相談
不動産業者に一戸建てを紹介され、売買契約を締結しました。買主は私と妻です。 代金5000万円のうち、3000万円を金融機関からの借り入れをすることにしました。 手付は1000万円です。契約書にはローン条項を入れ、 「契約日から2月以内にローンが実行されないときには、買主は契約を解除できる」と書いてあります。
ローンは私が借りることになりました。ところが、その後、妻は家を買うことに反対するようになり、 借入れも、私の連帯保証人になることを拒み、金融機関から借入ができなくなりました。妻をいくら説得しても、 妻は言うことを聞きません。
この場合ローン条項に基づいて、売買契約の解除ができますか。
相談者は、勤務先の会社の顧問弁護士に相談しました。回答
不動産売買 契約書にローン条項が入っていれば、融資がされない場合には、買主は契約を解除できます。その場合、解除をした当事者が損害賠償責任、あるいは、債務不履行責任を負うことはありません。
しかし、これはローンの申込者が借入できるように誠実に努力した結果、借入ができなかった場合です。あなたが、ことさら、細工をして融資が実行されないようにしたり、あなたの側の人間が融資の実行を妨害した場合は、それはあなたの責任です。条件成就を妨げたと考えられるからです( 民法130条 )。本件では、あなたの側の妻の協力が得られいことが理由ですので、これは、あなたの責任となり、ローン条項に基づく解除はできないでしょう。
従って、あなたの側に債務不履行があるとして、損害賠償を取られるおそれがあります。通常、手付金 は違約金(損害賠償の予定)を兼ねている場合が多いので、1000万円を没収されるおそれがあります。あなたのケースと同様の例が 判例となっています。
これを回避するには妻を説得してローンを可能にするか、他から金銭を調達するしかありません。民法第130条
第130条 (条件成就の妨害) 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、 その条件が成就したものとみなすことができる。 判例
- 東京地方裁判所平成16年7月29日判決(出典:判例秘書)
また,前述したローン条項の趣旨からすれば,買主である原告らとしても,買主保護のために設けられたローン条項による保護を受けるためには,金融機関の審 査に必要な書類を揃えてその審査を受けるといった住宅購入資金の調達に向けた努力をする必要があるところ,原告らは,自己の仲介業者の発言のみで購入意欲を失った 結果,資金調達に向けた努力を怠り,ローン条項期日までに金融機関に住宅ローンの申込みをしなかったものと認められるから,ローン条項による保護に値せず,手付金 を没収されてもやむを得ないというべきである。- 東京地裁平成10年5月28日判決(出典:判例タイムズ988号198頁)
本件売買契約においては、原告のみならずSも共同買主となっているのであるから、仮にローン自体の当事者は原告のみであってもSもまた本件売買契約に基づき、原告のローン契約が無事に締結できるよう協力すべき信義則上の義務を負っているということができる。
ところが、本件においては、Sは共同買受人という立場にあったにもかかわらず、原告の連帯保証人となることを拒み、さらには共同買受人となることにまで難色を示し、最終的にいわゆる連帯保証型のローンを不奏功に追いやっているのであるから、Sの行為は前記信義則上の義務に反するものといわざるを得ない(なお、買主が複数の場合、金融機関としては、買主の一人に融資を行う場合にも、他の共有者の連帯保証を求めることがよくあるということは公知の事実である。)。そして、これと同じ時期に原告が当初申告しないでいた高血圧症を自主的に申告したことによって団体信用生命保険の審査が最終的に否決されていることをもあわせ考えるならば、本件においてローンが実行されなかった原因は、原告側の責めに帰すべき事由によるものといわざるを得ず、本件特約に基づく原告の解除は許されない。