借地の一部を駐車場として賃貸すると土地の転貸となるか

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2015.12.23mf更新
弁護士河原崎弘


相談:不動産
木造建物(普通建物)所有目的で土地を60坪借りています。庭の一部を駐車場として貸したいのですが、地主が承諾しません。
駐車場として貸した場合、地主から、土地の無断転貸を理由として、土地の賃貸借契約を解除されますか。

回答
土地を借りていて、そこに建物を所有している場合、建物利用に伴い、土地の一部を貸すことは、土地の転貸にはなりません。例えば、商店を営んでいて、そこに来るお客に車を駐車させるために、借地の一部を駐車場にしたような場合です。また、駐車場施設を設けて、駐車場施設の賃貸借は、地上建物の賃貸借に準じて考えることもできるとして、転貸とならないとの下記1の判例もあります。
あなたのケースのように、単に、土地の一部を、特定の人に、利用させる形の駐車場は、土地の転貸に当たります。下記2の判例では、借地の12%ないし15%を駐車場として貸しても、無断転貸として解除を認めています。
借地の一部を駐車場として貸す(転貸)と無用なトラブルが生じ、賃貸借契約を解除される危険があります。弁護士の答えとしては、「駐車場として貸すのは、止めた方がよい」が、正しいでしょう。

判決
  1. 東京地裁昭和56年6月17日判決(出典:判例時報1027-88)
    駐車場施設の賃貸借は、地上建物の賃貸借に準じて考えることもできるものであり、・・・・ 借地上に駐車施設を設けて駐車場として賃貸する行為は借地の転貸に当たらない。
  2. 東京地裁平成5年3月29日判決(出典:判例タイムズ871-252) 第三者に借地の一部を駐車場として賃貸したことが、本件においては、認定のような契約内容及び利用形態であることに照らせば、本件駐車場部分をA及びBに駐車場として使用させたことは転貸に該当するものというべきである。
    たしかに、借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合において、自動車を利用する顧客の来訪を容易ならしめるために、 右建物に付属して不特定多数の顧客を対象とするいわゆる時間貸しの駐車場を設置するような場合には、第三者を対象とする駐車場として借地の一部を使用することが、社会通念上右建物所有ないし管理の目的の範囲内の利用行為と認められ、転貸に該当しないものと認められることもあり得るものといえる。
    しかし、本件においては、前記認定のとおり、特定の賃借人を対象として賃貸期間一年間しかも更新を前提とする駐車場契約を締結しているのであつて、これらの点を考慮すれば、本件駐車場部分を第三者に駐車場として使用させたことについては、社会通念上本件建物所有の目的の範囲内の利用と認めることは到底できないものであり、転貸に当たることは明らかである。
    なるほど、前記のとおり本件駐車場部分は面積的には本件土地全体の12ないし15パーセント程度であるが、そのことをもつて、転貸に該当しないということはできないし、また、契約上、貸主は一か月の事前通告により賃貸借を解約できることとされているが、そうだからといつて転貸に該当しないということもできない。この場合、無断転貸として契約の解除原因に当たるとされた。
  3. 東京地方裁判所平成18年3月27日判決(出典:判例秘書)
    土地の賃貸借契約が建物所有を目的とするものであっても,当該建物が賃貸目的の共同住宅であることが借地契約当事者において予定されていた場合には, 建物の賃貸借契約に付随するものとして,借地の一部を建物賃借人に駐車場として使用させることは,当該駐車場の構造,規模や使用の対価が通常の程度のものである限 り,社会的にみて相当な借地の利用方法の範囲内のものというべきであるから,これを借地契約の解除原因となる程度の用法違反ということはできないし,そのような形 態で建物賃借人に駐車場を使用させるものである限り,借地契約の解除原因となる転貸には当たらず,そうでないとしても,背信行為に当たらない特段の事情があるもの として借地契約を解除することは許されないというべきである。

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