫
      1) 目的の嘘
        統一協会との関わりに一歩ふみだせないでいる控訴人を先
       祖の因縁を説くなどして霊界の恐怖に陥れ、最終的には文鮮
       明に対する帰依を迫って献金をさせる目的であったにも関わ
       らずこれを秘して、偉い先生による占いであるなどといって、
       単なる人生相談の機会であるかのごとく目的を偽っている。
      2) 占い師の嘘
        「偉い先生」であるとか「日本で五本の指に入る先生」と
       いうのは嘘である。一九八八年四月一〇日に小野**から誘
       われて会った「占いの先生」と称していた鈴木*は、実は被
       控訴人統一協会岡山教会青年部団長の地位にいた者で(甲第
       九四号証七ページ)、一九八六年一月三〇日には島根県松江
       市で人参液や絵画などを売って霊感商法の最前線にいた有限
       会社光和商会の取締役をしていた者であった(甲第四四号証)
       。霊感商法の正に責任者であった者である。なお、霊感商法
       批判の高まるなか一九八八年一月にこの会社は解散されてい
       る。
        「日本で五本の指に入る先生」と紹介された花田**は当
       時被控訴人統一協会岡山県本部長の役職にあった者である。
       そして、壺や多宝塔を先祖の因縁を説くなどして霊感商法を
       推進していた有限会社岡一商会(甲第一〇八号証)の営業部
       長の職責にいた(甲第一〇七号証)。また、同人は霊感商法
       をめぐるトラブルに関して直接控訴人代理人ら弁護士と交渉
       してきていた者であって、霊感商法を中心的に推進してきた
       最前線の人であったといえる(甲第二四号証、甲第九三号証
       の一ないし三)。本件訴訟において右事実関係を立証すべく
       証人申請をし、採用されたが、同人は正当な理由なく出廷を
       拒否した。直接交渉をしてきた弁護士の尋問を受け、事実が
       明らかになることをおそれたためである。このように占い師
       として登場した者は、いずれもいかにして対象者を先祖の因
       縁を説くなどして霊界の恐怖におびえる人間をつくって献金
       を迫るという目的をもって「占い」をしている。常に恐怖心
       をあおって不安に陥れることをしてきているものである。
    (三) 占いの嘘
       既に右に述べたように、その占いの内容はマニュアルに基づ
      き対象者(原告ら)が恐怖を抱くようになされる。信仰もしく
      は独自のインスピレーションや信念によってなされるものでは
      ない。従ってその内容は「祖先が犯した女の恨みによって君を
      堕落させようとしている」などという画一的な内容となってい
      る。
  7、 絵画展・着物の展示販売の嘘
     統一協会員としての活動の一つとして右のような販売会への動員
    指示がなされる。この会場には誰でもが自由に入れるのではない。
    単なる資金稼ぎでしかない催し物について指示された数の動員を達
    成することが信仰の証しとされ、何らの罪悪感を感じさせない。こ
    の展示会においては「トーカー」「マネキン」「担当者」「タワー
    長」などの役割を持った者が配置され、この場においても事前のア
    ンケート調査などの資料が活用され、単なる物品の販売の場所では
    なく霊感商法実践の場となる。
     原告もこのようななかからシャルムを販売店とする時計を高額で
    購入させられている(平成四年三月一八日控訴人本人調書一二〇項
    等)。
第四、 献金・物品等の被害について
  一、 原判決は
     「被告法人の原告に対する勧誘、教化行為は全体として違法なも
    の」ではないと判断した。そして「宗教活動に伴う献金勧誘行為に
    あたって、多少なりとも吉凶禍福や先祖の因縁話、霊界の話等が説
    かれる場合が多く、そのような言を用いて献金を求める行為一般を
    違法であると断じることは宗教に対する過度の干渉となるので許さ
    れないものと解すべきであり、」とし、本件の場合「特に社会常識
    を逸脱したものとまではいえないのみならず、本件全証拠によるも、
    被告法人がその他社会通念に反する合理性を欠く手段を弄したもの
    とは認めるに足りず、さらに、献金額等その態様についてみても、
    原告の年齢や収入等に比して社会常識に反するものとまでは認めら
    れない。」と判断した。
     仮りに、被控訴人らの勧誘・教化行為が違法とされなかったとし
    ても(この判断は統一協会の多くの被害を発生させている実態に迫
    らないで、勧誘・教化行為を表面的にとらえようとしたがためにな
    された誤りである)、原判決は、宗教に対してことさらに寛容であ
