アヤシゲ翻訳 テレビシリーズ1 エピソード3 / Bollo ボロ
オープニング・トーク
(赤いカーテンの前にハワードとヴィンス、登場。)
ハワード:ハイ。私はハワード・ムーン。彼はヴィンス・ノワー。
ヴィンス:オーラーイ。
ハワード:今週は、死という手ごわい主題を扱います。いや、お待ち下さい。
皆さんがどう思ったか分かりますが、少々お待ち下さい。私は俳優として、演技の幅を広げてみたいと思っています。
我々すべての人間が共有する暗鬱とした事実を、深く追求してみたいのです。
ヴィンス:ハワードの退屈な演技だけじゃありませんよ。音楽あり、冒険あり、それに面白い特殊効果撮影もあるよ!
ハワード:お前の髪のように、、ヘンな特殊効果にかける予算はない。
ヴィンス:俺の髪形は、このショーの基本設定だぞ。
ハワード:髪形にスタッフ15人も必要か?
ヴィンス:すくなくとも15人。二人は前髪、一人はシャギー専門、それにトップスにも必要だし。取り巻きが必要なの。
ハワード:取り巻き?
ヴィンス:そう。髪形をお世話する取り巻き。やることは多いぞ〜。
俺の髪がちゃんとしていなかったら、大騒ぎだからな。すぐに見てもらえなくなる。
ハワード:お前、俺の演技を軽く見てるだろう。
ヴィンス:そんなことないよ。
ハワード:俺は変な髪形なんていらないからな。俺自身の髪形で行く。
ヴィンス:会議の結果がその頭かい。
ハワード:カメラは俺が好きなんだ、ヴィンス。そういうもんだぞ。
ヴィンス:カメラが好きなのは俺さ、そのうち分かるよ。
ハワード:もう、あっち行ってろよ。
(ヴィンス、左手に退場。残ったハワードが画面の中央に立つ。)
ハワード:それでは、手始めにハムレットから短い場面をお送りします。お楽しみ下さい。
「死 ― その道の国 ― 誰一人としてそこから帰還した者はない。一寸先も闇
― 生まれて来たことを後悔させ…」
(カメラ、ハムレットを朗読するハワードを残して左に移動し、ヴィンスをとらえる)
ヴィンス:(カメラに向かって)まぁ、基本的にあいつはショーの間もずっとあの調子だから。
(背中からリモコンを引っ張り出して説明する)飽きたら、リモコンの赤いボタンを押しちゃってくれる?
俺がハリネズミの衣装着て、ノリノリのダンスするのに切り替わるから。
ハワード:(画面に入ってくる)何やってんだ?
ヴィンス:別に?
ハワード:来いよ。(ハワード、ヴィンスの腕をひっぱって右手に退場)
ヴィンス:番組をお楽しみ下さい(ハワードど一緒に退場)
(カーテンが開いて、オープニングタイトル、スタート)
ボロの檻の中
(横たわるボロの様子を、ヴィンスが聴診器を当てながら診ている。その横で、ハワードが外を眺めながら、ハムレットを口ずさんでいる)
ハワード:「死 ― そして眠り ― 恐らく眠りは即ち夢だ ― いや、これが厄介な事だ ―
死への眠り ― そこに夢は訪れるか?」
ヴィンス:静かに出来ないのか?ボロの具合が悪いんだ。そんなぞっとする話は、ききたくないよ、熱があるんだぞ?
ハワード:説明しよう、ヴィンス。死というのは、決して恐ろしいものじゃない。
死は自然であり、死に備えるのは非常に重要な事だ。尊厳と心の均衡に正面から向き合わないとならない。。
俺のように、死に対して心構えをするんだ。俺は死への準備は出来ている。
死神がやってきて、ドアをノックくする。俺は彼を歓迎する。そう、死神は三度扉を叩き、俺は言う。
「お入りなさい。さあ、どうぞ座って。お茶でもいかがですか?」
ヴィンス:(立ち上がってハワードの隣に立つ)お茶?
ハワード:そう。
ヴィンス:俺は死神ってやつはコーヒーが好きだと思うけど。
ハワード:どちらにせよ、いいから温かい飲み物を勧めるさ。
ヴィンス:ラテでもいける?
ハワード:任せろ。死神が望むものは何でも出すさ。
ヴィンス:温かいものは欲しくなかったら?
ハワード:フラペチーノを出す。冷たいのみものはサービスだけど、カフェイン入りは特別料金。
ヴィンス:死神がイタリアン・ビスケットを欲しがったら?
ハワード:馬鹿ぬかせ。死神はダイエット中だ。(笑い出す)…ジョークだよ。死神ってのは骸骨だろう?どうやって食うんだよ。
ヴィンス:死神が骸骨だったら、ビスケットをむしゃむしゃ食べて、肋骨の間で粉砕するの。「おお〜ゥ!コナゴナ〜!」
(ボロ、横になったまま、咳をする。それを見やるヴィンスに、ハワードが諭す。)
ハワード:なぁ。ひとついいか。あまり動物たちと仲良くなりすぎちゃ駄目だ、ヴィンス。
彼らもいずれは死ぬ。飼育員としてはまず第一に自覚するべき事だ。
ヴィンス:じゃぁ、お前とジャック・クーパーはどうなの?
