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アヤシゲ翻訳 テレビシリーズ1 エピソード4 / Tundra ツンドラ


 オープニング・トーク

(赤いカーテンの前にハワードとヴィンス登場)
ヴィンス:ハイ。俺はヴィンス・ノワー,こっちのイカレたにいちゃんは、ハワード・ムーン
(ハワードの胸に触る)
ハワード:触るな。
ヴィンス:ジョークが大好き。こいつはいつもこうなんだ。
ハワード:ジョークじゃない。俺には触るな。今も、ショーの間も、その後も。
(二人で顔を見合わせて)
ハワード&ヴィンス:ははーん?!
(ヴィンス、ハワードに触る)
ハワード:触るんじゃない。
(ヴィンス,むっとしながら離れる。)
     今週のお話で、私たちは遠いの国へ、恐るべき旅に出かけます。しかし同時に、また別の旅に出るのです。
     深い人間性への旅を、私の演技力でお見せします。
ヴィンス:さらに、あるシーンでは俺が羊の足の姿で登場します。すごいぞ!
ハワード:それ、無し。俺が脚本を書き換えた。
ヴィンス:一番良いところなのに。
ハワード:うん…俺らもそうだと思ったんだけど…やっぱ違うな。
ヴィンス:「俺ら」って何だよ、「俺ら」って。
ハワード:俺とリロイで本を見直した。
ヴィンス:リロイだとぉ?
ハワード:ああ。
ヴィンス:リロイなんて脚本作りを一緒にやってないじゃないか。今、スケート場で働いてるし。
ハワード:新しい視点を持ってるだろうと思ったからさ。新鮮な感覚とか。
ヴィンス:あいつなんて、つまんないオモチャ売ってるだけじゃん。
ハワード:あいつが書き直したんだ。
ヴィンス:そりゃ凄い。
ハワード:この方が良いって。
ヴィンス:へぇ。ヒツジ足の所は、最初あいつのアイディアだったんだぞ。
ハワード:俺に言われてもねぇ…
ヴィンス:リロイに電話して、文句言ってやる。
(退場)
ハワード:ああ。
(カメラに向かって)番組をお楽しみください。(ヴィンスに続いて退場)
(カーテンが開いて、オープニング・テーマ,スタート)



 動物園・ズーニヴァースの一角

(動物園のスタッフが集まられ、ミーティングが行われている。)
フォッシル:オーケー。揃っいましたね。
       世界的に有名な冒険家で、動物園のオーナーであるディクソン・ベインブリッジが、今日、帰国しました。
       そして北極圏のツンドラについてレクチャーを行うそうです。みんな!ラッキーだぞ!
       ついては、くれぐれも粗相のないように!
       I want everyone to mind their Ps and Qs. That means no effing and jeffing.
*求むお助け!
       それから、見苦しくないように。ナブー、お前の靴の事だぞ。
(ナブーの裸の足を指す)
       おいケロアック。櫛で髪を梳かしたのか?今すぐどうにかしなさい!
       もうすぐ彼が到着するぞ。でも慌ててはいけませんよ。私たちは助け合ってきたし、長年の友達でもある。
       ベインブリッジは私の頬にキスするかもしれないし、唇にかも知れない。どれほどの幸運かは分からないけど…
       ああ!彼が来た!さぁ門を開いて!
(盛大なファンファーレと共にトランクを持ってベインブリッジが入場)
フォッシル:ようこそいらっしゃいましたベインブリッジ!従業員を代表して…ぎゃぁあ!
(抱きつこうとすると、ベインブリッジがいきなり股間に蹴りと顔面にパンチを食らわす)
ベインブリッジ:
(かばんの)一つは寝室に、もう一つは宴会用だ気をつけて扱え。(さっさと退場)
フォッシル:
(従業員たちに)何見てんだよ!(ベインブリッジに)イカしてましたよ、ベインブリッジ!
       
(従業員に)仕事に戻れ!
       
*求む!お助け!:I want everyone to mind their Ps and Qs. That means no effing and jeffing.
 このフォッシルの台詞はどう訳すべきでしょうか?


 ズーニヴァース,猿の檻内

(ヴィンスがスコップで下土をかき集めている間、ハワードは突っ立って外を眺めている。)
ハワード:まったく嫌になる。
ヴィンス:どうかした?
ハワード:俺は熟練した飼育員だぞ。なのに日々をクソの山を掘り返して過ごしてる。
ヴィンス:随分大量だな。
ハワード:こんなに、どこから沸いてくるんだよ?
ヴィンス:あいつ。
(木の上の猿を示す)
木の上の猿:はぁ?バナナ一本しか食べてませんよ!
ハワード:俺の功績に対する敬意ってのはどこにあるのか、知りたいよ。
ヴィンス:まぁまぁ。またそうやってピリピリして。
ハワード:あぁ?
ヴィンス:気楽にしろよ。
(ハワードの肩を触りながら)お前、ブランディ・スナップみたいだぜ。
     