    り、吉凶禍福や先祖の因縁を説くことは宗教上は当然に許されてい
    るかのごとき判断をしている。たとえ宗教を名乗っても、その宗教
    的信念に基づかないで祈祷に効果がないことを知りつつ「御祈祷で
    とってあげる」「神様にお願いしておきながら勝手に参詣を中止し
    ては神様の罰があたる。」「神様の力で顔を真っ黒にする」などと
    脅して祈祷料を交付させた場合は詐欺罪・恐喝罪が成立すると判断
    されている(最高裁昭和三一・一一・二〇判決)。吉凶禍福や先祖
    の因縁話が宗教に関連するものであるからといって当然に許容され
    ることはないのである。本件の場合、具体的に控訴人に対してどの
    ような言葉がどのような恐怖心を与え、献金を決意することに至っ
    たのかその実体が判断されなければならない。また、献金に至った
    それまでの経過、献金させる目的であったにも関わらずその目的を
    隠して面会し、長時間にわたる説得、その間に用いられた説得のた
    めの言葉と控訴人に及ぼした影響、被控訴人らの組織的対応と資金
    集めを至上命題としてきている実態等、その目的・手段・方法それ
    ぞれについて検討されなければならない。原判決は単に前述のとお
    り「社会常識に反するものとは認められない」と具体的な判断を避
    けている。
  二、1、 被控訴人に対する献金の違法性については既に多くの違法と
      認定する判例がなされていて、全国的にほぼ統一された手法で
      なされているこのシステムは違法であるとの評価は定まってき
      ているといってよい。これらの判決において指摘された事実と
      その判断をまとめると以下のとおりである。原判決はこれらの
      判例と異なる見解を示すものであり、法令の解釈の誤りが存す
      る。
    2(一) 福岡地裁判決(福岡高裁判決も同旨)
        福岡地裁判決は、まず総論的に「一般に、特定宗教の信者
       が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を
       勧誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基
       づくものであり、かつ、その方法や結果が社会通念に照らし
       て相当である限り、宗教法人の正当な宗教的活動の範囲内に
       あるものと認めるのが相当であって、何ら違法でないことは
       いうまでもない。しかし、これに反し、当該献金勧誘行為が
       右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等による利益獲得にあ
       るなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁
       や霊界の話等をし、そのことによる害悪を告知するなどして
       殊更に相手方の不安をあおり、困惑に陥れるなどのような不
       相当な方法による場合には、もはや当該献金勧誘行為は、社
       会的に相当なものとは言い難く、民法が規定する不法行為と
       の関連において違法の評価を受けるものといわなければなら
       ない。」(判例時報一五二六号一三〇頁第三段ないし第四段)
       と判示した。
        その上で同判決は、原告一名については、1)当該献金以前
       に「霊界のことや統一原理等を内容とするビデオを見せられ
       たり、先祖の因縁を説き聞かされたりした上で」献金等をさ
       せられるなど「既に因縁の話や霊界で亡夫が苦しんでいるこ
       とがあたかも真実であるかのように」原告に思わせる状況が
       作出され原告もこれを真に受けていたものと認められること、
       2)このような状況に乗じて、被告統一協会の信者らが原告に
       対する教育予定を組み、予め把握していたものと思われる原
       告の資産(の一部)の額に基づいて献金額を決定し、これを
       原告から献金させるべく一〇日間の講習によって統一原理等
       を集中的に教育した後に原告をマンションの一室に呼び出し
       ていること、3)比較的狭い部屋において約六時間の長時間に
       わたり被告統一協会の信者が原告に家系図を示すなどして再
       三強い口調で先祖の因縁や献金に応じなければ不幸が起こる
       などと執拗に害悪を説き、被告統一協会の信者が両脇に座っ
       てその手を握り、他の信者の話に呼応して献金を促すなどし
       て原告を退去することもままならない、いわば軟禁状態とい
       っても過言でない状況に置いて、原告の不安をあおり、原告
       を困惑に陥れて三〇〇〇万円の献金を承諾させた、4)さらに
