弁護士河原崎弘
相談:賃料不払い
宅地180平方メートルを貸しております。借主は、木造の2階建ての居宅を建てております。私が賃料の値上げを伝えたところ、以後、借主は地代を供託しています。供託は2年ほど続いています。
以前、区役所の法律相談で弁護士に相談したところ、弁護士から、「地代の受け取りを拒否したわけではないので、供託はできないはずだ」と言われました。
そこで、私は、土地の賃貸借契約を解除しようと考えています。今、地代不払いを理由に土地の賃貸借契約を解除できますか。
回答:解除するには、催告が必要
弁済供託の場合、
債権者が、受領を拒んだ場合、受領することができない場合、債務者は供託できますます。さらに、債務者が過失なくして、誰が債権者であるかが、わからない場合も供託できます。それ以外の場合は、供託できません。
相談者の例では、借主は、地代の供託はできないわけです。
そこで、供託が無効となり、借主が債務不履行している、貸主は解除できるとなるかは、別問題です。
通常、
解除するには、「期間を定めて(=本状到達後2週間以内に)、債務を履行しろ(=この場合は、地代を支払え)」と催告する必要があります(民法541条)。
さらに、
賃貸借契約など継続的な契約は、当事者の信頼関係を基礎にしているので、当事者が単に債務不履行をしただけで解除できません。債務不履行の結果、契約を継続する信頼関係を破壊するほどに至らないと解除できません。
本件では、賃料支払いを期限を定めて催告し、その後解除するのが、普通の手続きです。借主は供託してますが、これは無効です。無効な供託ですが、供託しているので、供託との関係で、信頼関係が破壊されているかが問題となります。結論として、信頼関係が破壊されているとは言えず、無催告解除は無効となる可能性が高いです。
判例
- 東京高等裁判所平成8年11月26日判決(出典:判例時報1592号71頁)
土地の賃料の履行遅滞が4か月分にとどまり、賃貸借契約における信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるとして同契約(催告後の
)解除の効力が否定された
- 東京地方裁判所平成20年2月4日判決(出典:判例秘書)
Aから土地の遺贈を受け,土地賃貸借契約の賃貸人の地位を承継した原告が,この土地の賃借人である亡Bの相続人で,土地賃借権及び地上建物の所有権を承継した被告らに対し,賃料債務の遅滞等を理由に賃貸借契約を解除し,建物の収去と土地明渡,賃料相当損害金の支払を求めた事案について,本件解除の意思表示は催告がされずになされたものとして無効であり,原告の通知書に催告が付されていたものとしても,被告らが賃料の供託をしていることなどの事情を併せ考慮すれば,賃料不払の期間が2年7月に及んだといっても未だ信頼関係を破壊するには至っていないから,解除の効果は認められないとして請求を棄却した。
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2010.7.6