生命保険金は特別受益か/弁護士の法律相談

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2015.7.28mf
弁護士河原崎弘

相談:生命保険金は特別受益ですか


母が亡くなり、その後、父が亡くなりました。私のほか、兄が2人います。
父は、生命保険に入っており、受取人を私に指定していました。私が、女で、結婚もせずにいたので、父は心配していたのです。 私は、生命保険金1000万円を受取りました。父の遺産は預金約5000万円です。
私たち、子供3人で遺産分割の話をしていますが、兄2人は、遺産は生命保険を入れて計算し、従って、私が預金から相続できるのは、1000万円だと言います。私は、生命保険は相続財産ではないので、5000万円の預金の3分の1(約1700万円)を相続できると主張しています。この場合、どちらの主張が正しいでしょうか。
相談者は、第二東京弁護士会がデパート内で開いている法律相談所を訪れました。

回答:生命保険金は原則として特別受益に当たらない

受取人指定の生命保険金が遺産(相続財産)であるかについては問題があります。 判例では、保険金を相続財産とは扱いません。
学説では、生命保険金を遺贈ないし死因贈与と見る説が有力です。この説では、生命保険金は 特別受益(民法903条)となりますので、遺産分割の際のそれを加えて遺産を計算します(あなたの兄の主張)。
判例では、特別受益に当たるとするものと、特別受益に当たらないとするものがありました。ところが、最近、最高裁で、原則として、特別受益に当たらないとする決定がありました(あなたの主張と同じ)。
特別受益に当たるか、否かは、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人と の関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、公平であるかを判断します。保険金の額の遺産の総額に対する比率が重要でしょう。下記審判例では、保険金額が遺産の5割を超えると特別受益です。ここでは、遺産と保険金の額を比べてみます。 相談者のケース場合、遺産5000万円に対し、生命保険金1000万円(遺産の2割)です。15%で、特別受益に当たらないとの判例がありますので、大丈夫とは思います。しかし、若干、微妙です。
とりあえず、父の遺産5000万円を分割する際、あなたが受取った生命保険金1000万円は特別受益ではないと主張し、裁判所の審判にまかせたら、いかがでしょう。

判決

登録 2005.4.21
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