☆東芝EMI ALCB-3154 ¥2.000☆


☆レコード芸術(音楽の友社)/1997年2月号〜新譜月評より


この荘厳ミサ曲は、ベルリオーズ20歳のときに作曲されて以来行方不明で、作曲者自身によって破棄されたと見なされていた。しかし1991年に偶然発見され、1993年、ガーディナーのライヴ録音によってわたしたちの耳にとどくものとなった。 この加奈井洋介指揮による演奏はわが国初演。 曲は楽想がゆたかで、しかもみずみずしい。ベルリオーズ特有のロマン的な夢想と苦悶の入り混じるどぎつい効果はまだ顕在化していなくて、気高いものに憧れるリリカルな美しさで引きつける。ところどころに後の<レクイエム>や<幻想交響曲><ベンベヌート・チェルリーニ>や<テ・デウム>のメロディーが聴きとれるが、そのことはつまり、彼はこのミサを捨てて、二度と使用するつもりがなかったことを窺わせる。 指揮はこの曲の目指す意図をよくとらえている。憑かれたように霊感を求め、超越的なものに触れて浄化をはたしたいという願いが伝わってくる。もう少しで入神の技に達すると言えるほど。その感情移入の姿勢には共感できるところが多いものの、集中力と持続力がところどころ途切れるのが惜しい。合唱もオーケストラも熱演しており迫力はあるし、リリカルな美しさへの反応も十分だが、速いテンポや込み入ったパッセージでのアンサンブルに問題がなくもない。また指揮者の意図が不消化なまま処理されている箇所も散見される。もっと練習時間があればより統一的な演奏が実現できたと思われてならない。<喜多尾道冬>

☆CDジャーナル(音楽の友社)/1997年1月号〜「12月新譜試聴記」より


これは一聴に価する。同作品は91年に発見されたベルリオーズ最初期(20歳)の珍曲。日本初演(95年)のライヴである。まだ古典的な筆法と響きがするが、「幻想」と同じ楽想が出てきたりして驚かせる。 オケの水準は極めて高い。是非ライヴで聴きたかった。<斉藤弘美>

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