テレビアンテナ設置は建物の貸主の責任か

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2016.2.17mf
相談:不動産
先日、平屋の一軒家を借りました。大家さんに、「テレビは見れますか」と聞くと、大家さんは、「コンセントを差し込めば見れる」と言っていました。
しかしアンテナの差し込み口がなかったので、「コンセントはありますけど、差し込み口はないですよ」と言うと、大家さんは、「コンセントを差し込めば見れる」とのことでした。
敷金なども払い、引っ越し前日になってもう一度テレビのことを聞くと、 「アンテナを引かないと見れない」と言われ、 費用は私持ちだと言うのです。
私はテレビアンテナ設置費用は大家が持つべきと思うのですが、 いかがなものでしょうか。

回答
賃貸借契約は、特定の、そこにある物件を借りたことになります。テレビアンテナがあることもあるし、ないこともあります。テレビアンテナは容易に引けますので、テレビアンテナがないことは物件の瑕疵にはならないでしょう。
相談者の借りた家は一戸建ですから、見ればテレビアンテナがないことがはっきりしています。この点からも「隠れたる瑕疵」とはいえません。相談者はテレビアンテナのない家の賃貸借契約を締結したことになります。従って、テレビアンテナは借主が付けることになります。
当初、テレビアンテナが設置してある家を借りたが、アンテナが壊れていた場合、あるいは、契約途中で壊れた場合は、貸主に修理義務があります。
集合住宅(マンション)やビルの場合は、見ただけではテレビアンテナ端子があるかが明白でないですね。しかし、「借主は建物を借りたのであり、容易にケーブルテレビなどを引ける」ので、貸主に責任はないでしょう。
テレビケーブルを引くことは借主の責任です。貸主が責任を負うのは、貸主が特約でテレビアンテナの設置を約束した場合およびテレビアンテナが設置してあるが、故障している場合です。

判例
東京地方裁判所平成17年4月22日判決
 テレビアンテナの不設置について
(ア)店舗の賃貸借契約を締結するに当たり,当事者が,テレビアンテナの端末設置を契約の内容にするか,あるいは,賃借人が,テ レビアンテナの端末の設置を要求するか等をしない場合について,店舗の賃貸借契約を締結するに際し,同端末の存在は,同契約に当 然に付随しているとみることは相当ではないと解される。
したがって,仮に,本件店舗にテレビアンテナの端末が設置されていなかっ たとしても,このことをもって,賃貸人の債務不履行ということはできない。
(イ)もっとも,本件店舗にテレビアンテナの端末が設置されているかどうかについて,被告は,端末はあるはずであるが,内装工事 により隠れている可能性がある旨供述している(被告本人14頁)。
仮に,テレビアンテナの端末が設置されていなかったとしても, 低料金でケーブルテレビを敷設することは可能であるから(弁論の全趣旨),原告としても,かかる方法でテレビを設置することは十 分可能であったにもかかわらず,かかる方法を取らなかったのであるから,仮に,テレビが見られなかったことにより,客の減少によ る損害が生じたとしても(証人C23頁),この損害を原告に転嫁することはできないというべきである(出典:判例秘書)。

虎ノ門(神谷町駅1分 ) 弁護士河原崎弘 03−3431−7161
登録 2008.9.14