659 ムラサキ(紫草)

『紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに われ恋ひめやも』


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万葉集にも歌われた有名な植物ムラサキです。古代、紫は高貴な美しい色とされ、布はこのムラサキの根(紫根)で染められました。また、ムラサキは薬草でもありました。草原に生え、高さは50cmほど。5月中頃から1cm足らずの、こんな白い花を咲かせます。特に美しい花ではありませんが、初めての人は『あのムラサキを見た』と感動します。

という、昔から大変有名なムラサキですが、残念な事に今は絶滅危惧種の、珍しい植物となっています。

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と、書いてから1年、今年も秋吉台でムラサキの花が咲きました。

天智天皇の7年、668年5月5日端午の節句の日、天智天皇を始めとする宮中の人々は揃って蒲生野に出かけ、薬狩りの行事が開かれました。男達は鹿の角を拾い集め、女達はムラサキなど野草を摘みました。そして、夜は蒲生野に野営し、当然宴会が催されました。
この宴での額田王と大海人皇子の紫草の歌は万葉集を代表する歌となりました。

−登場人物の紹介−
天智天皇:かつての中大兄皇子  
大海人皇子:天智天皇の弟、のちに天武天皇
斉明天皇:天智と天武の母
額田王:斉明に仕えた高貴な女官。天皇や天皇家の人々に代わって歌を詠む歌人。
     大海人皇子は昔の恋人。そしてこの頃は、兄、天智の妻=愛人

そして、宴もすすみ、大人の時間の3次会くらいの席で有名な紫草の歌2首が披露されました。

−額田王の歌−

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る』

−茜や紫草が生える草原で、野守やあの人も見ているのに
「愛してるよ」と袖なんか振って困らせないで・・・でも嬉しいわ〜



−この歌に応えて、大海人皇子が詠んだ歌−

『紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに われ恋ひめやも』

−高貴な紫の衣が似合う、とても美しいあなたは今は人妻 
それでも、私はあなたを恋しく思っています−

 

「おお〜二人ともやるな〜天智天皇の前なのに」。「遊び、遊び」。拍手喝采。

という、
今のTVワイドショ−も真っ青の大人のシ−ンの歌です。大体、万葉集4500首の半分以上は恋、愛、そしていけない場面の歌。現代語万葉集が出版されると恥ずかしくて・・・有害図書間違いなしです。しかし、そんな歌をかき集め万葉(末永く、この世の果てまで)まで残すための万葉集。一体何を考えているのやら・・(-_-)゜zzz・・・・・・万葉人は大らかです。


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絶滅が危惧されているムラサキは万葉の時代に、既に希な植物であったようです。
『あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る』。
標野(しめの)は「天皇家の所有につき採集禁止」のような標識がしてある草原。野守はそんな草原を見張る番人。
標識だけでは効果がなく、番人までおいて盗採りを防いでいたのでしょう。
価値あるムラサキは当時も、厳重に守る必要がある希少植物であったのが、この歌からも分かります。

さて、
ムラサキは頂上のあたりから白い花が密集して咲き始めます。蕾も多いこの頃が一番ロマンな花姿です(一番上の去年の写真)。そして、次第に花茎を伸ばしながら、同時に下の方でも花が咲いてきます。すぐ上の写真。


6596.jpg (47751 バイト) そして、最後は枝がどんどん伸びて、ヤマジノギクのように、がっかりするほど、まとまりなく咲き乱れます  (-_-)゜zzz・・・ 

ムラサキは(非常に珍しいので)秋吉台のような、広々した草原にだけ生える植物かもしれません。
しかし、その秋吉台でも、採りに来る人が絶えません。野守でもおいて捕まえるか・・・・
・・(-_-)゜zzz・・・・・・。

万葉集や源氏物語にも登場し、古代や中世の人々の心をかき立てたのですが、もともと繁殖力が弱く、しかも、栽培ができないのでやがては消え去る運命なのかもしれません。

実物を見てもどうということもありません。が、せめて、少しくらいは残って、末永く咲きにほって欲しいものです。