ハワード:俺とジャックがなんだって?(画面は、ケージの中の狐をとらえる)俺とジャックは顔なじみさ。
誰かは仲が良すぎるって言うけど。俺の知らないデマが広まってる。
ヴィンス:お前がジャックにたかったって話さ。
ハワード:何とでも言え。馬鹿馬鹿しいデマだ。ガキみたいに。そんなの嘘だ。
ヴィンス:お前、ジャックにたかっただろう。
ハワード:デマだの噂だのなってのは、高が知れてる。とにかくウソだ。オーケー?
とにかく、大事なのはあまりボロと仲良くなりすぎない事。彼は彼の人生の歩みを進めている。
じゃぁ、俺はもう行くからな。お前といると、ろくな事いわれないからな。
(ハワード、檻から出て行く前に、もう一度ヴィンスに向き直る)
ハワード:本当に、そんなこと言われてるのか?
ヴィンス:いいや。お前はお前の言ったとおりの男だし、あんなのデマだよ。
ハワード:そう。じゃあ、後でな。
ヴィンス:じゃあな。
(ハワード、檻から出て行くが、その背中には「狐たかり男」と張り紙がしてある。ヴィンス、大笑い。)
ズーニヴァースの一角
(ハワード、狐のジャックの檻の脇を通りながら、ジャックに声を掛ける。)
ハワード:元気か?ジャック。
ジャック:俺に近づくな。
(フォッシルがハワードを呼び止める)
フォッシル:ああ、ムーン。ちょっと歩きながら話そう。目が合ったな、んん?私と君。私は君のボスだ。
それと同時に友人でもある。しかし、私は君の奥さんではない。大袈裟に、しかも激しく愛し合いすぎたが ―
声が大きすぎるか?
ハワード:何か、御用ですか?フォッシルさん。
フォッシル:ちょっと問題があって。あの小男のことだ。ぺちゃんこのフランス人。
あの裸で、毛むくじゃらがぺちゃんこの奴だよ。知ってるだろう、足みたいな手で、茶色いちっさい手足男!
ハワード:(フォッシルのモノマネを見てから)ゴリラ。
フォッシル:そう!待った、もう一回言って。(録音機のスイッチを入れる)
ハワード:ゴリラ。
フォッシル:それで、(録音機を再生)「ゴリラ」のスポンサーになってくれている、年配のご夫人が今日来るんだ。
もし彼女が、ゴリラが正に死にそうになっていたり、棺桶に入っていたりするのを見てみろ。
もう私にボー・ディドリーを払ってくれないぞ。(*注)
ハワード:俺にどうしろと?
フォッシル:お前に、(録音機を再生)「ゴリラ」の気ぐるみを着てもらう。
バナナを食べたり、踊りまわったり、干草を蹴り飛ばしたりすれば良いんだ。
ハワード:やりませんよ。俺は人間なんだから。
フォッシル:知ってる。(録音機に吹き込む)「人間」。
ハワード:俺は尊厳と心の均衡を心がけているんです。ゴリラの格好なんてしません。
フォッシル:でも、そうしなきゃ動物たちが飢えるぞ。そり遊びも、ソーセージもなしだ。
ハワード:失礼しますよ、フォッシルさん。
フォッシル:結構だがな、ムーン。要するにまともな演技は出来ないという訳だな。。
ハワード:何ですって?
フォッシル:どんなに強がっても、ムダだぞ。演技に自信がないんだろう。
ハワード:ゴリラの着ぐるみと、バナナ四本、蒸しタオルをよこせ。
(*注)ボ・ディドリーというのはもちろん、有名なロック,ブルースシンガー。
フォッシルの言う、she ain't gonna pay me Bo Diddley. とは、どういう意味でしょう?
まさか、ディドリーがゴリラだと言うんじゃないでしょうね?!ロン・ウッドに呪い殺されるぞ!
ハワードとヴィンスの小屋
(部屋にベッドが入れられ、ボロが横たわっている。その傍にヴィンスが椅子に座っている。)
ヴィンス:さぁ、ボロ。きっと良くなるよ。
ボロ:ヴィンス。その時が来たようだ。死が迫っている。私には分かるんだ。
ヴィンス:そんなこと言わないでよ、ボロ。
ボロ:恐れてはいけない。(ボロ、ヴィンスの肩に手を置き、ヴィンスはその手を取る。)
大事な事は、良い人生を送ったという事だ。
ヴィンス:そうだね。
ボロ:楽しかった。
ヴィンス:うん。ほんとうに楽しい毎日だった。
(ヴィンスとボロの楽しい毎日が回想される)
ヴィンス:素敵な思い出だ。その一瞬、一瞬が素晴らしかった。
たとえ誰であっても、あの素敵な時間を奪う事なんて、出来やしないさ。。
ボロ:誰がそんな事を?
