季刊・東ティモール No. 24, February 2007

東ティモールの観光業

文珠幹夫

ビケケの観光ホテル(筆者撮影)

 外国人と言えば、国連関係者か援助関係者。あるいは仕事で来ている人以外見かけることのない東ティモールであった。昨年から、それ以外の外人を見受けることが何度かあった。観光バスで移動していたオーストラリア人の団体を見たときはある種の感慨があった。日本人の団体も見かけたことがある。こちらは「秘境ツアー」的な年配者の団体であった。しかし、オーストラリアの団体は景勝地を廻るものであった。
 海は自然のままで美しい。特にディリの北に位置するアタウロ島や東の突端のツツアラとジャコ島は珊瑚が美しいと聞いている。南の海も負けず劣らず美しいと訪問した誰もが話してくれる。
 山岳地や丘陵地にも美しいところがある。のどかに牛、馬、ヤギが草を食んでいる。滝があり、棚田も美しい。絵になる風景が随所にある。東のラウテン近くの洞窟には石器時代の壁画がある。
 ディリには観光業者もいる。経営者はオーストラリア人がほとんどである。ダイビングやスポーツ・フィッシング、サンセット・クルーズが主である。ダイビングは結構人気のようでディリの沖合いでダイビングを楽しんでいる人を見かける。バリ島ならともかく、東ティモールでサーフボードを抱えた人を見たときは少し驚いた。サーフィンのできる大きな波があるのは南の海で、そこに行くだけでも大変だからである。
 東ティモール人の中には観光で外貨獲得を期待する人も少なくない。しかし、その前提条件が未整備である。海外からの玄関口は空港だけで、発着便はバリ島から中型機が週4便。オーストラリア、ダーウィンから小型機が1日数便のみである。もし観光で東ティモールを訪問する客がいても1日数十名にも満たぬ。観光に必要な施設も少ない。ホテルはディリ、バウカウ、スアイ、マナトゥト、サメにしかない。「秘境観光」は別にして、観光客が満足できるホテルはディリとバウカウにしかない。移動も大変である。団体なら数少ないバスをチャーター可能であるが、少人数や個人では、車をレンタルし、運転手を雇いとちょっと面倒である。言葉の問題もあるだろう。
 10月、東ティモール中部ビケケの山中で観光客向けのホテルの看板を見たとき、私のみならず同行していた東ティモール人も驚いた。外国人などまず訪れることのないところだからだ。後日、それが東ティモール人の経営とわかった。ディリ騒乱の中、東ティモール人による観光業が芽生え始めたことに応えたいものだ。★


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