ローリング・ストーン・マガジン 2015年7月 トム・ペティ
Tom Petty on New Mudcrutch LP and Why He's Done With Solo Albums
RS:最近、マイク・キャンベルと話したところ、マッドクラッチの仕事を始めるために、8月に集まる予定だと言っていました。その予定ですか?
TP:ああ、もうすぐだね。
RS:もう曲は書けているのですか?
TP:そうだといいね。ちょうど今、躍起になってやっているところなんだ。もう1ヶ月くらいやっているかな。
今回の場合良いのは、みんなが曲を持ち寄ってくれることだ。ぼくが12曲とか全部つくる必要はない。とにかく作っているよ。
やってて一番楽しい物のひとつが、マッドクラッチのセッションだ。とにかく楽しいから、これまでやってきたなかでも、良い物になるよ。今回もうまく行くといいな。続編をやるっていうのは、なかなか勇気のいることだからね。
RS:どこでレコーディングするつもりですか?
TP:ハートブレイカーズ・スタジオを使うつもりだ。大きなハートブレイカーズのクラブハウスがあって、前作もそこで作った。ほとんどそこで作ることになるんじゃないかな。
大したもんだと思うのだけど、前のアルバムでは、ハーモニーも含めたヴォーカルをオーバーダビング無しで、ライブ録音したんだ。今回もそうできると良いと思う。それぞれのソロ・パートは毎回違うだろうけど、最終的には最高のものが録れるはずだ。前作は10日間くらいで作ったんだ。
RS:今回のアルバムも、それくらい早くできそうですか?
TP:さあ。そうなると思うよ。
RS:トム・レドンやランドル・マーシュとまた一緒にやるのを見られるなんて素晴らしいですね。みんな自分自身で楽しみながらやっているのが良く分かります。
TP:そうだな。ぼくにとっても、ベースを演奏するのはとても楽しいことだよ。ベーシストとしてバンドを始めたからね。ハートブレイカーズ結成まではベーシストだった。だからもとのパートに戻って、ランドルと一緒にやるのは楽しいよ。とても良いドラマーだからね。どちらかというと、ベースとかに合わせるのではなく、ヴォーカルに合わせるタイプだ。
それに、トミー(トム・レドン)はイカしたギタリストだ。十代を一緒に歌った仲だから、うまく調和するんだ。
RS:アルバムができたら、ツアーに出ますか?
TP:もちろん。東海岸でもやりたい。前回は、切羽詰まった状況だったんだ。すぐ後に、ハートブレイカーズの大きなツアーが控えていたからね。あまり時間がなかったんだ。それで西海岸を走り周り、トゥルバドゥールで一定期間やった。楽しいギグだったよ。ハートブレイカーズとは全く違うんだ。リズム・セクションが違うからね。異なるスタイルの音楽だ。
普段、ハートブレイカーズでやっているのとは心構えが違うから、このバンドのために曲を作るのはとても面白いことだ。
RS:何曲くらいできていますか?
TP:4曲かな。でもあと数曲は作るつもりだ。
RS:ハートブレイカーズと言えば、数年前、ビーコンと、フォンダでやったショーは本当に素晴らしかったです。ああいう劇場でのギグをまた将来やってみたいですか?