 (the brandy snap ブランデーのの香りをつけた生姜入りのクッキー。硬くてピリピリしているという意味か?)
ハワード:そういうスタイルなんだ!
ヴィンス:ブランディ・スナップが?
ハワード:そうさ。ガリガリしてんの。
ヴィンス:まじかよ。とにかく、リラックスしろってば。
ハワード:無理。
ヴィンス:なんで。
ハワード:あいつのせいだ。ディクソン・ベインブリッジ。
(檻の外を見やる)
(二人の向こう側で、ベインブリッジがタカを手にとまらせ、それをフォッシルを含む飼育員たちが囲んでいる)
ハワード:見ろよ、ブラブラしやがって。

(フォッシルがベインブリッジの手にとまったタカの体を撫でている)
ベインブリッジ:頭に触るな。
フォッシル:
(ベインブリッジの髭を触る)こちらも素晴らしい…
(ベインブリッジ、乱暴にフォッシルの手を払いのける。)

ハワード:
(ベインブリッジの真似をして)「私は北極圏に行った。人々はトランペットを吹き、踊っていた。」
ヴィンス:彼は活動的な男だからな。
ハワード:俺だって活動的だ。
ヴィンス:へぇ…
ハワード:機会されあれば見せてやれる。あいつにあって、俺にないものって何だよ?
ヴィンス:ひげ。
ハワード:
(ヴィンスに向き直り、自分の口ひげを指差す)俺のここにあるのは、何だと思う?
ヴィンス:
(笑)ひげみたいに見えるけど、カプチーノの泡じゃん。
ハワード:言ったな、この野郎。すくなくとも、これはモカだからな?分かったか?
      俺のモカをバカにするんじゃない。
(Don’t be mocking my mocha.)こうするのに、ひと月かかるんだ。
ヴィンス:ひと月?それに?そんなん、全然役立たずじゃん。ベインブリッジのを見ろよ。銀色の蹄鉄みたいだ。
ハワード:何とでも言え。
(ハワードとヴィンス,檻から出て行く)


 ズーニヴァースの一角のベンチ

(ハワードとヴィンス,動物園内のベンチに並んで座り、話し込んでいる)
ハワード:ベインブリッジのすることなら、俺にだってできるさ。
ヴィンス:そうかな。
ハワード:新聞の見出しを想像してみろよ。「ハワード・ムーン」,コロン(:),「冒険家」。良い響きだろう?
ヴィンス:コロン冒険家?
ハワード:俺が言いたい事は分かってるだろう?
ヴィンス:語呂が悪いな。
ハワード:聞けよ、俺には現状の打破が必要だ。今こそ、ここから飛び出すべきなんだ。
ヴィンス:俺は?俺はどうすんの?
ハワード:俺と一緒に来れば良いさ。相棒だからな。
ヴィンス:相棒?
ハワード:俺の鞄とか、持ち物とか運ぶのさ。
ヴィンス:荷物持ちかよ?!
ハワード:俺の訓練を受けて、何でもできるようになるぞ。
ヴィンス:お前の訓練なんかいらないよ。俺には天賦の才能があるんだから。
      動物と会話出来るんだぜ。古いタイプの方の、モーグリみたいに。*求むお助け!
ハワード:知ってるよ。別に秘密でもない。お前はその才能のある飼育員だから、俺が雇っているわけだ。
      
(ヴィンス、辟易してハワードから視線を逸らす。)
      ヴィンス、こっち見ろよ。時々思うんだが、お前その才能を無駄にしているぞ。
ヴィンス:どういう意味?
ハワード:動物がゲイリー・ニューマンなんかに興味あると思うか?
ヴィンス:ゲイリー・ニューマンの話なんてしてないよ。
ハワード:いつもゲイリー・ニューマンの話ばかりしているくせに。動物にゲイリー・ニューマンの格好までさせて。
ヴィンス:してないって。
ハワード:そうか?ライオンにアダム・アントの格好させただろう。
ヴィンス:俺がしたんじゃない。ライオンが自分でしたんだ。
ハワード:将校の肩章を自分でつけるか?
ヴィンス:ゲイリー・ニューマンってのはさ…
ハワード:その話するな。俺、興味ない。
ヴィンス:いいじゃん。ゲイリーはポップ・スターなだけじゃないんだ。
      パイロットのライセンスを持ってんだぜ。凄いじゃん。
ハワード:ああそう。俺もライセンス持ってる。聞きたいか?嫌だろう。
ヴィンス:嘘つけ。
ハワード:持ってるさ。今朝も仕事でフライトした。
ヴィンス:俺と一緒に路面電車使ったくせに。
ハワード:あれは俺じゃない。
ヴィンス:はぁ?
ハワード:あれは俺の分身だ。
ヴィンス:分身?
ハワード:ジョイシーだ。
ヴィンス:ジョイシー?
ハワード:ジョイシー・ヴァニチェック。
ヴィンス:
(噴き出している)じゃあ、今はどっちだ?ハワード?ジョイシー?
ハワード:俺にもわからん。大いなる謎だ。
ヴィンス:おれにも分身が居るんだ。
ハワード:なんでいつも俺の真似ばっかすんだよ。
ヴィンス:トリシャって言うんだ。
ハワード:俺に分身がいるんだから、お前は駄目。
ヴィンス:俺がトリシャじゃ駄目?
ハワード:分身使いは俺だけだぞ。
ヴィンス:トリシャだって良いじゃん。
(ハワード,大きくため息をつく。)

*求む!お助け!:モーグリとは、キップリングの小説に登場する動物と話せる少年の事。
             ヴィンスの言う “ I'm like Mowgli, retro version ” とは、どういう意味でしょうか?



