2008年6月 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ ライブ観戦ツアーレポート
18th June 2008 :5日目 その2: トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ / プルデンシャル・センター
間近なステージ 〜 張りのあるロック・レジェンド 〜 ウザいお客 〜 ハレ・クリシュナの思し召し 〜
ゴージャズ・ブロンド 〜 TP&HB近景 〜 笑顔のギタリスト 〜 お尻でダンス!〜
ロックンロール・ヘヴン 〜 カメラ小僧
19th June 2008 :6日目 帰国
ニューアーク・リバティ・インターナショナル・エアポート再び 〜 成田 〜 悲しいエコー
7時ごろ。食事を終えて、いざプルデンシャル・センターへ。すでに大きな人の波がセンターへ向かっている。雨はまだ軽く降っており、かなり寒い。着替えたのは正解だった。
到着すると、前日と同じくWill Callブースでチケットを受け取り、中へ入る。今日はアリーナだ。ここはスタンド席の上方入口から、ずっと階段をさがってアリーナに入るようになっている。やや中心から左寄りの12列目。さすがに、前日とは違ってステージが大きい。
2列後ろのMayuさん,Toshiさんとも再会し、ライブが始まるのを待った。客層は、ビジネスマンらしき人も多かったニューヨークに比べ、こちらは家族連れが多く見られる。父親と息子の取り合わせが多く、微笑ましい。
8時少し過ぎ。ニューヨークと同じく、半分くらいの埋まり具合で、スティーヴ・ウィンウッド登場。
格段に大きく見えるスティーヴも、やはり若々しいお兄さん(60歳)だった。全体的に張りのある姿。だからこそ、白いシャツを出したラフなスタイルが映える。
周囲も座っているので、落ち着いて鑑賞。オルガンにしても、ギターにしても、スティーヴの姿がしっかり見えて大感激。
昨日はマイクとのギター共演が素敵だったCan't Find Way Back Homeを演奏したので、今日の共演はないと分かる。スティーヴ自身のバンドとの演奏は、すごく充実した感じで素晴しかった。さらに、昨日は聴けなかったI’m
a manが聴けて幸せ。スペンサー・デイヴィス・グループでは一番好きな曲なのだ。
私の右隣に居る4人のグループのうち、男二人のテンションが異様に高い。周りは座っているのに、立ち上がって大興奮しているので、後ろの女の子に文句を言われている。さらに、最後のGimme
Some Lovin' が始まると、
「おらぁ〜!お前ら、立てーッ!」
と周囲にまでちょっかいを出してくる。非常にウザい。しかも、腕を私の前に横断させて視界を遮り、斜め前の人の肩を叩いて促し始めるので、こっちも応戦しないとならない。座っていてもちゃんと盛り上がっているので放っておいてくれ。
彼らはTP&HBになると殆ど席に居なかった。今思うと、スティーヴ・ウィンウッドが本命のファンだったのかも知れない。それにしてはウザいのだが。スティーヴのファンは、大人で礼儀正しい都会的タイプのはず…と、私が勝手に思い込んでいる(別に特定の誰かを想定しているのではない。スティーヴ本人からの連想)。
9時過ぎに、スティーヴのステージ終了。思えば、TP&HBの前にこんなすごいロック・レジェンドのライブを堪能できるだなんて、夢のようだ。
9時半過ぎ。昨日とおなじくらいの時間に、照明が再び落ちてTP&HB登場。
一気に観衆が立ち上がり、当然目の前に巨大な壁が何重にも立ちはだかる。私の直ぐ前は普通サイズに大きいのだが、その右斜め前が更に大きくて視界を遮る。その壁の隙間に、マイクとトムの姿が見える。特に、マイクが見える確率が高く、これはラッキー。ハレ・クリシュナの思し召し。
トムは少し体を右側に倒しながら背伸びすると、なんとか視界に入る。二人が左側に移動すると、今度はRさんの視界を大迷惑に遮るという、言語道断な手段に出る私。
間近に見るTP&HB ― 正確には、トムとマイク ― 他の3人はあまり見えないのだ。ベンモントもピアノの陰になりがち。トムは紫色のベルベット・ジャケットとシャツに、ジーパン。昨日より格好良い。
特筆すべきは、その金髪の美しさだった。これまで、写真や映像で見てきたどの時代よりも、そして前回ボストンのアリーナ席で見たときよりも、素晴らしく髪が美しいのだ。肩すれすれくらいの長さで、天使の輪が見えるほどの艶やかさ。色も綺麗に輝いている。さすがは、ハリウッドのセレブ。ツアーに合わせて、椿油を凌ぐ特別トリートメントを施したに違いない。良い傾向だ。
トムの髪があまりに美し過ぎて、これが一番、鮮明に記憶されている。これまでに見たどの金髪よりも、美しかったと、断言できる。
すっかり定着した髭も、若い方向へ作用し、格好良い。これまで実際に見たトムさんの中では、今回が一番格好良かった。
ツヤツヤ!キラキラ!
