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インタビュー / 2005年 8月 7日 ジ・インディペンデント紙 日曜版

ジュリアン&ノエル  我々はいかにして出会ったか 


 ジュリアン・バラット(36)はリーズ出身。コメディ・デュオ「ザ・マイティ・ブーシュ」の片割れである。更にバラットはクリス・モリスのコメディ・シリーズ「ネイサン・バーリー」(チャンネル4)にも出演した。彼は友人のジェイクと共にロンドンに住んでいる。
 ノエル・フィールディング(32)はブーシュ・パートナーのもう一人で、ロンドン出身。この二人は1998年にエディンバラ・フェスティバルで初めてショーを披露し、ペリエ賞の新人賞を獲得した。「ザ・マイティ・ブーシュ」は2004年、BBC3でテレビ・デビューした。フィールディングはガールフレンドとロンドンに住んでいる。


ジュリアン・バラット

 俺がスタンドアップをやっていた頃、ノエルはよくギグを見に来ていた。こいつが誰かは知らなかったが、変な髪形もあって、ノエルの顔は見知っていた。実際に初めて「出合った」のは、俺がチョーク・ファームでギグをやった時だ。誰かが出られなくなったので、ノエルに代わりに出てみたらと言ったんだ。俺の順番の前にノエルが何かしらやったのだけど、凄かった。実のところ俺にとっては迷惑なぐらいで、ノエルにやってみたらと言った事を少し後悔した。
 終わってから、俺たちは車でノエルの家まで行き、「来ても良いけど、帰っちゃだめ。」とノエルは言った。俺は構わないと答えた。別にほかに色々ある訳でもなし。始まりはそんな具合だ。

 二人でやり始めて、どんどん実感していったのは、俺たちが物凄くおかしな化学反応みたいなものを起している事だった。二人のスタイルはよく似ていたが、その源は別にある。だからこそ上手く行くのだろう。俺たちは二人とも妙ちきりんなイメージを持ち、奇妙なキャラクターの世界を作り上げようとしていた。アニメーションにあるような魔法をモノにしようとしていたんだ。

 ノエルは陽気で、楽天的で、やたらと喋る。俺はそうではなく、やや守りが堅い。俺たちは対照的で、それが良さでもある。もしノエルが無口で、俺みたいに不気味で神経質な人間だったら、二人して部屋で沈黙したまま終わってしまうだろう。ノエルはとにかく喋り続け、そうやって作品を作って行く。俺はそれをコントロールし、時間内に納めきれるかどうか気を揉む。それでもショーの枠内にどうにか収めきれるのは、俺たちが演じるキャラクターたちも、実際の俺たちの違いと同じような位置づけだからだ。上手く行かなくてイラつくところはジョークにする。癒しみたいなものだな。
 こういうのはバンドをやるのに似ている。スタンド・アップというのは孤独な商売で ― 表面的には社交的な感じに見えるけど、実際は一人っきりの芸だ。俺はそのあたりが好きではなかった。俺はコンビのダイナミックさが好きなんだ。もしノエルと出会っていなかったら、俺はもっと普通で現実的な事をやっていただろう。ノエルはいつも物事をどんどんヘンな方向に持っていくんだ。でも俺もホラーとか幽霊とか、奇妙な生き物とかが好きだからね。

 どんなコンビもそうだろうけど、俺たちも実にくだらないことで議論したりする。俺には父親みたいなところがあり、それに対してノエルは奥さんみたいな感じ ― ちょっと気取ってるかな。誰かが俺たちのショーは、「ジョージ&ミルドレッド」のサイケ版だって言っていた。あいつがドレス・アップを始めると俺は早くしろと急かし、それから二人して飛び出す。ものすごく典型的だ。互いに怒鳴りあい、けなしあったりする。でもすぐに仲直り。そしてまた言い合いの始まりだ。でも、そうなるのは二人とも疲れているか、7週間ぐらい缶詰にされた時くらいだな。
 とにかく、俺は他の誰よりも、ノエルと多く顔をあわせているだろう。俺の夢の中にまで入り込んでくるんだ。ノエルの点々のような顔が眠っている間も付きまとってくる。俺が無事でいられるのも、いつまでのことやら。


ノエル・フィールディング

 初めてジュリアンのスタンド・アップを見たとき、凄いと思った。俺はジュリアンに話しかけようとしたけど、ジュリアンはすごく怪しげで、真面目くさっていて、奇妙で、少し打ち解けない人だった。俺があまりにも付きまとうから、ジュリアンは気が狂いそうだっただろうな。次に会った時、俺は女ばかり5人の友達と一緒だった。これで信用を得たんだろう。俺たちは一緒に飲みに行った。その翌日、ジュリアンが俺に電話してきて、一緒にテレビ・ショーの脚本を書く気があったら会わないかと言った。それと同時に、俺たちは相棒になったわけさ。
 二人はスタイルは違うけど、顔つきとか、声なんかは良い取り合わせだ。こういうのはやろうと思って取り合わせられるものじゃないし、一緒に本を書ける人を探し出すのも難しいことだ。運だよ。俺たちが一緒に本を書き始めると、イラついた時とか、乗らない時でさえ上手く行った。ある時、ボートで釣りをするシーンを書いた。二人とも投げやりだったし、鬱な感じで、しかも時間もなかった。だから俺たちはそのシーンをさっさと終わらせてしまった。翌日になってもう一度読んでみると、今までで一番良く書けたシーンだった。