 動物園内:スライドを使ったベインブリッジのレクチャー

(従業員たちがベインブリッジの公演を聞いている。
 フォッシルは最前列で熱心に拍手し、最後列にハワードとヴィンス。ハワードはウンザリした表情。)

ベインブリッジ:私は山の岩棚から転落したが、狼が居た為に大怪我にはならなかった。
          狼は私に襲い掛かったが、幸運にも私は髭にピストルを隠し持っていた。
          私は発砲したが、狼は怪我を負っただけだった。そしてヤツは私の手を取った
         
(右手で手袋をした左手を指差す。手に噛み付いたという意味か)
ハワード:へえ、結婚でもしたのか。
ベインブリッジ:狼との戦いの後、私は「エッグ・オブ・マントゥンビ」の探索に出かけた。
          小学生の頭くらいはある、巨大なサファイアだ。
(スライドに、巨大サファイアと子供の頭部写真)
(ヴィンスの携帯が、けたたましく鳴る。着メロはゲイリー・ニューマンの“カーズ”)

フォッシル:
(ブチ切れて)もう沢山だ、このビート野郎!レクチャーを何だと思っているんだ?!
       ボーボーおじさん競争だとでも?これは真に冒険的な方の、ありがたい冒険譚だぞ!
       よく聴くんだ。続けてください、お馬鹿さん。
ベインブリッジ:構わんよ。仕方がないな。あそこに居るのは、ひげを生やすのに一ヶ月かかるハワード・ムーンだな。
         
(一同大笑い)虫の飼育箱を見てみたまえ。毛虫が一匹足りなくなっていると思うぞ。(一同大笑い)
フォッシル:ハハハ!その通りでしょうな!
ベインブリッジ:多くの者がエッグ・オブ・マントゥンビを探そうとしたが、みな失敗に終わった。
         有名な冒険家ビッギー・シャックルトンほど、エッグの近くまで迫った者はない。
         ビッギーは神聖なるエッグのありかを知っていたと言われている。
         そしてエッグを見つけ出したが、見るも恐ろしい氷の化け物によって、凍死させられたと、伝説は語っている。
         その化け物は、地元ではブラック・フロストと呼ばれている。
(スライドにブラック・フロストの想像図)
フォッシル:ワァオ、フロッシー!
ベインブリッジ:まさに化け物というべきだ。今の今まで、エッグは私の追跡をかわしてきた。
          しかし、私は北極圏へ戻る。金のためでも、名声のためでもない、ビッギー・シャックルトンのためだ。
          打ちのめされ、殺されつつも、ブラック・フロストと対決した、シャックルトンの勇気のため。
          彼はまるでバイソンに踏み殺されたように、メチャメチャにされた…。
          湿っぽくなるのは好きじゃない。歌おうじゃないか。
(朗々とボニー・タイラーの“トータル・エクリプス”を歌い始める)
       ♪見回せば いつでも孤独を感じてしまう 貴方はきっと来ないでしょう
        見回せば 目を上げても落ち込んでしまう
        今夜は あんたが必要 どんな時もあなたが必要なの
        あなたこそ全て そう、私たちは永遠に抱き合うの ♪
(途中からフォッシルが変なダンスをしながら加わり、二人で大熱唱) 


 夜のハワードとヴィンスの小屋

(ヴィンスがソファのハワードにマグカップを渡す)
ハワード:サンキュ。
ヴィンス:
(ハワードの隣りに座る)ベインブリッジって凄いと思わないか?まじで大したもんだよ。
ハワード:あんなの真に受けるなんて、信じらんないな。
ヴィンス:そうか?
ハワード:要はまた北極圏に行くって言うんだろう?そんでまたエッグはみつからず、人は踊らされる。
ヴィンス:だから?
ハワード:俺が北極圏に行けば、エッグを探し出して見せるさ。俺が乗り出せば、たちどころに完了って訳でございますよ。
ヴィンス:じゃあ、なんでやらないんだよ。
      先週なんて俺、お前にフラフープ・スナックのビーフ味を買ってきてくれって頼んだじゃん。
      それとか、どうなってんだよ。
ハワード:「やることリスト」には書いてある。
ヴィンス:いつゲットしてくんだ?
ハワード:ポテトチップスの話をしているんじゃない。
      要は、俺が行けばすぐにでもエッグを手に入れて戻ってくるって事だ。
ヴィンス:じゃぁ、なんで行かないの?
ハワード:金がないからさ。
ヴィンス:俺に任せろよ。
ハワード:なに?
ヴィンス:その問題なら解決だ。
(ポケットから携帯を取り出し、どこかへかける)
      ハロー,ゲイリー?
(アニメーション:ゲイリーニューマンの飛行機が“カーズ”のイントロに乗って、北極圏へ飛ぶ)


