季刊・東ティモール No. 25 June 2007

フェリー「ナクロマ号」

文・写真 文珠幹夫

東ティモールに新しいフェリーが就航した。名前は「ナクロマ号」、ティトゥン語で「光」を意味する。ディリと西ティモールの飛び地オエクシ間、およびディリと対岸のアタウロ島間を結ぶ。それまでにもフェリーがあったが、中古の小型フェリーだった。見た目にもちょっと頼りない感じを否めなかった。海が荒れると航行は難しそうだった。
新しいフェリーはドイツ政府からのプレゼント。詳しい性能は良くわからないが、見たところ1,000トンほどの大きさである。約300人の乗船が可能で荷物も170トン積載できるとの事だ。
オエクシへは陸路で行くことができれば簡単だが、インドネシア政府はオエクシへの陸路の自由通行を認めていない。もし陸路でオエクシへ行こうとするなら、先ずインドネシアへの入国手続きをし、そしてオエクシに入るとき出国手続きをする必要がある。帰路も同じだ。なんとも面倒だ。自由通行を認めないのは、1999年の「住民投票」後、拉致同然に西ティモールに強制連行し、まだ帰国を許さない大勢の東ティモール人がいるからだろう。彼らは難民キャンプに閉じ込められたままだ。
オエクシの人はインドネシアに度々嫌がらせを受けている。川の水を塞き止められたり、国境からギャングの侵入を受けたりしている。海路でディリへの移動や物資の補給が充実すればオエクシの人も安心できるだろう。
ドイツ政府はフェリーの乗船場も整備した。ディリ港の西側に新しい乗船場ができた。ただし、フェリーはドイツ製ではない。資金はドイツ政府が出したが、造ったのはインドネシアの造船会社PT. PAL Indonesiaである。ドイツ政府は昨年のクリスマスプレゼントにしたかったが、完成が間に合わなかった。引き渡されたのは今年の2月22日であった。「ああ、やっぱりインドネシア製だからか」との陰口もあったようだ。
なお、運賃はオエクシへの片道で3等10ドル、2等14ドル、1等20ドルである。
時間に余裕があれば、新しいフェリーで珊瑚がきれいなアタウロ島やオエクシに観光に行かれてはどうだろうか。(文珠)


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