娘が、認知及び養育費を放棄すると男性に言った
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2011.5.13mf
弁護士河原崎弘
相談
私の娘が、妻子ある男性(会社の上司)との間に子供を作りました。娘との交際中、男性の配偶者は妊娠中でした。結果、娘の子供と同じ年の子供が男性側にいます。
男性は、「私の娘からの強い希望で子供を作った」と言い張っています。このことは、娘との合意の上だと。娘は、「認知及び養育費を放棄する」とも男性に言ったようです。
孫の将来を思うと、そこで、なんとか、認知をさせ、養育費を払わせたいと考えています。良い解決策をお教えいただけますようお願いいたします。裁判、調停を含め法的処置をせざるを得ないと感じています。
弁護士の回答
認知請求権を放棄すると約束しても、その約束は無効です。いくつもの判例があります。
養育費請求権を放棄する約束も、放棄により父親が一切の養育費負担を免れるのでは、不当でしょう。従って、養育費放棄の約束も無効とされる可能性があります。
家庭裁判所に認知及び養育費を請求する調停を申立てて下さい。
調停が成立しない場合は、認知については訴えを提起します。養育費については自動的に審判手続きに移行します。
判決- 名古屋高等裁判所昭和52年10月31日判決
認知請求権の放棄がなされるに当つて金1500万円の授受がなされた場合でも、放棄の意思表示は無効である(判例タイムズ364号246頁)
- 福岡高等裁判所昭和47年6月1日判決
わが民法における認知の効果は、単に扶養義務の発生など限定された財産的効果を生ぜしめるにとどまらず、婚外父子間に一般的な父子関係を成立させて、該関係に伴う広汎な身分法上の法律関係を発生せしめるものにほかならないから、子の父に対する認知請求権は、その身分権的な特質と、非嫡出子に対する保護の観点(認知請求権を行使するか否かは、まさに非嫡出子の意
思のみにかからしめるべく、他の約束などによってこれを左右する余地を残すのは、やはり子の保護を全うするゆえんではない。)よりして、これを放棄することはできないものと解するのが相当である(判例時報688号70頁)。
- 最高裁判所昭和37年4月10日判決
子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質およびこれを認めた民法の法意に照らし、放棄することができないと解するのが相当であり、これを
長年行使しないからといつて行使できなくなるものではない(判例タイムズ139号65頁)。
登録 2010.6.2