 北極圏,一面の雪原,猛吹雪

ハワード:
(毛皮で完全防備。立ったまま、格好つけて録音機のスイッチを入れる)
       ハワード・ムーン・ジャーナル四日目。多くの人がエッグ・オブ・マントゥンビを探してきた。
       多くが失敗した。しかし、一人の男が成功するだろう。それこそこの私。ハワード・ムーン。
(格好良く録音機を止めたとたんに、顔面に雪球が飛んで来て、ヴィンスの笑い声が聞こえる。ヴィンス登場。
 体にぴったりフィットした、ピカピカで派手な赤白スキーウェアーと、ピンク色のレッグウォーマー。)

ハワード:やめろ。何がそんなに可笑しい。
ヴィンス:すげー爆笑ものじゃん。
ハワード:可笑しくない。もう一回やったら猛禽類攻撃するぞ。
ヴィンス:はいはい。もう行こうよ。エッグはないみたいだし。
ハワード:やめろ。おれのミンクのコートを引っ張るな。何所へも行かないぞ。
      エッグはこの辺りにある。俺には分かるんだ。
ヴィンス:ミンクって言った?穏やかじゃないな。お前、動物の飼育員だろう?
ハワード:それが北極圏ってもんだ、ヴィンス。違うルールに従うべき所だ。やるか、やられるか。
ヴィンス:でも、ミンクはどうなるんだよ。
ハワード:この辺りじゃ、ミンクはでかいんだ。このコートだってミンク一匹分。この一揃いが。本当だ。
ヴィンス:馬鹿言え。俺、雑誌読んだぞ。
ハワード:だから?何が言いたいんだよ。
ヴィンス:「月刊ミンキー」さ。本屋の前面に平積みになってる。
      それによれば、婦人用の小さな手袋一つに、90匹ものミンクが使われるって。
ハワード:縫い代にクソでもついてたんだろう。
…なんてどう?
ヴィンス:まぁ、悪くない。ところで、俺のこの極寒地衣装はどうよ?
ハワード:なんつーか、人間コーラ缶か?
ヴィンス:グラム・ロック・スキーウェアさ。
ハワード:北極圏では、ファッションは重んじられないんだ、ヴィンス。だろう?
      ツンドラを甘く見てはいけない。ここでは正気でいられない。人として何が出来るか、分かっているか。
ヴィンス:いや。
ハワード:見てみろ。何が見える?
(ヴィンスに双眼鏡を覗かせる)
ヴィンス:何も?
ハワード:その通り。まさに無の世界。白の世界。終りなき世界…な世界。
      人の想像力を掻き立てる。魂を荒廃させてゆく。…オー・マイ・ガーッ!!!

(ハワードとヴィンス,踊りながらツンドラ・ラップ,スタート!)
ハワード:♪氷の激流,行く当てもない!白いツンドラに行き先も見えない!トンガリネズミのカギ爪ガリガリ
ヴィンス:俺はジョニー・フロストバイト
(霜かじり?)辺りをうろつき、お前をカチンカチンにごごえさせてやる
      明かりのともったテントを切り裂き 北極圏の無限の夜に野垂れ死に 
ハワード:ツンドラ・ボーイと呼んでくれ 北極トカゲみたいに動くからさ
      猛吹雪の夜に妄想のように消えうせる 後にはテントの杭がキラリと残るだけ
ハワード&ヴィンス:ブーシュ、ブーシュ!ムースより強い! カギをかけたら屋根から入るぞ
             キョロキョロしないでおちつけよ ブーシュは放たれ 俺たちゃ新鮮そのもの
             氷の激流 行くあてなし!白いツンドラに行き先も見えない ワウーーー!!!♪
(ラップとダンス終了)

ハワード:…な?
ヴィンス:オーライ。歌で言いたい事は分かったよ。
ハワード:ここではもっと真面目にやるんだな。
(顔面に雪球直撃)


 ズーニヴァース ナブーの売店

(売店で目を閉じ、首を振っているナブーの所に、ベインブリッジがやってくる)
ベインブリッジ:ナブー。ナブー!トランス中か?
ナブー:いや、フリートウッド・マックを聞いていただけ。
ベインブリッジ:ああ、「ルーマーズ」だな。
ナブー:「タスク」。何か?
ベインブリッジ:ハワード・ムーンと、奴のブスなガールフレンドが消えたぞ。何所へ行った。
ナブー:知りません。
ベインブリッジ:いいか、お前は占い師だろう。奴らを見つける事ぐらい、できるはずだ。
ナブー:報酬は?
ベインブリッジ:知らん。キットカット・チョコレートだな。
ナブー:二つ。
ベインブリッジ:よかろう。
(ナブー,ポンプのついた白い風船を膨らましはじめる)
ベインブリッジ:それは一体なんだ。
ナブー:膨らまし式水晶玉。旅好きな占い師用。
ベインブリッジ:さっさとやれ。
ナブー:
(玉を覗き込みながら)二人は北極圏のツンドラに居る。
べインブリッジ:どうしてそこに行ったんだ。
ナブー:エッグ・オブ・マントゥンビを探すため。
ベインブリッジ:
(ナイフで玉を潰して、立ち去る)じゃあな、占い師!


