彼女は、さきほど、この部屋に帰ってきた。 少しの手荷物とポストの中にあった

郵便物を、テーブルの上に置いた。 部屋の中は、人気が無く冷え切っていた。

彼女は、ヒーターのスイッチを入れた。 そして、留守番電話の再生ボタンを押した。

−−− 松田です。 留守の様ですね。 年賀状が届きました。 去年も、その前も届き

ましたが、今年の年賀状は、どうでも君の字ではない様です。 何かあったのでしょ

うか、心配です。 それでは −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

と言う、メッセージが再生された。 彼女は、娘が代筆した年賀状の事を思い出した。

そして、その事に気付く人がいると言う驚きと、気付いた人が、松田 賢治であると

言う事に、緊張していた彼女の表情がやわらいだ。 彼女は、受話器を手にした。