ヴィンス:奪われる瞬間とかなんとか…ハワードがそんなような事をよく言うんだ。
ボロ:なぁ、ヴィンス。私が死んだら、一つ頼みを聞いて欲しい。
ヴィンス:何でもする。
ボロ:ハワードをつかまえて、奴の顔を平手打ちしておいてくれ。あの馬鹿男。
ヴィンス:オーケー。
ボロ:ヴィンス…
ヴィンス:うん?
ボロ:今日はまた、髪型がきまってるね。
ヴィンス:ありがとう。きみも中々いけてるよ。そりゃ、俺ほどじゃないけど。はしっこで分けちゃったりして。
もっと格好よくしてあげるよ。
ボロ:(ヴィンスの手を取る)私たちは友達だよ、ヴィンス。
ヴィンス:ああ。
(ボロ、ゆっくりと目を閉じる。ヴィンス、毛布をそっとボロのあたままで掛ける。そして椅子に戻り、物思いにふける。)
ボロ:何やってんの?
ヴィンス:あっ、ごめん!(ヴィンス、毛布をどける)死んじゃったかと思った(笑い出す)。
ボロ:まだだよ。
ヴィンス:ごめん、ごめん。
ボロの檻の前
(肩にタオルをかけられた老婦人に、フォッシルが謝っている)
フォッシル:大変失礼しました、奥さま。気をつけてお帰り下さい。あの…そのタオル、返してくださいね。
(老婦人、退場。フォッシル、檻の中のゴリラの気ぐるみ男に抗議する。)
フォッシル:どういうつもりだ、ムーン?
ハワード:(ゴリラのお面を外す)サルのマネをするんでしょう?本当のサルってのはこういうものです。
フォッシル:クソを投げつけるのがか?
ハワード:俺は名優でしてね。俺をクビにしても、紙に描いた書き割りなんて使わない事だな。高級な立体物を使う事。
フォッシル:ふん。お前が高級なブツを彼女の顔に投げつける前に、小切手を切ってくれたから良かったようなものだ。
幸運だな。覚えてろよ、ムーン。お前なんか尼さんサンドイッチみたいにしてやるからな!(檻の前から立ち去る)
ハワード:俺が名優だって、認めたほうが良いぜ。(お面を被りなおすと、檻の中でゴリラのマネを始める)ハッ!この動き!
(外から、檻に黒い人影が近づく。真っ黒のマントにフード,顔はまったく見えない。骸骨の手には大鎌を携えている。)
ハワード:(檻の前の黒い人影に)何か御用ですか?
(人影、鉄柵を通り抜けて、檻に入ってくる。そしてハワードを壁まで追い詰める。ハワード、お面をかぶったまま。地面に崩れ落ちる。)
ハワードとヴィンスの小屋
ボロ:(突然、飛び起きる)ヴィンス!急に具合が良くなったぞ!
ヴィンス:(マラカス手に、歌い始める)
♪太陽は輝き きみはゴキゲン 小鳥たちは木々で歌っている♪
(ボロ、それに合わせてフルートを吹く)
(字幕 : ハワードの地獄への旅)
あの世タクシー
(宇宙空間のような所を、白いタクシーが走ってゆく。運転手はボロの檻にやって来た死神のリーパー。後部座席に、お面をかぶったままのハワードが座っている。リーパー、ゲイリー・パケット&ザ・ユニオン・ギャップの、"Young Girl"を音痴に歌いまくっている。)
リーパー:♪きみはちょっと子供すぎるな、お嬢さん〜♪
ハワード:(お面を外して、運転席の透明の仕切りをノックする)もしもし?
リーパー:(振り返ると仕切りの窓を開ける)どうかしたかい、あんちゃん。
ハワード:ハイ。あの…どこへ行くんです?
リーパー:おサル地獄に連れて行くんだよ。まま、シートに座って、リラックス!景色でも楽しんでな!
ハワード:おサル地獄?
リーパー:そうだよ、あんちゃん。
ハワード:あの、どうも間違いが起こっているようなんですけど。
リーパー:はっはー!みんなそう言うんだよな〜!
「ああ〜!これは何かの間違いだ〜!そんなはずはない〜!まだ死にたくな〜い!」まったく白けるぜ。
ハワード:はぁ…でも…俺はサルじゃないんだよね。俺はサルの格好をした人間なんだ。
リーパー:はっは〜!またまたぁ!その手の言い訳はいくらでも聞いたよ。ムダムダ!
(あらてめてハワードの顔を見る)あぁ〜?なんだこりゃ?(ブレーキを踏んで車を止める)
ハワード:すいませんね。
リーパー:(無線のマイクを手に取る)リーパーからコリン、リーパーからコリン。
コリン:(無線のスピーカーから声)コリンだ。
リーパー:ちゃんとした所に行ったのにさ、とんでもねぇ変人をつかまされちまった。
コリン:おいおい、またかよ!