 北極圏ツンドラ

(突っ立って双眼鏡を覗き込んでいるハワードの後ろで、ヴィンスが穴を掘っている)
ヴィンス:あのさ、なんで俺、穴なんて掘ってるわけ?
ハワード:食える魚を取る為さ。
ヴィンス:でも、どうして「俺」なの。テントも建てたし、穴も掘って。俺は穴掘りポニーかよ。お前何した?
ハワード:俺はこの地域の大気放電障害を調査しているんだ。旅の記録のためにな。
      体を動かせば、体温が上がっていいぞ。
      俺の仕事の方がきついんだから、お前の穴掘りなんて大したことない。
ヴィンス:
(小声で)このシャベルでぶん殴ってやる。
      
(ヴィンスが雪をどけると、凍りついた地面の下から、男の顔が出てくる)
      ギャー!!
ハワード:どうした?!
(駆け寄る)
ヴィンス:氷に俺の姿が映ったんだ。真っ青でヒビだらけ!最悪の顔だよ、ハワード!!
ハワード:
(地面を覗き込む)お前の顔じゃないよ。
ヴィンス:は?
ハワード:人が氷の下に閉じ込められたんだ。
ヴィンス:ああ、よかったー。俺かと思っちゃったよ。
ハワード:ヴィンス。これが誰だか分かるか?
ヴィンス:いいや。
ハワード:ビッギー・シャックルトンだ。俺たちはとうとう見つけたぞ。
ヴィンス:俺が、見つけたんだ。
ハワード:俺たちゃ、チームだろう?
ヴィンス:ああ、そうだな。
ハワード:ヴィンス、彼に何が起こったか分かるだろう?
ヴィンス:凍っちまった?
ハワード:更に悪い。これはブラック・フロストの仕業に違いない。
ヴィンス:誰だ、それ。
ハワード:古いエスキモーの伝説によると、瞬時に、一気に凍結させる冷気を持っているんだ。
      人を一秒で凍死させる。叫ぼうにも、叫ぶ間も与えない。
      ブラック・フロストは叫び声でさえ空中に凍りつかせる。「うわぁーーー!」
      …口からほとばしり出た言葉が、氷のかたまりになる。
ヴィンス:ハワード、見ろよ。彼の口のところから、何か出てる。氷の塊になってるぞ。
ハワード:彼の最後の言葉が凍っているんだだ、ヴィンス。凍結のまさにその瞬間だ。俺たち、とうとう見つけたぞ!
ヴィンス:俺が、見つけたの。
ハワード:それ、言うな。オーケー?俺たちはチームだ。
ヴィンス:ああ、はいはい。
ハワード:言葉の所を掘り出せるか?俺はストーブを用意してくる。
ヴィンス:オーライ。お茶の用意しておいてよ。
ハワード:お茶じゃなくて、ビッギー・シャックルトン最後の言葉を解凍するんだよ。それから、記録もしなきゃ。
      
(録音機のスイッチを入れる)ハワード・ムーン・ジャーナル,六日目。
      とうとう、ビッギー・シャックルトン最後の言葉を発見した。
      
(ヴィンスが辺りに居ない事を確認)俺が、自分で発見した。ヴィンスは寝てた。起して知らせてやらねば。
(ハワードの背後に、足だけ羊の着ぐるみを着たヴィンスが走ってくる。手には「俺が見つけた」というプラカード)


 ツンドラの夜,吹雪の中の、ハワードとヴィンスのテント

(ハワードとヴィンス,火にかけた鍋を囲んでいる)
ハワード:今世紀の科学的大発見だ。最後の言葉の、はじめをよこせ。
ヴィンス:ちょっと待てよ。順番に並べているから。
ハワード:言葉並べゲームじゃないんだから、はやくよこせよ。
ヴィンス:これが、最初のやつ。
(ハワードがヴィンスから氷の破片を受け取って、鍋に投げ込む。と、水蒸気とともに声が沸きあがる)
声:エッグ・オブ・マントゥンビは…!
ハワード:うまく行ったぞ!
ヴィンス:エッグの事を言っているんだ!
ハワード:よし、次だ。
ヴィンス:オーケー。これが次の。
声:見つかるであろう…!
ヴィンス:「見つかるであろう・・・!」だって。変な声だな。
ハワード:凍りつきながら言ったんだから。その次は?
ヴィンス:ちっさいやつ。
声:その洞穴の名は…
ハワード:エッグ・オブ・マントゥンビは、洞窟で見つかる。その洞窟は…
ヴィンス:よし、コレだ!最後の一つ。オーケー!
(破片にキスするして、ハワードに渡す)
(ハワードもキスしてから、破片を鍋に入れたちょうどその時、ヴィンスの携帯が鳴ってしまう)

ハワード:聞こえない!!
(ヴィンス、大慌てで右往左往の末、テントから放り出される。ハワード、テントの入り口を閉めてしまう。)
ヴィンス:
(テントの外で携帯を止め、済まなそうに)ハワード…?
ハワード:
(テントから顔だけ出して)失せろ。(テントに引っ込む)
ヴィンス:ハワード、外は寒いよ…
ハワード:有効に使え。お前は寝ずの番だ。
ヴィンス:寝ずの番?
ハワード:北極圏は危険な所だ。
(テントから顔を出して)
      寝るなよ、どうなっても知らないからな。
(テントに引っ込み、閉めてしまう)
(ヴィンス、赤い毛糸の帽子を被り、辺りを見回すが、すぐにその場で寝込んでしまう。
すると、どこからともなく何かがテントに迫り、ヴィンスに向かって唸り声を上げる。ヴィンス、飛び起きる)

ヴィンス:うわぁ!