       その献金について口止めをしていたこと、5)そして、その結
       果原告は、その取得した亡夫の生命保険金の大部分を出捐し
       てしまったことを列挙して被告統一協会の献金勧誘行為を違
       法な行為とした(判例時報一五二六号一三〇頁第四段ないし
       一三一頁第一段甲第一〇三号)。
        同判決は、もう一名の原告については、1)原告はビデオに
       より被告統一協会の教義等の講習を受けた後、原告と被告統
       一協会の信者のみが在室する個室内において被告統一協会の
       信者から身上話や悩み事を聞かれた後、その悩み事や内縁の
       夫の死亡が母方の祖母の因縁であるなどと存在の定かでない
       因縁や亡夫の訴えを強い口調でいわれた上で、その因縁を清
       算するための献金が要求され、さらにただちにその要求に応
       じなければ救われないなどといわれて長時間(認定事実によ
       れば二時間半)にわたる執拗な勧誘を受けたこと、2)その結
       果、直ちに献金に応じなければならないような状況に追い込
       まれて不安に駆られ、困惑に陥ったため、二一〇万円の多額
       な献金を承諾したこと、3)原告の献金額は予め決定されてい
       たばかりでなく、その後も被告統一協会の信者らによる原告
       に対する金銭の出捐要求がされていること、4)被告統一協会
       の信者が原告に対し献金について口止めしていることを列挙
       して被告統一協会の信者による献金勧誘行為を違法な行為と
       した(判例時報一五二六号一三一頁第一段ないし第二段)。
    (二) 右福岡地裁判決においては、結局、献金勧誘の目的の要素
       として献金額が予め決定されていたこと及びその額が予め把
       握していたと思われる被害者の資産額に基づいておりその献
       金獲得のために計画的に講習が行われたことまたは献金後も
       金銭出捐要求がなされたこと、献金勧誘行為の態様として、
       悩み事が先祖の因縁によるものでありその因縁を清算するた
       めには献金が必要でありそれに応じないと救われないなどと
       強い口調で個室で長時間執拗に勧誘されて不安に駆られ困惑
       に陥って献金を決断するに至ったこと及び献金について口止
       めされたこと、献金勧誘の結果として多額の献金を行ったこ
       と認定し、献金勧誘行為の違法性を認めていると解されるの
       である。本件原判決とは異なり「先祖の因縁」の話をするな
       どして困惑に陥れる行為は不法行為となることを明言してい
       るのである。
    3、 高松地裁判決
    (一) 高松地裁判決は、「特定宗教の信者が自己の属する宗教団
       体への献金を勧誘する行為も、その目的、方法、結果から判
       断して、社会通念上相当と認められる範囲を超える場合には、
       民法の不法行為との関連において違法の評価を受けるものと
       いわねばならない。」(甲第一〇六号証)とした上で、
       「本件における被告の信者らの献金勧誘行為は前記認定のと
       おりであり、勧誘すべき人数につき一定の目標を定めたうえ、
       珍味の訪問販売をきっかけに訪問先の相手を被告の信者らが
       主催する後援会等に誘い出し、被告の名を明かさないまま、
       家系図調査と称して家系、悩み事等を、さらに、環境浄化と
       称して財産状態をも詳細に聞き出し、これらの情報をもとに
       被告の信者らの間で獲得する献金の目標額を決め、周囲の信
       者から「先生」と呼ばれるリーダー格の信者が、右目標にし
       たがって、事前に得た情報を利用しながら献金の勧誘をする
       という一連の流れが認められ、これら一連の行為は献金獲得
       に向けられた組織的、計画的行為と認められること、献金の
       直接の勧誘行為は、原告の入会の意思も十分に確認しないま
       ま、予め得た情報を利用して、その不安をあおり、執拗に多
       額の献金の即決を迫る方法でなされていること、原告が献金
       を承諾した翌日には、信者らが迎えに行ったうえ、預金の引
       き下しなどの諸手続から献金が終るまで始終付き添い、原告
       に熟慮の機会を与えていないこと、右勧誘は被勧誘者の出捐
       しうる金額全部を献金するように勧めるとの基本姿勢の下に
       行われており、現実に右のような勧誘の結果原告によりなさ
       れた献金は六〇〇万円と多額で、原告の預金のほぼ全額であ
       ることなどの緒事情を総合すれば、被告の信者らが行った前
       記一連の勧誘行為は、その目的、方法、結果において社会的
