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 Martin Freeman presents: MADE TO MEASURE
                    A Personal Selection of Classic Motown Cuts


         

 
2006年 UKで発売された、モータウン・レコード・レーベルの、コンピレーションアルバム。
 俳優マーティン・フリーマンが、モータウン・ファンということで、全20曲を選び、解説も加えている。

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(選曲:マーティン・フリーマン / インタビュー&ノート:パオロ・ヒューイット)

 マーテイン・フリーマンは1971年、ハンプシャー,オルダーショットに生まれ、ファーンボロ,イーストボーン,ウェイブリッジ,ハーシャムの小学校に通った。
 十代のころは、サリー,チャーツィーのセーレジアン・スクールで過ごした。卒業後、ウェイブリッジのブルックランズ・テクニカル・カレッジに入学し、その後スウィス・コテージのセントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマで学んだ。
 1995年からプロの俳優業を始め、順調な数年を過ごした後、大成功を収めたテレビドラマ,[The Office]におけるティムの演技で、国民的な名声を得た。
 映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」での主演や、高い評価を得ているBBCドラマ [The Robinsons] などの、活躍は続いている。目下、マーティンは監督アントニー・ミンゲラとの仕事(訳者注:Breaking and Entering)に入っている。
 最初に買ったモータウンのレコードは、[Mod classics volume one]。以来、ずっとレコードを買い続けている。


THE JACKSON FIVE: I WANT YOU BACK (1969)

 この曲はあまりにも素晴らしく、オープニング・トラックにするのは、ちょっと気が進まない。かと言って、どこか他に良い順番があるわけでもない。確か、この曲を初めて聴いたのは学生だった1987年頃だ。[The Flare Groove] なんかが流行っていて、ぼくらの世代はみんな、リーバイスの501に、バス・ウィージャンスのローファーを身につけていた。
 この曲は、ギターとべースのリフが、歴史に残るほど、素晴らしい。ベリー・ゴーディによると、"Oh baby give me one more chance" といフレーズは、ある晩、キッチンで思いついたそうだ。それを、「ザ・コーポレーション」として知られている、ライター集団に託し、曲になったというわけだ。
 マイケル・ジャクソンについては、彼の今がどうであれ、あの若さにしてあの才能は、無視も、否定もできないと思う。これほど驚くべきヴォーカルを聴かせてくれるのだから。その素晴らしさは、円熟の域に達しながら、決して三十五歳の大人のものではない。事実、彼は子供だったにもかかわらず、あの大人としての詞を歌いこなしたのだ。…とにかく大好きな曲だ。

 
(訳者注 [The Flare Groove]::1988年にUKで発売された、ファンク/ソウルのコンピレーションアルバム。
       ベリー・ゴーディ:モータウン・レコーズの創始者で、ソングライター、プロデューサーなどもこなす。
       ザ・コーポレーション::ゴーディをはじめとする、四人のソングライターたちから成るチームのこと
       あの若さにして:当時マイケル・ジャクソンは10歳だった )



DIANA ROSS & SUPREMES: NO MATTER WHAT YOU ARE (1969)

 ぼくはこの曲がずっと大好きだった。姉の友達のジョンとテリーは、ブライトンに住むソウル・ボーイズで、ぼくにとって初めての、モータウン編集アルバムを作ってくれた。ぼくが15歳の時だ。この曲は、そのアルバムに入っていて、まずぼくの心をとらえたのは、最初のシタールに似せたサウンドだった。さらに聞き進めば、全てがこの曲に詰まっている。最高のバッキング・ヴォーカルに、最高のストリング・アレンジメント。ダイアナ・ロスのことを言えば、彼女は本当に、本当に素晴らしい。この曲を選んだのは、聴くたびに15歳のころとおなじような感覚を得るからだ。
 ついでだけれど、この曲で歌われている詞の内容については、信じていない。一応、ぼくは乙女座ではあるけど。

 (訳者注 ソウル・ボーイ:1970年代後半から1980年代前半にかけて登場した、
                 アメリカのソウル・ミュージックなどを愛好するUKの若者たちのこと。
        詞の内容:この曲は占星術が主題となっている)



BLENDA HOLLOWAY: YOU MADE ME SO HAPPY (1967)

 この曲を最初に聴いたのは、ブラッド・スウェット&ティアーズのバージョンで、こちらも大好きだ。モータウンが成し遂げてきたような、人生を肯定する曲だ。モータウンは、市場で商業的に成功することで名を馳せてきた。つまりレコードを売りたかったのだ。これは同時に、60年代半ばにおいては音楽の魂(ソウル)を得ることと、非常に近いことだった。実際、みんなそれで魂(ソウル)を感じたのだから。
 ブレンダはソング・ライティングにも参加している。これをもってしても、彼女が才能豊かであることが分かる。

