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インタビュー / 2000年4月15日 ジ・エイジ (インタビュアー:ミーシャ・ケッチェル)


ジュリアン&ノエル  Giggling madmen from comic duo

 ノエル・フィールディングとジュリアン・バラットは「アークティック・ブーシュ」をひっさげてきた、コメディ・コンビである。この舞台はまったくの不条理劇で、瞬く間に今年のコメディ・フェスティバルの話題をさらった。
 彼らは、ばかばかしいコメディに人を巻き込もうとしているわけではないと言う。パブにやたらと入り浸っている訳でもないし、他のコメディと融合しようともしない。ただ、不思議な雰囲気で居つづけるのだ。
 フィールディングは生意気な感じのする、爆発頭の26歳。1970年代だったら、ピンナップ・ボーイになれただろう。バラットは31歳。発情期のブタの物まねが好きで、見た人は否応無くその沢山の乳首に大笑いする事になる。同時に彼は多少ウブな感じも有していた。

 「俺達はソーホーで『ザ・マイティ・ブーシュ』っていうショーをやっているんだ。」
 フィールディングはピカピカした生地のボクサーパンツをはき、ホテルの一室のソファに寝そべりながら言った。ペンギン文庫のペイパーバックをペラペラと上から下に、めくっている。
「『ブーシュ』ってのはただの言葉だよ。変な響きだろう。」
「最初のショーでの、こいつの髪型のことだ。」
 バラットが訂正した。彼はだらしない格好に、目をしょぼしょぼさせて床から天井までを、(その優雅さを押し隠しつつ)見つめている。
「ドアのついた巨大アフロ頭とか出てくるんだ。俺達は動物園の飼育員。いつもでかい作業着を着ている。」
 はぁ?この摩訶不思議さは、人の想像力をはるかに凌駕してしまっている。この二人が、奇妙で、遊び心一杯で、とりとめもない冗談を言っている事は、もうお分かりだろう。この二人の男の間には一風変わった愛情が存在するが、ホモセクシャルっぽい所は微塵もない。

 彼らは、バラットがロンドンでスタンド・アップをやっている時に出会った。バラットは北部から引っ越してきて、ワン・ルームに落ち着いていた。
「自分がまるで芸術家であるかのようなロマンチックな理想を抱いて、あくせくと働いていた。」
 彼はスタンド・アップ・ショーをするにあたってかなりこっそりとやっていたと言う。
「まるで夜の間は気が触れているみたいに、コソコソやっていた。」

 フィールディングはアート・スクールに在籍していた。そこで彼は、情熱の向け先をヘンテコな絵を描く事から、十字架上のイエスを演じ、聖書の物語を面白おかしく話す方へと変更した。茶色い髭を顔に描いたが、ライトの熱で流れてしまったという。
「俺の先生が言ったんだ。『コメディをやったらどうだね?やっている友達は居るのだが、どれもクズばかりで。君のほうが良さそうだ』ってね。」フィールディングはそう説明した。

 言葉というものを、そのまま鵜呑みにしてはいけない。「アークティク・ブーシュ」はヒップな無頓着さを持ち、キャラクター設定を傲慢にも無視してしまいつつ演じられる。これは良く練り込み、意図的にスタンド・アップと劇場演劇の相の子に仕上げられている。二人は狂ったように、そして自分自身のギャグに笑いつつ、即興も演じる。

 バラットが言う。
「俺が好きな俳優達は、決まりきったキャラを持っていないんだ。つまり、面白い…人たちだよ。ジェフ・ゴールドブラムとか、ジーン・ワイルダー、ケヴィン・スペイシーとかね。」
「自動的に頭が働くんだ。自分が何を言おうとするか考える間もなく、もう口をついて出ている。つまり…そういう発想であり、雰囲気なんだ。」
フィールディングは更に続けた。
「ショーに向けて、俺達は自分を奮い立たせようとする。俺らのエージェントのモノマネとかしてね。」

 もし「アークティック・ブーシュ」を観たら、ドラッグが絡んでくる事も許せるかもしれない。ショーは喋る郵便袋や、ファンタジックな配達旅行、氷の世界への英雄的な冒険、性別不明のイエティなどが登場するストーリーを中心に展開するのだ。支離滅裂になる以外、どうしろと言うのだろうか?

「俺達はもうやり方は分かっているんだ。もちろん、スタンド・アップの主流なんかじゃない。全然わからない人も居るだろうね。でも、物凄く大好きだって人も大勢居る。」 
フィールディングはそう言う。
「イギリスの人間は、守りが固いし、シニカルだ。連中は誰かを誉めるときに、こんな風に言うんだ。『やぁ、きみのショーを見たよ。僕のガールフレンドが、きみのことを気に入っていたよ。』そう言いながら、通りの真中でハグしたりするのさ。」

(終)
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管理人雑感

 ブーシュのラジオが製作放送されたのが2000年。二人は無論テレビシリーズをやりたがっていたのですが、「どうやってテレビにするんだ?」という問題がたちはだかります。そこで、まずは舞台上でテレビのプロトタイプを展開することになります。このインタビューが撮られた時期は、丁度この頃です。
 それにしても…あの…ノエル、どうして
パンツなのよ!ズボンはけよ!しかもピカピカの、パンツ!ピンナップボーイとか言われてるけど、でもパンツ!(私の訳し方が悪いのか?)ジュリアンもなんだかアヤシゲだ…。「ホモっぽくないよ」と言われても、なんだか心もとない。
 「ブーシュ」という言葉については、マイケルについての解説がないですね。話を簡略化しているのでしょう。ジュリアンが好きだという俳優のラインナップも中々面白いです。


 
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