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「女性に対する暴力撤廃全国キャンぺーン」がスタート!

古沢希代子

 1125日は世界的に「女性に対する暴力撤廃」の日。東ティモールでは1124日に「女性に対する暴力撤廃全国キャンぺーン」が始まりました。キャンぺーンのテーマは「愛、平和、平等、そして正義ー東ティモールにおける暴力を絶つ」です。このキャンぺーンには東ティモールのさまざまな女性団体や人権団体、そして総理府の男女平等推進局と人権局が参加しています。


 キャンぺーンは1210.日の「人権の日」まで続きます。期間中は、東ティモールの全部の県で、暴力廃絶に関する討論会、ワークショップ、演劇、マーチなどが行なわれ、ラジオやテレビでは特別番組が放送されます。
 写真は1124日にエルメラで開催されたオープニングイベントで上演された演劇のもようです。劇のテーマは夫から妻への暴力、劇団の名前はテアトル・ビビ・ブラック(「狂った山羊」劇場)といいます。テアトル・ビビ・ブラックの劇は、エルメラをかわきりに、マナトゥト、バウカウ、ツツアラ、ロスパロス、イリオマール、ウアトカラバウ、ヴィケケ、サメ、アイリウ、ダレ、ディリで上演されます。
 写真は劇のひとコマで、ドメスティック・バイオレンスの現場に隣人が駆けつけたシーンです。暴力の抑止に人々の意識改革と行動は不可欠です。ある時バウカウの食堂で会ったひとりの国連警察官がこんな話をしてくれました。
 「自分は妻が食事の用意をしていないことに怒った夫がその妻を殺してしまった事件を扱ったことがある。この事件を警察に通報したのは近所の人だった。しかしその後事情聴取のために村人と話をすると大多数の人が『悪いのは妻』だと言う。さらに、被害者(殺された妻)の親が警察に来て、悪いのは自分の娘だから娘の夫を釈放して欲しいと懇願する。もちろん警察はその訴えを退けてその夫を起訴したが、何ともやりきれなかった。もし近所の人の通報がなければ事件は闇に葬られていたかもしれない。仮に反DV法ができても人々に使う意志がなければ何の役にも立たない。」
 受容真実和解委員会の副委員長で1999年度に日本でアジア人権賞を受賞したジョビト・レゴ神父は、ミサの度に夫から妻への暴力の問題に触れるそうです。神父は力説します。「愛情があるから殴ってもよいということは絶対ありえません。殴るという行為は愛情ではあり得ないからです。」
 東ティモールでは、女性の相続権の否定、固定的性別役割観、レイプ、バルラキ(夫側から妻側への婚資)めあての縁組みの強制、早婚による教育機会の喪失、バルラキがらみの妻への暴力、親にバルラキをつんで少女を第三夫人にすること(ポリガミーとバルラキの複合暴力)、女性にひとりの人間としての権利を認めず、女性を家の「財」として「モノ」として扱うことなど、インドネシア占領下で温存されてきた伝統社会の考え方、慣習、暴力はいまだに強固です。
 東ティモール人はインドネシアの支配をはねのけて、一方的に決められたり搾取されたり傷つけられたりする関係性は決してもたないこと証明しました。次の課題はティモール人社会の変革です。


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