一方、マイク。髪に関しては、トムとは逆方向ではあるものの、やはり気合が入っていたらしい。2月のスーパーボウルの時は、ドレッドがゆるくなって丁度良い感じだったのだが、今回のツアーに合わせたのか、バリバリに巻いてある。長い間おなじみだったあの爆発頭が恋しいが、当人が気に入っているのなら良しとしよう。
髭もすっかり定着傾向。見慣れてくると、どんどん格好良くなる。元々格好良い人は、どうしたって格好良いということ。シャツも今日は海老茶色の渋いチョイス。パンツもダークで、きまっている。やはりマイクはこうでなきゃ。
トムが止まれば、マイクが動くし、マイクが止まると、トムが動くし…
曲目はニューヨークとほぼ同じで、スティーヴとの共演2曲と、Cabin Down Below,
Hony Beeが無く、Listen to her heartが加わるという構成なので、都合3曲少なかった。どんなライブにも、場所それぞれの事情があるもの。
You wreck me では、昨日の反省点を完璧に直してきて、非の打ち所がない。
Listen To Her Heartの若々しい演奏が感動的。さわやかで、気負わない雰囲気。
I Won’t Back Downでは、トムが歌っている間にマイクがベンモントに近づいてなにやら合図を送っている。映像を見ていてもそうだが、マイクはベンモントの方を見ることが多い。
Face in the crowdでは、じっくり堪能するためか、みんな席につくのでこれはチャンス!開けた視界でTP&HBをじっくり鑑賞し、写真撮影。やはりフロントの二人が輝いている。そして今回は全体的にロンのハーモニーが地味ながらもしっかりと効いていた。
Mary Jane’s Last Danceでは、トムのギターソロを、面白そうにマイクが眺めている。やがて二人でギターがぶつかりそうな位な距離で絡みつかせて、実にセクシーな展開。終わりに近づくと、少しステージ上手寄りに居たマイクがベンモントの方を向いて合図している。同時にトムがマイクに合図しているのだが、マイクは気付かない。「あ、」と慌てて首をめぐらして、トムの方に向き直るマイクの仕草が可愛い(でもその時は既にトムさんソッポ)。
Free Fallin’の時は、一休みしようと座り込んでいた人たちが、イントロと共に慌てて立ち上がる様子が可笑しい。最初、トムがソロの間にマイクがギターの上で腕を組んで上の方の席を見回している。
メンバー紹介。相変わらず、ベンモントにはMr.をつけて長々と名前を呼ぶトム。ロンとのハグは毎回恒例らしい。マイクのときは観衆からの「マイキー!」という歓声もひときわ高かった。
Sweet Williamでは、また多くの人が席についたので、今度はデジカメで動画撮影。メモリーがどの程度もつのか分からない悲しさで、1分程度で止めてしまう。今思えばもっと録画すれば良かったのだが、やはり自分の目にしっかり焼き付けたいと言う気持の方が強い。
どの曲の時も印象的だったのが、トムやマイクが笑顔だったこと。特にマイクは終始ニコニコしている。かつては、トムの後方で気恥ずかしそうに ― そのくせ物凄いプレイを控え目な態度でしていたマイクだが、最近はすっかり前にでてアクションも激しくプレイしている。しかも笑顔で、投げキッスを連発。どうも50代半ばを過ぎて、急に弾けたようだ(髪型を変えた時期と重なるのだろうか?)