 ズーニヴァース,フォッシルのオフィス

フォッシル:
(デスクから面接に来た二人に向かって)知っての通り、ハワードとヴィンスが居なくなってしまった。
       二人とも優秀な飼育員だったので、穴を生めるのは難しい事だ。
       しかし、やらねばならぬ。君たち二人は、この動物園で働く為の能力がおありかな?
(オフィスに来た二人は、どう見ても石器時代風の「はじめ人間」。ジュリアンとノエルが演じているので、便宜的に「はじめ人間J」,「はじめ人間N」と表記する。)
はじめ人間J:あー。えー。赤ちゃんのねこさんが…かばんの中に…で…ひっぱり出して…ペシャーン!
         いなくなっちゃって…とんでった…
はじめ人間N:そー、そー。
(杖を突いて大喜び)
フォッシル:書類仕事の経験は?
はじめ人間J:えー…
(机の上の紙を、フォッシルの前に移動する)
フォッシル:これは、私あての手紙だ。…良いだろう。
はじめ人間N:
(杖を突きながら)ヘーイ…
フォッシル:へーい。
(付き合って、机を叩く)よろしい。
はじめ人間N:コノマー!マヌート!ハッハー!
フォッシル:結構。月曜日からはじめてもらう。おめでとう。
(手を差し出す)
(はじめ人間N,握手せずに、フォッシルの腕をワシワシと掴む。フォッシル,それを払いのける。)

フォッシル:もういい。さあ、仕事に取り掛かれ。
はじめ人間N:カラバーノー
フォッシル:カラバーノー。はいはい。
はじめ人間N:トップショップ!
(首から提げている派手なネクタイを摘み上げる)トップショップ。
フォッシル:はいはい。そう。良いネクタイだ。
はじめ人間N:
(はじめ人間Jの胸を叩く)トップショップ。
フォッシル:いや、そっちは持ってない。
はじめ人間J:
(自分の髭をさわる)トップショップ。
はじめ人間N:
(自分の頭をさわる)トップショップ。
フォッシル:出て行け!私は忙しいんだ!
はじめ人間N:
(杖で机とフォッシルの手をつっつく。)トップショップ。
フォッシル:まだ居るのか?!
(二人のはじめ人間,ニコニコして突っ立っている。)


 ツンドラの朝.猛吹雪の中のテント

ハワード:
(テントの中からあくび)ヴィンス?おいヴィンス。お湯を沸かすぞ。
      おい、ふてくされるなよ。
(テントから出て、外を見回す)ヴィンス?
(ヴィンスの帽子と、白熊の足跡だけが残されているのを発見。モーツァルトのレクイエムが流れ始める。)
      どうしよう、ヴィンス!俺、何をしたんだ?お前、白熊に食われちまったのか?!
      お、俺のせいだ!ヴィンス、ヴィーンス!
(猛吹雪の中を走り出す)

(穏やかな雪原で、能天気な音楽に乗って楽しく踊るヴィンスと巨大白熊)

(吹雪の雪原を彷徨うハワード)

(能天気な音楽の中、バドミントンを楽しむヴィンスと白熊)

(転びながら吹雪の中を進むハワード)

(能天気な音楽の中、ソファーに腰掛けて、楽しくアルバムを見ているヴィンスと白熊)

(あいも変わらず彷徨うハワード)



 夜のツンドラ

ハワード:
(座り込んで、録音機に吹き込む)12日目。ヴィンスは死んだ。全てが失われ、おれは一人ぼっち。
       風だけが友達だ。
風:お前なんか嫌いだ!
ハワード:うっさい!風のくせに!黙れ!
      
(突っ伏して泣き出すが、人の気配で顔を上げる)ヴィンス?ヴィンス、お前か?
(突然、パーカ[フードつきの毛皮ジャケット]を着た、非常に背の低い人物が現れる。顔はフードの中で全く見えない。)
パーカ男:
(非常に低い声で)パーカの中を見よ。
ハワード:えっ?
パーカ男:パーカの中を見るのだ。お前が夢にも思わぬ、あらゆるものがある。
ハワード:例えば?
パーカ男:ルビー。
ハワード:夢に見たことある。
パーカ男:レズビアンのハム。
ハワード:あんたの変な夢には興味ない。友達が死んでしまったんだ。
      俺はここで死を待つ。放っといてくれ。
パーカ男:パーカの奥底を見るのだ。お前の夢を見せてやろう。
(突然パーカの中から鋭い光が差し、ハワードの顔を照らす。
神々しい音楽が流れる中、パーカの中に巨大なサファイアの姿が浮かび上がる。)

ハワード:エッグだ!


