保証人となるに際し契約書に責任を限定する条項を入れたい

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Last updated 2015.3.24mf

相談:保証人になってくれとの依頼


私は、建材業を営んでいる友人から、彼の会社と取引先との継続的取引契約の連帯保証人になるように頼まれました。
彼は私の親友ですので、連帯保証人になってあげようと思うのですが、どのような契約にしたら良いでしょうか。
相談者は奥さんと一緒に、友人の会社の取引先が作成した継続的売買契約の原案を持って法律事務所を訪れました。

回答:保証人の責任は重い

奥さんは「止めなさい」と、言って、夫が保証人になることに反対でした。
保証には色々あります(保証の種類と保証人の責任 を参照)。結論として、保証人の責任は重く、身元保証以外にはなるべきではありません。
保証人は、主たる債務者の債務の履行を保証しますので、主たる債務者と運命を共にします。継続的取引の場合は、そこから発生する債務を保証します。これを根保証と言います。発生する債務の期間とか、金額に制限をつけないと、一切の債務を保証したことになります。これを 包括根保証 と言います( 包括根保証の契約書例 )。包括根保証では、保証人の責任は過酷です。近年、責任を制限する民法の改正がありました。
保証期間や、保証金額を決める契約は、限定根保証と言います( 限定根保証の契約書例 )。
他人(主たる債務者)の経済状態はわかりませんので、保証は危険です。止めた方がよいでしょう。
保証人になったために、莫大な金額の不動産を全部失った例や、会社の社長が破産した例などいくらでもあります。責任が限定されない包括根保証は特に危険です。 どうしても相手を助けてあげたいなら、(返済を期待せずに)お金を貸すなり、あげた方がよいです。
  1. 弁護士は、相談者に対し、保証人になることが危険なことを説明し、保証人になることを止めるよう忠告しましたが、相談者の意思は固く、「親友だから断れない」と、言いました。
  2. そこで、弁護士は、相談者に対し、契約書の中に、保証人として責任をとれる限度額を500万円とか、4000万円などと、あるいは、保証する債務発生期間を限定する(契約締結日から1年間とか、2年間とする)よう勧めました。このようにすれば、保証する債務が限定され、保証人の責任も限定されます。これを限定根保証と言います。具体的には下記の通り書くよう勧めました。

    「保証人の責任は、金500万円を限度とする」
    あるいは、継続的取引の場合は
    「保証債務極度額は金1000万円とする」などと、書けばよいです。さらに、
    「保証人は、〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日までの取引から発生する債務を保証する」と、期間を限定して書くのです。

    以上のように書くと、保証人の責任は限定されます。
最後に弁護士は、「じゃ、極度額を 1 億円にしましょうか」と言いました。相談者は、絶句し、黙ってしまいました。

その後

相談者は、保証の限度額をいくらにするか考えました。しかし、具体的に限度額を考える過程で、相談者は、保証の恐ろしいこと、危険なことを実感しました。
結局、相談者は、弁護士に、「保証人になることを止める」と、連絡してきました。

平成17年12月1日公布の「民法の一部を改正する法律」により、貸金などで、極度額を決めない包括根保証は無効となります(民法465条の2第2項、法人が保証人である場合は除く)。
登録 Dec. 24,1999