 
(訳者注 ブラッド・スウェット&ティアーズ:1967年にアル・クーパーが中心になって結成された、アメリカのロックバンド)


FRANKIE VALLI & THE FOUR SEASONS: THE NIGHT (1972)

 誰でも、あれとこれを組み合わせたり、一緒にさせたりしたら素晴らしいことになるんじゃないかとか、そういう夢は持っているものだろう。これは、ぼくにとって夢が現実になったものの一例だ。フォーシーズンズが、モータウンだなんて、何て素晴らしいコンビネーションだろう。モータウン・レーベルでのフォー・シーズンズは、実に良い仕事をした。ロックンロール界で活躍し、多くの曲が定番曲となっているのだから。"Silence is golden" や、"Beggin", "Working my way back to you", それに "Can't take my eyes off you" などがそれだ。
 フランキー・ヴァリは、時々、耳をつんざくような音にはなるものの、実に素晴らしい声をしていると思う。このバンドには惚れ込んでいるのだ。それに、ぼくのパートナーのお母さんも、同じように好きだというのもいい。

 (訳者注 フォー・シーズンズがモータウン:それまで、フィリップス・レーベルに在籍していたが、
                            1971年にモータウン傘下のモー・ウェスト・レコードと契約した
        ぼくのパートナー:アマンダ・アビントン)



SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES: OOO BABY BABY (1965)

 これより良い曲って、あるだろうか?ぼくがこれを最初に聴いたのは、[Motown with a Bullet] というコンピレーション・アルバムでだ。学校に通って5年目のころに、血眼になって探し回ったもので、聴いた途端に大好きになったし、何年たってもやっぱり好きなのには変わりがない。
 スモーキー・ロビンソンは、偉大な作詞家の一人だと思う。彼はファンタスティックだ。シンガー・ソングライターというと、大抵はキャロル・キングや、ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディランなどの名前が挙がる。ぼくは、彼らも全員大好きだが、誰もスモーキーや、マーヴィン(・ゲイ),スティーヴィー(・ワンダー)のことは話題にしない。みんな、驚くべきソングライターなのに。このモータウンというレーベルにおいては、この三人がベスト・スリーのライターであり、パフォーマーだ。
 この曲は実に美しく、スモーキーの歌唱も申し分ない。同様に、ミラクルズも最高のヴォーカル・グループだ。ぼくはこの曲を、最高のラブ・ソングの一つだと思っている。

 (訳者注 [Motown with a Bullet] :正確には、[Motown Male Groups - With A Bullet
                       1984年にUKで発売されたコンピレーション・アルバム)



THE ORIGINALS: THE BELLS (1970)

 ぼくが最初に聴いたのは、ローラ・ニーロのバージョンだ。彼女は1971年の [It's gonna take a miracle] で、この曲をラベルと一緒にやっている。
 ぼくが知る限り、オリジナルズはマーヴィン・ゲイのプロジェクトの一部だったはずだ。この曲は素敵なドゥー・ワップ・ミュージックに回帰しているから、マーヴィンもソングライティングに参加しているのだと思う。作られたのは1969年だが、1957年の色合いが濃くでている。歌詞的には、シンプルなコンセプトだ。恋に落ちること、そして鐘の音を耳にすること。大のお気に入り。

 (訳者注 ローラ・ニーロの[It's gonna take a miracle] :正確には[Gonna Take a Miracle]
                                   女性ボーカル・グループ,Labelleとの共作)



MARVIN GAYE: PLEASE STAY (ONCE YOU GO AWAY) (1973)

 この、1973年のアルバム [Let's get it on] の曲を聴くと、ぼくはこう思う。もし誰かが自分のためにこんな曲を書いてくれたとしたら、もう死ぬしかない、崖から飛び降りるしかない。この曲の存在より素晴らしい事なんて、残された人生に起こりうるだろうか?あり得ない!
 この曲に関しては、ドラミングについて語りたい。何せ最高なのだから。ただのバックではなく、曲を際立たせている。何と言っても、心地良い。マーヴィン・ゲイは、真に見事な、ラブソングのライターだ。彼自身は(フランク・)シナトラになりたがっていたけれど、マーヴィン・ゲイとして、その上を行っていた。


THE TEMPTATIONS: BALL OF CONFUSION (1970)

