彼は、目線を上げた。

窓の中央に、山法師の庭木があった。

彼にとっては、見慣れた景色だった。

彼がこの家に越した時、その山法師は窓の中央ほどの高さだった。

今では、少し屈まないと、枝の上まで見えない程に育っていた。

落葉が始まった、彼は気付いた。

枝に残った葉っぱは、既に色あせた紅だった。