リムジンバスの大型トランク(バゲージルーム)・屋根上のエンジン直結式クーラー

 

長年空港輸送に携わっているリムジンバスならではのこだわりの装備をご紹介します。

トランクルーム・バゲージルーム(荷物室)

東京空港交通リムジンバスは他の空港バスに加え国際線乗客が多く、荷物容量も多いことから1980年代後半の車両からはエアコンを屋根上に設置(直結冷房)し、トランク(荷物室)を3区画確保している。
従来から高速バス・観光バスの車両はエアコンが床下に設置されているため、トランクルームは2区画の車両が主流だった。
2000年代に入り、空港〜都心部以外の地域路線が数多くでき、東京空港交通や京成・京急以外の地場のバス会社が空港路線に共同運行という形で参入してきたが、東京でも羽田空港線では2区画の車両を使用する共同運行会社が多かった。
空港主体の京急や大阪空港交通も国内線旅客が多い空港を主にしているため、2区画の車両が主になっているが路線により使い分けていた。

2006年頃より、高速バス・観光バスにJBUSセレガ・ガーラがデビュー。この車両からは標準が屋根上(直結)エアコンとなり、2015年には来日外国人による爆買いブームが起こりトランク容量が不足してきたため、東京空港交通以外の高速バス・観光バス運行の会社も3区間のトランク車両を導入するケースが増えてきている。そして、2017年に2TGエアロエース登場後は国産のバスは全て屋根上の直結式のみとなった。

下の写真をみればわかるが、トランクルーム内の装備も東京空港交通はこだわりがあり、他社に先駆け、専用のキー、台車、網、乗降扉連動のサブロックなど安全かつ頑丈なつくりとなっており、ここまで徹底している会社は他に類を見ない。2017年度導入車からはサブロックが電磁ロックに変更になった。
これらのトランクルームの装備は東京空港交通がはしりとなり開発され、その後、他のバス会社でもこれらの装備の一部を採用するようになっている。

リムジンバスの荷物室は前方より1番、2番、3番と呼ばれる。
各トランク内には荷崩れ防止ネット(網)と、トランクルーム内にラゲッジキャリア(台車)が取り付けられ奥側にも荷物を入れやすくなっている。

トランクルームはスイング式という上に引き上げるタイプとスライド式という横開き(観音開き)の2タイプがある。2003/04年に日野・セレガRにエアポートライナー仕様という車種ができ意外にもスライド式トランクが採用されたが、2005年に登場した新セレガ(セレガ)ではスイング式が採用され短命に終わった。
1995年以前の車両はスライド式が主だったが、その後はスイング式が主となっている。

3区画あるトランクだが特に成田線(2015年以降は羽田国際線も本格化してきて荷物量が増加)では満杯になることが多く、空港や駅・ホテルの旅客係(バス停の係員)が芸術的に積み込むが、まれに荷物が入りきらなくなり荷物だけの増便が手配されることもある。
また子供連れが多いTDR路線などではベビーカーがそのまま積み込まれることも多い。

トランクルームの使用は
成田着便は 2P-1P/S-1P/N+3P
羽田着便は 2P-1P-国際 の順(成田発羽田は 2P-国際-1Pの順)
成田発便は 2番〜3番〜1番と降車バス停順に
羽田発便は 1番〜2番〜3番と降車バス停順に
使用されるが、バス停のガードレールやホテルの柱の位置などから
多摩便は 1番〜南大沢・多摩・桜ヶ丘
池袋便は 1番メトロ 3番サンシャイン
練馬便は 練馬-中野-野方
とイレギュラーなルートもある。
成田線はスライド式トランクの名残で2番・3番が優先されている模様。
 
・スイング式トランク(荷物室)
屋根上の直結冷房を採用しているため横3つぶち抜きの大型トランクルームを備える
中央の2番荷物室は中の台車(引き出し)を引いている状態
荷物詰め込み後、荷崩れ防止ネット(網)をし、トランクをしめると内部が棒でロックされる、頑丈な仕組みになっている。
このサブロックは乗降扉と連動しており、乗降扉が開かないとトランクが開かない仕組みになっており安全性を確保している。トランク内をこれほど頑丈にしている会社は殆どない。
L619 ユーロツアー
東京空港交通トランクルームのアップ。トランク内のラゲッジキャリア(台車)が奥にあるのがわかる。この台車に乗せ奥に押し込めば、簡単に荷物の出し入れができる。トランクルーム内にはライトも設置され、夜間の視覚も確保されている。照明もLEDになりトランク内でのでっぱりが減ったことで多少ではあるが荷物搭載容量が増えた。
トランク内に赤ランプがあり、台車がロックされていないと点灯する。

M96までの三菱車は、トランクルームの高さが低い点に加え、写真のように床が(斜めに)トランクルームにでっぱっており、多くの荷物を積載するリムジンバスでは、この部分がネックになることが多い。
L284 エアロエース
日産(西工)車両のトランクルーム。
上の三菱車のトランクルームに比べ高さもあり、容量が大きいのがわかる。

