back next list random home back next list random home back next list random home

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

インタビュー / The Music.com.au より 2012年7月 13日(インタビュアー:Anthony Carew)


ノエル・フィールディング :Never Mind The Boosh

 警告。ノエル・フィールディングがマイティ・ブーシュの後に制作したテレビ番組、[Noel fielding's Luxury Comedy]を見ると、グルーヴィーで、グルグルと繰り返し、催眠術にかかったような、テーマ音楽が頭にこびりついて離れなくなる。たぶん、永久に。
 「それって、イヤーワーム(直訳すると、「耳に寄生する虫」。頭の中でいつまでも鳴っているような、印象的な音楽のこと)だよね?」と、フィールディングは笑う。この39歳のコメディアンは、いつでもどこでも笑っているようだが。
「俺も、色んな人によく言われるんだよね。『あのイカれた曲が頭から離れないッ!』って。キャッチーなテーマ音楽で人をイラつかせておいて、勝ったと言えるのだろうか。でもまぁ、これってずっと継続している広告みたいなものだな。説得力のあるジングルがいつでも、どこへ行っても鳴っているわけだ。♪‘luxury comedy/ooooh, yeah’ ♪…一日中、テレビの中の俺の存在を認識することになる。

 [Luxury Comedy] には、フィールディングと、その友人たちが出演している。弟のマイケルや、ディレクター兼アニメーターのナイジェル・コーン、カサビアンのセルジオ・ピッツォーノ(フィールディングとともに、ルーズ・タペストリーズとして、この番組のミュージック・アルバムをリリースする予定)などだ。
 「ザ・マイティ・ブーシュ」よりもさらにシュールな衣装やメイクは、もはや異常な領域に達しつつあり、物語としての辻褄が合うかどうかも関係なくなってきている。フィールディングに言わせれば、「手作り感いっぱいの、やぼったくて半分スケッチ・ショー、半分シットコムの、ごたまぜ」。

 「こういう、シュールなテレビ番組を作りたかったんだ。ちょっとスパイク・ミリガンっぽいのとか、[Q] とか、[Vic & Bob]っぽいやつをね。ブーシュをやった後、考えた。自分自身のショーをつくりたいって。キャプテン・ビーフハートの[Trout Mask Replica](1969年のアルバム)みたいなショーさ。まさに、これぞ俺のショーだ!」フィールティングは力説する。
「想像力とか、ファンタジーの世界、魔法の実現、シュールリアリズムとかに、すごく興味があるんだ。そういうのが大好きで。『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなファンタジーは好きじゃない。サイエンス・フィクションにも興味がないんだ。もっとホルヘ・ルイス・ボルヘスや、ルイス・キャロルみたいな非現実的な世界を作り出す人の方に惹かれる。潜在意識の世界を自覚させるようなもの。なにもかもがイカれてて、奇妙な世界だ。
 俺がやりたい、そういうことを、今やらせてくれたチャンネル4には、驚かされたよ。いまどきはリアリティー・ショーがはやっているのに、そこで俺が非現実的な馬鹿をやるんだから!」

 フィールディングとブーシュの共同制作者であるジュリアン・バラットは、2010年からやや距離を置いている(「俺たちが、また一緒に何かやるのは確実だ。多分、ブーシュの映画だな。」フィールディングは二人の活動終了を恐れる声を鎮めるように、発言している)。その時、フィールディングは、頭の中には外に出して披露するべきものが一杯に詰まっていると自覚した。「ザ・マイティ・ブーシュ」の世界にあった、ヘンテコキャラクターが、飛び出すのを待っている。フィールディングとバラットは、「ザ・マイティ・ブーシュ」で誰も思いつかなかったような物を、作り出してきた。
「大向こうに受けたいとか、そういうことは忘れた。誰にどう受けるとかには、煩わされなかったんだ。」フィールディングはそう語った。しかし、ライブ・ツアーをやってみると、彼らはカルト的なファンたちがキャラクターのコスチュームを着て押しかけるのを目にすることとなった。
「ステージ上から見渡してみると、なんだか怖いくらいだった。ヒッチャーが5人、ルディ・ヴァン・ディサルジオスが6人、それにジャンキー・フォックスが最前列に陣取っているんだから。」フィールディングは笑って言う。そういう訳で、彼の最新作品は、やりにくくもあった。
「俺にとって、有利な要素はなかった。本当にブーシュは大人気になったから。たくさんの人が、新しいショーを見て、『これはブーシュじゃない!一体なにやってるんだ?ブーシュを殺しちまったのか!』とか言うんだよ。だから、こう返した。『落ち着けよ、俺らは今、休暇中なんだ!』って。」

 フィールディングは人がどう考えているのか、気にするのだろうか?時々は気にするだろう。
「俺はチャラい方だから、誰かが俺のショーみたいにクールなことをしていたら ― (これは、 Luxury Comedyつながりでピッツォーノと友達になった、フランスのエレクトロ・グループ,ジャスティスのことを示唆している)― すぐに夢中になっちゃうよ。でも、イケてない靴とか履いているやつをみると、何考えてるんだかと思う。」

 子供たちや、ネコたちも、[Luxury Comedy] の大ファンだそうだ。
「子供たちに気に入ってもらえると嬉しいね。彼らには何の偏見もないだろう。まったく素直な気持ちで見てくれる。俺が子供好きだって言い方もある。と、言うか俺が子供っぽいんだろうな。やることが同じだもん。大人とかが見ると混乱して、『頭がホタテ貝?すみませんけど、これって理屈似合いませんよ!』とか言うだろ。それに対して子供は、こう来るんだ。『フォーク・ミュージックでサンドイッチができてるの?オーケー、かっこいい!』って。」

「それにしても、妙なことに、色んな人が俺に写真とか、手紙とかを送り続けて言うんだよね。『うちのネコが、あなたのショーに夢中なんです。前はテレビにはまったく無関心だったのに、あなたの番組が始まると、ずっとテレビの前に陣取って、番組が終わると居なくなるんです。』
実際、ネコが俺の番組を見ている写真を、25枚も持ってる。まったく予想外なことに、ネコ向けのヒット作品を作ったわけだ!人間はボーゼンとしていても、ネコは大好きだときている。俺はネコ世界の王様だ!」

 彼は、音楽をテーマとしたパネル・クイズ番組の王様でもある。間もなく、オーストラリアでも初めて放映される[Never mind the Buzzcocks] に出演しているのだ。
「キャプテンを務めるのが好きなんだ。」フィールディングはそう力説する。
「俺はビル・ベイリーがもうやりたくないって事になったときに、引き継いだんだ。一方のキャプテンは、フィル・ジャピタス。すごく上手くいってるよ。『ジャングルブック』に出てくる、バルーとモーグリみたいにね。」

 ところで、フィールディングがそれまでにキャプテンだったことは?
「たしか、子供の頃、サッカーチームのキャプテンだったな。うわぁ、あり得ない!俺が何かのキャプテンをやってるなんて、誰も想像できない方に賭けるよ。」

 幽霊船のキャプテン(船長)ならどう?フィールディングは大笑いした。
「『誰も舵を取ってないぞ、ノエル!どこ行ったんだよ!』俺はと言えば、海から引き上げた変な生き物と、デッキで踊ってるんだ。『キャプテンなら、イルカと踊ってるぞ!だれもこの船の舵なんて取ってないんだ!』でも、それは絶対ないな。今はちゃんと自分の船の船長だから。[Luxury Comedey] のキャプテンさ!」

(終)

→ インタビュー・トップへもどる
→ サイト トップへ  → フレームが表示されない場合は、こちらのサイト入り口へ