10月の詩

四つのはじまり


分離していく炭素を眺めていた。揺らぐ円形、基底材には灰。焔

が揺らめき差し引かれた周辺において、待ち続ける二人。気体と

灰への分離を繰り返す。誤謬を含んだ実験の逸脱なのか、悪い循

環での疲労なのか、記録は欠損をはじめていた。微弱なノイズに

反応して錯綜するわたしたち。単性の綻びかもしれない。リノリ

ウムのフロアーの上で、遅い光が痕跡を重ねている。わたしたち

の表面の明るさ、介在する回路の遅延によって単性からの分離が

起こっている。単性の深みでの変換は幻影でしかない。差し引か

れた周辺において、羽根のようなものに接続する。燃え上がる地

図から白く曇った膜を抽出して中断するわたしたち。

残留するノイズ。遠景からしだいに近接してくる絵画は地図への

通路を残している。一つの襞に集約され、複数の出口を約束する

分子状アレンジメント。四つのはじまり。彼女の動きやすい声は、

歪な広がりを持ち、二重に重ね塗られた丸い円の弾性に縁取られ

ていた。彼女の声の波及は、単性の深みにおいての分割を準備す

るだろう。基底材としての炭素から緑の襞へ。再びテーブルをは

さんで羽根のような風が流れ込んできた。分離することを知りな

がら、襞への分割ははじまる。わずかな日差し、希薄な大気、焔

によって分離することがはじまりではない。凪いだ海辺での出来

事は気づかれない。その裾のから分離を話し合って、たどりつく

ことになる痕跡としての長い膜、微細な金属粒子による分子状ア

レンジメント。


再びテーブルをはさんで、介在する回路の遅延を欲望していた。

彼女の輪郭は声に近似していた。痕跡としての線分がここまで伸

びている。至る所で分離が進行している夕暮れ。彼女からの遅れ

が隔たりを発生させるのではなく、単性の深みでの分割が彼女の

声を準備はじめている。焔という分離、大気と灰への分離は、

ひとつの平面を形成するに留まるだろう。錯綜した夕暮れ、中心

までの距離、介在するノイズ。焔が循環させる単性の深みにおい

て準備される分割が、浸透した層を潜り、遅延された二人の声を

約束するだろう。テーブルをはさんだわたしたちは、遅延する回

路と括弧で結ばれた領域として、一つの襞でもあるのだった。



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