 これは、あの二人がぼくに作ってくれたモータウン・テープに入っていた曲だ。フィンガー・スナッピングも、ボウ・タイのスーツ姿も無しの状態で、素のテンプスを聴くきっかけだった。
 ぼくは以前、彼らをバラエティ・タレントのようなもの、いわゆる「エンターテイナー」だと見なしていた。60年代の半ばまで、彼ら自身で曲を書いたり、プロデューシングをしたりしなかったからだ。スモーキー(・ロビンソン)や、その後はホワイトフィールドやストロングと一緒に仕事をしていた。
 この曲は、1970年にホワイトフィールドのプロデュースで録音された。素晴らしいのは、歌詞の韻の踏み方と、リズムだ。
 恐ろしいことに、ぼくは若い頃、この曲に合わせて、たくさんラップとか、リズムカルな言葉遊びを作っていた。この曲はヒップホップに多大な影響を与えていると思う。パブリック・エネミーの最初のアルバム三作が、その証拠だ。

(訳者注 あの二人:二曲目に登場した、姉の友人ジョンとテリー。
      テンプス:ザ・テンプテーションズの略称
      ホワイトフィールドとストロング:ノーマン・ホワイトと、バレット・ストロング。
                         モータウン・レーベルで活躍した、ソングライター,プロデューサー
      パブリック・エネミー:80年代から活躍するアメリカのヒップホップ・グループ)



COMMODORES: I FEEL SACTIFIED (1974)

 この曲は、モータウンのディスコ・コンピレーション・アルバムで知った。よくパーティで流したものだ。"Three times a lady" には全くない、重みのあるグルーヴ感がある。これは間違いない。誰がリードヴォーカルなのかは知らないが、ライオネル(・リッチー)ではないだろう。ファットバックのドラムが凄いし、曲の始まりが、うねるようなハーモニーで始まるのもいい。続いてキック・ドラムが始まれば、もうノリノリだ。

(訳者注 "Three times a lady":1978年のコモドアーズの曲。グルーヴ感とは無縁のバラード
      ファットバック:ドラムの奏法の一つ)



STIVIE WONDER: SUGER (1970)

 これはおそらく、スティーヴィーの名前がプロデュースにも記された、最初の作品だろう。最高の曲だ。ぼくは彼のこういうルーズで、ファルセットを駆使し、エキサイトした感じが好きだ。バンドの素晴らしい演奏で言うと、ドラムは華やかだし、ベースはジェイムズ・ジェイマーソンかどうかははっきりしないけど、とにかく格別だ。見事な曲と言うしかない。

(訳者注 ジェイムズ・ジェイマーソン:モータウン全盛期のベーシスト。ファンク・ブラザーズの一人)


THE MARVELLETES: THE HUNTER GETS CAPTURED BY THE GAME (1966)

 これはスモーキーの曲だ。プロデューサーもスモーキーだと思う。ワンダ・ヤングは素晴らしい声色をしている。スモーキーが、ポップ・ソングが表現し得る詞や、メロディの上限を、いかに引き上げたかという事を示す、好例だ。音楽でありとあらゆることが表現できる。
 この曲はあのリフで始まり、続いてドラムが入ってくる。さらにぼくがとても好きだと思う点は、スモーキーが常に歌にテーマを持っていて、そのアイディアが確実にモノになっているという事だ。とにかく、最高。


CHRIS CLARK: FROM HEAD TO TOE (1967)

 これもまた、スモーキーの曲で、プロデュースもしている。ぼくはこれのレコードを、少し前にビルから(JB's レコ―ズ,ハンウェイ・ストリート W1)7インチので買った。ぼくが最初にクリス・クラークを聴いたのは、8年前にベリー・ゴーディの伝記を読んだのがきっかけで、この曲を聴いたときは、とても気に入った。最高のモッド・ソウルの曲だ。一応、付け加えておくと、彼女はブロンドの髪をボブにしていた。モータウンとしては特に有名な曲ではないが、とてもクラシカルなサウンドの一曲だ。

(訳者注 モッド・ソウル:定義は訳者にもよく分からないが、おそらく60年代に全盛を迎えたモッズ・カルチャーに
                影響されたR&Bのこと。)



THE JACKSON FVE: NEVER CAN SAY GOODBYE (1971)