 夜の穏やかなツンドラ

(ヴィンスと白熊が並んで座り、星空を眺めている。)
ヴィンス:ゲイリー・ニューマン好き?
白熊:だれ?
ヴィンス:ポップスターさ。でも、パイロットの資格も持っているんだ。凄くねぇ?
(二人がしばらく黙っていると、狼の遠吠えが聞こえてくる。)
ヴィンス:
(立ち上がる)あのさ。俺、もう行かなきゃ。ハワードを探すんだ。ちょっと心配になってきた。だから…
      でも、本当に楽しかったよ。凄く素敵だった。また、きっと会えるよな?
(立ち去ろうとする)
白熊:抱きしめて。
ヴィンス:
(振り返る)えっ?
白熊:なんでもない。
ヴィンス:抱きしめて、って言ったの?
白熊:いいや。
(ヴィンス、ゆっくりと白熊の隣りに戻ると、おずおずと手を白熊の背中に回して、そっと抱きしめる。白熊もヴィンスに寄りかかり、二人で流れ星を眺める。)


 夜の洞穴

(大きなテーブルがあり、沢山のパーカ男が取り囲んでいる。その中に、ハワードが混じっている)
ハワード:俺たちは一緒に動物園で働いていたんです。彼は動物と会話ができました。
      彼はモーグリみたいなもので…ご存知ありませんよね。まあ、可笑しな話で…。
      
(大きなため息)残念です。彼は勇敢な男でした。その、勇敢というか、実際は馬鹿みたいで…。
      状況把握ってものが出来ない奴で…
パーカ男たちの長:興味深い話だ。しかし、食事の時間だ。
            お前は我々と共にせねばならぬ。ここの流儀に従うのだ。
(ハワードの隣りに座っていたパーカ男が、皿にゲロを吐き出す)
ハワード:その…あまり腹は減っていなくて…。
パーカ男たちの長:お前が食わねば、我々は機嫌を損ねるぞ。
ハワード:
(雰囲気に押されて)まあ、ちょっと試してみます。
      
(スプーンで少しだけゲロを舐める)うーん…
パーカ男たちの長:おお、食事が来たぞ。
(サンドイッチが運ばれてくる)
            サンドイッチ。私の好物だ。
(ハワード、見つからないように口の中のものを吐き出し、サンドイッチを手に取る。)
パーカ男の長:これはもう片付けろ。食事の時間は終わりだ。囚人を縛り上げるのだ。
ハワード:
(後ろ手に縛られる)何をする?!
パーカ男の長:お前は生け贄なのだ。
ハワード:何の話だ?!
パーカ男の長:お前は私たちから盗もうとした。
ハワード:盗むって、何を?!
パーカ男たちの長:我々はエッグ・オブ・マントゥンビの番人なのだ。
(神々しい音楽と共に、洞穴の奥に柱が現れる。柱の頂上には、エッグ・オブ・マントゥンビが燦然と輝いている)
ハワード:あ、いや、結構です。俺、エッグには興味ありません。
パーカ男たちの長:これはどう説明するのだ。
(ハワードの録音機を再生する)
録音機の声:エッグ・オブ・マントゥンビを手にする日を待ちきれない。
ハワード:俺の声じゃない。
録音機の声:そして私,ハワード・ムーンは金持ち,かつ有名になるのだ。
パーカ男たちの長:さあ、みなの者。ルーガルーを召還するのだ。
ハワード:誰をだって?!
パーカ男たちの長:ブラック・フロストだ。
(パーカ男たちはハワードを残して、エッグの柱に集まり、ルーガルーの名を唱え始める。
もう一人のパーカ男が、怯えるハワードに迫ってくる。)

ハワード:殺さないでくれ!何でもやるから!
(迫ってきた男がパーカを脱ぐ)
ヴィンス:俺だよ!
ハワード:ヴィンス!生きてたのか!
ヴィンス:しーっ!そうだよ。
(パーカ男たちは呪文を続けている。ハワードの縛めを解く)
ハワード:白熊はどうしたんだ?
ヴィンス:もう、ばっちり。
ハワード:白熊とばっちりな訳がないだろう?
ヴィンス:俺たちは意気投合なの!さあ、行こうぜ。
(洞穴から逃げ出す)
ハワード:ヴィンス、ヴィンス、ヴィンス。ヴィンス、ヴィンス!
      
(ヴィンスを引き止める)見ろよ、エッグがあんな近くに。
ヴィンス:おい、でも…あいつら、どうするんだよ
ハワード:今、トランス状態だ。分かりゃしないよ。
(パーカ男たちは必死にエッグの柱に向かって、呪文を唱え続けている。ヴィンスが柱に近づき、エッグを手に取る。ハワード、ガッツポーズをするが、突然警報ベルがけたたましく鳴り響く。我に返ったパーカ男たちがハワードとヴィンスを取り囲む)