       に相当と認められる範囲を逸脱しており、違法性を帯びると
       いわなければならない。」と判示して被告統一協会の信者に
       よる献金勧誘行為を違法とした。
    (二) 右高松地裁判決においては、勧誘の目的の要素として事前
       に悩みや財産等の情報を収集し目標額を定めるなど計画的で
       あること、献金勧誘行為の態様として入会の意思を十分確認
       していないこと、予め得た情報を利用して不安をあおり執拗
       に多額の献金の即決を迫ること、献金承諾後すぐに信者が始
       終付き添って預金の引き下しや献金を行い熟慮の機会を与え
       ないこと、献金勧誘の結果として多額の、預金のほぼ全額の
       献金が行われたことを認定し、献金勧誘行為の違法性を認め
       ていると解される。
    4、 奈良地裁判決(甲第一一三号証)
    (一) 奈良地裁判決は、被告統一協会の献金勧誘システムについ
       て、総論的に「前記認定によれば、被告の献金勧誘のシステ
       ムの特徴として、1)万物復帰の教えの下、個々の対象者から
       その保有財産の大部分を供出させ、被告全体としても多額の
       資金を集めることを目的とするものであること、2)対象者が
       ある一定のレベルに達するまで、被告の万物復帰の教えはも
       ちろんのこと、被告や文鮮明のことを秘匿あるいは明確に否
       定したまま、対象者の悩みに応じた因縁話等をして不安感を
       生じさせあるいは助長させる方法をとっていること、3)各種
       マニュアル等により勧誘方法が全国的に共通していて、組織
       的に行われていることが挙げられる。」「このうち、2)の点
       は、被告への入会ないしは献金等をしようとする者の判断に
       影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告
       げ、また、被告への入会ないしは献金等をさせるため、対象
       者を威圧して困惑させるものであり、方法として不公正なも
       のと評することができる。」(略)「以上を全体として総合
       的に判断すれば、被告の献金勧誘のシステムは、不公正な方
       法を用い、教化の過程を経てその批判力を衰退させて献金さ
       せるものと言わざるを得ず、違法と評価するのが相当である。
       」と判示した。
        その上で同判決は、原告の一名については「予め財産の把
       握が行われた上、執拗に献金の勧誘が行われていること、勧
       誘の当初において宗教であることを明確に否定していること、
       原告市川の身上及び本件献金勧誘行為を受けた当時の健康状
       態及び精神状態に照らせば、因縁話等による不安感等を覚え
       やすい状態にあったものといえるところ、家系図を示して具
       体的にかつ執拗に因縁話がなされ、原告市川の受講内容は、
       六回に及ぶ竹内のカウンセリングや三日連続の個人路程(人
       生の中での出来事を告白文のような形で書かせるもの)など、
       個人の抱える悩み等を十分聞き出した上でこれに応じた因縁
       話等をするという内容であり、原告市川の不安感を助長させ
       ていること、姓名判断が用いられていない外は奈良地区にお
       けるマニュアルに沿った勧誘方法が行われていること、奈良
       カルチャーセンターでの受講につき他言を禁じられたことな
       どの点が認められる。以上からすれば、被告の原告市川に対
       する献金勧誘行為には違法性がある。」と判示して被告統一
       協会の信者による献金勧誘行為の違法性を認めた。
        同判決は、原告のもう一名については「統一協会であるこ
       とを明確に否定して献金勧誘行為が行われていること、予め
       財産の把握がなされ、これに基づき献金額及び献金に至るま
       でのスケジュールが決められていたこと、家系図を示すなど
       して具体的に因縁話が行われていること、受講につき他言を
       禁じられていることなどが認められ、以上によれば原告黒田
       に対する献金勧誘行為は違法性がある。」と判示して被告統
       一協会の信者による献金勧誘行為の違法性を認めた。
    (二) 右奈良地裁判決では、結局、宗教ないし統一協会であるこ
       とが当初否定されていること、予め財産が把握されそれに基
       づいて献金額及び献金スケジュールが決定されたこと、具体
       的に因縁話が行われたこと、受講につき他言を禁じられたこ
       とを認定し、献金勧誘行為の違法性を認めたものである。
    5、 東京地裁判決(甲第一二一号証)
