No.20「形容詞で飾らない言葉表現を」 

(稿:三石あき)



【序】

 前号では、JVA結成10周年記念全国交流会“軽井沢の集い”での、山崎登さん(NHK解説委員)の講演をご紹介しました。この中で山崎さんは、コメント(ナレーション)において、形容詞をできるだけ使わないようにと話されました。今回は、これについて筆者なりに、もう少しふれてみます。

 (1)内容の乏しい表現

 はじめに、次のコメント(ナレーション文)を見てください。
 『A子さんは非常に優しい、素晴らしい人です』
 このコメントが聞こえてきたら、あなたはどんなことをイメージするでしょうか。「優しい」の前に「非常に」をつけて、並みの優しさではないことを強調しています。おまけに「素晴らしい」と付け加えて、魅力的な人だと思わせています。確かに誉めています。そうかと思いたくなるかもしれません。
 このようなコメント(ナレーション)は、時として耳にします。でも、どんなに優しいのか、どんなに素晴らしいのか具体的なイメージがわきません。ビデオを見る人の脳裏に残りません。では、どうするか。そこがコメント(ナレーション原稿)を書くときに重要なポイントになります。

 方法としては、
  • 一つは形容詞、修飾語に当てはまる映像を生かすこと。
  • もう一つは、ふさわしい映像がない場合は、具体的な言葉で表現をすること。


 2)具体的な映像に語らせる

 たとえば、A子さんが「優しい」からといって、やたらと形容詞、修飾語を使うのではなく、「優しい」A子さんを具体的な映像で示すことです。それらしい映像を現場で探す(撮る)こと、それを選んで使う(編集する)ことで、「A子さんは優しい人」を画面で見せることが基本です。

 もう少し例をあげましょう。
(例1)
『B子ちゃんは6歳。日本舞踊の稽古では師匠の厳しい指導に歯を食いしばって耐えています』
 このようなナレーションの場合、映像に「厳しい稽古」に見合うような緊張感がなかったら、見る人は満足しません。このようなシーンでは、師匠の厳しい声が飛び、泣きべそをかきながらも、それに従うB子ちゃんが見たいものです。そうした映像があれば、「厳しい稽古」や「歯を食いしばって」という言葉を使う必要はありません。ナレーションを入れるとしたら、映像だけではわからないことを取材すると良いでしょう。
(例2)
『山麓の広い斜面にはきれいなコスモスがいっぱい咲いていました』
 このナレーション文が間違いというわけではありません。簡単に言えば、このナレーションの映像が撮れていれば良いのです。あとは「広い」ではなく「南向きの斜面」とか、「きれいな」ではなく「1万本のコスモス」、というように画面だけでは分からないことをナレーションにすれば良いのです。
 (3)具体的な言葉
 それでも映像がないときにどうするか、上記のA子さんの優しさを伝えるのに、それを示す映像がない(撮れなかった)場合です。
(例3)
『A子さんは非常に優しい、素晴らしい人です』
 このナレーションも間違ってはいません。しかし、見る(聞く)人が映像的ないイメージを描けるような言い方はないのか。それを取材し、ナレーションにしたいものです。荷物を抱えて雑踏の中を歩くお年寄りになにげなく手を貸すA子さん、人に踏まれた野の花をそっと持ち上げるA子さん。抽象的な飾り言葉でなく、具体的な言葉でA子さんを表現すれば良いのです。取材撮影とは、具体的な事実を見つけることです。


以上