TP:あのショーは、ライブ演奏に対する考えを大きく変えた。フォンダで二日間やったあと、ボナルーの10万人の前で演奏したことがある。まるで「ああ、こういうのもあったな」って感じ。そのあとすぐに、また小規模な会場から、大規模な会場でのライブに戻った。
どんな場所でやるのも好きだよ。でも、あんな風に次から次へと違う状況でやるのは、無理だと思う。経験によって変化してゆくものだ。自由にやるのが好きだよ。<br>
RS:オールマン・ブラザーズが、ビーコンでのライブ以降の活動を休止しています。あなたがたが場所を使うこともできます。毎年3月とか。
TP:あとを継ぐってわけだね!いいと思うよ。ビジネスっていうものには、色々複雑な事情があるから、なんとも言えないけど。ショーとコストの兼ね合いがあるんじゃないかな。でも、できると思うよ。
ビーコンみたいな所は大好きだし、フォンダも素晴らしい。フォンダではステージで電気的な手に負えない雑音がしちゃって、かなりいらついたけど。それでも、素晴らしい所だ。毎晩違ったショーをやるっていうのもいいな。
RS:"Walls", "Billy the Kid" を演奏したのは素晴らしかったですし、チャック・ベリーのカバー "Carol" のイントロを奏でたときも凄かったですね。
TP:"Carol" と言えば面白いのは、ぼくらが二つの異なるキーで始めちゃうって事だ。バンドの一部はこっちのキーで、ほかの一部はあっちのキーでやると思っちゃってるんだな。
1970年のマッドクラッチでも全く同じ事が起こったよ。しかも曲まで一緒だ。リハーサルではちゃんと同じキーでやってみて、他のキーも試してみた。それで、結局は最初のキーに戻すことにしたんだけど、誰かがその決める場に参加し損ねたんだろうな。何年もたってまた同じ曲をやろうとしたら、同じ失敗をするもんだから、笑い死ぬかと思った。
RS:あれは良かったですよ。完璧なリハーサルをしたブロードウェイの舞台などとは違っていて。
TP:面白いよね。「あー、じゃ、どうする?オレ、逮捕?もういっかい、最初から。ちゃんとやるから。」ってな感じだったな。
RS:[Wildflowers] ボックスセットはどうなりますか?ここ数年、出ると聞いているのですが。
TP:正確にはボックスセットではないんだ。あの当時、もともとできていたダブルアルバムの片割れが、第二のアルバムとして存在するんだ。発表されなかったものを、第二のアルバムとしてリリースするつもりだ。ぼくは好きだよ。
最初のプランでは、オリジナルアルバムに、未発表曲のディスクをつけたものを、完全版 [Wildflowers]としてリリースすることになっていた。そうしたらワーナー・ブラザーズが来て言うことには、「これは、そのまま収納ケースゆきにするには出来が良すぎる。一枚の独立したアルバムとしてだそう」って。その方針に従ったというわけ。もうほぼ出来ているから、そのうち出るよ。出来上がっている以上、ぼくは座って出るのを待つだけ。
RS:マッドクラッチのアルバムとツアー、そのあとはソロ・アルバムを出しますか?それともハートブレイカーズのレコードでしょうか。
TP:もうソロ・アルバムは作らないと思うな。視界には入っていない。ホントいってしまえば、結局は仲間を集めてプレイしてしまうんだから。ほかにずっと一緒に演奏出来る人なんていないし、結局ハートブレイカーズがいいのさ。人生、この年になっても、ベンモントやマイクと演奏できることをとても誇りに思える。これこそ、ぼくがプレイしたいバンドだ。だからソロ・レコードは作りたくない。眼中にないね。
RS:多くのロック仲間たちが、最近、名作アルバムを最初から最後まで演奏するツアーをしてますね。やってみたいと思いますか?
TP:ぼくには退屈だな。話には聞いているけど、退屈だと思うよ。どうしてそんなこと、やりたがるんだろうね。少なくもぼくのアルバムは、コンサート形式でやるようには出来ていない。ペース的にも、そういうふうには出来ていないし。そんなことして、素晴らしいコンサートになるんだろうか。
RS:チケットの売り上げが良くなり、コンサートも大きなイベントになると思っているからじゃないでしょうか。
TP:一大イベントになるというのなら、それで良いけど。ストーンズも [Sticky Fingers] でやっていたけど、演奏曲順は替えていた。そうしなきゃ。ショーの躍動感が保てないんだと思うよ。
RS:(ミック・)ジャガーは、大きなスタジアムではできないと言っていました。バラードが多すぎるとか。
TP:だろうね。スタジアムや、アリーナでは無理だよ。ショーのペースっていうのは、とても大事だ。大勢の人を同じ盛り上がりに引っぱらなきゃいけないのだから。それなりの技術が必要なんだよ。
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