 暗いの洞穴の中

(エッグを頂いた柱に、ハワードとヴィンスが背中合わせに縛り付けられている。二人とも意気消沈。)
ハワード:こうなっちゃったな、ヴィンス。
ヴィンス:ああ…。
ハワード:近くにありながら、手が届かない…。
ヴィンス:最後の言葉、どうする?
ハワード:なんだって?
ヴィンス:ブラック・フロストがお前を凍え死にさせるときに、なんて言葉を残すかって事さ。
ハワード:多分、詩かなんかじゃないかな。俺の70年代とかのさ。
ヴィンス:そうだな…。
ハワード:だろう?
それで…お前は?
ヴィンス:多分…仕返ししてやる…って…。
ハワード:ふん。それもいいな。(ため息)はぁ…
ヴィンス:ハワード?
ハワード:うん?
ヴィンス:俺、死にたくないよ。
ハワード:おい、しっかりしろよ。どうにかなるさ。
ヴィンス:本当?
ハワード:いや…。俺たち、氷付けにされるんだろうな。この上なく恐ろしい手段で…。
      でも、大事なのは、俺たちが楽しく生きた事だろう?な?
ヴィンス:そうだな。
ハワード:動物園を覚えているか?
ヴィンス:もちろん。
ハワード:トゲウオの事、覚えているか?
ハワード&ヴィンス:
(トゲウオの歌を歌い出す)
            ♪トゲウオ、トゲウオ、金持ちトゲウオ 演芸場のカチカチ皮
             中国の尻軽娘みたいに 走り回る
             ウン,パタ,マサラ、 ウン,パタ,マサラ
             ケンティッシュ タウン,ケンティッシュ タウン,イエー!
             ケンティッシュ タウン,ケンティッシュ タウン,ノー!
             
(二人して笑うが、すぐに静かになって、ため息をつく)
ハワード:ヴィンス。あのさ。その…すごく言いにくい事だけど…でも、ちゃんと言わなきゃな。
      愛してるよ、ヴィンス。
(ヴィンス、何も言わずに笑い出してしまう)
ハワード:どうした?
ヴィンス:べつに。
ハワード:笑ったな?
ヴィンス:いいや。
ハワード:笑う奴があるかよ。おれが愛してるって言ってるのに。何だって笑うんだよ?
ヴィンス:お前が笑かすからじゃん。
ハワード:すげぇ侮辱。
ヴィンス:びっくりしたんだよ。出し抜けに言うもんだからさ。
ハワード:俺は愛してるって言ってんだぞ!それを笑いやがって。
ヴィンス:俺も愛してるよ。
ハワード:愛してないくせに。俺が言ったから、ちょっと言ってみただけだろう?
ヴィンス:違うよ、本当に愛してるってば。
ハワード:愛してないくせに!
(洞穴に毛皮を着込んだベインブリッジが入ってくる。)
ベインブリッジ:感動的だな!
ハワード:ベインブリッジ!
ベインブリッジ:
(エッグを指差す)そいつは頂くぞ。それから、ずらかるからな。
(ベインブリッジがエッグを取り上げると、アラームが鳴る。しかし、ベインブリッジはリモコンでアラームを止めてしまう)
ヴィンス:俺たちのこの縄、解いてよ。
ベインブリッジ:お断りだ。お前ら二人を見つけたなんて、自分に腹が立つ。じゃあな。
(立ち去ろうとする)
(不気味な笑い声が響き渡り、洞穴の奥からブラック・フロストがやってくる。
全身黒塗り…容姿の描写は放棄させてもらう。電子的な騒々しいベースとドラムの音楽が鳴り響く。ひとしきり踊ったブラック・フロストがベインブリッジに迫る)

ベインブリッジ:来やがったな。このヒヤヒヤお化け。この世の掟と言うものを思い知らせてやる。
(ブラック・フロスト、股間から(パンツは穿いてます)強力冷気ビームを発射する。ベインブリッジ、瞬時に凍りつく。)
ブラック・フロスト、今度はハワードとヴィンスを睨みつけ、再び音楽と共に踊り出す)

ハワード&ヴィンス:ぎゃー!!
(突然、音楽が止む。二人とブラック・フロストが振り返る.。レコードプレイヤーの隣りに、電源を引っこ抜いた白熊が立っている。白熊、一撃でブラック・フロストをしばき倒す。倒れたブラック・フロストを良く見ると、真っ赤なカウボーイ・ブーツを履いている。)
ヴィンス:あれ、いただき!


 新聞見出し

新聞見出し:飼育員がエッグ・オブ・マントゥンビを発見!!
別の新聞:エッグは偽物だった。飼育員、恥!
また別の新聞:ディクソン・ベインブリッジ 本物のエッグを発見


 ズーニヴァースの一角
(ハワードがマグカップ片手に新聞を読んでいる。
隣りに、カウボーイハットに、ブラック・フロストから失敬したカウボーイ・ブーツを履いたヴィンスが立っている)

ハワード:
(新聞を読み上げる)「『私はひげに装着されたヒーターで自ら氷を溶かした』ベインブリッジは語る。」
ヴィンス:ああ、はいはい。俺のフラフープ・スナック、ゲットした?
ハワード:いいや。
ヴィンス:いつになったらゲットすんだよ。
ハワード:後で。これ、聞けよ。『私は鯨を仕留めると、その顎骨でそりを作り、レイキャビクへ向かった。』
ヴィンス:金くれ。俺が買ってくる。
ハワード:あのな、金はないの。
ヴィンス:渡したじゃん!
ハワード:分かってるよ。投資しちゃったんだ。
木の上の猿:ははは。ええ…それでですね。この物語の道徳観は決して…


 エンディング

(白熊が一人、夜のツンドラで鼻歌を歌っている。
Tubeway Army(ゲイリー・ニューマンのバンド)の、Are ‘Friends’ Electric)

白熊:外は寒いよ…フンフン…♪…こんな所でどうしっろて言うんだい…♪はぁ…。

(終)
 
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