入居

 B&B に 10 日あまりの滞在の後、いよいよ入居の日が来た。ツマはすでに 日本に帰っている。僕の英語力だけで対応できるだろうか。余裕を持って早目に 到着し、家の前で待っていると、お隣の家の奥さんがちょうど出てきたので、 まずは挨拶。「わからないことがあったら、なんでも聞いてくれ」とのこと。 頼もしい。不動産屋の Linda さんは、時間ぴったりにやってきた。前に 会ったときもそうだったのだが、時間に正確な人である。

 まずは、インヴェントリ・チェックというものがある。 物の本によると、インヴェントリ・チェックのときには「家主と入居者、 それに、インヴェントリ・クラークという専門家の三者が立ち会い、家の備品 などを一つ一つ照合していく」などと書かれている。しかし、自分の場合には、 まず家主がいない。なんと、カナダに住んでいるのだとか。また、特に 一箇所一箇所見て回って、不動産屋と二人がかりでチェック、などということは まったくなかった。備品リストを渡されて、「これでチェックして、何かあったら コメントを記入して、72 時間以内に返送してね」これだけである。ガスメータ、 電気メータの数値は、さすがに二人でその場で確認したが。

 インヴェントリ・チェックを行っているときに、前の住人が現れる。実は この家、完全な家具つきではなく、ベッドとダイニングの椅子がない。そこで、 Linda さんに、もし前の住人がベッドを持っていかないのなら譲ってほしい、 との伝言をお願いしてあったのだ。結局、ベッドを安く譲ってもらうことになった。 ダイニングの椅子も置いていってくれるそうで、とりあえず、すぐに暮らせそうで ある。

 備品のチェックをひととおりしたが、特に問題になりそうなところはなかった。 細かいところでは、家具の角の化粧板がはがれかけていたりするところなどが あったため、いちおうコメントを記入しておく。

 荷物を取りに戻るため、近所のバス停からバスに乗り、一度宿に戻る。今週は たくさんバスのお世話になりそうなので、Megarider ticket というのを買った。 これは、1 週間有効で、このあたりのバス( Stagecoarch Cambus という会社が走らせている)に乗り放題、という乗車券である。買った当時は 6 ポンドであったが、最近(2000 年 11 月)、6 ポンド 50 ペンスに値上げ された。

 宿から荷物を運び出し、今度は Cambridge 駅へ向かう。トランク、ショルダー バッグ、デイパックと、盛りだくさんの荷物なので、さすがにバスを使う気には なれず、駅からタクシーに乗ろうと考えたのである。実はイギリスでタクシーに 乗るのは初めてである。 物の本によると、「まずは助手席の窓から行き先を告げ、OK が出たら後席に 乗り込む」などと書いてあったが、ここでの流儀は異なるようで、皆さんどんどん そのまま乗り込んで、車内で行き先を告げているようだ。それに従ったが、特に 問題はなかったようである。問題は支払いで、運賃と荷物代で、4 ポンド 30 ペンスであった。チップを入れて 5 ポンドかな、と思い、5 ポンド札を出したら、 運転手氏は 70 ペンスのお釣りをくれた。思わず受け取ってしまい、タクシーは そのまま爽やかに去っていったのだが、これで良かったんだろうか。ここいら では、タクシーにはチップは不要なのだろうか。実は良くなかった。後日、 こちらの日本の人に料金の払い方を尋ねてみたところ、「運転手はおつりは ちゃんとくれる。そこから改めてチップを渡す」というプロトコルである ことがわかった。うーむ申し訳ないことをしてしまった。礼儀を知らぬ東洋人、と 思われたに違いない。

 荷物を運び込み、さらに設備のチェック。生命線(笑)のガスだが、ハイテクで ある。イギリスでは、わかしたお湯をタンクに溜めておき、タンクのお湯を 使いきるともはやお湯がでなくなる、というタイプがあるらしいが、うちのは 瞬間湯沸器だと思われる。セントラル・ヒーティングの装置には、タイマーが ついており、一日に 2 回、ON-OFF が可能。暖まるまでに時間はかかるが、 なかなか快適である。シャワーの水圧も十分。

 家の周辺の環境であるが、当初考えていたよりも便利であることがわかった。 職場までは自転車で 6 分、歩いても 20 分くらいである。大きくはないが、 スーパーマーケットにも歩いて行ける。近くのバス停のところには、郵便局や コンヴィニエンス・ストアがある。City centre ヘバスで行く場合、8 番と 5 番 の、両方のバスが利用可能である。平日と土曜日の日中は 8 番は 20 分おき、 5 番は 30 分おきに走っているため、雨の日に city centre に行くときは 重宝している。8 番は、日曜日は走らない(正確に言うと、途中止まりとなり、 こちらまで来ない)のがちょっと残念な点ではあるが。

bus stop bus stop bus stop
近所のバス停とその付近。

 住み初めて 10 日ほどたったある日曜日、最初に会った方のお隣さん、Steve & Jane 夫妻に、お茶に招かれる。ご夫妻は Scotland 出身で、子供は 3 人 だとか。お隣の庭はとてもきれいで、いつも気になっていたのだが、今回案内 してもらうことができた。面白いのは、日本のこいのぼりの、吹き流しに似た ものが庭に吊るしてあることだ。「日本でもこれに似たものがあり、子供の 健やかな成長を願って飾る」ということを、つたない英語で説明してみたりする。 ちなみにイギリスのこれは、単なる飾りだそうな。「日本では、こんなにいい 庭のある家に住むのはとても困難だ」と話したら、「庭があると大変。いつも 手入れしていなきゃならない」と笑っておられた。後日、こちらの職場の 日本人 H さんに、お茶に招かれた話をしたら、あまり親しくなっていない場合、 それはけっこう有り難い話らしい。ここで「有り難い」というのは、文字どおり、 あまり無いケース、という意味である。「それ、すっごい良い人」と、 H さんは力説していた。もしかすると、隣人に恵まれたかもしれない。しかし、 反対側の隣人は、実はいまだに顔を見たことが無く、挨拶をする機会に恵まれないで いる。生活時間帯がよっぽど異なるのだろうか。訪ねて行ってもいいのだろうが、 来て最初の機会を失い、ついそのままになっている。

 うちの庭も、不動産屋が手配していた庭師が来て、たいそうきれいになった。 庭の椅子でぼーっとしていると、鳥がたくさん来て、なかなかいい感じである。 庭付きの大きな家などは、日本では住めそうにないので、今のうちに満喫して おかねば。ちなみに家賃は高い。具体的な金額を言うのは避けるが、みな 「ケンブリッジは家賃が高い」と言う。City centre から遠い分、まだうちは ましなのではあろうが。

garden collared dove
家と庭。2 枚目はイギリスのハト(Collared Dove)。 下にはイエスズメ(House Sparrow)も見える。


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