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ポール・ゾロによる、トム・ペティ,ロング・インタビューより(抜粋) 
  
 2004年3月31日 カリフォルニア州マリブ ペティの自宅にて

Q:あなたの友達ジョージ・ハリスンのロックの殿堂入りにおいて、あなたがプレゼンターを勤めた時のジェフ・リンとのショーを、楽しく拝見しましたよ。

 あれは楽しかった。あの週末は楽しんだよ。今年の観客も良かったしね。

Q:あなたが曲を選んだのですか?ジョージのWhile my guitar gently weepsと、ウィルベリーズのHandle with careを演奏しましたが。

 いや。テレビ放映だから(笑)。テレビのスタッフが選ぶのが習慣みたいだ。連中はいつもあれやこれを演奏して欲しいって言い過ぎだけど。まぁ、それで良いんだ。

Q:以前にもライブでHandle with careを演奏してますか?

 ロンドンでの「コンサート・フォー・ジョージ」で演奏した。三曲演奏したんだ。ジェフ・リン,ダーニと一緒にね。僕らバンドはこの曲をツアー中にも演奏している。

Q:ジェフ・リンはロイ・オービソンのパートを上手く歌いましたね。彼は実にロイっぽい声色で歌っていました。

 ジェフは凄いよ。While my guitar gently weepsの演奏に彼も加わってもらうには、ちょっと説得を要したけど。彼は今まで一度もあの曲をライブでやった事がないんだ。それで、納得させるのにちょっとなだめすかしたりもした(笑)。みんなのパートについてもだ。ぼくは、ジェフが演奏できて良かったと思うよ。

Q:ジェフ・リンとあなたのハーモニーは素敵でした。

 そうだね、あのハーモニーについては随分練習した。ここにきて練習したんだ。

Q:完全に「ロックの殿堂用」のバンドでした。ハートブレイカーズのドラマーのスティーブ・フェローニを連れてきましたね。

 そう、彼にはドラムを叩いてもらい、スコット・サーストンにはベースを弾いてもらった。いつもはやらないんだけど。それからハーモニカも吹いたけど、おかしな感じだったね(笑)。それから、スティーブ・ウィンウッドがオルガン、ダーニがアコースティック・ギター、ジム・キャパルディがパーカッションを担当した。

Q:それに、プリンスが5分間にも及ぶ物凄いギターソロをWhile my guitarで演奏しました。

 そう、あれは凄まじかった。

Q:プリンスともリハーサルをしましたか?

 したよ。彼はやる気満々だった。

Q:Handle with careはウィルベリーズ最初の歌です。あれはジョージが始めたのですか?

 そう、大部分はジョージだ。彼には曲の枠組みだけがあった。僕らはここから道一本むこうの、ボブ・ディランの家で録音した。彼の所のガレージでね。それでみんなで曲を書いたんだ。歌詞も一緒に書いた。ほとんどはジョージとボブと、僕だ。ジェフはジョージと一緒に座って ― たしか芝生の上に座っていたと思うけど ― 中間の8小節の所を仕上げていた。コードを増やしていったんだ。僕らが“いたずらっ子なコード”と呼んでいる奴だよ。みんなで仕上げたんだ。
 ボブと僕は一緒になって、他のブリッジ部分を作った。“Everybody needs somebody / to lean on…”の所だよ。あれはボブと僕なんだ。そう、歌詞は共同作業だったな。ジョージは箱からタイトルを持ってきた。収納ボックスだよ。Handle with care(取扱い注意)って書いてある。実際それがタイトルに決まってしまった訳だけど、タイトルは必要だからね。
 一日で良くやったよ。その夜にはもう出来上がって、録音したんだから。翌日か、翌々日かにオーバーダビングをしたかもしれないけど、ほとんどはあの日、一日で終わったんだ。

Q:中間部分“I’m so tired of being lonely”は、完璧なロイの歌声ですね。ジョージとジェフがロイの為に作ったのですか?

 そう。ロイのために特別に作ったんだ。何せあの日は全員あそこに居たのだから。ジョージはいつもトラベリング・ウィルベリーズみたいなバンドの事が、頭にあったんじゃないかな。実際、僕らはそれ以前に何度か一緒にやっていたから。僕らはみんな前から親しかったんだ。確か、あの時もうFull moon feverに取り掛かっていたと思うし。多分一部は録音もしていた。ロイもあそこに来たのは、ジェフがロイと一緒に作業していたからだ。
 ぼくが最初にロイに会った時、You got itを作った。“Anything you want, you got it…”ぼくらが書いたんだ。それでお互いを知っていて、もう前から一緒にやっていたんだ。それでジョージが決心した ― 彼はシングルの追加曲を作っていたのだけど ― 彼は、ここに集まった全員が契約して何か作れるようにしようと考えたんだ。
 録音が出来上がった時、彼はHandle with careがジョージ・ハリソン・ソングには思えなかった。むしろグループの曲だった。どういうのをグループって言う?そう、ボールが転がり始めたような物さ。物凄いバンドだったんだ。僕はあのバンドの一員である事を楽しんだよ。

Q:今となっては、ジョージもロイも亡くなってしまいましたが、あなた方五人が一緒になってやった事は歴史的な事でしたね。

 そうだよ。それに長い時間を一緒に過ごした。もう何年か経ってしまったけど、今思い返すと、とんでもない事だったな(笑)。でも、実際の所は友達だってことだ。まったく友情の賜物さ。僕らみんながウロウロしてて(笑)、良いレコードが出来てしまった。

Q:あなた方が歌詞を作った時はどんなものでしたか?ギターを持って集まり、詞をポンポン出していったのですか?