    (一) 右判決は、家系図を示しながら原告の実家の因縁話、この
       まま放置すれば絶家する家系であり、先祖の罪が清算されな
       い限り霊界の低いところから抜け出すことができず先祖が霊
       界で苦しみ、現世の人間にも不幸が起きると告げられた事実
       を認定した。そして、「当該宗教の教義が信じるに足りる所
       以を説明すること、教祖又は宗教上の指導者が過酷な運命か
       ら人類を救う超能力を備えることなどを説明すること、更に
       は、当該宗教活動を維持するために献金を求めることは、そ
       の方法が市民法の許容するものである限り、法律上の責任を
       生じることはない」と一般論を述べたが、「献金が、人を不
       安に陥れ、畏怖させて献金させるなど、献金者の意思を無視
       するか、又は自由な意思に基づくとはいえないような態様で
       される場合、不法に金銭を奪うものと言ってよく、このよう
       な献金名下の金銭の移動は、宗教団体によるものではあって
       も、もやは献金と呼べるものではなく、金銭を強取又は喝取
       されたものと同視でき」不法行為が成立するとした。
    (二) この判決は、科学的知見に照らして荒唐無稽であるかの如
       き事実であってもそれが宗教活動においてなされている限り
       何ら責められるべき点はないという基本的立場を明らかにし
       ながら、因縁話に基づく恐怖感を押しつけたりするなど「自
       由な意思に基づくといえないような態様」の場合には「献金」
       とはいえないことを明確にし、信教の自由との関係において
       不法行為の成立する基準を示したといえる。
  三、 判例の基本的方向
    1、 これらの判決においては、献金勧誘行為の違法性を基礎づけ
      る事実として、献金勧誘の目的にかかる要素として献金の目標
      額が予め定められていたこと及び事前に悩みや財産について情
      報を収集していること(但し福岡地裁判決の二人目の原告につ
      いてはこれに代えて献金後も財産出演要求があったことが挙げ
      られている)、献金勧誘行為の態様としては、具体的かつ執拗
      に因縁話がなされそれにより不安をあおられて献金を決意した
      ことに加えて口止めがなされたこと(福岡地裁判決、奈良地裁
      判決)または献金承諾後すぐに信者が付き添って預金の引き下
      しや献金を行わせ熟慮の機会を与えなかったこと(高松地裁判
      決)、いずれの要素であるか必ずしも明らかではないが当初統
      一協会の献金勧誘の目的であることを秘匿ないし否定している
      こと、献金勧誘行為の結果として多額ないしほぼ全財産の献金
      がなされたことが認定されて被告統一協会の信者による献金勧
      誘行為が違法であると判示されている。そして、これらの認定
      の背後にあるものは、責任主体として各判決においてそれぞれ
      統一協会そのものが認められているとおり、全国画一的に組織
      的指揮命令関係をもって行われ、同様の被害を多発させている
      実態が明確になっている事実がある。
    2、 従って、被控訴人統一協会の、献金勧誘行為の違法性を基礎
      づける事実としては、次の事実のいくつかが主張立証されれば
      十分である。このことによって、もはや「献金」とはいわれな
      くなるのである。
      a 当初被控訴人統一協会の献金勧誘の目的であることが秘匿
        されている
      b 予め悩みや財産状態を聞き出している
      c それに基づいて献金の目標額が定められている
      d 具体的かつ執拗に因縁話をして不安をあおり献金を要求し
        て献金を決意させた
      e 献金承諾後すぐに信者が付き添って預金の引き下しや献金
        を行わせたり、献金や受講について口止めをし、すぐさま
        献金についてその是非を考えることをできなくさせる。
  四、本件における献金に至る経過
    1、 姿を隠し、偽りの接近 
    (一) 一九八七年九月一五日の休日に被控訴人統一協会に所属す
       る木下**、小野**が控訴人の独身寮に訪れた。真の目的
       はビデオセンターに通わせるようにしてこれを契機に統一協
       会の信者にし、献金・物品購入を迫り、やがては献身させて
       統一協会のために全てを投げうって働ける人をつくることで
       あるにも関わらず、アンケート(甲第九号証)への協力を依
       頼し、続いて「自分達が行っている文化サークルへ来てみま
       せんか」と単なる若者のまじめな集まりであるかのごとく装
       ってサークル活動への参加を勧誘した。単に宗教団体が最初