リーパー:俺のせいじゃねぇよ!こいつ、サルの檻でサルの着ぐるみ着てたんだぞ!どうする?
コリン:わかったよ。その兄ちゃん、こっちでおろしな。
リーパー:そうしよう。
コリン:ところで、お前のところのポーリーンはどうしてる?
リーパー:オーライ。死んじまったよ。そっちは?
コリン:こっちも死んだよ。ばっちりさ。一日じゅうあーだこーだ言ってたけどさ…あーだこーだ…
(リーパー、無線を切る)
リーパー:(ハワードに)よっしゃ、あんちゃん。これから事務所に連れてくからな。
ハワード:わかった。
リーパー:いい迷惑だぜ。俺んちはおサル地獄の近くだったんだぞ。40分も時間を無駄にしちまった。
ハワード:ごめんね。
(タクシー、進路を変える)
あのタクシーの事務所
(あの世タクシーの看板には、「あなたのお命運びます」,電話番号,「ドライバー常時募集中」とある。事務所の中には、死神運ちゃんたちが、ビリヤードをしたり、トランプをしたりして寛いでいる。)
リーパー:(事務所に入ってきながら)よう、元気かい?おい、ボビー、俺の10ポンド返せよ。よーう、ネヴィル!
(ハワードもリーパーに続いて入ってくる。カウンターでは、コリンが電話をしている。)
コリン:スイスのコテージで拾って来い。(電話を切る)
リーパー:よう、コリン。そっちのポーリーンはどうした?
コリン:ばっちりだ。そっちは?
リーパー:こっちもばっちり。
コリン:(リーパーの背後に居るハワードを見て)これがその変人あんちゃんかい?
リーパー:そう、こいつ。
ハワード:あの…俺は今、どこに居るんですか?
コリン:リンボ(天国と地獄の境界世界)だよ、あんちゃん。
ハワード:どこだって?
リーパー:そこでも、ここでもない、どこでもないってこった。はっはっは〜。
コリン:オーライ。お前さんをどうするか、電話で確認すっから。
リーパー:ありがとよ、コリン。話がはえーや!
コリン:(電話をかけながら)てやんでぇ、べらぼーめぇ…こちとらコックニーでぃ!
リーパー:まぁ、座れよ。
ハワード:(事務所の端にある椅子に腰掛ける)これからどうなるんだ?
リーパー:本社の判断を待ってるところだ。
ハワード:俺、戻れるかな?
リーパー:無理だな。おサル地獄に行くか、おサル天国に行くかどっちかだよ。
ハワード:でも、俺はサルじゃない。
リーパー:言ったろう?もう死んじまったんだから。受け入れろよ。どうにかなるさ。お茶でもおごってやるからさ。
ハワード:どうも…
リーパー:(立ち上がる)砂糖は?
ハワード:いらない。いや、二つ。…もっと…。四つ…八つでも、どうでもいいや。
リーパー:オーケー(コップにお茶を注ぎ始める)
ハワード:「死 ― それは無に等しく、忘れ去られていくもの
― もう二度と、わが友人たちに会うこともないだろう… もはや…」
(リーパー、ハワードのお茶を盆に載せて来る。その途中で、運ちゃん仲間に足をひっかけられそうになる)
リーパー:こら、このホネホネ野郎!
ハワード:「おお、死よ…」
リーパー:(ハワードにお茶を差し出す)よう、あんちゃん。それ、やめろよ。
ここはもっと元気な奴の居るところだぜ。
(ハワード、お茶を受け取る)
リーパー:ところでさ、お前さんが言ってたのは、本当の本当じゃないだろう。来いよ、見せてやる。
(リーパー、壁の大きな鏡の前にハワードを連れてくる。)
リーパー:これは人生の鏡。ここから、何でも見ることが出来るぞ。もし見たければ、お前さんの葬儀の様子も見られる。
ハワード:本当?
リーパー:任せろって。
(リーパーが鏡に向かって手を上下させると、鏡が輝き始める。)
ハワード:(鏡を覗き込んで)わぁお…!こんなに沢山の人が…!
リーパー:違った、こりゃウッドストックのDVDだ。こっちがお前さんの葬儀な。(もう一度手を上下させる)
ハワード:わぁ…お…。こんなに…たく…さん…
ズーニヴァースの一角
(穴が掘られ、その中に棺桶が横たわっている。それを司教の帽子を被ったフォッシル、花を持ったヴィンス,ナブー,バナナを持ったボロが囲んでいる。)
フォッシル:アンノ ドミヌス ヴォミートゥス エレクトゥス エトセトラ…
我々は今日ここに、ハワード・ムーンを埋葬する為に集いました。一体何が起こったのか、よく分かりません。
ただ、彼が死んだ時(録音機を再生する)「ゴリラ」の着ぐるみを着ていた事だけは、確かです。
ここで、弔辞をお願いします。おそらく、このズーニヴァースでもっとも故人と親しかった人物、ヴィンス・ノワーです。
(ヴィンスに)ヘイ、ヴィンス!ぼくってば、聖職者様だぜ!