長いギターソロが終わるタイミングで、以前は目で合図するだけだったのが、今回は頭上で手を回していた。
バンドの演奏はいつも安定感があって、トムの声も伸びがあった。
You don’t know how it feelsで、” Meeeee〜”と伸ばすところは、右手もゆっくりあげながら声が舞い上がっていく。
この曲では、トムのイカしたダンスの足元をじっくり見てやろうと意気込んだが、人の壁でままならない。しかし、後ろを向いてダンスに入る前、微妙にユラユラとお尻を振った瞬間は見逃さない。お尻を振るツヤツヤ金髪髭オヤジ57歳。可愛い。美しい髪をなびかせて、ステージを右へ、左へ。真のロックスターとは、この人のことだ。
このロックスター、どうも煙草が手放せないらしい。一曲おわるごとに、ドラムの足元で赤い仄かな火が灯る。そして、一筋の煙。ニューヨークでは吸っていなかったように見えたのだが。法律の違いだろうか(イギリスの不良オヤジは、吸って逃げた)。
Learning To Fly で、マイクが同じ見になったあの緑色の小さな楽器を持ち、トムのソロの間、その上で腕を組んでいる。そして顔をあげて満員の会場を見回し、おもむろにトムのプレイに加わって行った。そして、いつも笑顔を観客に見せている。
やがて、いったんバンドはひっこみ、カーテンコール。呆然とあたりを見回すと、会場一杯の観衆 ― 1万数千人が最高にハッピーだった。まさに、「地上のロックンロール・ヘヴン」。
アンコール2曲目に、予想していなかったGloriaが鳴り響いた。大好きな曲である上に、あまりの格好良さに卒倒寸前。「ナンパ・トーク」の「俺ってマリワナ臭い?」で大ウケ。
やがて風が彼女の名を呼ぶ ―
トムに促されて観衆があげるGLORIA!の声が、プルデンシャル・センターに渦巻く。盛り上がりが最高潮に達し、最後にAmerican Girl。ダサいライティングもそのままに、ライブは熱狂の内に最後の挨拶へ。
最後に一列に並ぼうとするTP&HB。マイクがドラムの足元から何かを拾い上げて、ニコニコしながらいじっている。ベンモント,トムに挟まれて肩を組んでみると、彼の右手にはデジカメが!今は亡きボ・ディドリーを物陰から激写した男である。カメラが好きなのだろうか?それなら日本に来れば良い…。
私の間近で一列に並ぶTP&HB。ベンモント,マイク,トムが何か話している。
他のメンバーが退き、トムが最後にマイクロフォンに向かって挨拶をしている最中も、その背後でマイクはデジカメを一生懸命操作している。フラッシュをたいているので、手前に居るトムの綺麗な金髪が素晴らしく写っていることだろう。
やがて投げキッスをしながら、二人も退場。会場に照明がもどってきた。
ライブが終わると、なぜか悲しくなる。
Rさん、Mayuさん、Toshiさんと共に外に出ると、プルデンシャル・センターから人の波はペン・ステーションに向かっていた。駅前でニューヨークへ戻る二人と分かれ、Rさんと共にホテルに帰還。
ニューアークのプルデンシャル・センターは駅にも近く、しかもその駅前に手ごろなホテルがある。人波にくっついていけば、どんなに晩い時間のライブに一人でも大丈夫だろう。中々良い所だ。
部屋に戻ると、無闇に撮影した写真をチェック。動画をもっと長く撮れば良かったと思うが、何もかも完璧とは行かない。ともあれ、ライブは終わった。あとは帰るだけ。翌日も早いので、二人して手早く行動して、ベッドに入った。
19th June 2008 :6日目 帰国
ニューアーク・リバティ・インターナショナル・エアポート再び 〜 成田 〜 悲しいエコー
6時起床。前日にチェックしてある店で朝食を摂ると、荷物をまとめてチェック・アウト。このホテルには、また来そうな気がする。
便利な通路とエスカレーターを使ってペン・ステーションに入ると、NJTでニューアーク・リバティ・インターナショナル・エアポート・ステーション(長い)に向かう。一駅なので、連結部分に立って移動。便利なエア・トレインに乗り換えて空港に向かうと、遠くにニューヨークのビル郡が見えた。最終日も良い天気。
空港には丁度良い時刻に到着し、チェック・インを済ませると売店で最後の買い物を済ませ、やがて出発時間になった。今回のコンチネンタルはすべて時間通り。日本への13時間の空の旅の末、6月20日金曜日の成田に降り立った。
ここでお世話になったRさんとお別れ。本当にお世話になりました。的確なアドバイス、無駄の無い行動。最高の旅の道連れだった。
日本に帰ってきたからと言って油断することなく、大活躍した携帯電話を返却。地元への高速リムジン・バスも丁度良い時刻に来た。
梅雨の湿った空気に、日本なんだなと実感しながら、バスの座席で目を閉じる。
iPodがechoを流している。ライブでは決してプレイしないであろう、この悲しい曲が大好きだった。ライブが終わってしまった悲しみが、ずっとエコーとなって響いていた。
週明け、出社すると複数の人に訊かれた。
「どうだった?」
「格好良かった…」
「え?Mさんの家が?」
「金髪ツヤツヤでさぁ…」
「……。」
the end
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