土地が私道と接しているが、私道が道路位置の指定を受けていない

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2015.12.18mf更新


相談:不動産
銀行の勧めで分譲宅地を買いました。売買の際には、不動産業者が仲介に入りました。不動産業者がくれた重要事項説明書には、私が買った土地は6m幅の私道に接していると書かれています。図面でも土地の前に道路が書かれていました。
最近、建築をしようと計画したところ、私道が道路位置の指定を受けていないので、建築できないことがわかりました。仲介した不動産業者は、行方不明です。売主は死亡し、道路の所有者である息子に問い合わせましたが、のらりくらりで、らちがあきません。
この問題を解決するにはどのような方法がありますか。この場合、銀行に責任をとってもらうことはできますか。
買主は、周囲に勧められて、弁護士事務所を訪ねました。

回答
都市計画区域内にある建築物の敷地は、道路に2m以上接していなくてはならなりません(建築基準法41条の2、43条1項)。これを「接道義務」といいます。 土地が2m以上道路に接していないと、建築許可はされません。あなたの買った土地が接している私道と書かれた部分が、実際は、道路位置の指定を受けていないと、法律上、これは道路とみなされません。
このような場合は、建築の許可は出ません。売主に責任があります。売主が死亡しても、 売主の相続人は、道路位置の指定を受ける義務を負っていますので、売主の相続人に対し債務不履行責任を追及する方法があります。

銀行の責任ですが、これだけの事情では、銀行が、責任があるかは、わかりません。通常は、銀行は責任はないでしょう。銀行を訴えたいのであれば、売主を訴える際、銀行を共同被告として、損害賠償を求める訴えを提起する方法はあります。
あなたの事情とよく似た判決がありますので、掲げておきます。この判決の原審(高等裁判所)は、銀行の責任を認めています。
不動産を買う 際には、土地が接している道路が道路位置の指定を受けているか気をつけましょう。

判決例
最高裁判所平成15年11月7日判決(出典:金融・商事判例1179号5頁)
前記の事実関係によれば,次のことが明らかである。
(1) 本件売買契約と被上告人(銀行)と上告人(買主)との間の上記の融資契約とは,当事者を異にする別個の契約であるが,Aは,後者の融資契約を成立させる目的で本 件土地の購入にかかわったものである。このような場合に,A(銀行員)が接道要件が具備していないことを認識していながら,これを被上告人に殊更に知らせなかったり,又は知らせることを怠ったりしたこと,上告人が本 件土地の売主や販売業者と業務提携等をし,上告人の従業員が本件土地の売主等の販売活動に深くかかわっており,Aの被上告人に対する本件土地の購入の勧誘も,その一環であることなど,信義則上,Aの被上告 人に対する説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情を原審は認定しておらず,また,そのような事情は,記録上もうかがうことができない。
(2) 本件前面道路部分は,本件私道の一部であり,本件 売買契約締結当時,本件土地の売主であるBが所有しており,不動産登記簿上の地目も公衆用道路とされていたことから,同人が被上告人に売却した本件土地の接道要件を満たすために本件前面道路部分につき道路 位置の指定を受けること等のB(売主)の協力が得られることについては,その当時,十分期待することができたのであり,本件土地は,建物を建築するのに法的な支障が生ずる可能性の乏しい物件であった。
(3) 本件 土地が接道要件を満たしているかどうかという点は,宅地建物取引業法35条1項所定の重要事項として,書面による説明義務がある。本件売買契約においては,売主側の仲介業者であるC株式会社がその説明義務 を負っているのであって,Aに同様の義務があるわけではない。
これらの諸点にかんがみると,前記のとおり,上告人の従業員であるAが,被上告人に対し,上告人から融資を受けて本件土地を購入するように積極的に勧誘し,その結果として,被上告人が本件売買契約を締結 するに至ったという事実があったとしても,その際,Aが被上告人に対して本件土地が接道要件を満たしていないことについて説明をしなかったことが,法的義務に違反し,被上告人に対する不法行為を構成すると いうことはできないものというべきである。

2004.8.25


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