ヴィンス:本当の聖職者さんは連れてこれなかったの?
フォッシル:どうやれば良いのか分からないんだもん。(録音機を見せる)これ、使う?
ヴィンス:なにそれ?
フォッシル:おしゃべり箱!
ヴィンス:おしゃべり箱?
フォッシル:うん!
ヴィンス:いらない。
フォッシル:なぁんだ…。
(ヴィンスが弔辞を述べようとすると、フォッシルが録音機のスイッチを入れる)
録音機:ゴリラ!
ヴィンス:それ、よこして。
フォッシル:ぼくの言葉が入っているんだけど。
ヴィンス:済んだら、返してあげるよ。
(ヴィンス、脇に録音機を置く)
フォッシル:おしゃべり箱…
ヴィンス:ハワード・ムーンは、私の良き友人でした。彼は情熱的な男であり、動物たちと仲良く働くのが好きでした。
仲が良すぎなんて言われてましたが。
フォッシル:(狐のジャックの檻に向かって)聞いてるか、ジャック?
ジャック:うっせぇ!
ヴィンス:ハワードがもう一つ情熱を傾けていたのは、ジャズです。ハワードはジャズを愛していました。
彼は私に、葬儀にはジョン・コルトレーンのブルー・トレインを流してくれと言っていました。
でも、見つかんなかったんだよね。ごめんよハワード。でも、代わりに他の列車の曲を見つけてきました。
気に入ってもらえると良いんだけど。
(ヴィンスがラジカセのボタンを押すと、機関車トーマスのテーマ曲が流れる。参列者たちは、花とバナナの皮を棺桶の上に投げ入れる。)
あの世タクシーの事務所
(鏡の前のハワード、うんざりして首を振る。事務所に居た運ちゃんたちは大笑いしている。)
リーパー:おいおい、みんな仕事に戻れよ。
ハワード:電話を掛ける権利さえないのか?
リーパー:逮捕されたのとは、訳が違うんだぜ。
ハワード:どうにかならないか?
リーパー:そう言われてもなぁ…。まぁ、手違いはあったようだし。ちっとだけ教えてやるよ。お前さんを化けて出させてやる。
ハワード:化けて出る?そんなん、意味あんのかよ?
リーパー:何でも出来るぜ。ママの所に行ってさよならを言う人だっているしよ。嫌いな奴を脅かしてやるのも居る。
中には、カップを持ち上げて、意のままに空中浮遊させてやるなんて人も居るんだから。ひょえぇえええ〜!
まぁ、よく分からん奴だが。
ハワード:俺は相棒のヴィンスに会いたいんだ。
リーパー:あのイカした髪型のあんちゃんかい?
ハワード:ああ。
リーパー:オーケー。お前さんをあっちに戻すにゃ、ちと複雑な手続きが必要だがな。よし、そんじゃまず手足を動かしてみな。
自分を解き放つように…いいね。そう、踊るようにだ。
(ハワード、言われたとおりに、踊り出す)
リーパー:良いぞぉ。体をぐーりぐり動かして。続けて、続けて。もっとセクシーに!ちょっと唇を突き出してみな。
(ハワード、言われたとおりにする)おーい、みんな!見てみろよこいつ!
(運ちゃんたち、大笑い。ハワード、ムッとして動きを止める。)
ハワード:なにをさせやがる、この顔なし…
(ハワードが殴りかかろうとする一瞬、リーパーが指を一本立てると、煙と共にハワードが消える)
ボロの檻の中
(ヴィンス、レコードの山とプレイヤーを檻の中に持ち込んでいる。)
ヴィンス:ボロ、ハワードが生きていたとき、いつもジャズに没頭していたんだ。でも、もう死んじゃったし。
処分した方が良いと思うんだよね。これ、全部ハワードの古いレコードだ。
(一枚目をプレイヤーにかけると、激しいジャズが始まる。ヴィンス、すぐに止めてしまう。)
ヴィンス:ゴミだな。
(レコードをボロに渡すと、それを叩き割ってしまう。二枚目をプレイヤーにかけ、同じようなノリ。)
ヴィンス:やってらんねぇ。
(レコードをボロに渡し、やはり叩き割ってしまう。三枚目もやはり同じ。)
ヴィンス:ぶっ壊して。
(ボロが頭で叩き割る。ボロ、何かに気づいて、指差す。そこに、青ざめた顔のハワードが立っている。)
ハワード:ヴィンス・ノワー。私だ、ハワード・ムーンだ。
ヴィンス:ハワード!(駆け寄る)死んだとおもったけど。
ハワード:死んだの!馬鹿。俺のレコードに何してんだ?!