 これもまた、マイケルの凄まじいパフォーマンスの一曲だ。たしか、1971年か1972年の録音だったから、マイケルは13歳か14歳くらいだと思う。素晴らしい曲だ。
 この曲の全体から、つくづく思うのは、バッキングボーカルと、それがリスナーに対して無意識のうちに与えているものの妙だ。つまり、どこをどう歌うのか、エコーをどうするのか、バック・コーラスをどう消すのかなど。ジャクソン一家は本当に素晴らしいシンガー揃いで、マイケルはこれまでに無い最高のパフォーマンスを見せている。全ての人の憧れを、彼は持っている…この上ないことだ。これは、まさに天から与えられた才能を持つ少年のサウンドだ。

 (訳者注 マイケルは13歳か14歳:正確には、録音時12歳,発売時に13歳だった)


MARVIN GAYE: TROUBLE MAN (1972)

 暗い曲ではあるが、実に、実に驚くべき深さがあると思う。オステンドのドキュメンタリーで、好きな音楽について尋ねられ、ジプシー音楽が好き、ジャズが好きと語っていた。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツが好きだとは言っていなかった。彼のそういう表現は、とても不思議に思えた。
 マーヴィンは有名なガーシュイン・ファンだった。その傾向が、このアルバムに反映されているのだと思う。「スーパーフライ」と同様に、この映画も、アルバムの方が出来が良いと思う。[What's going on] の1年後、マーヴィンは全く方向性の異なるこのアルバムを制作した。
 とにかく素晴らしい。一応、念のために言っておくけれど、素晴らしいというのは、彼の作曲、アレンジ、プロデュース。そして作詞家としては、最高の人の一人だろう。事実、彼は自分で曲を作りあげ、驚くべき名作に仕上げたのだ。

 (訳者注 オステンドのドキュメンタリー:マーヴィン・ゲイが1980年代初頭に、
                          ベルギーのオステンドに滞在した際の様子を収めた、ドキュメンタリー作品
       ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ:1970年代前半に流行した、フィラデルフィア・ソウル
                                (やや甘めで華やかな傾向)の代表的なグループ
       ガーシュイン:「ラプソディ・イン・ブルー」などで有名な、ジョージ・ガーシュイン
       スーパーフライ:1972年公開の映画。カーティス・メイフィールドによる音楽が有名。
       この映画:1972年公開の映画[Trouble Man (野獣戦争)」のサウンド・トラックを、
              マーヴィン・ゲイが担当したことを指している。この曲は、サウンド・トラックのうちの一曲 )



FOUR TOPS: STILL WATER (LOVE) (1970)

 ある曲を聴いた誰もが「うわぁ、なんてこった!」と叫んでしまうとしたら、それはまさに、そこに天才が存在しているからだ。この曲はまさしく、天才の成せる技。
 フォートップスはどうだろう?ヴォーカル・グループとしては、信じられないほどパワフルなリード・ヴォーカルを備え、実に素晴らしい音楽の表現者だ。ぼくは、この曲の冒頭で、レヴィ・スタッブスが "walk with me" と語るところが好きだ。バッキング・ボーカルも、特にエンディング近くで、"take my hand" というリフレインを歌うところなどが驚くほど素晴らしい。素敵な一曲だ。


THE DETROIT SPINNERS: IT'S A SHAME (1970)

 これまた、あのブライトン・テープに入っていた曲で、耳にすれば、この曲こそ入っているのは「当然!」と思わせるものだ。この曲はスティーヴィー(・ワンダー)のプロデュースで、作曲もシリータやレイフ・ギャレットとの共作。実に豪華な取り合わせ。
 ぼくはこの曲をみんなに聴いて欲しいけど、とりわけモニー・ラブのバージョンしか知らない人に聴いて欲しい。イントロのギターリフからはじまる三分半は、まさに至福の時だ。そして、スティーヴィーが関わっているということを知れば、この曲の良さに納得がゆくだろう。ポップソングの中でも、最高の内の一曲だ。ソウルがどうとか、ジャンルがどうとか、そういうものを飛び越えて、つい最近作られたかのような新鮮さがある。

 (訳者注:ブライトン・テープ:ブライトン在住だった、マーティンの姉の友人二人が作った例のテープ
       シリータ:ソウル・シンガー。スティーヴィー・ワンダーの最初の妻
       レイフ・ギャレット:Leif Garrettと書いてあるが、この人物は1961年生まれの俳優・歌手。
                  70年代末から80年代のティーン・アイドルで、この曲の共作者ではない。
                  この曲に正しい共作者は、1948年生まれのR&B シンガー,ライターの、
                  リー・ギャレット Lee Garrett。マーティンが実際に間違えて「レイフ・ギャレット」と言ったのか、
                  インタビューを書き起こしたときに誤ったのかは不明
     モニー・ラブのバージョン:1990年この曲を元にラップをかぶせたカバーバージョン)



