No.15「ナレーションコメント その4」 

(稿:三石あき)

ことば・あたたかい心を伝えたい


 1】中国故事にいわく『巧言令色鮮仁』
  • 良いナレーションの一つの条件として、形容詞や修飾語をできるだけ使わない文章にすることは以前にも書きました。もう一つ気をつけたいのは“ヨイショ”文にしないことです。主人公をやたらと持ち上げたり、必要以上に美化したりするとウソっぽく聞こえてきます。
  • かんじんの映像がともなわないオベンチャラは、しょせんそれだけのものです。こうした美化言葉は作品の品性を傷つけることはあっても、質を高めることには結びつきません。中国の「論語」という古書にあります。『巧言令色、鮮なし仁』(コウゲンレイショク、スクナシジン)。


  •  2】子供ことばと大人ことば
  • 子供たちが被写体の場合、ナレーションの言葉をどのレベルにするかは考えどころです。たとえば、小学校低学年のサマーキャンプのビデオ。ここでナレーションが幼児言葉を連発したら作品の雰囲気をちぐはぐなものにするでしょう。小さい子供も毎日、テレビを見ているのです。言葉のレベルは年配者が思うより、ずっと高いとみていいでしょう。
  • 逆に一般の被写体が大人のビデオを子供に読んでもらうときにも要注意。難しい言葉を幼い声で読むナレーションも奇妙なものです。蛇足になりますが、小学校の卒業式で「走馬灯のように……」と読むのを聞くと私など、「ええ、走馬灯を知っているの…?」という気持ちになります。
  •  3】難しい専門用語
  • 「本市(ホンシ)は○○県の東北に位置する農業と観光の町です」、これは市町村要覧(案内)でよく見かける文章です。「本市」が「本県」になったり、「本校」になったりはしますが、自分のところを言う時につける「本▽」はナレーションとしては困る表現です。もちろん、「本校」が校内放送の場合は問題ありません。しかし、外の人が見るビデオなら「本▽」は、使わないほうが良いのです。市町村要覧や役所の文書を使う時には、それを耳から聞く言葉に変えてコメントする必要があります。
  • たとえば、ビデオに関係する言葉。「パーん」、「DV」といった基礎的な用語でもビデオに関心のない人には分かりにくい。専門的になればなるほど理解されなくなります。外来語またしかりです。こうした言葉をどこまで分かる言葉にするか、ここも工夫のしどころです。
  •  4】差別問題と向き合う姿勢
  • 先ごろ、鳥取県で赤ちゃんが奪われる事件がありました。その時、ほとんどのマスコミが『◇◇◇◇さんの赤ちゃん…』と◇◇に父親の名前を出していました。考えてみれば、赤ちゃんを産んだのは女性です。なのに母親の名前が報道されないことに私は疑問を持っていました。(その後の報道では両親の名前を入れて伝える報道もありましたが)
  • 現在の日本には残念ながらいろんな差別が色濃く生きています。女性差別、部落差別、民族差別、障害者差別…などです。日常生活の中で何気なく使う言葉が、相手を傷つけ、結果として差別することがあります。悪意の差別ではないからしかたない、というわけにはいきません。誰かに見てもらう作品であれば、差別の問題から逃げることはできません。作品はあなたの心をそのまま伝えます。せっかくの作品です。あなたの温かい気持ちを込めた作品にしてください。
  • 最後に、ナレーションにとって大切なのは、語る言葉と声が説得力を持つことです。聞いていて違和感がなく、「なるほどそうか」と思えるナレーションです。美声である必要はありません。誰が見てくれるのか、誰に聞いてもらえるのかを頭に入れて、コメント全体と個々の言葉の意味を理解し、自信を持って語り、人に聞こえるように声を出せば十分です。
  • ※次回は「モニターを大切に」

    以上