海岸から沖に向かって、ひとしきり泳いだ彼は、

あお向けになった状態で浮かんでいた。

全身の力を抜いて、波に揺られた。

海に浸かっている耳からは、鈍い波の音と、

自分の呼吸の音しか聞こえなかった。

クロールで荒くなっていた息が、

だんだん穏やかになっていくのがわかる。

青い空、白い雲、そして、まぶしい太陽、

彼の視界の中には、それ以外のものは無かった。