 ああ、よくそうやっていた。共同作業みたいな物だよ。ぼくはそういうやり方をしたことはなかった。だいたい誰かが筋道を立てる。それから、「よし、こんなのはどうだい,タイトルはこうだ、こんなネタもあるぞ…」とやり始める。そしてみんな曲を書き留めるんだ。
 いかにして曲は出来上がるかって事だけど、いつもこういう風にはいかない。たまにはあるけどね。
 誰かがまた詞を言うだろう、そしてまた別の人が言い出す。それで親指を上げたり、下げたりするんだ。イエス!とか、ノォォォォォ〜!!(笑)とか、またイエー!とかやって。時には夕食の間もやっていたな。

 夕食のテーブルで、メモ帳が回ってきて、歌詞について相談したのを覚えている。この詞はどう?あれは?…ってね。やっぱり、ボブが凄かった。いかに彼が際立っていたか、改めて思い知らされた。彼のやり方を見るのは素晴らしい事だったよ。彼には曲を書く技術の、凄いセンスがあるんだ。
 だいたい、どれも時間はかからなかった。たまに言葉にもがき苦しんだりして、しばらくしてから解決したけど。でも僕の記憶が確かなら、だいたいは随分早くできあがっていた。一日以内だな。歌詞とか、その他の事もさ。たまには歌詞と曲が両方だったりもした。

Q:普通は、まず曲が出来てから、歌詞が出来るのですか?

 そう、大体は曲が先だ。たまに同時のこともあるけど。ジョージがEnd of the lineをやっていた事を思い出すな。僕らはみんな部屋に集まって歌っていた。“It’s all right…”ジョージは最後の所も思い付いていた。“We’re going to the end of the line…”
 彼はよくみんなと一緒に曲を作っていたな。全部は思い出せないけど。でも、あらゆる事が素晴らしい経験だった。多分、二度とあんな機会には巡り合えないだろうね。

Q:ジェフ・リンは多く曲で歌っていますね。5人の中で一番聞き分けがつきにくいのが、彼の声です。

 ああ、でも僕には彼の声もクリアに聞き取れるよ。ジョージとジェフがアルバムのプロデュースをしたんだ。ジェフは莫大な貢献をしている。ハーモニーのアレンジについてもそう。あれはハーモニー・グループだったから。ハーモニーこそ最大の成果だ。ジェフが僕らのハーモニーを形にしたんだ。彼のウィルベリーズへの貢献度は計り知れない。

Q:以前、あなたはジョージと一緒に居て沢山の新しいコードを教えてもらったと言っていました。実際、あなたが知らなかったコードを披露してくれたのですか?

 その通り。彼はギターで僕に沢山の事を教えてくれた。新しいコードだけじゃなく、違う奏法や、もっと簡単な押さえ方とかもね。ちょっとしたギターの裏技だよ。びっくりしたよ ― 僕がものすごく難しいと思っていたビートルズの曲とか、彼は弾いて見せてくれたんだ。しかもすごく簡単なやり方だったんだ。
 ジョージはコードの名手だった。コードが良く分かっていたし、同じコードの別の奏法もわきまえているんだ。でも、僕は彼から殆どのやりかたを吸収できた。僕らはよく気楽なプレイを楽しんでいた。彼は僕のやり方をしっかり見ていて、
 「ああ、それはもっと簡単な押さえ方があるんだよ」とか「こういうやり方もあるんだ」と言って見せてくれた。

 ジョージは本当に、本当に凄いミュージシャンだった。ある晩、二人で僕の家にいたんだけど、随分遅い時間だった。なんだか訳あって、僕はベースを弾いていた。そう、まったく僕ら二人っきりで、物凄く夜遅くだったんだ。
 それで、ジョージはエレキ・ギターを弾き始めた。ブルースをやり始めたんだ。それはもう、べらぼうに凄いブルースだった。僕はジョージがそんな風に演奏するのを見た事がなかった。それで僕は尋ねた。
 「どうして今までそれをやらなかったんだい?どうやったらそんな演奏ができるんだ?」
 そうしたらジョージが言った。「ああ、こいつは『いかにもエリック』ってやつでね。」(笑)
 彼は実際そういうのが出来たんだよ。ホンモノのブルースがプレイ出来たんだ。でも、ジョージはこんな様な事を言っていた。

 「エリックがやって見せたものに、誰もが飛びついて挑戦してみるんだろうけど、どうも僕はやる気になれない。僕はいつも本物の『いかにもエリック』ってやつを見ているんだからね。」

Q:ジョージの息子ダーニは、本当にジョージそっくりですが、彼とあなたが一緒に居るのを目にするのは良いものですね。彼は良いミュージシャンですか?

 そうだね。僕がダーニが小さい頃から知っているよ。僕の娘達 ― 特にエイドリアとは、友達で一緒に大きくなったんだ。今でも子供たち同士はとても仲良しだよ。家族ぐるみで仲が良いんだ。僕らは後に残されたけど、今でも凄く大事な友達さ。

 ダーニは良いミュージシャンだよ。一緒にやっているグループがあるって言ってたな。レコードを作るんだろう。

Q:彼は本当によくジョージに似ています。幽霊が出たみたいですよ。

そうなんじゃない?ジョージが肉体を交換したか何かだろうさ(笑)。



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