ヴィンス:ボロが叩き壊してる所。
ハワード:おい、助けて欲しいんだ。
ヴィンス:おまえ、本当に幽霊?すげぇなぁ!(ハワードにチョップを食らわす)
ハワード:何やってんだ?
ヴィンス:ごめん、突き抜けちゃうのかと思ってさ。
ハワード:無理だ。お前が髪型に予算を使っちまうから。
ヴィンス:ごめん、ごめん。(振り返って、カメラに向かって笑いかける)キマってるだろう?
ハワード:いいか、3分しかないだから、よく聴けよ。
ヴィンス:わかったよ。
(ヴィンスの携帯が鳴る。ヴィンス、電話に出る。)
ヴィンス:よーう、リロイ!元気?あははは。ありゃ頭がどうかしてたんだよ!あそこ、ただ酒だったんだぜ。
俺、一晩中居たもん。まじまじ!おい、信じられるかよ。すげぇぞ。ハワードが化けて出やがった!
先週死んだんだよ。まじまじ!話す?話してみろよ。ハワード、リロイだ。(携帯を差し出す)
ハワード:時間がないんだ!
ヴィンス:一言だけ!信じてもらえないじゃん!
ハワード:(携帯を受け取る)ハロー。リロイ。ああ。いや…いいよ、CDは取っとけ。もう要らないから。
うん。サンキュ。じゃあな。(ヴィンスに携帯を戻す)
ヴィンス:また後で。じゃぁな。(携帯を切る)
ハワード:助けて欲しいんだ、オーケー?俺は今、リンボに居る。助けてくれないと、俺はおサル地獄行きだ。冗談じゃない。
ヴィンス:ハワード、お前本当に死んだの?
ハワード:ああ。分かってる。ショックだろう。でも死は我々全ての人間に訪れるものなんだ。恐れてはいけない。
自然のサイクルなんだから。我々は年を取り、髪がなくなり、死んでいく。
でも、俺はその時を迎える前に、命を取られてしまったんだ。
ヴィンス:今、何て言った?
ハワード:その時が来る前に死んでしまったんだ!
ヴィンス:そうじゃない、髪の毛が何とか、かんとか…何だって?
ハワード:我々は髪がなくなり、そして死ぬ。
ヴィンス:最悪だ!どうにかしなきゃ!ナブーに会ってくるよ。どうすれば良いか知っているはずだ。
ハワード:よし、頼むよ。俺、リンボに居るからな!
(ヴィンス、檻から出て行き、ナブーの売店に向かう)
ナブーの売店
(表の看板には「シャーマン取り込み中」と書いてある。ヴィンス、脇から店内に入る。)
ヴィンス:ヘイ、ナブー。(室内の椅子に腰掛ける)
(ナブー、怪しい成りの男と水キセルを吸っている。)
ヴィンス:この人、だれ?
ナブー:ピート。
ヴィンス:彼もシャーマン?
ナブー:いいや。ディクソンズで働いているんだ。
ヴィンス:そう。ナブー、助けて欲しいんだ。なんだかおかしな事になっちゃって。ハワードが死後の世界から戻ってきてさ。
あいつが言うには、人はみんな髪の毛がなくなるって言うんだ。本当?
ナブー:その通り。
ヴィンス:やべぇ。そうは行くか。何かローションとか、薬とかない?何でも良いよ。
(ナブー、カエルを掴み取って、絞り始める。)
ヴィンス:おっ、それをどうにかするんだな。そいつの腹から体液を抽出するんだろう?
ナブー:いや、別に。このカエル嫌いだから。締め上げてやってるの。(カエルを放り出し、脇から別のものを取り出す。)
これは、ナブーのミラクル・ワックス。これをつければ、髪の一本一本が、馬の足みたいに強くなる。
ヴィンス:すげぇ。サンキュー、ナブー。お前ってば、ペルー人的天才だな。(ワックスを受け取る)
ああ、ところでさ、ハワードをリンボから助け出したいんだけど。
ナブー:部屋の隅を指差す。そこの鏡からどうぞ。
ヴィンス:サンキュー、ナブー。(鏡を見ながらワックスを髪につける)
良いかんじだね。ところで、ハワードなんだけど、どうすりゃ良いんだ?
(ヴィンスが鏡に手を突くと、鏡の中に吸い込まれてしまう)
ナブー:(ピートに)あのデジカメ、まだ値引きしてもらえる?
ピート:無理。でも64メガのカードメモリーを買えば、二つ目からは半額だよ。
ナブー:電話回線用の端子は?
ピート:確認しておくよ。ストラップも要る?
ナブー:そうだね。
フォッシルのオフィス
(フォッシルが口笛を吹きながら、パンチャーで紙に穴を開けている。そこにハワードが入ってきて、机上のコップを持ち上げる。)
フォッシル:オーマイガーッ!浮遊カップだ!おお神よー!!止めてー!!
(ハワード、カップをフォッシルの頭に叩きつけ、コップは粉々。)
フォッシル:ぎゃー!!!
