季刊・東ティモール No. 24, February 2007

新たな国連ミッションの軍事部門の位置づけに関する申し入れ

東ティモール全国協議会は、2006年10月10日、参議院議員会館にて江田五月議員の仲介で外務省に以下の申し入れを行ないました。この申し入れには8団体、57個人の賛同が集まりました。(団体名・個人名は割愛させていただきます。ご賛同、ありがとうございました。)結局、この申し入れの後、東ティモールの首相(ラモス・ホルタ氏)がオーストラリア軍が国連軍指揮下に入らなくてもいいと言明したため、がくっと来ましたが、これは東ティモールだけの問題ではなく、国連を中心にすすめる多国間のPKOの枠組が瓦解しようとしている今日、歯止めとして表明する意義はあったと思います。


内閣総理大臣 安倍晋三殿
外務大臣 麻生太郎殿

 私たちは東ティモールの新たな国連ミッションにおける軍事部門の位置づけに関して重大な関心を抱いています。
 2006年8月25日、国連安全保障理事会はUNMIT設置決議1704を採択しました。この決議で設置されることとなった東ティモールへの国連ミッションUNMITの指揮下には、警察官1600人が含まれることになっていますが、兵士はほとんど含まれていません。現在のところ、軍事部門は、UNMITの指揮下ではなく、オーストラリアが指揮する統合任務部隊(ジョイントタスクフォース:JTF)」として構成されることになっているためです。
 東ティモール政府は、もともと、新たな国連ミッションが軍事部門も統括することを望んできました。また、国連事務総長、東ティモール政府、東ティモールの様々なNGO、ポルトガル、マレーシア、そして国際的な東ティモール連帯運動も、軍事部門が新たな国連ミッションのもとに統括されることを求めてきました。それにもかかわらず、日本と英国、アメリカ合衆国がオーストラリアの主張を支持したため、安保理決議では、このような不幸な妥協が成立してしまいました。
 UNMITの枠外にオーストラリアが指揮する軍事部門が存在することは、東ティモールの主権と国際的な平和維持活動の妨げになります。国連指揮下の国際部隊の方が、中立性と説明責任、そして警察部門など他の治安機関との協力・調整といった面でも優れていると思われます。実際、オーストラリア軍がやってきてから3カ月間に、東ティモールでの争乱状況は改善しましたが、その一方で、オーストラリア軍は、しばしば地域の人々との関係がうまく行かず、社会的・政治的文脈を理解せず、効果的に

暴力を防止することができないでいます。訓練、態度、指揮命令の不備も目につきます。さらに、ティモール海の油田にオーストラリアが利害関心を持っているという疑念と、オーストラリア政府がマリ・アルカティリ前首相の追い出しに関わったという噂があるため、東ティモールの治安維持をオーストラリアに任せることは困難になっています。

 こうした懸念される軍事部門の位置づけについて、安保理の決議1704は、国連事務総長に対し、2カ月以内すなわち2006年10月末までに検討し報告するよう要請しています。
 10月にこの問題が安保理で検討されるとき、議長国は日本の予定です。
 中立かつ効果的な治安管理の復活を待ち続ける東ティモールの人々のため、また、安全保障分野での国連の統率力をこれ以上低下させないため、私たちは日本政府に対し、以下を要請します。

1.日本政府は、これまでの方針を変更し、安保理構成国として豪軍を国連の指揮下に置く案に賛成すること。
2.安保理議長国として、現行国連ミッション、現地政府及び市民、そして国際社会の声に真摯に耳を傾け、この問題を公正かつ慎重に討議すること。

2006年10月10日
東ティモール全国協議会+8団体、57個人


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