       の接触をもちやすくするためにあえて宗教団体を名乗らなか
       ったという程度を超えた欺瞞的・反社会的なものであった。
    (二) 控訴人は、単純に職場以外の友人ができるのもおもしろい
       かと考え軽い気持ちでこの誘いに応じて被控訴人統一協会の
       勧誘の最前線であったビデオセンターである「クリエイト」
       (甲第六号証の一、二、甲第二号証の一ないし一五、甲第八
       号証)に行くことになった。ここでも統一協会であるとか、
       その後に用意されているプログラムについては全く知らされ
       ないままアンケート調査、運勢判断、控訴人の財産状態等の
       チェックがなされた。控訴人にとってはこれらが後日控訴人
       を統一協会に引きこみさらには全ての財産を献金してしまう
       ことになる資料に使用されることになるなどとは夢にも思っ
       ていなかった。この場において約四時間程説得を受け、結局
       ビデオ会員として三万五、〇〇〇円の入会金を支払うことと
       なった。
    (三) 控訴人は入会金として納付した費用分だけはビデオを見る
       ことによって元をとることができると考えていたが、ビデオ
       センターに行っても自由に選択してビデオを見ることはでき
       ず、さらに青年サークルと行ってもビデオセンターのスタッ
       フとしか接触がなく、広く友人関係を築きたいと考えていた
       控訴人にとってはあまり興味を持てなかった。しかし、被控
       訴人統一協会からの接触は前記小野を通じ執拗になされてき
       ていた。
    2、 ニセ占いによる霊界への恐怖
    (一) 一九八八年四月一〇日、小野の誘いにより「占いの会」に
       誘われる。これもあらかじめ原告らを信者に仕立てるために
       被控訴人統一協会によって仕組まれていた催し物である。被
       控訴人統一協会の霊感商法を遂行してきていた当時の統一協
       会岡山県青年部団長鈴木*が控訴人に対して「あなたは今、
       転換期に来ている。人生について真剣に考えないといけない」
       と再びこの機会を通じてクリエイトに通うよう勧誘した。
    (二) これがきっかけでビデオセンターに毎日のように通うこと
       になり、あらかじめ一定の目的のためにつくられたプログラ
       ム通りにビデオを鑑賞した。このビデオ鑑賞プログラムには
       統一協会の教えである原理講論が組み込まれていて順次見て
       いけば自然と罪の意識にさいなまされるようになり、そして
       その罪意識から逃れるためには文鮮明に帰依して霊感商法に
       邁進するしかないという精神状態に陥っていった。控訴人は、
       霊界の恐怖に脅えるようになり、被控訴人の意のままに心を
       操作される状況になってきていた。
    (三) 控訴人の家庭環境、財産状況、親族の状況、控訴人の関心
       事、控訴人の現段階の心理状況(不安感・恐怖感等々)は被
       控訴人ら側にアンケート調査、家系図調査、担当スタッフに
       よる綿密な観察によって正確に把握されていた。これらの情
       報を完全につかみながら被控訴人側は占い師を控訴人の前に
       登場させ、前述の鈴木*に続いて四月一七日には「吉田」と
       いう占いの先生にビデオセンターで会わされた。吉田は「あ
       なたの母方の家系は女性ばかりですね、こういう家系は途絶
       えてしまうんです」「あなたがしっかりしないといけません」
       「あなたの祖先があなたの家族に霊界から何かを訴えている
       のでしょう」等々と述べて、控訴人を、このままの状態が続
       けば控訴人の家族に不幸がくるのではないかとの恐怖感に陥
       れた。
    (四) 五月二二日、ビデオセンターで「全国でも五本の指に入る
       偉い先生に占ってもらえる」といわれて花田**の占いを受
       けることになった。この占いも決して控訴人の生きる道筋を
       占い、控訴人が人として意義ある人生を送ることができるよ
       うアドバイスをするという目的ではなく、控訴人を霊界の恐
       怖に完全に陥れ、被控訴人統一協会に全資産を献金させて統
       一協会員として霊感商法を遂行していく人格をつくりあげる
       ことに目的があった。花田**は、真実は占い師などではな
       く当時統一協会岡山教会の岡山県本部長をしていたものであ
       り、壺・多宝塔を先祖の因縁を説いて恐怖に陥れて売るとい
       ういわゆる霊感商法の最前線にあった岡一商会の社員であっ
       たもので、これに関してトラブルが発生した場合は弁護士と