都心方面のホテルや新宿駅など荷物が満載になりやすい路線では、トランクルームの広さは大きく影響する。

2006年導入のこの車両はトランク内の照明が色でわかるようにLEDでなく電球を使用。

L699(R2)
トランク内にも台車ロック忘れの赤ランプがあるが、運転席にある警告装置にもトランクロック関係のランプがいくつかある。
左上の赤四角のランプはトランクが開いていると点滅。
左下4つの赤丸ランプもトランク関係のランプ
左側からトランクリッド(トランクの蓋の意味)警告灯 左側、台車、右側の順。
左から4つ目がサブロック。

L943 エアロエース
東京空港交通・リムジンバスの荷物室(トランク)には専用の鍵も装備。(写真右上)
現在も使用しているが、2012年導入の車両以降は取り付けられなくなってしまった。
この鍵は以前TCATでチェックインをしていた際、チェックイン済の荷物をリムジンバスで運搬していたため、簡単には開かないようにこのような仕様になっている。
リムジンバスならではの荷物室の鍵。
鍵のメーカータキゲン製。 
こちらはスライドタイプ(横開き)

トランクを開けるのが重いなどの理由からここ数年はスイング式が採用されたが、2003年に入りセレガRにスライドタイプが採用された。

空港向けの各バス停ではこのようにトランクを開けお客様を待つ。 なかなかトランクを使わせてくれない高速バス会社もあるが、リムジンバスはそのようなことはない。
JBUSのセレガ・ガーラはトランク容量が三菱車より大きく、爆買いブーム(2015年)以降では人気の車種となっている。
バゲージルームの高さがあり、スーツケースを立てたままで入れることができるためより多くのスーツケースを収納できる。

L573 オークラ
荷物には、各方面や各ターミナル別に色分けされたカラフルなバゲージタグ(手荷物タグ)が用意されており、航空機に荷物を預ける際と同じように、このタグが貼られる。(旅客係員やホテルスタッフがいないバス停ではつけられない)
各方面向けは上から4番目のオレンジのタグのように降車場所が明記されており、該当降車バス停にマークがされる。

各空港のタグの色は
NRT2:青-NRT1S:緑-NRT1N:赤-NRT3:ピンク
HND2:紫-HND1:赤-HND国際:灰
直結エアコン(屋根上エアコン)

東京空港交通・リムジンバスではトランクルーム(荷物室)確保の影響で、エアコンを屋根上に搭載している。
2000年以前では、他社でこのようなバスは少なく、屋根上にエアコンがのっていると非常に目立っていた。

通常観光バスや高速バスタイプの車ではトランクの位置にエアコンが入っているため、屋根上のエアコン(直結式クーラー)は空港車ならではの姿だったが、2006年のセレガーラ登場以降は一般の観光バスや高速バスも屋根上エアコンの採用が増えた。
直結式のエアコンはサブエンジン式エアコンに比べ、エアコン使用時の音も静かで車内環境も良い。

東京空港交通では2001年に導入された箱崎事業所所属の羽田線車両6両がトランク2区画のサブエンジンエアコン車両で、それ以外は屋根上(直結)エアコンの車両だったが、羽田空港も新国際線ターミナルが開業し海外からの旅行客が増えたのと、日本人も旅行時にスーツケースを持つようになりだしトランクルームの利用機会が増え、この6両の入替時期の2015年には屋根上(直結)エアコン車で入れ替えられることになり、2015年2月に全車両が屋根上(直結)エアコン・トランク3区画の車両となった。
屋根上にエアコンが搭載されている東京空港交通のリムジンバスに対して、前方の京急リムジンは床下にエアコンを搭載している。
京急リムジンの前方のタイヤの後ろにあるルーバーがサブエンジンエアコンがある部分。このためトランク容量が2区画しか確保できない。
後方の東京空港交通車両は屋根上がでっぱっており、エアコンがのっているのがわかる。
写真はDENSO製のクーラー日産車両は98年車までは左の角型クーラー、99年以降は右のひらべったいクーラーに変わった。
DENSO製は日産車・日野車に採用されている。

(TDLにて)
三菱FUSOのエアロバスは三菱重工のエアコンが搭載されている。
2005年よりダイムラーの出資比率が増え、車両から三菱色も順次薄れていき、エアロエース以降はDENSO製のエアコンに変更された。
左の写真は三菱重工製。

TCAT(箱崎)にて

三菱FUSOのPJエアロの直結エアコン。(三菱重工製)

先代のエアロに比べ小型化された感じがする。
ファンの数も6から4に減った。

L161 TDL
2005年のデビューした JBUS(日野・いすゞ)のセレガ・ガーラでは屋根上の直結クーラーが標準装備となり、今まで一部の空港系のバスでしか見られなかった直結クーラーが一気に広まった。
この車両では今までのような後付けという印象でなく、デザインの一つとしてまとめられている。
初期のセレガ・ガーラはファンが4つ。

L104 舞浜交差点
東京空港交通では2012年導入のセレガーラ以降は屋根上のファンが1つ減り3つとなった。

L253 NRT1PTB
2008年にリムジンバスでは初導入されたエアロエースの直結クーラー。
三菱車もスマートなデザインとなった。

L224 新横浜プリンス