THE SUPREMES: BAD WATHER (1973)

 これは、ダイアナ・ロスが抜けた後の曲で、1973年に録音された。素敵なホーンのメロディから始まり、素敵にルーズなドラミングが全体を貫いている、素晴らしい曲だ。そしてこれも、スティーヴィーが絶好調な時期の作品だ。
 この時代の彼は、まさに完全無欠だと思う。まるで、モーツァルトのようにね。20世紀音楽における重要人物は、ガーシュインだとか、レノンやマッカートニーだとも、もちろん言えるだろうが、スティーヴィーはまちがいなく、最も重要な人物の一人だ。


EDWIN STARR: STOP HER ON SIGHT(S.O.S.) (1966)

 これは、まさに典型的な60年代風に、エドウィンがばっちりはまった曲だ。モータウンにはたくさんの秘密道具があるけれど(タンバリンや、ビブラフォン)、サックスこそこの曲の必殺アイテムだ。四年後、エドウィンは戦争に関して、国家に対する抗議の声を上げることになるが、この頃はまだ、彼女がいなくなったと、FBIに泣きついている。笑えるね。

(訳者注 戦争に関して、国家に対する抗議の声を上げる:1970年、モータウンから移籍したスターは、反戦歌として
                                     有名になる "War"を発表する)



SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES: THE TEARS OF A CLOWN (1970)

 正直言って、ぼくはこの曲より良いものは思いつかない。美しく、そして完璧だ。学生のとき、好きな詞を書き出せと言われたところがある。ぼくはこの曲の詞を選んだ。
 冒頭のリフは、スティーヴィー・ワンダーが作った。スティーヴィーがこの曲について、語っているのを聞いたことがある。彼は1963年にはこのリフを思いついていて、それが後にレコードになったのだが、思いついた当時、たったの13歳だったことになる。信じられない。ポップ史上、もっとも優れた詩人に、彼が加われば、大成功は間違いない。
 
 そもそも、R&Bのヒット曲で、一体誰が「道化師 Pagliacci」のことを詞にするだろうか?ぼくは、当時はまさに、人々はよりよくものを読み込み、聴き込み、より様々なことに興味を持つようになり、たくさんのこと吸収した時代だったのだと思う。
 なにはともあれ、この曲を何度繰り返し聞いても、いつも興奮せずにはいられない。アメイジングな曲だ。たしかに、ぼくはどの曲も大好きだけど、泣き出してしまうほど好きな曲は数えるほどで、この曲はそのうちの一つだ。語り始めると、感情が抑えられないほど、とにかく素晴らしい。スモーキーは信じられないほど素晴らしいシンガーであり、作詞家だ。これは永遠の曲でなんだ。もう、これくらいにしておかないと。

(訳者注 道化師 Pagliacci:この曲のタイトルになっている、"clown" も道化師だが、
                 詞の中には、イタリア語の Pagliacciが登場し、同時にこれはイタリア・オペラのタイトルでもある)



SYREETA: TO KNOW YOU IS TO LOVE YOU (1972)

 1997年のハルで、ぼくはこの曲の7インチ盤を、2ポンド50で買った。信じられないほどラッキーなとき、浮き足立ってしまうことって、あるだろう。ぼくはこのレコードを買った店から出た時、「やった!」と泣きそうになりながら、地面から6インチは浮き上がって歩いているような感じだった。このレコードをこんなに安く手に入れることが出来たなんて、信じられなかった。
 この曲は、ずっとお気に入りの一曲。まさに、5分30秒の偉業だ。曲を書いたのは、シリータと、スティーヴィー。彼らの結婚生活が終わろうとしていた時期で、だからこそこういう緊張感のある曲なのだろう。じっと聞いているのは、ある意味チャレンジでもある。5分30秒もの間、悲しみに貫かれた曲に、浸り続けるというチャレンジ。情け容赦なく、叩きつけられるようなグルーヴが、どんどん繰り返されていく。これは、生きること、人を愛することが出来ない、難しい、と言うことを歌った曲だ。やがてストリングスが加わるのだが、これが信じられないほど素晴らしい。まるで魂を引きずり出されるような感じだ。
 とにかく、ぼくがこの曲が好きなのは、モータウン・サウンドがどうとか、ベリー・ゴーディがどうとかは全く関係なく、あの二人が作り出し、演奏者たちが演奏し、この歌が出来上がった、その事、そのものなのだ。


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                                      作成者:NI :ニッ!ぶち