       も示談交渉などを担当していた者である。
        花田は「君の祖先は武士だった。それも相当偉い位にいた」
       「殿様だったら多くの人を殺し、多くの女性も泣かしてきた
       だろう」「祖先が犯した女の恨みによって君を堕落させよう
       としている」「よく、生きていられるな。こらあかん、こら
       あかん」などと控訴人を完全に霊界の恐怖に陥れた。これか
       ら控訴人はこれの恐怖感・不安感からまぬがれようとクリエ
       イトに熱心に通うようになった。つまり、統一協会への接着
       度が一段と高まった出来事であった。
    3、 脅しと恐怖の献金
    (一) 五月二七日、控訴人は前記のとおり不安感を追い払うため
       に寄るようになっていたビデオセンターに夕食もとらないま
       ま寄った。控訴人としてはいつものとおりという以上に特に
       変わった意味をもって寄ったわけではなかった。しかし、被
       控訴人統一協会側では、この日に控訴人から全財産の献金を
       迫るべく準備されていたのであった。そのためのビデオが準
       備され、そのためにビデオセンターの久野所長が直接一対一
       の講義を設定し、深夜になっても控訴人に対応するスタッフ
       だけがビデオセンターに残ることになっていた。こうして翌
       日の午前三時まで控訴人はビデオセンターに留まることとな
       った。
    (二) このようにして被控訴人側にとっては用意万端整っている
       場所に控訴人が全く無防備に何らの説明なくおかれたのであ
       った。
        そして、「今日はビデオではなく久野所長が A さんのた
       めに特別講義をしてくださるので楽しみにして下さい」と他
       の部屋とは仕切られた畳の部屋に一対一で話すこととなった。
    (三) 「この講義内容は、「今まさにこの時代にメシアが現れて
       いる。戦争等人と人が憎しみあわない世界が実現できるんだ。
       しかし、この時を逃せば世界は滅びてしまう。」「 A 君の
       肩に世界の平和・歴史がかかっている。世界を救う使命があ
       るんだよ。」「 A 君は、ここへ偶然に来たと思っているか
       もしれないが、神様に選ばれ、 A 君の徳を積んだ祖先によ
       って導かれてここへ来ることができたんだよ。」というもの
       であった。
        講義が終わり、スタッフから神についてどう思っているか
       を聞かれ、「神様は全知全能の神でありますが、悲しみの神
       様です。」と答えた。これまでのビデオ講座・スタッフとの
       会話などからこのように答えられるようになっていた。この
       言葉を確認しスタッフは奥の部屋へ行き、しばらくして、一
       本のビデオを持ってきて、九時過ぎからこのビデオを見るこ
       とになった。食事をとっていなかったこともあり、緊張感と
       共にかなりの疲労感もあった。このビデオは「主の路程」の
       巻であり、これによって統一協会及びメシアとしての文鮮明
       が初めて控訴人に明かされた。「文鮮明ほど他人のために苦
       労し、無実の罪にもかかわらず弾圧された人はいない。」と
       いう内容で、控訴人は「この人が「メシア」なら納得できる。
       」と思うようになった。
        さらに、統一協会の活動を紹介した内容もあり、世界中で
       貧困で苦しむ人々を食糧・医療援助等をして、多くの人々を
       助けている姿が紹介されていた。
    (四) ビデオが終わったときは既に午後一〇時近くになっていた。
       周りには久野、窪田、田辺以外は誰もいなくなっていた。そ
       して、ついに全財産を献金するという総献金の話になってい
       った。久野から「世界中の人々が幸せになるために統一協会
       へ献金してほしい。」と言われ、控訴人は「一〇万円位なら
       してもいい。」と答えた。この金額は当時控訴人の出し得る
       最大のものであった。入会時のアンケートでは一〇〇〜二〇
       〇万円の所に印を付けていたが、その時点では全ての財産
       (保険を含む)は七〇万円になっていた。控訴人にとっては
       一〇万円でも非常に大きな金額であった。しかし、「全ての
       財産・資産でなければだめだ。」と迫られ控訴人は霊界の恐
       怖もあって非常に苦しんだ。ところが、スタッフ達は「 A 
       君は口先だけの人間ではないよね。」「 A 君のお金でアジ
       ア・アフリカで飢餓で苦しむ子ども達が何万人も助かるんだ
       よ。」「 A 君の場合たかが七〇万円だろ、僕なんか二〇〇
