アトピービジネス関連で初の実刑判決(前記事の判決)
歯の神経抜き「アトピー治療」元歯科院長に実刑(東京地裁判決) (読売新聞朝刊(2004年4月20日)より)
アトピー性皮膚炎を治すとうたい、歯の神経を抜いて治療費をだまし取ったとして、障害、詐欺、医師法違反などの罪に問われた元歯科医院院長の清水秀雄被告(71)に対し、東京地裁は19日、懲役2年6月、罰金80万円(求刑・懲役4年、罰金100万円)の実刑判決を言い渡した。松田俊哉裁判官は「わらにもすがる思いの患者をだまし、アトピービジネスを行っていた」と指摘した。医学的根拠のない治療法や商品による「アトピービジネス」が社会問題化する中、これまでに刑事責任が問われた唯一の事件で実刑判決が出たことは、医師や業者らに対する警告となりそうだ。
判決によると、清水被告は2000-2002年、東京都北区で自分が経営していた歯科医院で、患者7人に「アトピー性皮膚炎の根本治療」と称して歯の神経を抜き、薬剤を詰めた。
判決は、清水被告が治療前に「ステロイド剤は使わない」と約束しておきながら、実際にはひそかにステロイド剤を混ぜたクリームを患者に売っていたと認定。「治療効果に疑問を持たれないようにしていた」と指摘した。
清水被告はインターネットのホームページに、「現代医学の最先端を行く治療」という宣伝文句や、「完全に治りました」という患者体験談を掲載していたが、判決は「患者の写真も偶然良くなった時期のものの可能性がある」とした。
アトピー性皮膚炎を巡っては、1980年代にステロイド剤乱用による副作用が問題化した影響で、90年代以降、「脱ステロイド」を標ぼうした高額な食品や器具を販売したり、医学的根拠のない治療法を施したりする商法が多数登場。「アトピービジネス」と総称されるようになった。
日本皮膚科学会は、不適切な治療で症状が悪化するケースが多いとして、ガイドラインを公表するなど対策に乗り出した。2000-2001年には、同学会に医療機関や患者から「不適切治療」の情報が200件近く報告されていた。
同学会理事の竹原和彦・金沢大教授によると、現在もインターネットの通信販売では、アトピー関連書籍の売れ行きの上位を悪質商法を宣伝する本が占めており、大学教授の推薦文で効能を信じ込ませようとしている例が目立つという。竹原教授は「初の刑事事件の判決で詐欺的行為が認定されたことは抑止力になる」と評価している。
戻る
|