(またすぐに、何事もなかったかのように口笛を吹き、穴をあけ始める)
ミラー・ワールド
(ヴィンス、鏡から飛び出して、鏡がやたらと多い部屋に入り込む。鏡を見ながら髪型を整えていると、と突然、手にスプレーと布を持った、布だらけ男が現れる。)
Mr. スーザン:ミラー・ワールドにようこそ!
ヴィンス:あんた、だれ?
Mr. スーザン:私の名前は、ミスター・スーザン!鏡の番人だ。お客さん、何をお探しかな?
ヴィンス:相棒のヴィンスを捜しているんだけど…リンボに居るはずなんだ。
Mr. スーザン:ああ、リンボ、ビンボーね。この中の一つの鏡が、リンボへの入り口なのだ。
しかし、一つだけだぞ、良く考えて選ばねば!このミラー・ワールドには17個の鏡があるのだから!
ヴィンス:ミラー・ワールド?なんだかそれっぽくないね。ただの小さな部屋じゃん。
Mr. スーザン:は?ああ…まあね。大きくはない。でも、鏡はお部屋を広く見せるのだ!
ええ…ところで、君は、私のミラー・ボールを数に入れ損ねているだろう。
(股間の「鏡玉」を見せる。)見て見て、ピカピカ!ピカピカ!ピカピカ!
(スプレーを「鏡玉」に吹き付ける)わお!冷たい!
以上!さあ、選択の時だ。慎重に選ぶのだぞ!
もし、間違った鏡を選ぶと、お前は私と入れ替わりでこのミラー・ワールドに永遠に閉じ込められるのだ!
共にあるのは、鏡に映る己の姿のみ!
ヴィンス:悪くないね。
Mr. スーザン:いつまでも自分の姿だけで構わないと?
ヴィンス:いいじゃん。こっちの鏡を見れば、髪型があらゆる角度からチェックできるじゃん。クールだろう?
Mr. スーザン:おお…虚飾だな。私とてお前と同じだ。よし、私がいかにしてこの鏡の牢獄にやってきたか、話してやろう。
ヴィンス:俺、まじで時間がないの。フレディ・ファブリックさん。リンボに行かなきゃ。
Mr. スーザン:私の名前はミスター・スーザンだ!そして今こそ、鏡を選ばねばならぬ!
(スプレーを鏡に吹きつけながら歌い出す)
♪これかな〜 ここから行けるのかな〜 それともここかな〜 どーれを選ぶ?乗るかそるか〜♪
(ヴィンス、適当な鏡を通して、出て行ってしまう。ミスター・スーザン、ヴィンスが居なくなっている事に気づく)
Mr. スーザン:ちぇっ。クソッタレ。
あの世タクシーの事務所
(鏡を抜けて、ヴィンスが入ってくる。)
ヴィンス:ここってリンボ?
リーパー:誰だ、あんた?
ヴィンス:相棒のハワードを探しに来たんだ。背が高くて、ひげの…
リーパー:捕まえ損ねたな。おれがさっき、おサル地獄に連れてったよ。
ヴィンス:行かなきゃ。俺を連れてってくれる?
リーパー:俺は今戻ってきたばかりだぞ?コリン、誰か他にいけないか?
コリン:だめだな。今は人員不足でさ。骸骨組合に交渉してるところだよ。あっはっはっは!
あの世タクシー
(宇宙空間に駐車したあの世タクシー。運転手はリーパー。ヴィンスが後部座席に座っている)
リーパー:ここだよ、あんちゃん。
ヴィンス:よっしゃ。待っててくれる?
リーパー:メーターを回してても良ければな。
ヴィンス:長くはかからないよ。
リーパー:そう言うが、上手く行くかな。親玉次第だ。
ヴィンス:誰だって?
リーパー:「おサル魔王」さ。
おサル地獄
(ハワード、おサル魔王と対面し、鎖につながれている。ハワードと魔王の間には、溶岩が煮えたぎるような、奈落が口を開けている。)
おサル魔王:ハワード・ムーン。お前は、永遠の業火に飛び込まねばならぬ!その悪行のためにな。
ハワード:でも、ボロは品行方正だったぞ。
おサル魔王:しかし、お前は狐にたかった。
ハワード:そりゃデマだ。
おサル魔王:火の無いところに、煙は立たぬ。お前がここに連れてこられたという事で、明白ではないか。
(おサル魔王の両脇に控える手下たちが笑い始める)
ハワード:ここの連中はみんなコメディアンか?
おサル魔王:黙れ!さあ、死ぬ覚悟をするのだ!
ハワード:俺はもう死んでいるんだろう?
おサル魔王:ええと、二度目の責め苦を味わうのだ!さぁ、永遠の業火に飛び込む心の準備をしろ!
(ヴィンスが駆け込んでくる)
ヴィンス:待て!
おサル魔王:誰だ?
