不貞を続ける夫に、離婚せずに慰藉料を請求できますか

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2013.11.9mf更新
相談
29歳の主婦です。夫の不倫を知り、離婚を考えていました。しかし、現実は厳しく、2人の子供を抱え、今後の生活を考えると離婚はなかなか難しいものです。浮気して帰ってくる夫の帰宅を待つのは、辛く、寂しいです。辛い思いをしながら、 今の生活を捨てきれずにいる主婦は多いと思います。
浮気をされ、なお子供との生活のために、眠れない夜を過ごす私のような離婚できない主婦には法律は味方になってはくれないのでしょうか。
離婚せずに夫と暮らすことは、精神的苦痛です。慰謝料を貰いたいのです。慰謝料を請求したいですが、離婚しなければ貰えないのでしょうか。信用できない夫と生活を続けるには、いざと言うときのお金が必要です。また、慰謝料には税金がかかるのですか。

回答
妻が夫に慰謝料(慰藉料)を請求するとは、奇妙な印象をもたれます。夫婦の財布は1つですから、そのような請求を認めないと考える人がいます。
実際の裁判を見ますと、 夫婦の間に不法行為があった場合は離婚しなくても、慰謝料は請求できます。交通事故の例ですが、裁判所は、「夫婦間の不法行為責任につき、一方が他方に損害を与えたときは、原則として、加害者たる配偶者は、被害者たる配偶者に対して損害賠償責任を負う」と判示し、「一般的に、財産的損害については協力扶助義務で填補され、精神的損害については宥恕される」との主張を排斥しました(平成7年9月12日大阪地裁判決、下記)。
従って、あなたも離婚せずに慰謝料を請求したら、認められます。 実際、離婚しなくても不貞を理由とした慰謝料を認めた判決もあります。別居中の例が多いです。
慰謝料は、夫に対しては300万円くらい、女性に対しては200万円くらい認められます(不真性連帯債務です。合計500万円ではありません)。 離婚しない場合、慰謝料は、実際には、弁護士に依頼し、訴えを提起しないと無理でしょう。
夫の不貞行為を見聞きすることは、妻にとって大変辛いことです。でも、多くの人が、それを乗り越えています。今は苦しくとも、時が解決してくれます。離婚すれば、正常な生活に戻ります。離婚を選ぶ方は結構多いです。
子供がいても、信頼できない人と暮らすことは意味がありません。貧しくとも信頼できる人と助け合ってこそ、生きる意味、生きる喜びがあります。離婚して、 幸せな再婚も考えるべきでしょう。
なお、慰謝料は、法律により非課税所得と決められていますので、課税されません(所得税法9条1項16号)。 

判決
大阪地方裁判所平成7年9月12日判決
夫婦間の不法行為責任
被告の主張によれば、被告と亡洋之は夫婦であり、円満な夫婦関係にあつては、たまたま不注意から一方が他方に損害を与えたと しても、財産的損害については協力扶助義務で填補され、精神的損害については宥恕される、とのことである。
しかしながら、夫婦は、家族生活において同等の権利を有し(憲法24条)、財産についても別産制をとつており、平等主義をと る現行法のもとにおいては、生活共同体を営む夫婦の一方が他方の配偶者に不法行為によつて損害を与えたときには、原則として、 加害者たる配偶者は、被害者たる配偶者に対し、その損害を賠償する責任を負うと解される。一般的に、夫婦間においては、常に、 損害賠償請求権は協力扶助義務で填補されるとか、精神的損害は宥恕されるとか、その権利行使が権利の濫用になるとかは言えな い。
また、亡洋之の推定的意思が、被告に対し損害賠償請求をしないものであるとか、被告に全財産を残す意思であつたとかは断定 できない。
よつて、被告の主張は理由がなく、被告は亡洋之に対して不法行為責任を負う(交通事故民事裁判例集28巻5号1334頁)。
登録 April 19, 1999
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