新・会津のけむり

( C57180号機 復活に向けて )

デゴイチが会津で運転をしていた頃、埼玉県大宮市のJR東日本・大宮工場では、
新しい「会津のけむり」と成る、C57180号機の復元整備が佳境に入っていた。



1999年2月9日 動輪入れ
午前10時。60トンの巨大な車体が、約100メートル離れた所で待っている、
動輪に向かいゆっくりとクレーンで吊り上げられた。
C57の車体は、歩くようなゆっくりとした動きで、「グオーン」と低いうなり声を工場内に響かせ、
地上5メートルの空中を移動していく。
真っ黒な車体が、動輪の真上で静かに停止した。
これから、誤差0.2ミリという神業に近い動輪入れの作業が始まるのだ。
固唾をのみ注目が集まる中、C57はゆっくりと降下してきた。
「ピッー」笛の合図で、地上2メートルの所で(写真)C57は停止した。
ここからが腕の見せ所らしく「ピッー」の合図で、前が数センチ、「ピッー」で後ろが数センチと、
前後に揺れるように徐々に動輪に近ずいて行く。
気の遠くなるような、微妙な作業が続いた。
午後1時すぎ「よーし」の合図でクレーンのフックがはずされ、
C57の動輪入れの作業が無事終了した。
また、この作業を見守っていたのが、新津区、会津区、郡山工の整備士たちだったことが心強く感じられた、
彼らこそ、これからのC57の保守、点検、整備に欠かせない人たちなのだから。




1999年3月4日 火入れ 
投炭するにしたがい、C57は徐々に蒸気圧を上げていった。
ボイラが、ゴーゴーとうなりだし、開放されたドレインコックのすべてから蒸気が勢いよく噴出してくる。
C57180号は、30年という長い長い眠りから醒めたのだった。




1999年3月12日 構内試運転
午前11時、C57は構内試運転に向け、ゆっくりと整備庫から動きだした。
午前11時20分、「ヴォォー」と大宮駅周辺に汽笛を響かせ、試運転が始まった。
C57は体全体をふるわせ、ドレインを吹きながら、「ボッ、ボッ、ボッ」とリズミカルなドラフト音を響かせて走ってきた。
この日は、1400メートルの工場内試運転線を、6往復して試運転初日を無事終了した。

リズミカルにロッドが動き、1750ミリの動輪が力強く回転する、迫力満点の試運転だった。

この後、C57は15日に2回目の構内試運転を行い、3月26日には新津区に無火で回送される。
4月3日からは、磐越西線での本線試運転が始まるとの事。
4月29日からの「SLばんえつ物語号」の運転に向け順調なすべりだしだった。





室蘭本線 社台駅 C5738  1975年8月
上が大宮工での試運転時のC57180号、下が現役時代のC5738号との比較写真。
北海道仕様のC57に比べ、いかにC57180号が美しいかがおわかりいただけよう。




1999年4月29日 新津駅でのSLばんえつ物語号出発式

「鉄道員(ぽっぽや)」の主演男優・高倉健がテープカット、出発式に花を添えた。


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