ヴィンス:俺はヴィンス・ノワー。こんなの何かの間違いだ。こいつを燃やすなんて、そうはさせないぞ。
おサル魔王:誰がこの私を止めるというのだ?
ヴィンス:俺さ。
(画面、切り替わる。ヴィンス、ハワードの隣りで、同じように鎖につながれている。気まずい間がある)
ハワード:あのさ。啖呵を切ったのは良いけどさ…でも、はるばる来てもらっても…ムダだと思わないか?
その…なんでお前、手ぶらで来るんだよ。例えば銃とか…熊手とか…何か持って来いよ。
おサル魔王:そこまでだ!今こそお前たちが燃やされる時だ!貴様と、貴様の変な髪型をした女房よ!
ヴィンス:変な髪形?鏡見てから言えよ。だっさい真ん中分けみたいだぞ。
おサル魔王:黙れ。
ヴィンス:良く見ろよ。そんなの、赤茶けたフワフワ毛玉じゃん。
おサル魔王:黙れと言っているだろう!
ヴィンス:変だぞ。赤毛毛玉!
おサル魔王:うるさい、うるさい!いつも髪の毛には悩んでいたんだ、子供の頃から。
巻き毛でもなければ、直毛でもないし、どっちつかずなんだ!
洗おうものなら、パサパサになるし、洗わないで居ると、脂ぎってくる!どうにもならないんだ。(落ち込む)
ヴィンス:なぁ、整髪料とか、仕上げジェルとか、そういう製品の事聞いた事ない?
おサル魔王:仕上げジェル?何だ、それは。
ヴィンス:美容院、どこ行ってるの?俺なら6分でその髪の毛をどうにかしてやるよ。
おサル魔王:(手下に)どうして教えてくれなかったんだ?デイヴィ、ニモ?(ヴィンスに)やってくれるか?
字幕:6分後
(おサル魔王が鏡を見ると、ロックスターのようなイカした髪型になっている)
おサル魔王:こいつはまったく驚きの仕上げだ!お礼に、二人を自由にしてやろう!ありがとう!
ヴィンス:お礼は俺にじゃなくて、ナブーのミラクル・ワックスに言いなよ。
おサル魔王:見てよ、私ったら。自信に満ちて、強くて、超セクシーな感じ!行くぜ!
(ハードでグラムなロックが始まる)
♪俺はおサル魔王 お構いなしさ なんてったて、素敵な髪型のサルだから ふんわりフワフワ!
何てったって、ナブーのミラクル・ワックスがあるんだから!
あきらめないで 奇跡は起こるのさ あきらめないで ワックスで興奮が続くのさ!
カモン!フッフー!ハッハッハー!!おサルの歌でノリノリだ!
あたしの髪を良く見てちょうだい 触ってもいいわよ 気にしない
昔は恥ずかしがっていたけど 今じゃおサルのクセ毛も思いのまま
あきらめないで 奇跡は起こるのさ あきらめないで ワックスで興奮が続くのさ!
カモン!フッフー!ハッハッハー!!♪
(ハワードとヴィンス、あの世タクシーで帰路につく)
ズーニヴァース
(ナブーの売店から、ハワードとヴィンスが出てきた所に、フォッシルが現れる)
フォッシル:ムーン、死んだかと思った。
ヴィンス:俺が死の淵から助け出してきたの。
フォッシル:代わりに豆のせチョコレートケーキか?働け。
(ハワードとヴィンス、ボロの織の前で立ち話をする)
ハワード:まいったな。あいつでさえ懐かしいよ。ここから永遠に引き離されるとは思わなかったな。
とにかく、戻ってこれて嬉しいよ。
ヴィンス:そうだな。
ハワード:ここに全てが終結するんだ。
ヴィンス:元に戻ったってわけ。
ハワード:借りを返さなきゃな。タクシー代、返すよ。
ヴィンス:110ユーロ。
ハワード:いくらだって?!
ヴィンス:だって、地獄に行って戻ってきたんだぜ?
ハワード:領収書もらったか?
ヴィンス:忘れた。
ハワード:あればクレームできたのに!
(二人が話している間に、背後の檻でボロが苦しみ出し、倒れてしまう。そしてまた、一人死神が近づいてくる。)
エンディング・トーク
(赤い幕が閉まり、ハワードが出てくる)
ハワード:ええ…以上です。ショーをお楽しみいただけたでしょうか。少し、私のために時間を取りました。
感動的なスピーチをお送りしましょう。どうも。
「かくして、良心というものは、とかく人を臆病にさせるものだ。同時に、決断を促すものでもある。
思考の青ざめた抜け殻のように弱々しく…
(ヴィンスがハワードの背後に現れ、カメラに向かってリモコンを見せる。そして口ぶりでボタンを押すように促す。突然、画面が切り替わる)
エンディング・クレジット
(インド音楽が流れ、タジ・マハールを背景に、ハリネズミ(?)の格好をしたヴィンスが、クネクネ、ドタバタ踊り出す)
(終)
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