<集会>

東ティモール人の来訪相次ぐ

文珠幹夫

 「住民投票」に勝利する前とは打って変わって、来日する東ティモール人の数が多くなった。以前、来日する東ティモール人のほとんどが東ティモール独立支援グループの招待によるものであった。最近、以前では全く考えられなかった政府関係の招待が増えている。
 今年に入ってから開催された東ティモール関係のシンポジウムと集会を紹介しよう。


■文部科学省シンポジウム
「『地域』からみた紛争語の復興・開発支援:実践的地域研究の可能性を探る」

 1月17日〜19日にかけて上智大学で開催された。コーディネートをしたのは国立民族博物館地域研究企画交流センター。東ティモールやアフガニスタンからゲストを迎えたほか、平和研究者らが集まった。スピーカーは28名。
 上智大学の村井吉敬さんが基調演説を行った。村井さんは、グローバリズムを批判した後「(紛争後の)緊急支援以前の平和を築く活動こそが、本当の意味の緊急支援ではないか」「国家や軍や経済利益集団のバイアスを排除したところで「小さな民」の声を一生懸命に聞くのがグローバルな市民社会の任務ではないか」と結んだ。
 東ティモールから来日した、民主党党首のフェルナンド・アラウジョさんは、まず彼の抵抗運動の体験を話した。当時、人権問題で世界がどう対応したか。そして、現在、独立を果たした後の東ティモール復興とそれを巡り東ティモールに対する国際情勢がどう変化したかを批判的に話した。
 また、フェリシダーデ・デ・グテレスさん(元WB職員、元NCメンバー、博物館評議員)、メリシオ・ドス・レイスさん(暴力に反対する東ティモール男性の会)、レペリタ・タンブナン・ペレイラさん(UNFPA)、ジャクリーヌ・シアプノさん(ディリ大学)、ルシア・ロバトさん(社民党国会議員)らが主に東ティモールにおけるジェンダーの問題を話した。多彩なゲストの来日であったが、テーマがジェンダー問題以外にあまり広がらなかったのは少し残念であった。現在東ティモールが抱える問題の一つであるが、他にも社会の復興・再建に絡む国際社会の援助・支援問題、元併合派との和解問題、民兵に「誘拐」された子供達の帰還問題、未帰還の難民問題などの議論を聞きたかったのは筆者だけであろうか。
 アフガニスタンからのゲストは、アフガニスタンにおける民族間の和解問題などの話をした。
 研究者や支援活動に携わっているスピーカーらは支援活動の問題点などが話題として取り上げられた。

■公開フォーラム
「今、なぜ博物館が必要か?」

 ユネスコ、国際協力事業団(JICA)大阪国際センター主催で、2月8日茨木市のJICA大阪国際センターで開催された。この公開フォーラムに先立ち、ユネスコ、国立民族博物館の連携による博物館学芸員養成コースで、東ティモール人10名が1月15日から(2月12日まで)研修を受けていた(注1)。彼(女)らは全員教育文化青年スポーツ省の博物館課職員と文化課職員である。研修内容は博物館学と学芸員研修である。この間、彼(女)らは、国立民族博物館名誉教授の森田恒之さんらの指導を受け、広島の平和博物館、大阪の人権博物館、市町村立の(手作り的な)博物館等も見学した。
 フォーラムでは都留文科大学・大学院教授の野口英夫さんと森田恒之さんの基調講演の後、研修を受けた各人が研修の成果を報告。そして東ティモールの伝統的な結婚式の様子をタイスや冠を身につけ演じた(写真)。休憩時間中には東ティモールの音楽をロビーで演奏した。
 フォーラムの中で研修生らは「高価なものを集めることだけが良いのではなく、全ての時代の文物と日常と非日常の物を収集することを学んだ」「住民参加の博物館にしたい」「大阪の人権博物館が印象深かった。(インドネシア軍、ポルトガル、旧日本軍から)迫害を受け続けた私たちのアイデンティティに関し新しいアイデアを持つことができた」「広島の平和博物館も印象深かった。これからの若い世代の平和教育に役立つ博物館をつくりたい」「立命館大学の平和ミュージアムで、1945年広島と長崎の原爆投下によって日本軍が(敗北し)東ティモールから撤退した理由を知った。被害と加害の問題を提起したい」「インドネシア軍によって奪われた文化財の返還問題に取り組む必要がある」などと語った。
 博物館は、ユネスコと世銀の協力でディリの政府庁舎近くのウマ・フクンに作られる予定である(注2)。

■ジョビト・アラウジョ神父講演会
「『受容・真実・和解委員会』の活動」

 東ティモール・デスク、大阪東ティモール協会共催で、3月6日、大阪・北野教会でジョビト・アラウジョ神父の講演会が開かれた。今回は健康診断もかねての3度目の来日である。ジョビトさんは「受容・真実・和解委員会」の副委員長をしている。既に昨年、同じ副委員長のジャシント・アルベスさんが来日し「受容・真実・和解委員会」が何をどの様に行うのかについて講演を行った。それから約10ヶ月経過。委員会と和解の状況を語った(別稿参照されたい)。また、彼が神父として新しく赴任したアイレウの状況、特に子供の教育にたいする親の意識の問題や復興状況について語った。さらに、宗教と慣習、道徳と信仰、教会と人々との「対話」の問題について熱弁を振るった。

*5月には外務大臣としてラモス・ホルタさんが来日。8月には20名ほどの青年男女が奈良を訪問するとのこと。

(注1)JICAの協力での研修。研修を受けたのはマニュエル・スミンさん、ジョン・ファティマ・クルズさん、ロジャー・ゴンザガ・マルティンスさん、パウロ・ヘンリケ・シメネスさん、オランド・ゴウヴェイア・レイテさん、ジョアン・アルグリア・デ・ジーザスさん、アビ・ドス・サントスさん、アビリオ・ダ・シルバさん、アベリナ・ダ・コスタさん、ファウスティノ・ドス・サントスさん。
(注2)2002年5月の独立式典頃から建物の整備が始まっている。現在、建物はほぼ完成。


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