 俺はジュリアンからべらぼうなほど多くのことを学んできた。彼はいつもベストを尽くそうとする。俺だっていい加減な性質ではないけど、新しいアイディアを思いつくと、前のアイディアには興味がなくなってしまうんだ。でもジュリアンは一つのアイディアをより良くしようと取り組むんだ。忍耐強く、物語を形にしようとする。そうすると俺は更にそれをヘンテコにするようなアイディアを付け足していくんだ。そして最後には本当に上手く収まる。そういうやり方から多くのことを学んだし、ジュリアンも自由に発想する事を学んだと思うな。

 俺たちはすごく両極端な存在だ。俺の普段は特に気まぐれという訳ではないけど、場合によってはやけっぱちになることもある。そういう時、ジュリアンは消えてしまう。二人してブチ切れることもある。ジュリアンの顔面めがけて、ドアを蹴り飛ばした事もあったな。そんな事をしても、ショーを作り上げるのに何の役にも立たないよな。モッズ・ウルフがスクーターに乗るかどうかなんて、別に喧嘩するほどの事じゃない。でも、実際に疲れたり、ストレスがたまったりするとそういう言い合いにもなる。
 俺たちがペリエ・アウォードにノミネートされた時、あれもすごくストレスだった。すごく良いライブだったことは自覚していたけど、同時に喧嘩もしていた。俺がジュリアンの白いシャツを色物と一緒に洗濯しちゃってさ。洗濯の仕方も知らないのかって言うから、ジュリアンこそ洗濯をしていることなんて一度も見てないと言い返してやった。シャツを巡って大喧嘩をしていたわけだ。アホみたいだけど、ちょっと笑える。

 俺たちは歳も違うから、ジュリアンが兄貴みたいな存在のこともある。誰かが俺に何かしようものなら、ジュリアンは激怒するんだ。
 ジュリアンは俺のせいで嫌になるくらい我慢し続けていた時期があった。要するに、俺がアルコールを飲めなかったんだな。
 俺たちがツアーをしていた時、俺が飲めないので、ほかのコメディアンがすっかりイラついてしまっていた。それでそいつは自分のステージで俺をこき下ろしたんだ。するとジュリアンが怒り狂ってね。殴ってやるつもりだったんじゃないかな。俺はジュリアンのそういう所が好きだ。もしジュリアンの居ないところで、誰かジュリアンの事を言ったら、俺だって腹が立つ。ジュリアンはすごく俺を守ろうとするし、俺だって思いは同じだ。


 「ザ・マイティ・ブーシュ」の新しいシリーズは現在、水曜日午後11時にBBC3で放映中。ファースト・シリーズのDVDは8月29日発売予定。来年にはライブ・ツアーが予定されている。

(終)
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管理人雑感

 
冒頭にジュリアンの年齢が36歳と出ていますが、原文がそうなっているんです。本当は37歳ですね。
 このインタビュー、内容も濃いし、ツッコミどころも多いので大好きです。…ジュリアン、ジェイクって誰だ?37にもなってルームシェアってするもんかね?日本人にはよくわからん。
 二人の出会いの下りは面白いですね。「来ても良いけど、帰っちゃだめ」というノエルの台詞、普通ひきますが、「ま、いっか」で済ますジュリアンはさすがです。ノエルが女友達5人を引き連れていったら、ジュリアンが信用してくれたって言うのは…ええと、女の子を紹介してくれるなら…って話?それとも「ゲイじゃないよ」って話なの?(両方?)

 二人のコメントに共通しているのは、「俺たちは全然違うけど、そこが良い」という事。それから、些細な喧嘩の話。特にノエルは下らない喧嘩の話を嬉々としてしてますね〜。確かに、ジュリアンはシャツスタイルが多いから、大事な白いシャツをダメにされたら怒るかも。まじて夫婦みたいだ(ジュリアンもそう言ってる)。ジュリアンの話に出てくる「ジョージ&ミルドレッド」というのは、70年代に放映された夫婦物のシット・コムです。

 ノエルが最後に、ジュリアンの兄毅然とした話をしています。ノエルが飲めなかったなんて、驚きです(つまり、ジュリアンが鍛えたってことか?)ノエルの悪口を言われて、激怒するジュリアンの熱さと青さに感動します。
 このインタビューは2005年ですから、二人がコンビを組んでから8年くらいは経っています。そんな時期でも、こんなインタビューが取れるのですから、まさにForever Youngという感じの、ブーシュ・ボーイズなのでありました。


 
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