       万円も出したよ。」「このことはみんな乗り越えてきている
       ことなんだよ。」「 A 君の背後には神様が常についている
       んだよ。」「交通事故でも起きたら七〇万円なんてすぐに無
       くなってしまうよ。」「後は神様がみてくれるから保険もい
       らないよ。」といってさらなる献金を迫ってきた。原告が決
       意しなければどうしても帰さないという意思が強く原告に感
       じられた。
        続いて、こもごも「金持ちが天国に入るには、ラクダが針
       の穴を通るよりも難しい。今は、神様が A 君に試練を与え、
       神様のことをどれだけ受け入れているか試されているんだよ、
       」「一億円持っている人が七〇万円出しても神様は喜ばない
       よ、でも A 君が神様のために全てを捧げたら神様は「この
       子こそ我が子」と言って泣いて喜ぶよ。」「神様や霊界の祖
       先は A 君が今心の中で考えていることが分かっているんだ
       よ。」「 A 君の背後には霊界で苦しむ祖先が見守っている
       んだよ。」「 A 君君の決意の大きさによって地獄で苦しむ
        A 君の祖先が助かるんだよ。」「 A 君が霊界へ行ったと
       きは、何百何万の祖先や家族が出迎えてくれ、よくやったと
       手を取り喜んでくれるよ。」「でもね決意しなければ何万の
       祖先からボコボコに殴られるよ。」「地上で生きているのは、
       たかが後五〇年そこそこだよ、でもね霊界は永遠だよ。地上
       で生きていた時に何をやったかによって、霊界の位置が決ま
       るんだよ。僕なんか相当高い位置にいるけど、 A 君はまだ
       まだ低く、このままだと地獄へ行ってしまうよ。今は崖っぷ
       ちに立たされているんだよ。そのまま進むと海に落ちるだけ、
       それが、今、天からはしごが降りてきた。乗るか乗らないか
       は A 君自身で決めることだが、天国へ入るためには、サタ
       ン世界の汚れきった物を捨てないと入れないんだよ。僕を信
       じてついてくればいいから。」「 A 君は今日真理を知って
       しまったんだよ、神様は今までは真理を知らなかったから大
       目に見てくれたけど、これからはそうはいかなくなるよ。法
       を知って破る人と、つい知らずに破ってしまった人とでは、
       罪の大きさは天と地ほどあるよ。」などと全ての財産を提供
       するよう迫ってきた。しかし、今後の生活を考えると控訴人
       はどうしても「全てを献金します。」とは言えなかった。
        時間は既に午前零時を過ぎていた。もうタクシー以外では
       控訴人は寮に帰る手段もない時間となっていた。既にビデオ
       センターに来てから五時間が過ぎており控訴人は疲労困ぱい
       であった。それでもなお決心のつかない控訴人は頭を机に引
       っ付け悩み苦しんだ。しかし、一〇万円で許して帰らせてく
       れる雰囲気では無く、七〇万円を出すことをついに了承した。
       控訴人が決心を伝えるとスタッフから控訴人は「お金は魔が
       入りやすい(気持ちが変わりやすい)ので必ず明日納めて下
       さい。」と言われ、その日会社を早退して保険の解約手続を
       してビデオセンターにお金を届けた。結局全財産を換価して
       も六〇万円にしかならなかった。なお、献金を決意して寮に
       帰ったのは、午前三時であった。
        なお、献金に至った経過については、控訴人本人が陳述書
       (甲第九四号証)でまとめている。
  五、 本件献金の違法性
     控訴人の右経過は、三項記載の判例が確立してきた違法とする基
    準に一致している。
     予めビデオセンターに通う機会などの霊界の恐ろしさを知らされ、
    昭和六三年五月二二日に占いの先生と称する花田**から因縁話を
    持ち出され、不安と恐怖に陥っていた。1)そして五月二七日には総
    献金をさせようとスタッフが控訴人にその目的を比して待機してお
    り、2)予めアンケート調査により全市さんの内容が把握され、かつ
    花田らによって控訴人の悩みなどが聞き出されていて、3)それに基
    づいて目標額が設定されていて、4)因縁話などで不安をあおるよう
    にして深夜長時間にわたり執拗に迫り、5)翌日直ちに準備をさせた
    ものである。もやは自由な意思に基づく献金とは到底評価しうるも
    のではない。よって、本件献金さえもその違法性を認めなかった原
    判決には法令解釈の誤りがある。

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